最終更新日(Updated)'05.08.28 | ||||||||||||
|
||||||||||||
|
||||||||||||
(アンダーライン文字列をクリックするとその項目にジャンプします。) | ||||||||||||
・しらをびのうた | (とびら) | |||||||||||
・季節の一句 桐谷綾子 | 3 | |||||||||||
聖岳(主宰近詠) 仁尾正文 | 5 | |||||||||||
鳥雲集 (一部掲載)安食彰彦ほか |
6 | |||||||||||
白光集 (仁尾正文選)(巻頭句のみ) 檜垣扁理、池田都貴 ほか |
14 | |||||||||||
・白魚火作品月評 水野征男 | 41 | |||||||||||
・現代俳句を読む 渥美絹代 | 44 | |||||||||||
百花寸評 田村萠尖 | 47 | |||||||||||
・俳誌拝見(百鳥) 吉岡房代 | 50 | |||||||||||
句会報 花托の会 | 51 | |||||||||||
・こみち(家庭菜園の楽しみ)河島美御苑 | 52 | |||||||||||
・第七回浜松白魚火総会報告 | 53 | |||||||||||
・静岡県白魚火会総会記 | 54 | |||||||||||
鳥帰る」吟行 田原桂子 | 56 | |||||||||||
・「俳壇」六月号転載 | 57 | |||||||||||
・「出雲」五月号転載 | 58 | |||||||||||
・今月読んだ本 中山雅史 | 59 | |||||||||||
・今月読んだ本 佐藤升子 | 60 | |||||||||||
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ) 木村稲花,影山香織 ほか |
61 | |||||||||||
白魚火秀句 仁尾正文 | 111 | |||||||||||
・ お知らせ 全国大会アクセス | 114 | |||||||||||
・窓・編集手帳・余滴 |
|
|||
鳥雲集 〔白魚火 幹部作品〕
|
|||
|
|||
|
|
|
白光集 〔同人作品〕 巻頭句 仁尾正文選 |
|
|
|
檜垣扁理 啄木忌のオーストラリアの海を見つ 独酌や八十八夜のホームバー せめて置け勿忘草の鉢ひとつ バルコニーに出で春星に酔うてをり しばらくの無事に身を置く立夏かな 池田都貴 尾瀬の空尾瀬の木道つばくらめ 隧道の出口入り口花みづき 砂時計返し返して春惜しむ ていねいに眼鏡拭きゐる白牡丹 踊り子草咲く女坂男坂 |
|
|
白魚火集〔同人・会員作品〕 巻頭句 仁尾正文選 | |
|
|
横手 木村稲花 ハイヒール揃へ脱ぎある花むしろ 水張りて春田のいろの揃ひけり ままごとの客ともなりて花の下 退職も遠き想ひ出風光る 昨日見て今朝見し梅のほころびし 静岡 影山香織 舷の右に傾く蜆舟 昏れきらぬ朧に灯し仁王門 春愁の筆を重しと思ひけり 花の屑光悦寺垣沿ひにかな 藍の濃き淵に散りゆく山桜 |
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
白魚火秀句 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
仁尾正文 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
当月の英語ページへ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ハイヒール揃へ脱ぎある花むしろ 木村稲花 「ハイヒール揃へ脱ぎある」がしっかりとした具象。為に色々な想像が広げられる。読者はハイヒールを覆いていた人や花莚の状景を自由に思えばよい。 ハイヒールであるから若いひと、佳人と思っても差し支えない。「揃へ脱ぎある」からしとやかな女性が見える。男言葉でポンポン物を言っている女の子だから乱雑に脱ぎ捨てると極めつけることはできないが、掲句の「揃へ脱ぎある」はやはりしとやかな若い主婦、すると、園児の親たちのグループであろうか。 づかづかと来て踊り子にささやける 素十 は「づかづかと来て」の具象がこの句を物語的な秀句にしたように頭掲句の「ハイヒール揃へ脱ぎある」からも短篇の小説が生れそうである。 しばらくの無事に身を置く立夏かな 桧垣扁理 (白光集) この作者は、東京白魚火会ならびに神奈川白魚火会の指導者であった故湯浅平人氏の忘れ形見ともいうべき作家。 一輪の秋桜咲く平人忌 扁理 亡き人をひたぶる想ふ花野かな 〃 など折に触れて亡き師追悼の句を寄せている。事業経営者として、変動甚だしい時代に対応するのは並大抵でなかろうが一人コツコツ作句を続けている。 頭掲句は、そうした境涯を知らない者をも納得させる普遍性がある。「しばらくの無事に身を置く」は、心身無事でない日があったということ。ゴールデンウィークの最後の日が立夏であった今年、安らぎの中で連休を過したのである。 舷の右に傾く蜆舟 影山香織 浜名湖でも宍道湖でも蜆の漁獲量減を防ぐため、操業時間を規制したり、鋤簾の目を粗くしたり苦心しているのは同じ。 早暁、エンジンを付けた蜆舟が何処からともなく集まってきて、ぐるぐる廻りながら蜆掻きを始める。二間程の竹竿の先に付けた大きな鋤簾を曳き、頃合を見て竿を甲板に持ち上げる。 掲句は、蜆漁の重い鋤簾を持ち上げている状景。両脚を踏ん張り力を尽くしている両腕を「舷の右に傾く」と客観写生した。春日焼した漁船員の風貌がよく見えてくる。 踊り子草咲く女坂男坂 池田都貴 (白光集) 踊り子草の中の小花をしげしげと見ると、編笠を被て佐渡おけさでも踊っている女人のように見える。この可憐な花に、よくぞ「踊り子草」と名付けたものだ。 男坂は、寺社の表参道、急な石段の所が多い。女坂は勾配のゆるい坂道、当然距離は長くなる。 掲句は、踊り子草が男坂の辺にも女坂の辺にも咲いていたというもの。だが、「踊り子草咲く」を強く印象させておいて「女坂」「男坂」と並べると言葉の意味を離れて「女」「男」が意識されて一句は艶冶なものを漂わせている。言葉はまことに玄妙だ。 花時計パンジー植ゑてより始動 内山実知世 フラワーパークでパンジーの白、紫、赤、黄色を配してミッキーマウスをみごとに描いているのを見たことがある。掲句のパンジーも十二時、三時、六時、九時の所へアレンジされたものであろうか。このパンジーを植え終ると花時計は完成、スイッチオンにより針が回り始めた。景も情も底抜けに明るい一句だ。 麦こがしうふふうふふと怺へけり 秋穂章恵 麦こがしの一番の食べ方は口中にはね込んで湿らせるもの。香りと味が滲み出る。だが、麦こがしが口中にある間は笑ってはならない。むせてしまうからだ。掲句の「うふふうふふ」は急に催した笑いを必死になって怺えているのである。「三月の甘納豆のうふふふふ 稔典」の「うふふふふ」とは全く質が違う。 百合の香や老いざる夫の忌を修す 国谷ミツヱ 「いつまでも夫は三十墓洗ふ 平池季子」という古い友人の句が忘れられない。三十歳で死んだ夫は何年たっても三十歳のまま。頭掲句も若くしてなくした夫である。年を取った自分の容姿は分かるが老いた夫の顔はどうしても思い浮ばないまま年忌を重ねている。 『葉隠』やふるさとはいま楠若葉 稲川柳女 『葉隠』は佐賀鍋島藩で書かれた、武士道を説いた有名な書物(十一巻)である。『 』は固有の書籍名を示す。「『葉隠』や」と頭に置いて楠若葉の美しい郷土佐賀を褒め、武士道の真髄を極めた故国の名著に胸を張っているのである。 音たてて海に急ぐは春の水 山下 恭子 「春の水」は雪解水が流れ込んで出水の様を示す。だから掲句の如く音をたてて海へ走り込むのである。 投句稿の中には「水温む」でなければならぬ「春の水」があったり、「春の小川」の方がふさわしい「春の水」もある。歳時記を引く労を惜しんではならない。 連翹の囲ひ縄解く背伸びして 瀬川都起 この「囲ひ」は「雪囲ひ」であろう。長い冬が終って連翹の蕾が見えたので急いで雪囲いを解いた。この句のいいのは「背伸びして」という所作である。春到来の喜びを「背伸びして」で表現しているのである。 春陰や昔帳場の大硯 高野房子 春陰は、曇りがちな春の天候。花曇りの華やぎはないが落ち着いた春の情緒を感じさせる季語だ。 昔の大店の帳場が保存展示されているので覗いてみると、とてつもなく大きな硯があって驚いた。帳簿付け等々が多くて、店が繁昌していた証しの大硯であった。そうした懐古の情が「春陰や」である。 制服はネービーブルー風光る 佐山佳子 ネービーブルーはイギリス海軍の制服の色、すなわち濃紺。制服も濃紺のセーラー服であろう。春風駘蕩の中の女子高校生群像である。 ちなみに日本の旧帝国海軍は維新この方英国に学んだのでイギリス方式、現在の海上自衛隊もその系譜を継いでいる。 下駄覆きの少女近づく夕薄暑 有田きく子 五月に入って気温が二十五度の夏日になったりする頃が薄暑。「下駄覆きの少女近づく」夕薄暑を作者は気持よく感じている。 投句稿の中には、三音の季語に「街薄暑」「風五月」など窮屈に感じさせるものがある。掲句の「夕薄暑」の伸びやかな用法は好感が持てる。何よりも言葉が美しい。
|
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
|
|
「鳥帰る」吟行 |
田原 桂子 |
金田野歩女さんの年賀状の「北海道へどうぞ」がきっかけ。実桜の方々が準備して下さり、この吟行が実現しました。 四月二十五日岩見沢駅から奥野さん浅野さんの車に乗せていただきました。水芭蕉の沼、片栗と延胡索の咲く鶴沼、最後は雁の集まる宮島沼へと行きました。 山々はまだ眠たげに水芭蕉 西田美木子 雪解風顔寄せ合うて撮られけり 松本 光子 踏むまいぞその片栗は明日開く 田原 桂子 鴨と白鳥は沼の岸近く、雁は沼の中心部に群れるとか。鉤になり棹になって雁が四方から戻ってきます。見張小屋の小父さんの話では五万羽程とか。 もどり来る雁を待ちをり夕永し 三浦香都子 白鳥の細身を思ふ北帰かな 〃 雁のこゑいよよ膨らむ春の沼 西田美木子 人の世を少し離れて雁帰る 奥野津矢子 浮寝鳥水にすきなき五万余羽 大野静枝 雁守の武骨さもよし春暖炉 加茂都紀女 夕食後二回句会をし、「実桜の人と句会をしている。」と実感しました。 二十六日朝四時前に起こされて、暖かく着こんで沼へ出発。日の出頃から沼が大きく揺れて雁が翔ちはじめます。遠い空に点線になって去って行きます。私たちが宿に戻ろうとするころ、沼の中央は空っぽです。 万の雁帰る素顔のまま送る 松本光子 さざ波のやうに帰雁の棹幾千 浅野数方 鳥風の身にしむあしたなりしかな 大野静枝 帰雁鳴く東雲のやや透けて来し 金田野歩女 朝食後樺戸囚人墓地へ。座禅草は大部分がまだ芽の状態。榛の木の花が垂れ雲雀も。 座禅草先づは尖り帽子出づ 奥野津矢子 結界の囚徒墓地より揚雲雀 浅野数方 指をもて啄木鳥の古巣を訪ひにけり 田原桂子 途中青鷺の営巣地を見学して札幌へ。昼食をとりながら句会。その後がんばって円山登山。栗鼠、五十雀など楽しい句材もあったのですが、予想以上の残雪と春泥に悩みました。 たくましき走り根広げ桂の芽 金田野歩女 雪解けの難所を越ゆる仏みち 加茂都紀女 夜ホテルで句会をしました。 二十七日は北海道大学吟行。鴨の恋、烏、啄木鳥の巣づくり、台風で荒れたポプラ並木の跡など。栃木の四人は北海道の春を満喫し、俳句の刺激をたくさんいただきました。 |
|
|
||||||||||||||||||||||||
百 花 寸 評 | ||||||||||||||||||||||||
(平成十七年四月号より) | ||||||||||||||||||||||||
田 村 萠 尖 | ||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
筆者は群馬県吾妻郡在住 |
|
|||||
|