最終更新日(update) 2019.03.01
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平成三十年度栃木白魚火 第二回鍛錬吟行句会 平成31年1月号掲載
旭川白魚火 「見本林」吟行会 平成31年1月号掲載
坑道句会 十一月例会 平成31年2月号掲載
群馬白魚火会 平成31年2月号掲載
白岩主宰を招き一泊忘年吟行句会
広島白魚火俳句会
平成31年2月号掲載
旭川白魚火「忘年句会」
平成31年3月号掲載
平成三十年栃木白魚火忘年句会報
平成31年3月号掲載
栃木白魚火新春俳句大会
平成31年3月号掲載

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平成31年1月号掲載 句会報

平成三十年度栃木白魚火 第二回鍛錬吟行句会

星  揚子

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 十一月十一日(日)、栃木白魚火第二回鍛錬吟行句会が参加者十八名のもとに、陶器の街として知られる栃木県益子町で行われた。
 貸切バスで向かった最初の吟行地は、寛政年間創業の日下田藍染工房で、作業場には七十二の藍染め用の甕が並んでいた。そこで、藍染めの工程を聞き、砧で布を打つ様子や布を染めて伸子張りで干す作業を見せてもらった。また、貴重な明治時代の型紙と、段階的に染められた藍染めの布を、私達のためにわざわざ出して説明してくれた。十六段階の藍染めの色にはそれぞれ名前が付いていた。
 その後、かつて益子城があった城内坂通りを散策しながら、益子焼窯元共販センターへ向かった。丁度地元の人達のマラソン大会があり、沿道は賑わっていたが、秋の陶器市が終わったばかりなので、町全体は思いの外静かだった。
 最後の吟行地は益子参考館。ここには陶芸家濱田庄司が蒐集した作品を自邸の一部に展示してあり、濱田庄司の世界観を味わうことができた。さらに、工房や登り窯を見学。登り窯は益子の地形をうまく生かしていることがわかった。真っ赤な紅葉が茅葺きの濱田邸によく映え、近くで落葉を焚く煙と匂いが辺りを優しく包んでいた。
 句会場は益子駅駅舎の二階多目的ホール。昼食後、十句出句、十五句(うち特選二句)選で行われた。今年度の鍛錬吟行句会からこの形式で実施してきているが、慣れてきたこともあってか、順調に終えることができた。
 自然豊かな益子町での鍛錬吟行句会は心も満たされ、充実したものとなった。

 星田 一草 特選
小春日や朝の靄解く加波筑波     加茂都紀女
山茶花やゆるき坂なる陶の街     江連 江女
  加茂都紀女 特選
濃紺の似合ふ藍師の冬のシャツ    秋葉 咲女
伸子張りに冬の蠅来る紺屋裏     江連 江女
  柴山 要作 特選
砧打ち見せ仕る藍匠         中村 國司
蓼藍の茎のくれなゐ末枯るる     星  揚子
  松本 光子 特選
冬の日を吸ひ込んでゐる埴輪かな   星  揚子
手轆轤を回し冬日を回しけり     星  揚子
  秋葉 咲女 特選
日当たれば日当たる色に冬紅葉    大野 静枝
まんまるの埴輪の眼鼻小六月     松本 光子
  阿部 晴江 特選
まんまるの埴輪の眼鼻小六月     松本 光子
実紫火の色見張る窯の穴       熊倉 一彦
  大野 静枝 特選
陶片の貼らるる壁に冬陽射す     上松 陽子
明り障子外す紺屋の作業場      中村 早苗
  中村 國司 特選
プードルのやうな綿の実干しにけり  熊倉 一彦
小春日や陶のたぬきの臍は×     江連 江女
  星 揚子 特選
秋の蝶くの字に飛んですぐ消える   星田 一草
益子回廊紺屋軒端に綿を干す     中村 國司
藍甕場の灯影古りたる砧かな     柴山 要作

 一句抄
秋日和ほうと埴輪の口開く      星田 一草
小春日や朝の靄解く加波筑波     加茂都紀女
藍甕場の灯影古りたる砧かな     柴山 要作
藍甕を覗く山茶花明りかな      松本 光子
濃紺の似合ふ藍師の冬のシャツ    秋葉 咲女
百年の藍甕を守る土間寒し      阿部 晴江
日当たれば日当たる色に冬紅葉    大野 静枝
砧打ち見せ仕る藍匠         中村 國司
実石榴や紺屋の庭の伸子張り     上松 陽子
藍甕の藍黒々と白障子        江連 江女
プードルのやうな綿の実干しにけり  熊倉 一彦
木の実落つでんと居座る上り窯    杉山 和美
十一月十一日の浜田邸        髙島 文江
伸子張る紺屋の庭の花八ツ手     鷹羽 克子
静謐にたたずむ白磁秋深し      田所 ハル
ジャパンブルー歴史の深き藍の色   中村 早苗
百年の梁のうねりや石蕗の花     渡辺 加代
藍甕の闇の深きや冬日射す      星  揚子



平成31年1月号掲載 句会報
   旭川白魚火 「見本林」吟行会
淺井ゆうこ

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 十月十三日、旭川白魚火会の吟行が開催された。外国樹種見本林(市民からは、「見本林」と呼ばれることが多い)は、旭川駅からほど近い場所にあり、三浦綾子の小説「氷点」の舞台となったことでも知られている。見本林入口には三浦綾子記念文学館がある。本館の隣に今年新たにオープンした分館の内部には、三浦綾子氏が夫光世氏とともに執筆活動を行っていた書斎がそのまま再現されている。館内を一通り覗き、大小様々な木の葉の散り敷いている見本林の小径をタカ女先生とともに歩いて行くと、リスに穀物のような餌を与えている方がいらした。リスは冬に備えてうんと食べておきたいらしく、私達一行がそばへ行っても逃げる気配がない。餌を頬張っては茂みに隠れ、また戻っては食べ、やがてお腹がいっぱいになったのであろう、森の奥へと走り去って行った。背の高い黒々とした針葉樹の上に秋の青空が広がり、美瑛川の川面の漣が日差しを散らして光っていた。
 神楽岡公園へ移動し散策。紅葉の鮮やかな中、こちらにも樹上にリスがいる。隣接する上川神社には晴着の子どもさんの家族連れの車が数台停まっていた。十一月に降雪のある北海道では、ひと月前倒しで十月の半ばに七五三のお詣りが行われる。
 神楽岡公園から、おかだ紅雪庭へ移動し、昼食と句会。舞茸の天ぷら、胡麻豆腐、新蕎麦など季節の料理を賞味し、めいめい句帳を開く。一人五句出句。

 一句抄
待合はすもみぢがくれの媼かな    平間 純一
裸木となりし孤独のプラタナス    坂本タカ女
身に覚えなき原罪や月夜茸      萩原 峯子
先駆けて桜紅葉の散りをりぬ     今泉 早知
靴底を払うて入る黄落期       石川 純子
蔦紅葉空の蒼さに応へけり      沼澤 敏美
宿罪の消ゆることなき秋の風     中村 公春
秋澄むや刺身しやうゆの丸き皿    淺井ゆうこ
薄もみぢ濃もみぢ燃えてゐるもみぢ  小林布佐子

 句会後、障子や窓の誂えの美しい館内を見学。玄関で、ひときわ甘い花の匂いがした。翌日にこちらで結婚式があるということで、仲居さんが花を活けているところであった。



平成31年2月号掲載 句会報

     坑道句会 十一月例会

渡部 幸子

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 十一月二十六日(月)、新装なったJA北浜支店集会室を会場に坑道句会が開催されました。土足の儘入ることの出来る会場で、とても便利でした。
 神還る日も近く、出雲地方では「神等去出(からさで)さん荒れ」と言って、昔から海は大時化になることが多くとても心配しましたが、幸いにも絶好の日和を授かり、地元北浜のほか遠くは松江から五名、そして大社、斐川、平田からの参加がありました。事前に知らせてあった鰐淵寺、昭和鉱山跡、北浜等を各自吟行の後、十一時三十分佳句をふところに二十七名の参加者全員の笑顔が会場に揃いました。
 幹事代表の原和子さんの挨拶の後、坑道句会合同句集作成への参加のお願いがあり、句集の概要を記した紙が配られました。合同句集の作成と句会開会にあたり安食副主宰より、坑道句会は白魚火の元祖、いつまでも継続していかなければならない旨と坑道句会の歴史についてお話があり、十二時出句、昼食、続いて句会へと移りました。
 この日の選者は、安食副主宰、三島玉絵、荒木千都江、久家希世、渡部美知子、渡辺幸子の六氏、披講は、生馬明子、渡辺美知子の両氏で、緊張の中にも和気藹々の和やかな内に進行しました。
 安食副主宰の特選句には、蔵書の中から選んで持参された著名俳人の句集が褒美に渡され、その内の三名が地元北浜句会会員であったことに、泉下の小林梨花先生もさぞかしお喜びのことと会場は拍手の渦に包まれました。
 今回初参加の二名を得、坑道句会の益々の発展を誓い合い、次回を約して閉会となりました。

 安食 彰彦特選  
冬帽子釣果確かめ過ぎ行けり     渡部美知子
日当たりて路傍に寂し帰り花     渡部 清子
湖岸打つ波も尖りて冬に入る     今津  保
落葉道からからからと追ひ抜かれ   荒木 悦子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子
   入選
一湾の波のうねりも雁の頃      三島 玉絵
銀杏散る海抜十メートルの寺     原  和子
紅葉狩今日の歩数は六千歩      杉原 栄子
こはごはと下る山路藪柑子      牧野 邦子
師の墓所を抱き岬の山眠る      船木 淑子
笹子鳴く廃坑あとを振り仰ぐ     樋野久美子
僧坊の名残の礎石冬桜        牧野 邦子
一湾の波おだやかに野水仙      船木 淑子
青木の実色付く先の獣道       竹元 抽彩
俯きて咲く茶の花に薄日差す     今津  保

 三島 玉絵特選
賓頭慮尊者なでて冷たきつむりかな  原  和子
山眠る田ごとに深き轍かな      船木 淑子
神等去出の風車一基も回らざり    原  和子
師の墓所を抱き岬の山眠る      船木 淑子
僧坊の名残の礎石冬桜        牧野 邦子
   入選
艫綱の微かな軋み小春凪       三原 白鴉
冬帽子釣果確かめ過ぎ行けり     渡部美知子
紅葉まつり鈴の音ひびく山の寺    小澤 哲世
海風に桜紅葉の散り残る       樋野タカ子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子
一湾の波おだやかに野水仙      船木 淑子
借景に日本海置く冬木の芽      渡部美知子
小魚のひからびてゐし冬の波止    安食 彰彦
山深き古刹の道は秋深し       松﨑 吉江
仁王門潜れば紅葉明かりかな     松崎  勝

 荒木千都江特選
遠投の竿の冬日を弾きけり      三原 白鴉
裸木の中に際立つ冬紅葉       荒木 悦子
さざ波の小躍りしたる小春かな    渡部美知子
霜月の木立の影の尖りけり      三原 白鴉
師の墓所を抱き岬の山眠る      船木 淑子
   入選
銀杏散るはらはらと散る古刹かな   今津  保
推古寺の落つる木の実のひとしきり  福間 弘子
逞しき冬芽の育つ桜土手       三島 玉絵
銀杏散る宙にあそびてはなやぎて   渡部 幸子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子
借景に日本海置く冬木の芽      渡部美知子
初冬や入江に映す舟の影       杉原 栄子
花八ツ手再会の手を握り合ふ     荒木 悦子
湖岸打つ波も尖りて冬に入る     今津  保
冬凪やぎゆうと一湾引き締むる    久家 希世

 久家 希世特選
遠投の竿の冬日を弾きけり      三原 白鴉
僧坊の名残の礎石冬桜        牧野 邦子
小春凪竿一本の父子かな       福間 弘子
花八ツ手再会の手を握り合ふ     荒木 悦子
泊船へ波ひたひたと小六月      樋野久美子
   入選
仁王門潜れば紅葉明かりかな     松崎  勝
揚げ舟を繋ぐ電柱神の旅       三島 玉絵
紅葉狩今日の歩数は六千歩      杉原 栄子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子
からからと落葉転がる浦の路地    樋野 洋子
学校を保育所を閉ぢ山眠る      大菅たか子
谷川の瀬音すがしき紅葉かな     小林 永雄
師の墓所を抱き岬の山眠る      船木 淑子
塩飴を口にころがし秋惜しむ     樋野タカ子
せせらぎの幽かな音や谷紅葉     杉原 栄子

 渡部美知子特選
冬日和一湾小さき舟一つ       小澤 哲世
小春凪竿一本の父子かな       福間 弘子
鰐山をすつぽりつつみ山眠る     安食 彰彦
青木の実色付く先の獣道       竹元 抽彩
せせらぎの幽かな音や谷紅葉     杉原 栄子
   入選
うすもののやうなる冬の日ざしかな  荒木千都江
回りさうで回らぬ風車冬紅葉     大菅たか子
冬帽をつまんで会釈する男      安食 彰彦
揚げ網の山の並びし冬の浜      樋野 洋子
茶店ひとつ置かぬ紅葉の古刹かな   生馬 明子
こはごはと下る山路藪柑子      牧野 邦子
銀杏散る海抜十メートルの寺     原  和子
仁王門潜れば紅葉明かりかな     松崎  勝
境内は紅葉一面散り敷ける      松﨑 吉江
水鳥とぶ銀の糸ひつ張りて      渡部 幸子

 渡部 幸子特選
石蕗咲くや氏神様のふところに    樋野タカ子
一舟に初冬の光あつめけり      荒木千都江
間歩跡に恩師の声や竜の玉      福間 弘子
冬凪やぎゆうと一湾引き締むる    久家 希世
艫綱の微かな軋み小春凪       三原 白鴉
   入選
鰐山をすつぽりつつみ山眠る     安食 彰彦
海の風息止めてをり返り花      三島 玉絵
泊船へ波ひたひたと小六月      樋野久美子
引き起こす残菊の黄に汚れなし    牧野 邦子
裸木の中に際立つ冬紅葉       荒木 悦子
釣人の寄つては離る冬日和      渡部美知子
小春凪竿一本の父子かな       福間 弘子
落葉道からからからと追ひ抜かれ   荒木 悦子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子
師の墓所を抱き岬の山眠る      船木 淑子

当日の高得点句
  九点
借景に日本海置く冬木の芽      渡部美知子
  八点
師の墓所を抱き岬の山眠る      船木 淑子

 七点
鰐山をすつぽりつつみ山眠る     安食 彰彦
伝統の神楽舞ひ切り閉校す      樋野 洋子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子

  一句抄(氏名五十音順)
鰐山をすつぽりつつみ山眠る     安食 彰彦
落葉道からからからと追ひ抜かれ   荒木 悦子
一舟の初冬の光あつめけり      荒木千都江
茶店ひとつ置かぬ紅葉の古刹かな   生馬 明子
湖岸打つ波も尖りて冬に入る     今津  保
学校を保育所を閉ぢ山眠る      大菅たか子
冬晴れやねこ一匹の昼下り      小澤 哲世
茶の花のびつしり咲きて刈られをり  落合 武子
鰐山の深山眠りに入らむとす     久家 希世
谷川の瀬音すがしき紅葉かな     小林 永雄
紅葉狩今日の歩数は六千歩      杉原 栄子
青木の実色付く先の獣道       竹元 抽彩
賓頭慮尊者なでて冷たきつむりかな  原  和子
峡十戸友禅模様の冬紅葉       樋野久美子
石蕗咲くや氏神様の懐に       樋野タカ子
からからと落葉転がる浦の路地    樋野 洋子
間歩跡に恩師の声や竜の玉      福間 弘子
一湾の波おだやかに野水仙      船木 淑子
一湾をとんびの巡る小春かな     牧野 邦子
せせらぎの飛石五つや濡れ落葉    松崎  勝
山肌の緑の羊朶は紅葉乗せ      松﨑 吉江
一湾の波のうねりも雁の頃      三島 玉絵
霜月の木立の影の尖りけり      三原 白鴉
寄り添ひて心安らぐ浮寝鳥      山根 恒子
日当たりて路傍に寂し返り花     渡部 清子
冬天の朝月白し紅葉岳        渡部 幸子
冬帽子釣果確かめ過ぎ行けり     渡部美知子



平成31年2月号掲載 句会報
        群馬白魚火会
遠坂 耕筰

平成31年2月号へ 

 十一月二十日、定宿となった渋川市小野上温泉に於いて、平成最後となる祝賀句会及び忘年会が開催された。今年は特に暖かい小春日である。参加は二十二名。かつての賑やかさはここ数年なく、ちょっと寂しい。会員増は毎年の課題である。
 祝賀会は、このたび鳥雲集同人となった飯塚比呂子さん、白魚火同人となった関登志子さん、みづうみ賞奨励賞を獲得した竹内芳子さんのお三方が紹介された。竹内さんはたびたびみづうみ賞受賞者一覧に名を連ねている。私も以前は出したが、遠く及ばず。勉強してまた挑戦しようとここへ来るたびに思うのだが。お三方の挨拶、会長挨拶に続き句会となった。選句、披講の後、得点上位七位までに賞品、特選句には短冊が贈呈された。最後に篠原会長が講評を述べて句会を終了した。
 小野上温泉は美人の湯といわれる温泉以外何もない。外を散策することもなく、温泉ですべすべになった身体を浴衣に包み、宴席となる。群馬白魚火の面々、特に男性は酒豪が多く、夜の更けるまで杯を重ねて行った。

 篠原 庄治 特選
ささやきの聞こゆ落葉の吹き溜り   福嶋ふさ子
  関口都亦絵 特選
平成の名残の落穂手に余し      福嶋ふさ子
  奥木 温子 特選
右足を重ねてみたる朴落葉      鈴木百合子
  荒井 孝子 特選
平成の名残の落穂手に余し      福嶋ふさ子
  鈴木百合子 特選
虫すだく峡の月夜は水色に      奥木 温子
  飯塚比呂子 特選
湖といふ大きな鏡山眠る       奥木 温子
  竹内 芳子 特選
貴婦人と呼ぶ白樺を霧が抱く     荒井 孝子
  関 登志子 特選
古民家の土瓶湯気立て音をたて    八下田善水
  自選の句
貴婦人と呼ぶ白樺を霧が抱く     荒井 孝子
をさなの手すうつと離れ雪螢     飯塚比呂子
袴着のもう女湯に入らぬと      遠坂 耕筰
吊し柿揺るる一番ホームかな     荻原 富江
虫すだく峡の月夜は水色に      奥木 温子
白菊や薄き紅引き友の逝く      篠﨑吾都美
一ト朝に銀杏落葉の堆し       篠原 庄治
過ぐる日のあまりに早し石蕗の花   清水 春代
綿虫や母すぐそこにゐるやうな    鈴木百合子
一年の手塩にかけし菊花展      関  定由
柿たわわワクワク伸ばす竹の竿    関 仙治郎
凛として終の一花の冬薔薇      関 登志子
堂守の浅間押し説く榾明り      関口都亦絵
稲架の上鳶のひと声澄み渡る     関本都留子
紅葉狩喜寿も傘寿もお洒落して    仙田美名代
冬うらら姿見えねど鳶の声      竹内 芳子
ふしくれの指や勤労感謝の日     竹渕 秋生
平成の名残の落穂手に余し      福嶋ふさ子
秋うらら一度したかもこの話     町田由美子
流木のオブジェ際立つ石蕗の花    八下田善水



平成31年2月号掲載 句会報

   白岩主宰を招き一泊忘年吟行句会
       広島白魚火俳句会

溝西 澄恵

平成31年2月号へ 

 小春日和の十一月二十日。マイクロバスにて西条を出発。新山口駅にて白岩敏秀主宰、三原白鴉編集長補佐をお迎えして総勢二十七名。西の京山口から吟行を開始。
 室町時代、西国一の栄華を誇った大内家。その菩提の弔いに建立したという国宝瑠璃光寺五重塔。池には塔とともに色鮮やかな冬紅葉が映えていた。ふぐ雑炊の昼食で温もり、五重塔を遠見の雲谷庵(雪舟アトリエ跡)を訪ねる。その後、常栄寺雪舟庭園へ。本堂を挟み北側の庭園は広大で、雪舟の山水画そのままの景。南側は南瞑庭という枯山水様式の庭園。鑑賞後は、山口ふるさと伝承センターに移動して句会。

 白岩主宰 特選
返り花きらりと人をふり向かす   藤尾千代子
  三原 白鴉 特選
石庭の山茶花散らすほどの風    吉田 美鈴
  渡邉 春枝 特選
彫り深き木魚の鱗冬日濃し     溝西 澄恵

 句会終了後、主宰より「吟行の際には吟行地は詠まず、吟行地で起こったこと、見たこと、感じたこと等を詠むように」との指導を受ける。
  宿泊の場所は湯田温泉「かんぽの宿湯田」。
  忘年会は「渡邉さんを慰労する会」として、長年広島白魚火の代表を務めてくださった渡邉さんに、感謝の一句を寄せ書きにした色紙の贈呈で開始。新代表の奥田積さんの、この地に種を播かれ、今日の広島白魚火に育てあげられた功績、ご苦労を感謝され、今後の変わらぬ指導を願われる開会の挨拶。主宰と三原さんからの、広島での二回にわたる全国大会開催の成功、多数の人材輩出への謝意と労い、変わらぬご活躍への期待のお言葉。渡邉さんの心に残る思い出のお話に続いて、軽妙な中村義一さんの進行で恒例の全員一分間スピーチ。各々俳句との出会い、渡邉さんへの感謝の気持ち等を話す。出口廣志さんからはブラジルの誌友金本靜麿さんが、初任校での教え子であったこと、原田妙子さんは七月の集中豪雨で被災の際、とっさの荷に句帳と歳時記を入れていたことなどのスピーチがあり、吉田美鈴さんのハーモニカ伴奏で合唱。中村義一さんの「音戸の舟歌」を締めに、和気藹々の忘年会を閉じた。
  翌日は、大内氏邸宅跡、山頭火生家跡と巡り、防府天満宮では芳松庵で薄茶を頂き、山頭火ふるさと館に移動して午後句会。三原さんは列車の都合で投句されて帰
途につかれた。

 白岩主宰 特選
へうへうとして霜月の水を飲む  三原 白鴉
  渡邉 春枝 特選
鉄鉢のからの重さや初しぐれ   若林いわみ
  奥田  積 特選
へうへうとして霜月の水を飲む  三原 白鴉

 主宰より「句作を休むと五七五の感覚が鈍るので、毎日休まず句作に心がけるように」と指導を受けた。
  句会終了後、主宰を防府駅にお送りし、一路西条へ。予定どおり十八時に西条へ無事帰着した。

 一句抄
山茶花の散つて遠見の五重塔     白岩 敏秀
音のなき世界となりて紅葉散る    三原 白鴉
ボールペン拾つてもらふ石蕗咲けり  秋穂 幸恵
にぎやかに着ぶくれ車内狭うする   石原 幸子
瑠璃光寺水に映して冬はじめ     大江 孝子
蔵壁に朝の光や枇杷の花       奥田  積
冬ぬくし古塔は阿弥陀仏蔵し     大隈ひろみ
軒深き古塔は五重紅葉散る      樫本 恭子
朝寒の歳時記地図の旅支度      加藤三恵子
石組の竃の遺構枇杷の花       神田 弘子
からからと砂紋を走る枯葉かな    出口サツエ
端正に冬天を突く古塔かな      出口 廣志
冬日和拍手返す石畳         中村 義一
風鐸の揺るるに足らぬ小春風     挾間 敏子
色葉散る五重塔の屋根の反り     原田 妙子
皆で食ぶふぐ雑炊の旨さかな     廣川 惠子
七五三子をあやしつつ泣かせをり   福光  栄
冬紅葉相知らずして相親し      藤尾千代子
風鐸の緑青冴ゆる瑠璃光寺      古家美智子
雲低き空押し上げて冬木の芽     溝西 澄恵
声出して牧水の歌読む小春      源  伸枝
山茶花や画僧の庵の自在鉤      森田 陽子
神無月うぐひす張りの石畳      門前 峯子
石段の提灯いくつ七五三       吉田 博子
語り部の長州ことば冬日差      吉田 美鈴
石庭の波に音なし石蕗の花      若林いわみ
山頭火現はれさうな冬館       渡邉 春枝



平成31年3月号掲載 句会報
      旭川白魚火「忘年句会」
下吉まこと

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 十二月九日、旭川白魚火忘年句会が開催された。今冬の旭川は初雪が遅く、十二月の初旬にも雨がぱらつくことがあったが、忘年句会の前日からはぐっと冷え込んで最低気温がマイナス十度。本来の冬の厳しさを取り戻したようであった。
 この日の私は、坂本タカ女先生をお迎えにあがる役目を仰せつかった。タカ女先生は、この秋から有料老人ホームに入られている。冬晴れのプラタナス並木を通り抜けるタクシーの中で、料理や買い物をしなくなったこと、足腰が弱り散歩にもあまり行けず、外出は句会くらい、それによって俳句が作りにくくなった事等を話してくださった。三十三歳になったばかりの私には、ただただ相槌を打つことしか出来なかった。
 忘年句会は、この日マイナス十八度を記録した北見より金田野歩女先生、函館より山羽法子さん(転勤により士別市在住)、札幌からみづうみ賞受賞の奥野津矢子さん、西田美木子さん、小杉好恵さんの三名、鷹栖から藤原翠峯さんら四名、そして旭川から十一名、総勢二十人が集まった。私が参加した句会としてはこれほどの人数が集まったのは初めてで、身の置き所に困ってしまった。
 各自五句の出句であったがなぜか投句総数は一〇一句。一般選五句特選二句。読むだけでも大変な分量だが力作ぞろいで、選句にも力が入る。初登場の山羽法子さんの「粕汁の中の魚の目魚の口」が十一票を獲得、まさに圧巻であった。次いで藤原翠峯さんの「北風荒ぶ裸婦像しかと児を抱きて」に八票。選ばれなかった句についての作者の話を聞くのが私はとても好きなのだが人数の関係もあり、その時間が取れなかったのが心残りであった。同じく時間の都合で選評は懇親会へ持ち越された。
 懇親会では、恒例となったくじ引きで、敏美さんから山菜、銀杏、旭川近郊の雄大な自然の写真が贈られた。ほどよくお酒も入り、皆選評に気持ちよく聴き入っていた。時が経つのを忘れるほどの楽しい忘年句会となった。

 一句抄
北塞ぐにはか大工の印刷工      平間 純一
つつかえてあかぬ引出し年つまる   坂本タカ女
電飾の街並みを消す雪襖       金田野歩女
枕辺のティラノサウルス風邪寝の子  萩原 峯子
年忘れ筋書きのなき余生かな     吉川 紀子
ご無沙汰を詫びる厚着の身を縮め   小林さつき
落葉松の影の伸びゆく冬夕焼     沼澤 敏美
目に余る愚行に喝や冬の雷      望月よし生
寒昴裏返したき心地かな       下吉まこと
実柘榴のうれひを土へ放ちけり    淺井ゆうこ
風を呼びつづけポプラは裸木に    三浦香都子
マフラーに顔をうづめて海を聴く   小林布佐子
青春の古書にゆきあう冬籠り     藤原 翠峯
あかがねの蒸発皿や冬支度      山田 敬子
根付野菜整理となるやのつぺい汁   伝法谷恭子
石焼芋ふうふうはあふほをふほふ   畑山 禮子
木道の修復現場十二月        西田美木子
水もまた冬めく堰の細流れ      奥野津矢子
聖夜劇園児の馴れぬ蝶ネクタイ    小杉 好恵
雪しまき深夜ラジオのビートルズ   山羽 法子



平成31年3月号掲載 句会報

   平成三十年栃木白魚火忘年句会報

中村 國司

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 十二月二日(日曜日)宇都宮市民活動センターにて、星田一草栃木白魚火会長の瓢瓢としたご挨拶を頂戴しながら、二十五名による賑やかな忘年句会が催行されました。
 今年は、新たに参加された宇都宮支部の女性の皆さんによる句会運営を目指して、事前に周到な打ち合わせ会を持った上で進行されましたが、さすがに「人生の手練れ」とも言うべき皆さんの気配りの届いた運営は、参加者のこころを和ませて見事でした。
 栃木白魚火は、柴山要作幹事長の采配のもとで、年初の新年句会、春の総会、二回にわたる鍛錬会と、会員諸氏の技量の向上と親睦を図りつつ、年間計画を恙なく取り進めて参りました。その集大成としての忘年俳句会は、佳句はもとより、凄い句や、問題提起型の俳句も交えた百二十五句から、十句厳選の真剣勝負の場となりました。その成果は、無鑑査同人特選句とともに「今日の一句」として左に別記しましたのでご覧ください。
 さて、忘年会懇親会は場所を変えて「ホテル丸治」で二十名が参加して、一年の垢を落とすというより、これからどうするかとの話題を中心に和やかにとり行われました。
 栃木白魚火で酒を交えての会合は年間を通して忘年会しかありません。その采配を任されている筆者は果報者。方針として、忘年会の酒は「純米酒」に限り、それを好きなだけ飲んで欲しいと願っています。しかし羽目を外す人はなく、ほぼ予算内で収まってしまうのが残念と言えば残念なところでした。

無鑑査同人特選句
  星田一草 特選
つやつやと葱洗いあぐ外流し     田原桂子
  加茂都紀女 特選
ジャズの音のひびく街角赤い羽根   齋藤 都
  柴山要作 特選
落葉掃く無心のうしろ側通る     中村國司
  宇賀神尚男 特選
風神の心のままに銀杏散る      渡辺加代
  齋藤 都 特選
冬に入る動かぬ水に枝の影      星田一草
  星 揚子 特選
大根の煮汁の色に透けにけり     本倉裕子
  松本光子 特選
掃き終へしところよく散る紅葉かな  星 揚子

 「今日の一句」(五十音順)
素焼干す障子明かりの轆轤土間     秋葉 咲女
医学部の日溜り赤く冬木の芽      五十嵐藤重
柿照りて奈良悠久の石舞台       今井 佳子
水門の閉づるダム湖や浮寝鳥      上松 陽子
冬ぬくし猫が住み居り空家かな     宇賀神尚雄
伸子張るははの影ゆれ冬日ゆれ     江連 江女
冬の池一鏡面に凪ぎわたり       大野 静枝
単線の電車去りゆく冬景色       加茂都紀女
蜜柑食み「み」の文字を書く異国の児  菊池 まゆ
やはらかく綿虫包む手をひらく     熊倉 一彦
冬空へはしる梵天幟かな        小林 久子
近づけば灯る門灯暮早し        齋藤  都
大き口開けて小春の神の鯉       柴山 要作
踏切の皆背の丸む冬の朝        杉山 和美
スーパーに研ぎ屋来てをり年の暮    高島 文江
黎明の月を切り裂く鴉かな       田所 ハル
つやつやと葱洗いあぐ外流し      田原 桂子
冬に入る皇帝ダリア反り返り      中村 國司
皺の手の母に勤労感謝の日       中村 早苗
掃き終へしところよく散る紅葉かな   星  揚子
山眠る木喰仏に錠固く         星田 一草
土踏まずほぐす勤労感謝の日      松本 光子
大根の煮汁の色に透けにけり      本倉 裕子
隣家より程良き味の菊膾        谷田部シツイ
冬萌えや母はときどき幼子に      渡辺 加代



平成31年3月号掲載 句会報
     栃木白魚火新春俳句大会
高橋 裕子

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 栃木白魚火新春俳句大会が、街に成人式の晴着姿が見受けられる平成三十一年一月十三日(日)、宇都宮市中央生涯学習センターに於いて盛大に開催されました。
 新春の華やいだ雰囲気の中、星田一草会長より御挨拶をいただき、記念撮影の後、句会が始まりました。
 今大会の出句は五句。選句は会員七句(うち特選一句)、役員、鳥雲同人は十句(うち特選二句)で行われました。出席者二十九名、総数一四五句の秀句揃いの中からの選句には、なかなか絞り切れず皆様の苦悩が窺えました。約一時間の後、中村國司さん、松本光子さんによる披講が行われ、披講される一句一句に耳を澄ませ各自確認をしておりました。成績発表は集計係の渡辺加代さん、熊倉一彦さんにより行われ、表彰式となりました。表彰は、総合成績上位者と飛び賞並びに各役員の特選に賞品が授与されました。
 表彰後は星田一草会長、宇賀神尚雄、加茂都紀女副会長から、選評をいただき新春俳句大会が閉会となりました。

 当日の特選句並びに当日の一句
 星田一草 特選
おんおんと平成の世の除夜の鐘     加茂都紀女
日を零しこゑを零して寒雀       松本 光子
 宇賀神尚雄 特選
ほつこりと土盛り上げて福寿草     渡辺 加代
大霜や白き布めく草の原        佐藤 淑子
 加茂都紀女 特選
厳冬や棒のごとくの息を吐く      星田 一草
追羽子の音の重さを返しけり      星  揚子
 柴山要作 特選
四世代女系の囲む屠蘇の膳       秋葉 咲女
ジーンズの膝に大穴あく春着      中村 國司
 齋藤 都 特選
初空へ恙なき日々願ひけり       高橋 裕子
寒晴や翼大きく鳶の舞ふ        田原 桂子
 星 揚子 特選
若水を豊かに仕込む絹豆腐       秋葉 咲女
冬至湯の柚子の浮力を楽しめり     星田 一草
 松本光子 特選
回転ドアするり抜けたる去年今年    高橋 裕子
参道を真つ直ぐ射抜く初日かな     熊倉 一彦
 秋葉咲女 特選
薺粥母は赤子のごと吸ひぬ       江連 江女
初空へ恙なき日々願ひけり       高橋 裕子
 阿部晴江 特選
まつ新な白のおくるみ春を待つ     高橋 裕子
読み返す句帳に歴史年歩む       中村 早苗
 大野静枝 特選
畦道の馬力神にも飾り餅        渡辺 加代
見えてゐて遠き夜道や火事見舞     秋葉 咲女
 田原桂子 特選
果ててなほ舞台の余韻初神楽      西山 弓子
胸いつぱい榾火の温みもらひけり    星田 一草
 中村國司 特選
賀状来るこの樹何の樹ハワイの樹    菊池 まゆ
「どんど焼あついとだるまさん言つた」 西山 弓子

 当日の一句
胸いつぱい榾火の温みもらひけり    星田 一草
道一つ貫く田畑初景色         宇賀神尚雄
おんおんと平成の世の除夜の鐘     加茂都紀女
胸に日を向けて鈴成り初雀       柴山 要作
薄ら日に子を呼ぶ声や寒鴉       齋藤  都
追羽子の音の重さを返しけり      星  揚子
日を零しこゑを零して寒雀       松本 光子
若水を豊かに仕込む絹豆腐       秋葉 咲女
八溝嶺の稜線一気に初日射す      阿部 晴江
買初の亥年の小さき根付かな      大野 静枝
寒晴や翼大きく鳶の舞ふ        田原 桂子
老ふらりふらり初旅ムンク展      中村 國司
地の乾き天も乾きて寒九かな      今井 佳子
二重橋映すお濠の淑気かな       上松 陽子
元日や野州隈なく上天気        江連 江女
求肥透く花弁餅の紅仄か        菊池 まゆ
栃の木の天を目指せる冬芽かな     佐藤 淑子
白米の真中に宝珠寒卵         杉山 和美
とりどりの生きる道見ゆ初句会     田所 ハル
余白とは心の遊び雪見酒        中村 早苗
にぎやかに表札ふたつ実万両      谷田部シツイ
初詣長蛇の列の遅々として       和田伊都美
六〇年不器用に生き七日粥       熊倉 一彦
肩の荷を一つ捨て去り年迎ふ      高内 尚子
ひと口の白湯甘かりし寒日和      髙島 文江
「どんど焼あついとだるまさん言つた」 西山 弓子
二日目の風呂に浮く柚子沈む柚子    本倉 裕子
ほつこりと土盛り上げて福寿草     渡辺 加代
回転ドアするり抜けたる去年今年    高橋 裕子


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