最終更新日(update) 2025.06.01
句会報(R6)
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広島水曜俳句会平和公園吟行記 令和7年2月号掲載
旭川白魚火新年句会 令和7年3月号掲載
越ケイ子さん(函館)の句集発行祝賀会 令和7年3月号掲載
令和六年栃木白魚火忘年俳句大会報告 令和7年3月号掲載
令和七年栃木白魚火新春俳句大会 令和7年3月号掲載
わかくさ句会安食彰彦先生の卒寿をお祝いして 令和7年3月号掲載
坑道句会吟行句会報 ―閉校間近の北浜小学校を訪ねて― 令和7年3月号掲載
名古屋句会吟行句会報 ―中村公園及び名将豊臣秀吉と加藤清正のゆかりの寺を訪ねて― 令和7年5月号掲載
浜松白魚火会第二十七回総会及び俳句大会 令和7年6月号掲載
栃木県白魚火総会及び俳句大会 令和7年6月号掲載

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令和7年2月号掲載 句会報

広島水曜俳句会平和公園吟行記

森田 陽子

令和7年2月号へ 

 広島水曜俳句会の吟行会は、年二回。コロナウイルスが落ち着いた頃から、専ら東広島市内で実施しております。この度は、東広島を飛び出して「晩秋の平和公園」へ遠出をしましたので、ご報告いたします。

【当日の順路、時間のあらまし】
 十一月二十七日、広島駅構内を通り抜け(駅は改装中のため二階を迂回)、市内電車乗り場へ。電停「原爆ドーム前」で下車。ここで、参加者八名が揃い(十時)、スケジュールと季語などの確認。「原爆ドーム」、「動員学徒慰霊碑」を吟行しながら、「元安川」に沿って歩き、橋のたもとの「レストハウス」(集合場所)を全員で確認。それより自由吟行。「折鶴」、「原爆の子の像」、「平和の灯」、「死没者慰霊碑」、「平和記念資料館」、木立の間に点在する様々な碑、「被爆樹木」、川岸の「雁木」などを巡りました。十一時半、全員がレストハウス前に集合。十二時、句会場の「ひとまちプラザ」に到着、昼食。十三時出句締切り、句会開始。句会の担当者は、挾間敏子さん、大江孝子さん。十六時前に、句会終了。今回の吟行の企画担当者(奥田積さん、佐々木智枝子さん、石原幸子さん)から、事前に頂いていたリーフレットの時間通りに、無事吟行を終えました。



令和7年3月号掲載 句会報

旭川白魚火新年句会

旭川 吉川 紀子

令和7年3月号へ 

 去る一月十一日(土)、雪晴れの中、旭川白魚火新年句会が、市内の「扇松園」にて行われました。今回も北見から金田野歩女先生が来てくださり、小林布佐子さんも参加してくれ、豪華な顔ぶれが揃いました。
 会場の窓からは、雪景色の広いお庭が見え、雪吊りの木々、滝が優雅に流れ、灯籠や庭石には雪がこんもりと。床の間には松と千両が活けてあり、風情のある中での句会に挑む気持ちも高まります。
 句会の人気者の淺井文人君も来てくれ、みんな、大喜び!文人君は三歳になり、お話も上手になって、おやつをもらい、上機嫌。ぐずることなく、一人遊びしたり、お話したり、お付き合いしてくれました。一方、まことパパは、文人君の相手をしつつ、器用に句会をこなし感心しました。
 早知さんは、みんなの要望もあり、素敵な着物姿で参加してくれ、とてもお似合いの美しさで会に華を咲かせてくれました。
 句会は五句出句で、順位は、出句五句の合計得点で決定し、それぞれに賞品が渡されました。
 宴会では、平間代表から「巳年に向かい、蛇衣を脱ぐようお互いに成長できるよう頑張りましょう」と力強いお言葉があり、そのあと乾杯、開宴となりました。美味しいご馳走が次々と並び、ほろ酔い気分で和やかで楽しいひと時を過ごしました。

 結果は、以下の通りです。
(一句のみ紹介)
一位 淺井ゆう子
 夫と子と胎の子とゐる初御空
二位 小林さつき
 歌がるたまづ空札を朗々と
三位 金田野歩女
 浜風の頰刺す中を鱈干しぬ

 当日の一句(五十音順)
子を膝に乗せて今年の雑煮かな 淺井まこと
寒波来る狛犬確と踏ん張りぬ  今泉 早知
柏手の大きく響く冬木の芽   小林布佐子
年明くる巳どしの父は百八歳  中村 公春
読初の赤き表紙の師の句集   萩原 峯子
鏡割社員で祝ふ汁粉餅     平間 純一
正月や子供の頃は良かったな  沼澤 敏美
初社百磴のその一段目     吉川 紀子



令和7年3月号掲載 句会報

山越ケイ子さん(函館)の句集発行祝賀会

広瀬むつき

令和7年3月号へ 

 令和六年十二月七日(土)山越ケイ子さんの句集「風花」(白魚火俳句シリーズ30)の発行祝賀会を湯川のホテルKKRで行いました。午前句会、午後祝賀会という形でした。
 この日は丁度二十四節気の「大雪」に当たり、外は雪の降る寒い日でしたが、十六名中十一名が集まり心をこめてお祝いしました。
 久しぶりに森淳子前代表もかけつけ、会が一段と華やかになりました。
 今回の会を時間をかけて用意して下さった玲子さん、もとさんの進行のもと、むつきの挨拶、ケイ子さんの心のこもったお礼の言葉、乾杯(実知世さん)、花束贈呈(智子さん)とセレモニーが続き、和やかに会食へと移行しました。
 ケイ子さんは慎ましやかな方であまり御自分からは多くを語らない方なのですが、句集の「あとがき」によりますと、「平成十七年に俳句と出合い、今自分史のように自分を振り返ってみたい」思いで今回の句集発行となり、句集からは「若い頃の自分に逢えてとても嬉しく感謝いたします」とありました。
 そんな大切な句集ですので、私共もいただいた句集から好きな一句を選び感想を述べ、ケイ子さんにも句に寄せる思いがあれば語ってもらいました。次は私共が楽しく会食しながらも真剣に選んだケイ子さんの一句です。
私の好きなケイ子の一句(句集掲載順)
                選 者
サングラスはづし野点の客となり 法 子
コスモスや母の髪すく車椅子   智 子
春ショール結んで決むる事一つ  文 子
藍ゆかた髪を束ねて母似かな   淳 子
金婚の静かな朝の蜆汁      純 子
夕刊の日毎分厚き師走かな    理 江
夫癒えて歩み合せる日永かな   も と
眠れぬ夜胸に羽搏く蝶が住み   独楽子
城址の暮色に拾ふ落し文     実知世
帯結びぽんと胸打つ淑気かな   節 子
凧上げて少年意のまま走りけり  玲 子
藤棚をくぐりてわたし藤娘    ト シ
下萌や太極拳のポーズとる    倫 代
蒼天をつき上げてゐる辛夷かな  く ら
屠蘇に酔ひ李白の詩を吟じけり  むつき

 ケイ子さんの温かさに満ちた句を共有した祝賀会でした。(ちなみに三一八句中、父母の句三九、子ども、孫の句三十四、夫婦の句三十三、その他。独楽子さん調べ)
 函館白魚火で一番の長老となられたケイ子さん、益々お元気で私共を励まして下さい。御一緒に句の道を!



令和7年3月号掲載 句会報

令和六年栃木白魚火忘年俳句大会報告

宇都宮支部長 杉山 和美

令和7年3月号へ 

 小春日和の十二月八日(日)、令和六年栃木白魚火忘年俳句大会が宇都宮市中央生涯学習センターにて開催されました。
 参加者は二十一名。五句出句、七句選(内特選一句選)で行なわれました。開会前に写真撮影。カメラマンの上手な話術でなごやかに笑顔で撮影終了。
 今回より宇都宮支部長として初めての進行役となった私杉山が司会を務め、柴山要作会長のご挨拶に続き、今回から加わった新メンバー二名の紹介、その後、句会説明があり、句会の始まりです。スタッフの素晴らしい連係に助けられて、清記、選句を終え、中村國司さん、星揚子さんの披講、新メンバーの塚田康樹さんの点盛結果発表と進み、上位入賞一位から五位、飛び賞、ブービー賞を発表後、曙、鳥雲同人の方々の特選句、その他感銘句の講評を頂き、賞品が授与されました。参加者みなさまの協力で緊張ながらも笑顔のある句会となりました。

曙・鳥雲同人特選句
 柴山 要作 選
山眠る横穴に日のあまねきて   松本 光子
 星田 一草 選
冬帽子フランスパンを抱へゆく  中田 敏子
 中村 國司 選
大谷もまひろもすくと菊花展   柴山 要作
 星  揚子 選
鴨の陣沼の日溜り領しけり    谷田部シツイ
 加茂都紀女 選
握力を測る勤労感謝の日     松本 光子
 松本 光子 選
裸木の雄姿城址の要かな     江連 江女
当日の一句 (五十音順)
短日の母を待つ子や保母の膝   秋葉 咲女
銀杏散る四百年の力瘤      阿部 晴江
微馬碑に首さしのべて石蕗の花  五十嵐藤重
登校児に付きて殿冬帽子     江連 江女
老犬とあんぱんを食む冬日和   大栗 玲子
八溝嶺の裾にたなびく霧襖    加茂都紀女
焼芋や湯気のぎざぎざ半分こ   熊倉 一彦
おしやべりの相手の欲しき雪催  齋藤 英子
暮早し帰路急ぐ影伸びてをり   佐藤 淑子
黄泉の友もひよひと顔出す温め酒 柴山 要作
極上の男体山は冬姿       杉山 和美
紙飛行機たちまち遠し冬すみれ  塚田 康樹
旅客機の通過中なり冬銀河    中田 敏子
飯炊けてそしてどうする竈猫   中村 國司
兄の喜寿祝ふ勤労感謝の日    中村 早苗
とうめいの無垢の輝き初氷    奈良部美幸
皇帝ダリア二階の窓を覗くかに  星田 一草
アラームの二度目鳴り出す霜の朝 星  揚子
山眠る横穴に日のあまねきて   松本 光子
鴨の陣沼の日溜り領しけり    谷田部シツイ
おしやべりも笑ひもみんな息白し 渡辺 加代



令和7年3月号掲載 句会報

令和七年栃木白魚火新春俳句大会

谷田部シツイ

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 寒の入りながら天気に恵まれて穏やかな日となった一月五日(日)、宇都宮中央生涯学習センターに於て新春俳句大会が開催されました。参加者二十七名により、五句出句、十句選、内特選二句で行われました。
 成績上位八名、役員の特選一位の句に賞品が授与されました。
 役員の特選句と参加者の当日の一句は次の通りです。
役員特選句
 柴山 要作 選
玄関に注連飾りたる平和かな    谷田部シツイ
初電話少し遠くに父の声      星  揚子
 星田 一草 選
臘梅の香に触れ渡す回覧板     谷田部シツイ
買初の本のにほひを開きけり    星  揚子
 中村 國司 選
ずわい蟹ピラフ遠くに船見ゆる   本倉 裕子
初日さしだんだん丘の起き上がる  星  揚子
 加茂都紀女 選
岐路あらば野地蔵の立つ枯野かな  星田 一草
母もゐて祖父母も出でて焚火の輪  奈良部美幸
 齋藤  都 選
一筋の水の流れや山眠る      渡辺 加代
初景色連山今日も輝けり      石岡ヒロ子
 星  揚子 選
雪ぼたる夕日に溶けてしまひけり  松本 光子
初夢に詠みし俳句を置き去りに   中村 早苗
 松本 光子 選
千本の影をただしく冬木立     星田 一草
一筋の水の流れや山眠る      渡辺 加代
 熊倉 一彦 選
買初の本のにほひを開きけり    星  揚子
定位置に食器を戻す四日かな    中田 敏子
 本倉 裕子 選
擦れ違ふ人の顔染む初日かな    江連 江女
定位置に食器を戻す四日かな    中田 敏子
 秋葉 咲女 選
初電話少し遠くに父の声      星  揚子
定位置に食器を戻す四日かな    中田 敏子
 阿部 晴江 選
初空へ炎ふき上げ熱気球      谷田部シツイ
千本の影をただしく冬木立     星田 一草
 江連 江女 選
初夢に詠みし俳句を置き去りに   中村 早苗
かげふみの逃げ足はやし息白し   松本 光子
 渡辺 加代 選
絵馬堂にあふるる願ひ初やしろ   菊池 まゆ
男体女峰蓮華とひらく初明り    柴山 要作
 杉山 和美 選
初夢に詠みし俳句を置き去りに   中村 早苗
初風呂に浮かせてみたる膝小僧   塚田 康樹

当日の一句(五十音順)
譲り合ふ膝を繫ぎて屠蘇祝ふ    秋葉 咲女
白粥の母にひと匙ぷーと吹き    阿部 晴江
三世代解釈付きの歌がるた     鮎沢 百恵
東照宮雪積む雪の輪王寺      五十嵐藤重
新春句会集ふ笑顔の一日かな    石岡ヒロ子
雑踏の中の短き御慶かな      江連 江女
一品ずつ味見をさせて年の暮    金敷 宗弥
初明り昭和天皇御製の碑      加茂都紀女
何処となく母似諾ふ初鏡      菊池 まゆ
去年今年時の流れて時を知る    熊倉 一彦
「うんまい」と一声上がる雑煮かな 齋藤 英子
縫ひ初めや忘れ上手の生き上手   齋藤  都
出不精の夫を誘ひて初詣      佐藤 淑子
明るめのセーター伸ぶる妻の試歩  柴山 要作
枯薄穏やかなる日すくと立つ    杉山 和美
並び立つ神杉の秀の淑気かな    鷹羽 克子
初風呂に浮かせてみたる膝小僧   塚田 康樹
定位置に食器を戻す四日かな    中田 敏子
愛想よく蜜柑の置かれ初句会    中村 國司
参道の篝火揺らぐ淑気かな     中村 早苗
冬銀河平家の里の静もれり     奈良部美幸
買初の本のにほひを開きけり    星  揚子
千本の影をただしく冬木立     星田 一草
雪ぼたる夕日に溶けてしまひけり  松本 光子
初電話窓辺に鳩の来てをりぬ    本倉 裕子
臘梅の香に触れ渡す回覧板     谷田部シツイ
髪にある母の面影初鏡       渡辺 加代



令和7年3月号掲載 句会報

わかくさ句会安食彰彦先生の卒寿をお祝いして

土江 比露

令和7年3月号へ 

 私達「わかくさ句会」は、安食彰彦先生を師とし、原和子さん、牧野邦子さんを囲む七名の句友で勉強させて頂いております。(毎月第二木曜日)
 師走の句会は、安食先生の卒寿をお祝いしてささやかな昼食を囲み、日頃の感謝の意を表しました。
 その日は、たまたま私の本棚から出て来た新聞の切抜きをお見せしました。それは、先生が島根県庁へ一畑電車で通勤なさっていた頃、山陰中央新報社から一畑電車の各停車駅を句に詠んで欲しいとの依頼で作句され、「写俳スケッチ(湖岸電車)」と名づけたコラムです。
 当時その記事を見て、私は五七五に詠まれる風景を思い浮かべながら句の世界に惹かれていきました。
 先生も懐かしそうにその頃の話をされていました。そんな思い出話を聞きながら句会に入りました。
 この日も、一人一人の出句に先生のご指導を受けながら、またそれぞれの意見を言いながら、そして時々その話が盛り上がり脱線しながらも、和気藹々の句会を楽しみました。
山陰中央新報
(平成五年十一月九日掲載)
 「写俳スケッチ」(湖岸電車)掲載句
  茶の花や風の運べる湖の声
            安食 彰彦
  伊野灘駅
   茶畑の広がる北側斜面
          「切抜きより」

会員の俳句 当日句より
すぐ来るか出雲訛の焼鳥屋   安食 彰彦
師の齢すでにこしをり蜜柑むく
闇原に裸木照らす星明り    生間 幸美
湯豆腐や昔話を広げたり
日溜りに花々を訪ひ冬の蝶   木村 以佐
窓たたき窓をた走る初霰
神在の湖上を染むる大入日   土江 比露
蕭条と川面にたるる枯柳
雨音のとつと霰の音となり   原  和子
電線に居ならぶ雀冬うらら
鴨集ふ湖を眼下に受診待つ   藤田 眞美
風強き湖に悠々浮寝鳥
風花や袖にとどきて華のごと  牧野 邦子
木蓮の冬芽のこぶし天を突く
大屋根より声降らすかに慰鶲  持田 伸恵
夜廻りの読経も柝も闇に消ゆ



令和7年3月号掲載 句会報

坑道句会吟行句会報
―閉校間近の北浜小学校を訪ねて―

坑道句会 三原 白鴉

令和7年3月号へ 

 坑道句会では、一月二十七日(月)、この三月末をもって一五一年の歴史を閉じる出雲市立北浜小学校を訪問し、学校や児童たちの様子を詠み、句会を開きました。
 北浜小学校は、明治七年の開校で、現在は児童数二十四名の小さな学校ですが、三十五年前に建てられた校舎は、当時の児童数を反映した鉄筋コンクリート三階建ての大きく立派な校舎で、赤色の石州瓦の三角屋根がすぐ前の海の青によく映えます。
 約束の午前十時に学校にお邪魔すると、子どもたちが書いた今年の目標と沢山の魚の絵が描かれた大きな紙の張られた玄関に、笑顔の優しい佐野校長先生、原教頭先生に出迎えていただき、授業中の学校の中を案内していただきました。
 学校内部の壁や床、ドアは木材が用いられており、どこもきれいに磨かれていて、年数を経た温かみのある木の色合いが素敵です。教室前の庭もホテルの庭のように雑草一本なくきれいに刈りこまれた芝生が広がり、給食室や配膳室のある別棟を結ぶ回廊式の廊下と中庭には地元の人たちによって作られ、維持されている学校水族館があり、沢山の水槽に様々な魚が泳いでいて、地元の方達の学校に寄せる熱い思いが伝わってきます。
 そんな北浜小学校ですが、少子化により児童数が減少し、ここを含む近くの四校が六キロ程離れたところに建設される新しい学校へ統合し、閉校することとなりました。訪れた日も図書室では司書とボランティアの方が新しい学校に持って行く図書を補修、整理しておられ、理科室には空っぽの棚と荷造り紐が残されていました。また、音楽室や各教室には北浜小学校の校歌と新しい小学校の校歌が壁に貼ってあり、新しい学校に移ったらすぐに校歌が歌えるよう毎日歌っているとの説明を受け、閉校が間近いことがひしひしと伝わってきました。
 子どもたちや地元の方の思いの籠ったこんな素敵な学校が閉校してしまうのは胸が締め付けられるような気持になりましたが、新しく移る学校も同じような瓦葺の新築校舎で、友達も沢山になり、また現校舎も水族館は無くなるものの北浜地区のコミュニティセンターとして地元の皆さんの活動の拠点となって残るとのお話を伺い、それぞれのスタートが良いものとなるよう願いながら学校を後にしました。
 その後、JAしまね北浜店会議室に移動し、昼食の後投句五句の句会を行い、午後三時過ぎに散会となりました。
 当日の句会の結果と参加者の一句は、以下のとおりです。

 渡部美知子 特選
路地抜けて日差し来てをり冬菫  久家 希世
学舎の消ゆる北浜日脚伸ぶ    大菅たか子
ごんずいの潜む水槽冬日差す   三原 白鴉
理科室に荷造りロープ春近し   三原 白鴉
海の色飽かず眺むる冬日和    園山真由美
 三原 白鴉 特選
水鳥のひとつひとつに水の色   荒木千都江
児らの声ひびく教室春隣     原  和子
路地抜けて日差し来てをり冬菫  久家 希世
理科室の棚は空つぽ春近し    渡部美知子
春の日や紙いつぱいの児の習字  山本 絹子
 荒木千都江 特選
校長の笑顔と別る冬日中     渡部美知子
海の面へ香を放ちけり野水仙   牧野 邦子
村人に海苔採日和はづむ声    大菅たか子
冬萌や海を眼下に艶めけり    福間 弘子
冬うらら築三十年の小学校    大菅たか子
 久家 希世 特選
凪ぐ海に海苔摘む子等の笑顔かな 伊藤喜代子
新しき校歌の貼られ冬ぬくし   原  和子
学舎は心の支へ春近し      伊藤喜代子
寒晴や湾一望の小学校      渡部美知子
波止鼻に白波立ちて小春かな   福間 弘子
 牧野 邦子 特選
新しき校歌の貼られ冬ぬくし   原  和子
一月や山は尖れるだけ尖る    荒木千都江
ごんずいの潜む水槽冬日差す   三原 白鴉
冬萌や閉校近き中庭に      園山真由美
冬日差ミシンを習ふ五年生    原  和子

当日の高得点句
 十点
校長の笑顔と別る冬日中     渡部美知子
 七点
水鳥のひとつひとつに水の色   荒木千都江
村人に海苔採日和はづむ声    大菅たか子
春の日や紙いつぱいの児の習字  山本 絹子

当日の一句抄(氏名五十音順)
水鳥のひとつひとつに水の色   荒木千都江
学舎は心の支へ春近し      伊藤喜代子
冬うらら築三十年の小学校    大菅たか子
路地抜けて日差し来てをり冬菫  久家 希世
在校生二十四人の春近し     園山真由美
新しき校歌の貼られ冬ぬくし   原  和子
二十四の声澄む校舎冬うらら   原 みきこ
水仙の香り漂ふ十六島      福間 弘子
海原へ大寒の空青々と      牧野 邦子
閉校の風に揺れゐて野水仙    松村れい子
教室に新旧校歌春まぢか     三原 白鴉
春の日や紙いつぱいの児の習字  山本 絹子
理科室の棚は空つぽ春近し    渡部美知子

 



令和7年5月号掲載 句会報

名古屋句会吟行句会報
―中村公園及び名将豊臣秀吉と
加藤清正のゆかりの寺を訪ねて―

名古屋句会 後藤 春子

令和7年5月号へ 

 第四回となる名古屋白魚火の吟行句会を三月五日(水)行い、生憎の雨の中、秀吉と清正のふるさとである中村公園一帯と、それぞれのゆかりの寺「常泉寺」と「妙行寺」を訪ね、二人の功徳を偲びつつ句作りに取り組みました。当日の参加者10名。
 中村公園内には秀吉の馬印である千成瓢簞にちなむ瓢簞形の池と太閤池の二つがあり、亀の甲羅干しや時期が来ればつがいの鴨も見られます。
 午後一時、句会場の「中村公園図書館」の会議室に移動し、一人五句出句、互選の句会を行い、午後四時散会となりました。最後まで雨は止みませんでしたが、思い出深い一日となりました。
 参加者の当日の一句(五十音順)
緑青の清正の像春時雨      伊藤 達雄
春雨に煙る踏石茶室門      伊藤 妙子
春の雨瓢簞絵馬の一雫      大塚 知子
ゆるゆると太閤池に鴨の水脈   後藤 春子
春の雨日蓮の文字なんみようと  白井  雄
春の雨吟行の背追ひにけり    遠山都昆布
春霖や蔵の鉄扉に錆あまた    野田 美子
早咲きの梅のちらほら産湯井戸  前野 砥水
春雨や松葉の先にひとつづつ   牧野 敏信
よね様もめでたく合祀うららけし 森  節子


妙行寺



令和7年6月号掲載 句会報

浜松白魚火会
第二十七回総会及び俳句大会

渡辺 強

令和7年6月号へ 

 浜松白魚火会の総会を、今年度は令和七年四月二十九日ホテルクラウンパレス浜松に於いて、会員六十名に参加頂き開催いたしました。白魚火より檜林弘一主宰をお招きして総会、句会を進めました。
 令和六年度の活動報告、会計報告、令和七年度の活動報告案、予算案など満場一致で承認を頂きました。
 浜松白魚火会は、仁尾正文元主宰の下、発足して以来三十七年の歴史を刻みます。この度は阿部芙美子会長から「俳句を通じて会員相互の親睦と俳句の向上研鑽に努め」と力強いご挨拶を戴きました。

 続いて、新曙同人及び同人賞、みづうみ賞など各賞の受賞者の表彰を行いました。
 新曙同人              阿部芙美子
                   佐藤 升子
 同人賞               鈴木  誠
 みづうみ賞
  秀作賞              鈴木 竜川
   同               前田 里美
  奨励賞              宇於崎桂子
   同               山田 惠子
 受賞者を代表して同人賞の鈴木誠さんが謝辞を述べられ、主宰から祝辞を頂きました。
俳句大会は選者の主宰他五名と参加者による互選を行って特選及び高得点句が表彰されました。(特選五句、入選十句選)

 各選者の特選は以下のとおり。なお、投句数は百七十八句(一人二句)

檜林 弘一主宰選
 特選
 一位
陽炎や門前町の石畳          金原 恵子
 二位
片栗の花だけを見て帰りをり      徳増眞由美
 三位
紙風船折目弾けてふくらみぬ      塩野 昌治
 四位
春一番棟上げを待つ太柱        村上  修
 五位
木の香まだ残る切株鳥の恋       渥美 絹代
 入選
本宮にとどろく太鼓山笑ふ       岡部 兼明
春の浜一筆書の串団子         植田 喜好
よく廻る風車や地虫穴を出づ      西沢三千代
さへづりや教頭先生校門に       杉山 妙子
蝌蚪群るる学校裏のジオトープ     渡辺 伸江
種物屋通りすがりに寄りにけり     林  浩世
スキップの揃はぬふたりうららけし   前島 智子
母となる子の声豊か花ミモザ      青木いく代
ふる里は湖の底なり野梅咲く      高井 弘子
おにぎりの中味は内緒山笑ふ      鈴木  誠

村上 尚子選
 特選
 一位
水筒に方位磁石や鳥帰る        大村 泰子
 二位
正文忌過ぎ一寸の牡丹の芽       渥美 絹代
 三位
木の香まだ残る切株鳥の恋       渥美 絹代
 四位
絵手紙の赤い草履や春来たる      玉澤きよ子
 五位
スキップの揃はぬふたりうららけし   前嶋 智子
 入選
藪に棲む鳥の気配も春めけり      山田 惠子
鋸山に向かふフェリーや風光る     伊藤みつ子
子を乗する母の自転車春の風      前田 里美
種物屋通りすがりに寄りにけり     林  浩世
お揃ひの円き箸置き木の芽和      武村 光隆
陽炎や門前町の石畳          金原 恵子
風光る餡パン・ジャムパン・メロンパン 齊藤 文子
卒業式終へてラーメン屋に集ふ     森  志保
山笑ふ恐竜展は今日限り        川上  勝
手をつなぎ走る兄弟風光る       渡辺 伸江

渥美 絹代選
 特選
 一位
立春大吉鳥の形の金花糖        村上 尚子
 二位
啓蟄や五センチほどの手術跡      山本 狸庵
 三位
スキップの揃はぬふたりうららけし   前嶋 智子
 四位
退治せし鬼まつる里山笑ふ       宇於崎桂子
 五位
雛壇へ眼鏡預けて針をおく       埋田 あい
 入選
鳥三羽小枝を揺らし春来たる      石塚 妙子
たんぽぽを避け筆洗の水捨つる     坂田 吉康
豆飯や歳の離るる兄いもと       阿部芙美子
初てふの頰を掠めてゆきにけり     山田 眞二
紙風船折目弾けてふくらみぬ      塩野 昌治
春めくや店に売らるる鹿の角      鈴木 敦子
きのふより音の確かや春の水      高橋とし子
山笑ふ恐竜展は今日限り        川上  勝
白猫が黒猫を生み春深し        小杉 黄琢
駄菓子屋に絵本コーナー百千鳥     宇於崎桂子

弓場 忠義選  特選
 一位
きのふより音の確かや春の水      高橋とし子
 二位
正文忌過ぎ一寸の牡丹の芽       渥美 絹代
 三位
木の香まだ残る切株鳥の恋       渥美 絹代
 四位
種物屋通りすがりに寄りにけり     林  浩世
 五位
おにぎりの中味は内緒山笑ふ      鈴木  誠
 入選
うすらひを潜る小川や和紙の里     鈴木 竜川
先を行く人ゐたりけり春霞       鈴木くろえ
エプロンの紐を結べば木の芽時     齋藤 文子
水筒に方位磁石や鳥帰る        大村 泰子
蝌蚪群るる学校裏のジオトープ     渡辺 伸江
春帽子麒麟の首の滑り台        松永 敏秀
翁の面目元ゆるびてうららけし     野崎 泰子
母となる子の声豊か花ミモザ      青木いく代
卒業式終へてラーメン屋に集ふ     森  志保
二月礼者呵呵大笑を残し去る      浅井 勝子

阿部 芙美子選
 特選
 一位
春帽子麒麟の首の滑り台        松永 敏秀
 二位
水筒に方位磁石や鳥帰る        大村 泰子
 三位
正文忌過ぎ一寸の牡丹の芽       渥美 絹代
 四位
葦の根のおどろに水のぬるみけり    鈴木 利久
 五位
立春大吉鳥の形の金花糖        村上 尚子
 入選
起上がり小法師ゆらりと春兆す     松山記代美
ふる里は湖の底なり野梅咲く      高井 弘子
長寿とは友の減ること苗木植う     村上  修
畦青む立て掛けてある猫車       磯野 陽子
陽炎や門前町の石畳          金原 恵子
スキップの揃はぬふたりうららけし   前島 智子
春の虹妻の一周忌の近く        松本 義久
母となる子の声豊か花ミモザ      青木いく代
本宮にとどろく太鼓山笑ふ       岡部 兼明
二月礼者呵呵大笑を残し去る      浅井 勝子

佐藤 升子選
 特選
 一位
正文忌過ぎ一寸の牡丹の芽       渥美 絹代
 二位
立春大吉鳥の形の金花糖        村上 尚子
 三位
蝌蚪群るる学校裏のビオトープ     渡辺 伸江
 四位
卒業式終へてラーメン屋に集ふ     森  志保
 五位
藪に棲む鳥の気配も春めけり      山田 惠子
 入選
おにぎりの中味は内緒山笑ふ      鈴木  誠
坪庭に寝そべる犬や春の土       植田 喜好
ふる里は湖の底なり野梅咲く      高井 弘子
豆飯や歳の離るる兄いもと       阿部芙美子
お揃ひの円き箸置き木の芽和      武村 光隆
陽炎や門前町の石畳          金原 恵子
糸遊の街道かつて繭の市        岡部 兼明
伊那谷を眼下に統べて花林檎      坂田 吉康
春星にひらく天文台の屋根       村上 尚子
浅春の日溜りへ砂掃き寄する      前田 里美

互選高得点句
 七点句
きのふより音の確かや春の水      高橋とし子
 六点句
正文忌過ぎ一寸の牡丹の芽       渥美 絹代
 五点句
ふる里は湖の底なり野梅咲く      高井 弘子

 句会の終了後「芙蓉の間」に於いて懇親会が開催されました。
 主宰のご出席を頂き、砂間達也幹事長の司会のもと、阿部芙美子会長、檜林弘一主宰の挨拶に続き、渥美絹代相談役の音頭で乾杯、皆さん主宰を囲み歓談のなかあっという間に時は過ぎ、大村泰子理事の音頭による中締めの三本締めにてお開きとなりました。



令和7年6月号掲載 句会報

栃木県白魚火総会及び俳句大会

江連 江女

令和7年6月号へ 

 令和七年四月十三日(日)、朝から静かな雨、正に花の雨の一日となった日、標記の総会と俳句大会が、宇都宮総合コミュニティセンターに於て、新会員一名を含む二十六名の出席のもと開催されました。
 今年も栃木県白魚火年間合同句集(第四十五句集)が刊行され、皆さんの手元に渡りました。次に、全員の写真撮影が名カメラマンにより笑いの内に終わり、総会に入りました。
 初めに、柴山会長よりご挨拶があり、続いて新会員の吉澤さんから自己紹介がありました。次に、役員の進行で、総会の協議事項について諮られ、それぞれ満場の拍手により議決されました。
 続く俳句大会は、五句投句、十句選(うち特選二句)で実施されました。

役員の特選句
 柴山 要作 選
ひとひらの風さそひ出す花吹雪   齋藤  都
妻子恋ふ防人の歌碑花の雨     菊池 まゆ
 星田 一草 選
春泥を踏まねば行けぬ駐車場    中村 早苗
水眩し子らの放せる鮎の稚魚    渡辺 加代
 中村 國司 選
柏餅伝ひ歩きの子が摑む      中村 早苗
水揚げの大口むつと桜鯛      江連 江女
 加茂都紀女 選
空高く鳶舞ふ遺跡花の里      石岡ヒロ子
今日あたり来そうな予感燕来る   本倉 裕子
 齋藤  都 選
ランドセル犬も花見の車座に    本倉 裕子
春コート柔らかく風押し返す    塚田 康樹
 星  揚子 選
苗床の水遣り九九を諳んずる    齋藤 英子
しやぼん玉子らの口より小惑星   熊倉 一彦
 熊倉 一彦 選
妻子恋ふ防人の歌碑花の雨     菊池 まゆ
揚雲雀鳴きて青空広げたる     星  揚子
 本倉 裕子 選
柏餅伝ひ歩きの子が摑む      中村 早苗
苗床の水遣り九九を諳んずる    齋藤 英子
 秋葉 咲女 選
青き踏む丘なだらかに牛の声    星田 一草
風のまま緩き孤を描く糸桜     菊池 まゆ
 江連 江女 選
飛花落花空の深さの潦       星  揚子
しやぼん玉子らの口より小惑星   熊倉 一彦
 渡辺 加代 選
眠さうな立居の埴輪目借時     奈良部美幸
立ち漕ぎのぶらんこ鈍き軋みかな  中村 早苗
 杉山 和美 選
金次郎ぽつり佇む夕桜       中田 敏子
しやぼん玉子らの口より小惑星   熊倉 一彦
 松本 光子 選
揚雲雀鳴きて青空広げたる     星  揚子
どら焼きのしつとり甘き花曇    塚田 康樹

当日の一句(五十音順)
春の芝色を重ねて雨上がる     秋葉 咲女
空高く鳶舞ふ遺跡花の里      石岡ヒロ子
検診の言葉少なや弥生尽      江連 江女
おぼろ月疎遠の友に一筆を     大栗 玲子
花片のつきし雨傘持ち帰る     加茂都紀女
妻子恋ふ防人の歌碑花の雨     菊池 まゆ
しやぼん玉子らの口より小惑星   熊倉 一彦
川風を切り翻る初燕        佐藤 淑子
苗床の水遣り九九を諳んずる    齋藤 英子
ひとひらの風さそひ出す花吹雪   齋藤  都
白鳥引く一顧だにせず水蹴つて   柴山 要作
春の川鯉の背鰭の光りをり     杉山 和美
永き日を小雀山雀四十雀      鷹羽 克子
畑一面たんぽぽの黄やぽぽぽぽと  田所 ハル
どら焼きのしつとり甘き花曇    塚田 康樹
寝ころんで花片栗の蕊写す     中村 國司
芋植うる指で確かむ芋の向き    中村 早苗
金次郎ぽつり佇む夕桜       中田 敏子
SLの大きな汽笛山笑ふ      奈良部美幸
飛花落花空の深さの潦       星  揚子
褒められてゐるマルチーズ飛花の中 星田 一草
みどりごに応へ手をふる花の下   松本 光子
留まるも明日は散る身のさくらかな 本倉 裕子
鯉のぼり連なる川の遊覧船     谷田部シツイ
入学や始発電車のリズムよく    吉澤千重子
眼裏に残る軍道昭和の日      渡辺 加代


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