最終更新日(update) 2008.12.22 
支部・地方の便り
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  円坐A(浜松) 平成16年10月号掲載
  旭川白魚火 平成17年1月号掲載
  群馬白魚火 原町支部 平成17年2月号掲載
  松江 千鳥句会 平成17年3月号掲載
 静岡白魚火 さざ波句会 平成17年4月号掲載
 静岡白魚火「花野句会」 平成17年5月号掲載
  佐賀ひひな会 平成17年6月号掲載
 花托の会(磐田 平成17年7月号掲載
  白魚火広島初心者句会(土曜句会) 平成17年8月号掲載
 磐田「槙の会」  平成17年9月号掲載
 ふれんどりー句会(出雲)     平成17年10月号掲載
 栃木県白魚火「笛の会 平成17年11月号掲載
 風交会(群馬県) 平成17年12月号掲載
 鹿沼いまたか句会(栃木白魚火) 平成18年1月号掲載
  円坐C(浜松) 平成18年2月号掲載
  葵句会(静岡)  平成18年3月号掲載
  さつき句会 (静岡) 平成18年4月号掲載
  遊歩句会(静岡白魚火会)  平成18年5月号掲載
  群馬白魚火 文月会  平成18年6月号掲載
  佐賀白魚火合同吟行会  平成18年7月号掲載
 三栗句会(静岡) 平成18年8月号掲載
  飯田白魚火句会  平成18年9月号掲載
 りんどう句会(島根) 平成18年10月号掲載
  大東笹百合句会(島根) 平成18年11月号掲載
 函館白魚火会 平成18年12月号掲載
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平成16年10月号掲載 句会報
  円坐A
浜松 上村 均

 社会保険センター浜松に仁尾先生を講師として俳句講座〔夜の部〕が発足したのは平成元年4月である。新人育成が目的であった講坐に約20人の応募があり、真剣で熱気溢れた講坐が始まった。その後応募者が多く夜の部では捌き切れず昼の部が次々と2クラス増設され、夜の部をA 、昼の部をB・C  と名付け頑張っている。今では全体で50名を越す大所帯となった。円坐Aは先生以下23名で毎月第二と第四の木曜日午後6時30分から2時間の講坐である。投句は兼題一句を含め五句である。あらかじめ句稿を作成し当日配布して選句する。選句は六句で被講は席順である。被講後3分の1の人が当日一番良いと思われる句の鑑賞を行う。上村均の選句と鑑賞があり先生の選に移る。先生は全句講評を建前としておられる為、秀句の鑑賞・手を加えれば佳句となるもの・没になった句の理由等々。木目の細やかなご指導で誠に有り難い事である。また前回の句から順番に感銘した一句を200字程度の鑑賞文にまとめて発表している。併せて次回の兼題を提案する。有志による日帰り吟行も年数回行って居り、先生のご指導を仰いでいる。今度、NHK俳壇の寺井谷子選に当講坐の弓場忠義さんが入選し過日放映された。  
 蛙鳴く隣の田には負けられぬ
有望新人が目白押しで将来が楽しみである。

晩涼の一筋の風ぼのくぼに  
遠花火掌ほどに開きけり   
背の丈の蕗の傘さし写さるる  
朝ごとに刻を違へず蝉鳴けり  
何事もなき父の日を良しとせむ 
出勤前浴衣の着付け頼まるる  
馬柵の戸にふれむと木槿咲きにけり  
ラムネ飲む妻籠の空の狭きかな  
射干や午後の歯科院込み合ひて 
日盛りや暇な交通警備員    
満席になりてしまひぬ竹牀几  
遠花火大天竜の向かう側     
紅を濃くさして暑さに負けぬなり 
サイダーの泡はじけ跳ぶ峠茶屋  
夕暮れの白き梔子匂ひけり    
渓谷の音さやさやと夏料理    
月懸る紫黒の空や半夏生     
おはぐろの一つにたたむ羽すがし  
朝顔に目隠しされし窓辺かな  
ゆるゆると万灯上がり鉾建つる  
長竿を担いで渡る鮎の川    
夕涼みがてらの散歩川伝ひ  
夏蝶のきらめきのぼる谷深し  
正文
芙美子

文子
信昭
瑞之
泰子
ひろ子
はるゑ
京子
くに子

升子

ルミ子
千代子

葉子
安子
晴代
忠義
照代


前列真中の右側が仁尾先生、左側が筆者。
この句会報後、千穂さんが加わり、平成17年1月現在総勢24名。


 平成17年1月号掲載 句会報
  わが道場 旭川白魚火会
平間純一

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 ムックルの幻想的な調べで始まった平成十五年夏の白魚火全国大会が、旭川で行われ全国の皆さまに大きな感動を頂いたのも、つい昨日のようです。
 旭川白魚火会は、昭和四十年、坂本タカ女さん、宮野一磴さんにて発足、その後故藤川碧魚さん、佐藤光汀さんなどが加わり、大きく発展しました。昭和六十三年にも、旭川にて全国白魚火俳句大会が天人峡で開催されました。
 現在は、坂本タカ女会長を中心に、宮野一磴さん、佐藤光汀さん、三浦香都子さんの指導の下、月二回の定例句会を開き、当季雑詠を毎回十句投句します。私たち若者組六名にとっては、毎月二十句を作るのが本当に大変でした。しかし、前記四名の先生方をはじめ、東條三都夫さん、五嶋休光さん、金田野歩女さん、滝見美代子さんなど大先輩の句が、まるで恵雨のように私たちを育て、何とか先輩方に付いて行けるようになってきました。
 選は、互選各十句、前記四名の選者並選十〜二十句、特選五〜十句で、特選を頂くと、その日の疲れも飛んでしまいます。
 最後に選者の評を頂き、質問や連絡事項などがあり、二時間半〜三時間があっという間に過ぎます。
 私たち若者組にとっては、俳句道場という感じで先生方の真摯な姿勢には休まず出て応えるしかありません。
 しかし、吟行会などの行事は、私たちに任せてくださり、先生方も笑顔で参加され楽しく盛り上げてくれます。
 姉妹句会の寒椿会、葉月会、実桜会とを合せて三十名程の合同の新年句会に始まり、春のお花見句会、夏の泥鰌鍋句会、春秋の市民俳句大会と直会、そして忘年句会などが年中行事です。 来年は、全国白魚火六百号記念大会があります。さてさて、どんな出し物にしましょうか。一杯やりながらの作戦会議も、また楽しみです。

こだはりの縄の切り口雪囲      
下枝より梢よりさくら紅葉かな    
初鴨のばらばら降りるおぼつかな   
雪婆飛び疲れたる綿の色       
盆栽の林檎の一個成りにけり     
納得の色となりたる鷹の爪      
嬰児の結んで開いて秋日和      
棒読みの議事応答や日の短か     
ふたつめの稲荷鳥居や刈田晴     
日本国字北海道鳥渡る        
白樺の幹の白さよ望の月       
静かなる頓宮の橋鴨来る       
山動く如くに変はり秋の山      
身に入むや一壷に深き淵のあり
タカ女
一磴
光汀
三都夫
休光
香都子
野歩女
美代子
富士子
さつき
峯子
紀子
佳範
純一


泥鰌鍋句会。
ああ、美味しかった。


平成17年2月号掲載 句会報
 群馬白魚火 原町支部
清水春代

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平成九年御指導していただいた吾亦紅先生が御逝去された時、若桐会が解散状態になっておりました。このままではいけないと思い今迄共に学んでいた人達に声をかけ、平成十年九月より会名を「原町支部」と改め少人数ながら句会を再会。今迄のように句会終了と同時に散会では親交を深めることはむずかしいと考え、会場を吾が家にしていただき、句会終了後お茶を飲みながらの俳句談議や、世間話しなどでなごやかな刻を過ごしておりました。半年位して、今少し人数がほしいと思い、峨堂先生に声をかけ、指導かたがたお願いしたところ心良く参加して下さった。 会員には高齢の方、夜仕事をもつ方とそれぞれなので、毎月一回午后に句会をし、当季雑詠で五句投句五句選にてやっております。
 幸、吾が家の庭には八十種余りの庭木が植えてあり、四季それぞれ花が見られるので、思いつくまま、ときには兼題を出し、庭を見て一句などということもあり、なごやかな笑い声の絶えない会として続いております。
 昨年、五周年を記念し、手作りの句集らしきものを作りました。その中には、亡くなった人の句もありますが、これからも俳句を楽しむ会として続けてゆく積りです。峨堂先生始め、高齢化が進み、若い誌友の定着が今一のことが悩みの種ですが、新誌友が一人でも多く参加して下さることを祈りながら、会を続けたいと思っております。 

愛嬌を振り撒く嬰や小六月
路地裏に独り者住む花八ツ手
秋の風跡かたも無し生家かな
国道を風吹き踊る木の葉かな
参道の夕暮のばすお茶の花
有髪なる導師まぶしき十夜参り
銀杏黄葉どさつと散りし神の庭
意のままに吹かれてをりし枯尾花
峨 堂
幸 子
文 女
清 香
翆 峰
紀和子
鳳仙花
晴 代


無断転載を禁じます

平成17年3月号掲載 句会報
  松江 千鳥句会
梶川裕子

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 約四百年経た松江城は,千鳥が羽をひろげたような優雅な破風であるところから,別名千鳥城ともいう。そのお膝元,城東公民館には種々の文化活動があるのに,俳句部門だけがなかった。平成十四年,田口一桜先生が,松江市立図書館長を勇退されたのを機に御指導を依頼。一桜先生は,何よりも城東公民館地区の住民である。そして荒木古川先生のあと,読売新聞の選者でもある。年度替りの四月,公民館会報により募集,現在十三名。名稱を千鳥句会とした。第四金曜日,午后一時半より,当季雑詠七句。互選十句。先生はいくらでも…。特選は五句程度。被講は各自。最終的には,清記をもとに先生の講評,指導がある。もともと地域の顔なじみ,先生も町の様子をよく御存じ。会話の疎通よく,和やかで遠慮なく訊ねることができる。 昨年四月には,大根島牡丹園へ吟行。夜来の雨もあがり,明日からは牡丹祭という庭師の手入れも見られた。公民館文化祭にも出品。十一月には,松江城を取囲む濠川巡りの舟に乗る。この時期,舟には豆炭炬燵が二つ並んで迎えてくれる。松江城大手前より舟に。武家屋敷,小泉八雲旧居などを眺め,濠には白鳥や鷺,亀,鳰などが目を楽しませ,時には鰡もとぶ。船頭の説明,唄などききながら十六橋を潜り一巡。この間,約五十分。見馴れた景色も,目線の異る水上から眺めるのも一興。公民館へ帰って昼食後,句会。その中の一句。 

  濠の香の松江は冬日深めけり
 城濠の水に親しむ鴨の群
 堀川に天守の影や小春凪
 船頭の語り部となり炬燵舟
 時々は座りなほして炬燵舟
 石段に水辺のくらし花八ッ手
 玄の子餅一臼搗きて田の神に
 差しのべる手のごと冬木水漬きけり
 炬燵舟お酒を欲しと思ひけり
 爪弾きの音に行く年惜しみけり
 顔を寄せ膝寄せなごむ炬燵舟
 冬の杜背にせる鷺の動かざり
 水仙や名のみ残りし鵜部屋橋
一 桜
美和子
貞 子
春 子
昭 子
明 子
功 子
松 子
ミサ子
美穂子
柏 枝
百合子
裕 子



平成17年4月号掲載 句会報
  静岡白魚火 さざ波句会
横田じゅんこ

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 さざ波句会は静岡白魚火十一句会の中で二番目に古い句会です。静岡白魚火の大要は今迄にも紹介されておりますので省略します。
 さざ波句会は昭和四十二年三月、当時の町の婦人会の中山雅子さんを中心に同好の皆様が集まり俳句の勉強会を始められたのが始まりと聞いております。その後昭和五十二年には十周年記念の第一句集、昭和六十二年には二十周年の第二句集を出されました。当時を御指導下さった先生はすでに故人となられましたが、丁度その頃現在の鈴木三都夫先生が地元に多くの句会を立ち上げ、さざ波も平成三年六月に新生さざ波句会として発足いたしました。ずっと後から入会させていただいた私も含めてその間若干の会員の異動はあったものの現在は十一人です。その中、雅子さん・沢江さん・比呂子さん・尚工さん・茂世さんの五人はその四十年代からの会員です。
 雅子さんは白魚火誌に毎号「今月読んだ本」を御執筆の中山雅史さんの母上です。そして三都夫先生御指導のもと平成九年に三十年の節目を迎え会員合同の第三句集を出しました。毎月の例会は一人七句出句、互選のあと先生選の特選句が鑑賞されます。鑑賞で選ばれた俳句がさらに光って来るから不思議です。その後入選洩れになった一句一句について、言葉の斡旋・物の見方・季題の働きなどを丁寧に説明されます。先生の俳句への姿勢は終始一貫「花鳥諷詠」(客観写生)です。
 「言い過ぎない」「平易なことばで」「よく見る」「見たなという句を作る」「俳句は楽しく作る」など。そして句会を欠席する折は必ず「不在投句をする」が厳しい教えです。立派な先輩に支えられながら、句会に吟行に楽しい「さざ波句会」の一端を紹介いたしました。

  一月例会より
犬ふぐり日向に咲いて十二月 鈴木三都夫
生涯の余白いく日ぞ去年今年 中山雅子
葉牡丹の縮みし渦にある勢み 笠原沢江
幼な子を拭ひし肌の柚子匂ふ 知久比呂子
手袋は跛一日山仕事 増田尚工
神の事仏の事と年用意 横田茂世
百一歳母のベッドに初日影 永田松江
真白な富士を間近に初景色 大関ひさよ
野も川も俄に瘠せし冬田道 大井康生
七種粥供うるだけを作りけり 小田登志江
垣根越しお隣さんと御慶かな 片瀬きよ子
初風呂や秤の上の赤ん坊 横田じゅんこ



平成17年5月号掲載 句会報
  静岡白魚火「花野句会」
小村絹子

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 現在十一を数える句会を持つ静岡白魚火の中で、平成八年に十番めに誕生した私達の「花野句会」についてご紹介をします。
 「花野句会」は、当時まだお元気で「榛の実句会」でご活躍されていた、故増田友兌さんが、私達一人一人に声を掛けて下さり、七名のメンバーを募って結成された句会です。ですから、増田さんのネットワークから生まれたと言っても過言ではありませんが、「若いうちから始めなきゃだめ」と背中を押して下さったことに、今では言葉で言い尽くせない感謝の思いを抱いています。会員はこの間に多少の動きがあり、現在は八名の構成ですが、全員が何らかの仕事を持つ為、母体である静岡白魚火合同の吟行句会等に参加できないのが悩みの種です。そこで月一回、休日の半日を使い、鈴木三都夫先生のご出席をお願いし、『客観写生』の力をつけるべく、海に山にと吟行会を重ねています。会員の中にはこの吟行会が楽しくて、句会をやめられないという方もおりますが、山菜、流れ若布、防風、木苺、通草といった副産物も吟行の楽しみのひとつです。
 毎月の句会は、兼題一句、当季雑詠七句を当日提出、互選七句とし、入選、準特選、特選の順で、鈴木先生に発表していただきますが、時には未提出の句によい評価をいただくこともあり、自選の力をつけることが、今の私達の課題です。
 これからも、身近に鈴木先生のご指導をいただけるという幸せを心に留めて、俳句に励んで行きたいと思います。


三月の句会から
種を蒔く老眼鏡の助け借り
手焙りの温みいただく雛の間
春一番賑はふ市に八つ当り
雛飾る手順いつしか我が家流
寒桜見頃の続く日なりけり
おだやかにさざ波寄する春渚
春一番如来の参道駆け抜ける
御殿雛御座簾にお顔を隠しけり
鈴木三都夫
山本まつ恵
大石春江
相沢よし子
藤浦美芳
大村秀美
松浦玖美子
小村絹子


無断転載を禁じます

平成17年6月号掲載 句会報
  佐賀ひひな会
大石ひろ女

平成17年6月号へ


 昭和六十二年三月、佐賀県厳木町役場(現在唐津市厳木支所)に、小浜史都女先生のお誘いにより「ひひな会」が発足しました。会員は同じ職場の女性十名ほどでした。当時の職場では「俳句」を理解してくれる人は少なく、特異な目で見られることも有りました。
 句会発足に至るまでの先生の熱意を現わす句に、「職場俳句小声で誘ひ木歩の忌」が有ります。執務終了後、役場の会議室を貸り句会を行っておりましたが、残業の有る者も多く、全員揃うのは時々でした。ある時より、史都女先生の提案で一泊吟行に行く為の積立を始めました。最初に行ったのは、山口から津和野にかけての吟行でした。暑い最中でしたので、皆んな汗だくになり「かき氷屋」に飛び込んで涼を求めたりしました。吟行中、夜はもとより車の中、昼食後と句会が行われるので、全員必死で俳句を作りました。その後も、島原、奈良から姫路、佐渡へと吟行を行いました。
 平成十五年、先生の退職を機に、「ひひな会」の句会の形態が変わりました。毎月第一土曜の午後、コミュニティーセンターで勉強会を行うようになりました。十句出しの十句選をした後、一つ一つの句に対して、季語の置き方、表現の方法、ことばの選び方等についてそれぞれの意見を出し合います。季語を上に持ってくるだけで、すっきりと句が良くなったりもします。どうしても句にならない句は、先生から「もう一度作り直して」と差し戻しになります。この勉強会が始まってから、会員の俳句に対する意識が高まって来ました。白魚火の五句欄に載る者も多くなり、今回は一番若い「谷山瑞江」さんが、ひひな会三人目の新鋭賞を受賞しました。全員大喜びで、三月十三日名残り雪の中、温泉の町武雄を吟行した後祝賀会を行いました。
 史都女先生が灯してくださった、ひひなの灯を皆で守り、尚励んで行こうと意を新たに致しております。

迎春花楼門横の出湯かな 谷山 瑞枝
春火鉢仲居のくぐる躙り口   〃
青空の見えてまた降る春の雪 田久保峰香
散る梅も五分咲きもまた見頃なる   〃
三月の雪に振りたる神の鈴 大石ひろ女
ふつと日の射して来たりし名残り雪   〃
桜草咲かせて茶屋に人気なし 鳥越 千波
木の間より洩れてくるなり春の雪   〃
梅くぐる頭上の小枝気にしつつ 小松みち女
大楠の幹がらんどう春霙   〃
一団は男ばかりや梅林 鍵山さつき
忘れ雪新鋭賞を祝ふ会   〃
梅林を足早に観てバスの発つ 高添すみれ
囀りに歩を伸ばしたる奥の宮   
樹齢まだ替つてをらず囀れり 小浜史都女
屈まりて鳥居をくぐる余寒かな   〃



平成17年7月号掲載 句会報
  花托の会
磐田  市川文子

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朧夜や天地を返す砂時計
春の雪陶の蛙の涙目に
かたことに片言かへす花薺
囀りや夫婦げんかの鳥もいて
すかんぽや柱時計を合わせねば
無窓子
幸子
みわ
千恵子
文子

 比の春、私共の住む磐田市は、近隣町村との合併で、人口約十七万人の新磐田市として誕生致しました。自然豊かな森林地帯から、遠州灘海岸にまで至る魅力ある、美しいまちです。白魚火磐田句会は、約十二年前、白魚火作品月評の筆者もなさいました、鶴同人の臼井無窓子先生に御指導をお願いして発足致しました。グループは四名と少人数ですが、月一回の句会は本当に楽しみです。グループ名も昨年より「花托の会」と致しました。互選に始り先生の選、そして一句一句細やかな御指導を頂き、一人一人の意見や感想も気軽に話し、いつも和気藹々としています。又会の終りのお茶の時間は本当に楽しく、話題も尽きず時間の経つのも忘れてしまう程です。毎月十二句を提出するのはなかなか大変ですが句会の楽しさが皆の力になっている様です。 日常の生活の中から自然に生れる句、時としてハッとする瞬間をとらえる事の大切さ、俳句はカメラのシャッターチャンスにも似ていると話された事もあります。
 俳句を通じ家族以上のつながりが出来ている様にも思われます。唯一度の人生、やさしい人々との出会い、生きている事の素晴らしさを見つめつつ俳句で結ばれた「花托の会」。これからもいつも若々しい気持で歩んで行きたいと思います。



平成17年8月号掲載 句会報
  白魚火広島初心者句会
         (土曜句会)
奥田 積

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 白魚火広島句会(水曜句会)では、会員の増加もあり、平成十六年の四月に渡邉春枝代表を中心に源伸枝・奥田積等で初心者句会を立ち上げた。
 月例句会を土曜日の午後に設定したこともあり、比較的若い人達の入会が続いた。新たに声を掛けて入会した人達は文字通りの初心の方である。したがって句会の席でも、「まずは三ヶ月続けてみることよ」とか「三年は続けてみないとね」などと励まされる場面もあったが、しだいに気心も知れてきて、明るい雰囲気の中での句会が続いている。
 例会は月一回。春と秋には広島句会の日帰り吟行会に合流する。また、地元の東広島俳句協会の行事にも積極的に参加して、昨年度はその当番年の句会の役割もこなした。
 平生の句会では、広島句会同様に披講後の名乗りは後回しにして、初心者も含めて参加者相互の合評形式で行っている。初心者も自分の意見を述べるなかで、俳句に対する気持ちを高め感覚を磨いているように思われる。一句ごとの評のまとめは渡邉代表から、暖かくやさしい言葉で行われている。
 五月の例会では、体験参加の高校生三名を交えた句会を行った。俳句甲子園(八月に松山市で開催)への出場を期する高校生の新鮮な発想や句材に刺激を受け、華やいだ句会となった。

麦秋や二つの眼鏡使ひ分け 渡邉春枝
水はじく果実立夏の皿に盛る 源 伸枝
時々は小走りに蹤く一年生 舛岡美恵子
心にもなき言葉出で心太 計田美保
こいのぼり風の吹くまま流れをり 仲島伸枝
げんげ田の破れしハウス風に鳴り 森川武彦
絹莢の青き匂ひや風ぬける 岡田京子
筍を茹でて訃報を聞く夕べ 池森二三子
かしましき竹打つ音や木の芽風 中村義一
本堂の梁の露出や花菖蒲 原田妙子
老鶯や一息入れて鍬を打つ 友貞クニ子
作業所の軒を借りたる夏燕 中村美奈子
緋袴に長き束髪青時雨 奥田 積



平成17年9月号掲載 句会
  磐田「槙の会
村上尚子

平成17年9月号へ

 「槙の会」は昨年秋に新しく付けられた名前です。名付け親は仁尾主宰と旧知の句友でもあり、白魚火月評もされた黒崎治夫先生です。現在「槙の会」を力強く引っ張って頂いております。
 そもそも会そのものの発足は大変古く、「海坂」の磐田句会に始まり、「木語」へと継承されてきました。昨年「木語」の突然の解散により、多くの会員は路頭に迷う憂き目を受けることになりました。そのような中で、喜和子、敬子、尚子は既に「白魚火」へ入れて頂いておりましたので、何の迷いもなく今日に至ることが出来ました。その後「白魚火」への加入者は四名増えましたが、今年中にはもう少し増える予定です。
 句会は月一回、三、四時間、九十一歳を筆頭に十五名程が五句持って集ります。黒崎先生の大変厳しくも、木目細やかな御指導に時間を忘れる程の熱い時を過ごします。このような楽しい「槙の会」ですが、強いて欠点を上げるとすればもう少し平均年齢を下げたいということです。日本語の美しさと、俳句の伝統を守る上でも、今私達が努力しなければならない課題だと思っております。 会ではこの句会とは別に勉強会を行っております。俳句の歴史に始まり、作句の原点から文法、句会と毎回会場の締切り時間にやっと間に合わせるような状態です。吟行も予定の内の一回を既にすませました。楽しさの中にも時間が迫ってきますと、何とも言えない緊張感と不安に追い立てられるものです。
 真険な中にも笑いがあり、大変充実した一日だったといつも思います。新しい会員も月例の句会以上に増えつゝあります。良き指導者に恵まれましたことを心から感謝しております。
 俳句を目指そうという方には会員の一同諸手をもって歓迎いたします。伝統の中に新風を吹き込み「槙の会」は前進してまいります。
 是非一度、お遊びにおいで下さい。


年年の梅酒の瓶を並べたり

夫還暦になり冷し西瓜食ぶ

向日葵や児は全身で返事せり

天竜の川面望みし夏薊

紙漉場ある古里や著莪の花

母訪ひて母の日忘れをりしかな

螢火の流れ着きたる子の肩に

ひとところ茂りて水神様祀る
織田美智子

斎藤 文子

新村喜和子

鈴木 喜六

鈴木 敬子

中村 信吾

福岡 菊雄

村上 尚子

 


平成17年10月号掲載 句会報
  ふれんどりー句会 (出雲市)
         
榎並妙子

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 ふれんどりー句会は、平成十二年六月号より現在まで、小林先生の御指導のもとに、月一回ふれんどりーハウスでの句会と、年二回の吟行句会を行っている。「俳句は生きている証」「日記代り」として作る。十七文字の中に作者の命が輝いている。と先生はよく話される。私も夫を亡くし淋しく心の不安定な時にお誘いを受け入会した。何も考えず俳句を勉強してみようと思った。梨花先生の一句一句丁寧で細やかな御指導は、仁尾主宰の云われる具象と短縮の効いた句を目指しておられる。現在十名のメンバーで研鑽しているが、吟行では、「足もて作る」をモットーに出かける。同じものを見ても色々な捉え方があり、それが吟行句会の楽しみでもある。毎回終了後は、各自、自信作を短冊に書き、ロビーや喫茶店に展示しピーアールしている。平成十五年には、ふれんどりーハウス二十周年記念に合わせ合同句集「まどか」を編み、フェスティバルに色紙短冊と共に披露した。その後も年に一回「まどか」を編み益々意気をあげているふれんどりー句会である。

ふれんどりー句会 八月の一句

盆近し背山に竹のふるる音 小林梨花
目の前を唖蝉よぎる羽音かな 山崎朝子
夏休みペタル踏む児の腰上げて 岡 彩雲
雷の音静まりて夜半の雨 榎並妙子
眠る児の白き夏服天使のやう 小村 舞
新生姜刻む手元の匂ひかな 岩成真佐子
名水をリュックに背負ひ凉新た 嘉本静苑
むらさきの花一輪に秋の蝉 今津 保
命日に小さき西瓜供へけり 金築暮尼子
秋立ちて時にはしめる波ごろし 久家希世


平成17年11月号掲載 句会報
  栃木県白魚火「笛の会」
加茂都紀女

平成17年11月号へ

 この会は、宇都宮文芸協会長の鶴見一石子先生と、副会長青木華都子先生を中心に運営され、発足して十年になります。
 句会は毎月十一日を定例とし、三句持寄りにて、鶴見先生の他に俳人協会員の武田憔人先生・俳句作家協会員の阿部尚志先生の三名が必ず指導者としてご出席下さり、他の結社の方も交えて幅広い句会を開催しております。
 毎回互選後、各先生から数多い選評と即添削をいただき、その場での質問も会場の時間の許す限り応答して下さっています。
 句会報を毎月発行していますが、年会費は特に定めず、毎回どなたでも自由に参加出来る開かれた句会です。
 鶴見先生が毎月の各自の成績をトータルし、年間賞として毎年上位入賞者には年間の各作者の俳句と俳号を刻んだ立派な盾が贈られています。
 宇都宮文芸協会の俳句部門には毎年全員が参加し、上位入賞を独占してきました。
 また、宇都宮市民芸術祭に於いても、平成十七年度準市民芸術祭賞に野澤房子、奨励賞細井寿子・佳作野上ル・大竹一耕・江連江女等、今年も素晴らしい成績を修めました。
 そして、鶴見先生ご指導のもと平成十七年四月栃木県白魚火第六番目の支部として、新支部(八名)が結成されました。
 支部長は野澤房子。毎月十一日の句会を楽しみに新メンバーをお誘いしながら和気あいあいの「笛の会」です。

      八月号の句会報より・・・
八甲田山霧しまく遭難碑
石けりの道はそのまま月見草
灼熱の乱世見据へる青不動
夜も祈る人の列なる原爆忌
朝顔の紺ひといろの四つ目垣
只管に疊拭きゐる終戦日
たこ焼きもいか焼きもあり夜店の灯  
武者ねぶた逆立つ髪で迫りくる
原爆忌出刃で捌けり大まぐろ
おほるりのあかとき鳴けり三斗小屋
槍穂高お花畑に寝転んで 
政 子
嗣 郎
江 女
トシ枝
多美子
静 女
  ル
房 子
寿 子
正 子
都紀女

      選者作品
行く夏の風にあらがふ鳶一羽
神輿揉みやまぬ祭を惜しみては
露一顆森羅万象魂やどる
尚 志
憔 人
一石子

 

平成18年11月号掲載 句会報
  風 交 会 (群馬県)
         
天野和幸

平成17年12月号へ

  「風交会」群馬県吾妻郡中之条町折田において大正年間に地域の俳句好きの人々が集まり折田風交会として発会。その後折田以外の方々の入会があり、風交会として八十有余年の歴史を持つ、伝統のある句会として現在に至っております。
 「戸外に出て大いに風と交わろう」を会のモットーとして山を仰ぎ、空の高さ、花の美しさ、風の色、人々とふれあい、地域の文化を守り育て、地域に根ざした句会として味わいの深い作句が特徴です。
 一都先生の句碑を中心に置かれている、「離山句碑公園」設立にあっては地域の俳人、句会と協力して活動をいたしました。維持管理には、中心になって清掃、草取りを行っています。平成十五年には句碑祭りを主催して記念句会を開催いたしました。多くの俳人、句会に感謝を頂きました。
 また、折田神社、成田不動尊奉燈句主催地域句会と交代で中之条駅において短冊の掲示をして憩いの一時を提供して、地域に根ざした幅広い活動をしています。
 伝統を大切に受け継ぎ、地域文化を育みしっかりと歩んでいる風交会に入会させて頂いたことに深く感謝をしています。針の穴から銀河の星々まで幅広く奥行きのある風交会の俳句にふれて更に勉強を深めて、モットー「戸外に出て大いに風と交わろう」の精神を大切にして活動して行きます。

名月の雲抜けきりし丸さかな 田村萠尖
里山の空を十字に去ぬ燕 関口都亦絵
車止めのぞく街道乱れ萩 山口吉城子
玄関に廊下にせましと菊の宿 田村鏡月
鰯雲空に投網の開くごと 金井秀穂
敬老日我老人になり切れず 宮崎鳳仙花
病葉に口開ける鯉池の秋 篠原酔生
茄栗をむく指先に力こめ 柳田柳水
じんじんと炭火に焼ける初秋刀魚 本多笑月
毘沙門の小祭り近き紫苑かな 田村耕生
動かねどそつと消え行く秋の雲 町田一花
秋半ば大根畑の色深む 坂本清實
木漏れ日の牧水像や薄黄葉 星野きよ
海見ゆる限り海見へ秋の旅 竹渕きん
良きにつけ悪しきことにも秋の空 黒崎すみれ
ゆつくりと雲流れゆく秋彼岸 宮崎萌子
天高く敬ふ人逝き急ぐ 仙田美名代
暮坂や通草提げ来る詩人たち 鈴木 匠
名月や笛の音聞こゆ宵祭 竹渕秋生
天高し目指す山頂真向ひに 篠原庄治
刈田面明日が見える広さかな 町田 宏
ちちろ鳴く「おやじ」と呼びし記憶なし 青木正廣
針の穴糸の通らぬ夜長かな 天野和幸



平成18年1月号掲載 句会報
 栃木白魚火
  「鹿沼いまたか句会
齋藤 都

平成18年1月号へ

 鹿沼いまたか句会は、昭和五十六年五月当時勤務していた栃木県立今市高等学校に職場句会として現教職員、旧教職員、校医、父兄、卒業生等多彩なメンバーで今は亡き橋田一青先生を指導者として迎え結成された。
 会名の由来は、今市市には県立工業高校もあるので総合高校でもある今市高校を分りやすく今高(いまたか)と県内では呼ばれているので「いまたか句会」とした。しかし現在は転勤や退職で今市高校勤務者はいない。会場も今市から鹿沼に変更し鹿沼白魚火会とも合流し会員も元同僚、友人、知人、卒業生も新たに加わり橋田一青先生の指導を受けていた。橋田先生亡きあと会員の一人で毎日新聞「しもつけ文園」俳句選者も引き継がれていた星田一草先生を中心に「俳句は誰でも作れる楽しいもので、今まで見過してきた周囲の自然や日常の生活の中から詩を見出すこと、常に集中力をつけ物を見ること、歳時記をよく読むことが大切である」という橋田一青先生の教えをふまえ、句会は発足以来一度も休むことなく、欠席投句もみとめ、毎月第二土曜日鹿沼市内で兼題も含め五句出句、互選とし、なごやかな雰囲気で選評し合い、星田一草先生にまとめていただき、句会報も続けて発行している。会員の移動、会場の変更があっても続けられているのは、結成当時の人がかなりいるのと、最初の橋田一青先生の鹿沼から今市まで来ていただき熱心に懇切、丁寧な御指導と、先生亡きあと代表者として引き受けていただいた星田一草先生に支えられての「鹿沼いまたか句会」である。

十月の句会報より
身に入むや樺山白く翳りくる
縄文の体験学習木の実打つ
カラカラと木の実の廻る洗濯機
夕暮れて藁焼く匂ひしむ身かな
秋うらら指話もて礼をいはれけり
鳥渡る一塊になり帯になり
縁側に遊び飽きられ木の実独楽
身に入むやつひに抜けたる糸切り歯
夕の膳木の実だんごのほろにがき
雨粒の色を分けたる棗の実
旅装解ききのふと違ふ秋一日
開きたる手のまん中の木の実かな
子どもらの弾ける声や木の実降る
やや傾ぐ笑ひ羅漢や木の実落つ
身に入むや防空壕はこの辺り
星田一草
山口菊女
海老原季誉
桑名 邦
田原桂子
大野靜枝
宇賀神尚雄
高島文江
山田三恵子
斎藤満子
本倉裕子
星 揚子
柴山要作
鷹羽克子
齋藤 都



平成18年2月号掲載 句会報
  円 坐 C (浜松)
清水和子

平成18年2月号へ

 円坐Cの句会は、平成十三年一月、社会保険センター浜松の第三番目の俳句講座として誕生しました。月二回木曜日の午後二時間の句会です。内一回は仁尾主宰が出講されます。
 現在メンバーは五十歳台から七十歳台までの十五名です。平均年齢は六十五歳。旧浜松市、旧磐田市から集まっています。
 毎回、事前に兼題一句を含め五句を投句し、パソコンで句稿を作成して当日配布します。互選七句(内一句特選)、披講は毎回交代で全員が行います。次に清水選。つづいて仁尾先生の選をいただきます。先生選は予選、本選多数、特選十句の順に発表され、講評をいただきます。講評は特に予選句、選外句について時間を掛けてご指導いただきます。基本的なことから丁寧に教えていただくので上達が早いように思われます。
 先生が出講されない日は、披講の後に互選の特選一句についてそれぞれが感想を話し、その後、事前にいただいた先生選を発表します。時には俳句に関係のない話に逸れることもありますが、それはお互いを知るよいチャンスと捉えています。
 三つある円坐の交流も盛んで、毎年合同の吟行、席題句会、忘年句会などを行っています。昨年は初時雨の琵琶湖の浮御堂、義仲寺へバスで出かけました。また年に一度合同句文集「円坐」を発行しています。仲間にとってはエッセーを書くことが悩みの種なのですが、回を重ねるうちに上達して読者には好評のようです。毎年のセンター祭には全員が短冊に自筆の句を書き発表しています。
 これからも和気藹々のこの雰囲気を壊さず全員で俳句の更なる向上を目指していきたいと思います。

     「円坐C」作品
建仁寺垣の結び目いてふ散る
茶の花の甘きかをりに一休み
風の出て明日に残せし松手入
ピラカンサ青空に映ゆ初冬の日
冬の芽や遥かに見ゆる白き峰
日当りの二階六畳柿簾
柔道着提げ少年の息白し
茶の花や道ゆるやかに峠まで
大盛や男料理の茸飯  
悠々に見ゆるも忙し鴨の足
葉組して袴もきりり水仙花
冬木中だらだら坂の文学館
首すぢにねんねこの子の息遣ひ
ふん張つて風受けにけり大根架
藪柑子鉢割るほどの根張りかな
茶の花を一輪挿して迎へらる
正 文
アサ子
欽四郎
正 子
光 芳
江 治
文 月
三保子

昌 治
恭 子
宏 子
千 恵
雅 子
柳 女
和 子


平成18年3月号掲載  句会報
  葵 句 会(静岡)
榎田まき子

平成18年3月号へ

私達は、静岡白魚火の中の小人数の句会ですが、月一回の定例句会に、鈴木三都夫先生の熱心なご指導をいただき十年余りになります。
 俳句には殆ど縁の無かった私達ですが、桧林会長や大勢の句友に支えられ、また、三都夫先生の常に、
「歩いて探訪、じっくり見て作る」の教えを目標に,四季折々の自然の見所や、様様の行事、(行事部のお世話で設けられます。)例えば、(梅を見る会や涅槃会など)を捉えての吟行には、いつも先生が先頭に立って助言をして下さいます。
 聞き逃さないように、見落とさないように、と。
 先生と同じ景色を眺めながらの探訪は、私達の貴重な勉強の場でもありますので、できるだけ参加をしております。
 あれこれと、心に残る数数の吟行や行事で終わる一年です。
 この度、句会報を、とお話のありました。これと言って特色のない句会ですので、最近の心に残った行事参加の様子をお知らせしたいと思います。
 今年も、暮に枯菊を焚く会が設けられました。三都夫先生の句碑の建つ山麓に、地元の句友による手順よいお膳立、持ち寄りの枯菊(一年丹精籠めて咲かせた菊)が炎を上げて燃え盛り、地面を這うように匂う枯菊の熱気辺りの光景は暮の最高の行事ではないかとさえ思われます。
 そして、静岡白魚火の句友が、心豊かに、また優雅な行事で一年をしめくくったことではないかと思います。
 句碑の山へ登りゆく煙を仰ぎ、また、炎の色に喚声をあげる居並ぶ句友の寒気の中の笑顔の輪です。
 三都夫先生も炎を気遣い自ら水運びをして下さる姿に頭が下がります。
 山と積まれていた様様な枯菊が無事焚き終り、三三五五句碑を訪れる句友の新しい年へ向かっての挑戦の第一歩です。

  一月例会より
日当りて燃え移りきし冬紅葉
早梅に午后の日差しの遍しや
花の色少し残れる菊を焚く
夫逝きて今年は子等と年用意
脊椎を走る一喝初座禅
三都夫
まき子
ヨシコ
こ よ
美 保

平成18年4月号掲載 句会報
    さつき句会 (静岡白魚火会)  
大川原よし子

平成18年4月号へ

  さつき句会は、平成八年五月既に静岡白魚火の句会で活躍されていた名波綾子さんの音頭取りで九名が集まり、鈴木三都夫先生のご指導のもと発会した。五月に発会したことから、さつき句会とした。発会時、私もそうであったように初心者が多かったため俳句作りに戸惑うこともあった。が、鈴木三都夫先生の温厚なお人柄と懇切丁寧なご指導により今年は十年目を迎えることができた。
 さつき句会がこのように長く続いた理由のもう一つは、句会のメンバーがみな温かく協力的であり、俳句作りに熱心な人が多く、さりげなく句会を引っ張ってくれる人がいるからである。吟行や句会でも俳句独特の表現について、惜しみなく教えてもらえどんなにか勉強になっている。
 十年の俳句作りを通して、自分づくり、人づくりを勉強していると感じた。
 昨年この句会の坂下昇子さんが白魚火賞に輝き、喜びに耐えないし句会としての誉れでもある。又月例句会ではみんな個性のある感銘する句が出される。
 この頃新しく三人のメンバーが加わった。新しい風がこの句会に吹いて頼もしい。
 まだまだ悩んだり迷ったりする俳句作りではあるが、鈴木三都夫先生のご指導に甘え、句会の人達と吟行や句会を楽しみながら俳句作りに精進したい。
 

     一月二日の定例句会より
眠らんと山々化粧落しけり
稜線の躍り出でたる今朝の雪
巻き上げられ風となりたる枯葉かな
凍蝶のいのちに触るる指の先
お降りに静かな朝をいただきぬ
鴨鴎同床異夢の浮寝かな
小気味よき竹刀の響き寒稽古
音たてて水面掃きゆく空の風
年玉の袋選びもまた楽し
雲間より一筋出づる初日の出
鈴木三都夫
   〃
加茂川かつ
   〃
河森利子
   〃
野村悦子
   〃
郷野和子
   〃


平成18年5月号掲載 句会報
    遊歩句会 (静岡白魚火会)  
横田じゅんこ

平成18年5月号へ

   遊歩句会は、平成十七年九月に藤枝に発足した静岡白魚火十一番目の句会です。会員は四人です。藤枝も白魚火以外の結社の句会がたくさんあります。かねてより私も藤枝に白魚火を拠とする句会を欲しいと思っておりました。そんな折、おりおりの自然や人事百般の言葉を知りたいという同朋が集まり、俳句の勉強をしようと発足いたしました。そこに至る迄には鈴木三都夫先生、桧林ひろ子先生のお力添えや温かな助言がございました。私は白魚火に入会以来十年間多くの会員の皆様や、さざ波句会の皆様に育てて頂きましたが、新人三人は本格的に俳句を学ぶのは初めてです。三都夫先生はお忙しい中遠方の私宅迄何度もご足労下さり、楽しく学べるように御配慮下さいました。俳句についてのお話、白魚火の歴史、西本一都先生のこと、そして一都先生の俳句
  わが俳句足もて作る犬ふぐり
  瞽女かなし水仙ほども顔あげず
の俳句を紹介しながら季語の話、五七五の十七音のリズム、歳時記のことなどを御指導頂き実作に進みました。句会の進め方、披講の仕方など月毎に句会らしくなって来たような気がします。実作は一句の中に季語が無かったり、二つも三つもあったりして一朝一夕には上達いたしませんが、分り易い説明やことばの斡旋による少しの手直しで見違えるほど佳い句になった時は皆感動です。
 俳句に対しては三人三様の思いがあり、慶さんは娘さんが結婚してカナダ在住ですのでお孫様や現地の人に日本の文化や日本語の美しさを伝えたいと訪問の折は歳時記と句帳を持参するひたむきさです。みつ江さんはウエディングドレスを縫うほどの洋裁の腕前で俳画や絵手紙にも造詣が深く、自分の俳句を俳画や絵手紙にする夢を持っています。泰恵さんは母上の介護をしつつたくさんの趣味を持ち各方面で活躍中です。母上を介護の姿は泰恵さんのお人柄そのもので優しい介護の俳句を作られます。入会後日も浅いのですが、静岡白魚火合同句集の上梓にそれぞれ十句ずつ載せて頂き、佳き自分史になったことを皆で喜びました。三都夫先生に御指導を頂き、これからは吟行も参加させてもらいながら和やかに願わくばもう少し人数を増やして楽しい遊歩句会にしたいと思います。
  

     三月の句会から
三椏の三つづつ咲きどっと咲き
たたみ来る波のびやかに磯菜摘む
冴え返る山の芽ぶきの遅遅として
逸速く無人売場の蕗の薹 
鈴木三都夫
小長谷慶
加藤みつ江
市川泰恵


平成18年6月号掲載 句会報
    群馬白魚火 文月会  
奥木温子

平成18年6月号へ 

 文月会は、昭和五十八年七月中之条町より鈴木吾亦紅先生を招聘して、四万温泉に立ち上げた句会です。
 毎月始めの四日を例会とし、吾亦紅先生、一進さんの亡き後、他の会からの句友も増え指導者のなきままに和気藹々とした句会です。句会場は、会長隆女さんの旅館の花の間、温泉暖房の入っている部屋から見る庭先の赤い欄干に。湯煙の中に降る雪。春には清流に鳴く春河鹿の声に耳を傾け、夏には清流の上を覆って咲く百日紅を愛で、秋には紅葉を、と恵まれた環境が与えられています。
 新年会は雪女郎が窓を叩き、竹の葉に雪が積り池の面に落ちる風情の中ゆっくり飲んだり食べたりしながら句談義に花が咲きます。
 例会では指導者たるべき人が居るのに指導と云う言葉に神経質になり遠慮なさっています。しかし、この言葉は良かった。この云い方のほうが良い。同じ言葉でも、この字の方が良い。と云うような事は云い合います。この句は私の句ですが自分では良いと思ったのですが……独り善がりだね、説明がないと理解出来ないよ。等々。
 句会後はお茶を美味しく入れるのは自信がある、と隆女さんが入れてくれたお茶に持ち寄ったお菓子や漬物で一服の楽しい一時を過します。新会員のないのが悩みですが、自由時間の持てない温泉町では仕方のない事かも知れないと思っています。

飾らねば泣くとふ雛や忌を暮らし
開け放つ良寛堂の春の塵
啓蟄の座敷を歩く夜の蜘蛛
春神楽面より洩るる息づかひ
大寒の風に楽の音湯立の儀
冴返る無人駅舎に小座布団
春日和首欠け地蔵修復す
ごみ袋横目で狙ふ寒鴉
元禄の湯てふ灯明り春河鹿
隆女
都亦絵
秀穂
百合子
吾都美
庄治
清實
鳳仙花
温子

平成18年7月号掲載 句会報
    佐賀白魚火合同吟行会  
佐賀 谷山瑞枝

平成18年7月号へ

  四月二十四日(日)、参加者二十七名で久びさに合同吟行会を行いました。行先は唐津市高島。
 午前十時すでにエンジン音のする高島行き定期船に乗り込み、唐津城の脇を抜けて片道十分の船旅です。
 高島は、玄界灘に浮かぶ小さな島ですが、島には、「宝島神社」があり、数年前より宝くじ当選の御利益のある神社としてマスコミで取り上げられ有名になりました。
 前日の日曜日には、お遍路さんが巡回されたということで、あちらこちらに野仏が祀られていました。島は一時間程で一周できるそうですが、昨年の玄界地震の影響で通行止めになっていました。
 氏神様の塩屋神社や、小さな小学校、保育園、同姓の墓、畑などを散策し、午後一時より島の公民館にて句会が行われました。島から見た海や唐津城を読んだ句、島特有の句などをたくさんの句に出会いました。
 黄沙はありましたが、天気に恵まれひょっとしたら宝くじ当選の御利益にあやかれるのでは……と、ひそかな願いを込め、楽しい一日の帰路に着きました。
 公民館の事務室に俳句文学館のカレンダーがかかっていたのも見逃しませんでした。

海といふ群青の画布春深し
唐津城海を隔てしおぼろかな
鶯も潮騒も聞く至福かな
海よりの風の力に五月鯉
狛犬に噛ます小銭や楠若葉
行く春や囲いの多き島の畑
しんがりも乗り込む渡船夏帽子
惜春や浮き桟橋の揺れに佇つ
鳥除けは漁網でありし島遅日
春うらら海上タクシーの大漁旗
漁網を繕ふ老の春日差し
夏近し服を一枚脱ぎもして
潮騒の磯に途切れて遍路道
卯浪蹴り満船島へ直行す
蛸壺に育つてをりしゼラニューム
藤棚の網目真下の影を踏み
鶯や島の小さき路地曲る
畑隅に固まつてゐる葱の花
山笑ふ六往復の定期船
島の道どこへも通ず芥子の花
家と畑つなぐ自転車豆の花
黄華鬘草行く先々に磯仏
浜大根島に一つの保育園
藤に来る虻丸き尻震はせし
どの路地を行くも潮の香浜大根
島の路地また路地曲り郁子の花
ゆつくりと島の時間や豆の花
清水静石
小柳芳郎
杉原 潔
西岡久子
古藤弘枝
才田さよ子
脇山昌子
水鳥川栄子
谷口泰子
橋川千代子
脇山保子
山崎けい子
才田素粒子
水鳥川弘宇
諸岡ひとし
太田尾千代女
吉原絵美子
田久保扶久絵
篠原凉子
田久保峰香
高添すみれ
鍵山さつき
小松みち女
鳥越千波
大石ひろ女
谷山瑞枝
小浜史都女


平成18年8月号掲載 句会報
    三栗句会 (静岡) 
藤浦三枝子

平成18年8月号へ 

  私達の三栗句会は二十余年の長い歴史を持つ静岡白魚火会の一番最初に出来た句会です。山間の三栗の里は、今緑濃き中にあり水も空気もとてもきれいな所です。そんな中にある三栗公民館で松田千世子さんを初めとする十六名の句員が、月の初めに月一回の句会を開いております。ほとんど夜の句会で午后七時頃から十時頃迄やっております。鈴木三都夫先生御指導のもと、持ち寄り七句とし互選も七句、選句した俳句は自分自身で披講します。それから先生が特選、準特選、入選を選句され講評されます。三栗句会は第一番目に出来た句会ですので年齢の多い方もおりますが皆さんいつも素晴らしい句を作られ毎回感心させられます。私は三栗句会に入れて戴いた新しいメンバーの一人ですので大変勉強になり本当に良かったと思っております。静岡白魚火会は年何回かバス吟行を行ったり、又土地の行事などは自分達で誘いあったりして吟行回数の増加を図っております。四月十六日の市主催の躑躅祭りは、生憎の雨で取りやめとなりましたが、それでも午前中吟行、午后句会を行いました。今年は二十九名の参加があり不在投句も十名と盛会のうちに終りました。山の頂上にある天然記念物のみやま躑躅の群生は見事できれいです。その躑躅に囲まれて鈴木三都夫先生の句碑「つつじ山分け入る径も自づから」が建立されて、すでに十年の歳月がたっております。又六月二十五日には、静波海岸の海開き神事が市のお歴々が居並ぶ中厳かに取り行われます。三栗句会の皆もてんでに集り作句に挑戦します。最近の三栗句会は少し元気がありません。病弱になられた方、奥様や御主人様を亡くされた方それでも皆さん俳句は頑張っておられ素晴らしい句をたくさん作っておられます。本当に頭の下がる思いです。私も気合を入れ直してやらねばと思う今日この頃です。

  六月の例会句より。
母の日の曝して長き母の文
予定日の雨となりたる更衣
今年又いつもの場所に破れ傘
湖の色吸ひ上げて四葩かな
ぷちぷちと青梅育つ寺領かな
夏帽に替へてあげたや羅漢様
白蓮の白さに雨の催ひけり
竹藪を揉みしだきたる青嵐
降る花を浴びて夫婦の昼餉かな
しはしはと水の畳まる代田かな
茄子の花咲いて支柱を大きくす
笛ぶくろ震はせて鳴く枝蛙
白で咲き白で終りし七変化
久久に里に揚りし鯉幟
水争ひもなくて代田となりにけり
蟻の列気長に見てる昼下り
鈴木三都夫
鈴木瑣都子
鈴木喜枝
松田千世子
横田みよの
飯塚美代
中野キヨ子
塚本三保子
桜井邦次
大石ます江
曽根すずゑ
橋本志げの
飯塚富士子
加藤芳江
藤浦三枝子
落合勝子


平成18年9月号掲載 句会報
    飯田白魚火句会
菅沼公造

平成18年9月号へ

飯田白魚火句会は昭和四十三年一月十五日一都先生も出席して発会したと創立者後藤冬至男さんの記録に残っている。一都先生はそれより先の昭和三十六年に宇都宮貯金局長から長野貯金局長に赴任して以来、十数回にわたって飯田地方へお出でになり私たちの先輩を指導されているので、「足もて作る」白魚火の伝統はいささか私たちにも浸透しているのではないか思うのである。
 数年前までは「方言にらんごくといふ冬の菊」の一都句碑がある長清寺を会場として毎月句会を開いていたが、会員の老齢化等もあって現在は会場を鼎公民館に移し、毎月第二水曜日に句会を開いている。また、恵那山トンネルを越えた岐阜県の中津川白魚火会とは今までも親密に交流してきたが、今年も四月十八日に交流句会のお誘いがあり、飯田から大勢参加して橋場きよ先生のご指導を受けることができた。できれば今後も交流句会を交互に開催していきたいと願っている。
六月の句会報から
終列車田蛙の声はたと止む
えび天も衣更えして値上げせり
五月雨に想ふは楠公別れ歌
風そよぐ植田の中を帰りけり
アカシヤの花暮れ残る峡の村
さみだれやケラの嘴音しきりなる
カラフルな早苗魚篭なり若夫婦
五月晴木陰を探す河川敷
オカリナの音湿りがち五月雨るる
好きな道気の向くままに犬ふぐり
五月雨や敢えて一艘舟下る
久保田四四三
木下ひろし
後藤泉彦
大澤のり子
本田咲子
佐川春子
大原ちか子
大野洋子
北原みどり
伊東美代子
菅沼公造


平成18年10月号掲載 句会報
    りんどう句会 (島根) 
寺澤朝子

平成18年10月号へ 

 誰れ彼となく誘い合って、自然のうちに誕生したような句会ですが、早いものでかれこれ十六年ほどになりましょうか。島根県のいわゆる奥出雲地方の小さな町です。そう云いながら、平成の合併で五ヶ町村が合併し、雲南市となりました。いい名前ですねと云って下さる方もありますが、地域としては中山間地域と呼ばれる処です。然し、時流と云いますか、環境の変化発展もあり、農産物の販路も拡張され、それに応じて会員の数人の方はとても忙しくなりました。句会は冬季は昼間、春から秋は夜の七時半から十時まで。会場の時間の許すぎりぎりまで、鑑賞、批評、話し合いが続きます。時にはお茶を注ぐことさえ忘れて熱中してしまいます。
 五、六年前まではよく吟行にも行ったのですが、全員が主婦であり、家庭の事情、夫々の仕事等で日程が合わず、中々実現出来ないのをみなさん残念がっています。そんな中でもこの地域での大きな俳句会には、可能な限りみんなで参加することを心掛けています。
 この春、原石鼎出雲俳句大会の事前句で、須藤靖子さんが石鼎賞を受賞されました。
蝶凍てゝ縄文土器のかけらめく須藤靖子
 講師の有馬朗人先生、富田郁子先生、他の先生方からもお褒めの言葉がありました。会員一同の喜びも大きく、急遽ささやかながら祝賀の句会をいたしました。この会の特徴は、「みんな仲良し、そして良きライバル」。時間をやりくり、仕事もやりくり、みな切ない思いで俳句に向っています。地味でもいいから、こつこつ学びながら、「みづうみ賞」へもどんどん挑戦してほしいと願っている現在です。

  七、八月の例会より。
朝曇日課の薬湯飲み干して
見送りの云葉に力朝曇
秋めくと挨拶交はす垣根越し
秋めくと淋しくなりぬ川ほとり
出航の銅羅の音色も秋めけり
菜園へ農婦の急ぐ朝曇
墓径の草花すでに秋めけり
秋めくやショーウィンドーの服替はり
梅木英子
木次玲子
中林延子
難波英子
三上美知子
陶山京子
山根ヒロ子
森山啓子


平成18年11月号掲載 句会報
    大東笹百合句会(島根)
原 みさ

平成18年11月号へ

 笹百合句会は女性ばかりの句会として平成八年六月に発足しました。
 奥出雲の玄関口である大東は“八雲立つ出雲八重垣妻籠に……”と須佐之男命が櫛稲田姫を伴い、須賀の地に至って姫と宮造りをされたという神話にもとづき、和歌発祥の地として有名です。毎年十月和歌発祥の里・大東−全国俳句大会が催され、中央の有名な先生方をお招きして盛大に句会が執り行われます。そんな素晴らしい環境にありながら、ともすれば怠けがちとなる句友に呼びかけ女性だけの句会を作ったらどうだろうかと、姉の原育子と同志を募ったのが句会の始まりです。第一回の当日は句友のひとりが、近くの山から淡紅色の笹百合を一束持って来てくれたのが「笹百合句会」の命名の由来です。特定の指導者はいませんが、毎月一回原育子宅を会場に十三名の仲間が夜八時から十一時頃迄いそいそと集って来ます。兼題二句と雑詠五句合せて七句を当日持ち寄り互選をします。初心者もあり毎回が勉強会ですが、お互いに批評したり推敲しあったり切磋琢磨しての有意義な句会です。句会のモットーは勿論一都先生の「わが俳句足もて作る犬ふぐり」です。
 時々吟行会も行いますが、今年は十周年ということもあり六月に句友の職場である大東窯に行き、みんなが陶土を捏ねてそれぞれ思い思いの「風鈴」を作りました。肉厚もあれば薄くて毀れそうなのもあり、コップ程の大きさの笠もあり和気藹々のうちに作品が生まれました。次の句会は兼題を「風鈴」と銘打って作品を出し合いました。句会の悩みはどことも同じ若い会員が少ないことです。これからの私達の課題は一人でも多くの若い句友を募ることにあると思います。
八月の例会作品より
吾の一句きりきり回し陶風鈴
窯出しの風鈴の音のでつかさよ
葉がなくて美人でとほす夏水仙
初なりの茄子花屑付けしまま
夕顔のゆつくり開く刻に風
風鈴の音透きとほる夕まぐれ
風鈴の音聞こえぬと母言へり
湯上がりの窓開け放つ夏の星
風鈴に風道少し庭木切る
風の道探して吊す軒風鈴
佐藤愛子
原 育子
中西勝子
落合志津江
岩間澄子
佐藤俊子
山根弘子
細田益子
藤原益世
大西やすこ


平成18年12月号掲載 句会報
函館白魚火会
森 淳子

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 函館白魚火会は昭和三十九年九月に発足した。函館営林局に「山色会」という俳句会があり昭和二十七年西本一都先生が旭川貯金局から函館貯金局へ転勤したのを機会に御指導を仰いだのが始まりと聞いている。その後上牧芳堂氏の呼び掛けにより現在の函館白魚火会が誕生した。当時を知るのは今井星女ただ一人である。

例会 毎月第一土曜日 十句投句
会長 今井星女 幹事 倉田青樹 森 淳子
会員 十一名

 九月三日現在旭川在住の今泉早知さんが来函したのを機会に当別トラピストへの吟行を行った。渡島当別駅を下車し徒歩二十分、急な坂道をのぼると広々とした牧野とそこに一条の真線のポプラとスギの並木道がある。そのかなた丘の上に赤レンガの建物がみえる「あゝトラピスト」この景色です。
 本館の坂下に「三木露風」の詩碑と「阿波野青畝」の句碑があり、ぐるりと裏へ廻ると信者墓地、さらに左の坂道を登るとルルドのマリア像がある。
聖堂の祈りの鐘の聞こえることもある。
 当日の句より
一番刈終へたる丘やトラピスト    
トラピスト袋掛けせぬ林檎園      
秋風の通り抜けたる並木かな     
爽やかや聖鐘を聴くトラピスト    
月見草修道院の牧草地            
濡れてをり修道院の実むらさき    
秋天の青きわまりしトラピスト    
信者墓地付かず離れず秋の蝶      
この先はルルドへの道草の花      
結界の青蔦からむ塀高し          
登山靴履いてルルドを目指しけり  
カンナ燃ゆ一両電車待ちをりし    
秋高し修道院の聳え立つ          
爽やかに握手交せし別れかな      
朝の草ちさき蜘蛛の子乗せてゐる  
千羽鶴折目正して原爆忌          
栗鼠が来てぽたぽた落す青胡桃    
今井星女
今井星女
内山実知世
内山実知世
石井玲子
石井玲子
吉田智子
吉田智子
赤城節子
赤城節子
今泉早知
今泉早知
森 淳子
森 淳子
広瀬むつき
佐藤美津雄
倉田青樹
 汽車に乗るやお菓子が配られ遠足の少女のような賑わいである。昼食ともなればそれぞれのリュックの中から、おむすびはもとより玉蜀黍、甘藷と出るは出るは、軽くなったリュックを背に健脚を発揮する。充実した時間もあっという間に過ぎ、函館駅より旭川へ発つ早知さんを見送り帰途についた。 


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