最終更新日(update) 2018.06.01
句会報(H29) 転載
下記文字列をクリックするとその部分へジャンプします。
白魚火出雲俳句会 ―白岩主宰を迎えて― 平成30年2月号掲載
群馬白魚火会 平成30年2月号掲載
金曜句会合同句集 「君子蘭」祝賀会
平成30年2月号掲載
平成二十九年度栃木白魚火 第二回鍛練吟行句会 平成30年2月号掲載
坑道句会須佐神社吟行記 平成30年2月号掲載
旭川白魚火会忘年句会 平成30年3月号掲載
栃木白魚火忘年句会報 平成30年3月号掲載
旭川白魚火会新年句会 平成30年3月号掲載
栃木白魚火新春俳句大会 平成30年3月号掲載
坑道句会 荒木古川句碑吟行記 平成30年5月号掲載
名古屋句会 平成30年6月号掲載

浜松白魚火会
第二十回(創立三十周年記念)総会・句会

平成30年6月号掲載

句会報(H17-18)へ 句会報(H19-20)へ
句会報(H21-22)へ 句会報(H23)へ
句会報(H24)へ 句会報(H25)へ
句会報(H26)へ 句会報(H27)へ
句会報(H28)へ 句会報(H29)へ

 

平成30年2月号掲載 句会報

白魚火出雲俳句会―白岩主宰を迎えて―

山本 絹子

平成30年2月号へ 

 十一月二十六日(日)、白岩主宰にお越しいただき、白魚火出雲俳句会をJAしまね出雲地区本部会議室において開きました。この日の参会者は五十九名(出句は六十四名)、事前投句(各三句)について当日句会を行い、主宰の指導を仰ぎました。
 開会にあたり石川寿樹氏より「しっかり勉強して親睦を深めましょう。私は『みづうみ賞』に応募した時に白岩主宰より丁寧な評と指導をいただき感銘を受けましたので、今日はしっかり勉強したいと思います」という挨拶がありました。主宰からは「今日はたくさん集まっていただきありがとうございます。なごやかに大いに勉強していきましょう」との言葉をいただきました。
 句会ではまず三十分かけて互選を五句ずつ行いました。主宰には特選十句と入選二十五句を選んでいただきました。その後渡部美知子氏、西村松子氏によって披講がなされ、最後に主宰から、特選句、入選句の発表と選評をいただきました。
 その後主宰より次のようなお話やご指導をいただきました。
*選をする時に心がけていること。
 ・リズムが良い句であるか。リズムがあれば勢いが生れる。十七音を長く感じたり、途中でつかえたりするところがあるのは×
 ・作者が何を言おうとしているかイメージできる句であるか。
 ・景が見える句であるか。
 ・感じる句であるか。
  つまり読んですっと理解できる句かどうかが選の分かれ目。自分勝手な句は×
*誤字、脱字がないようにする。常に辞書を引いて確認する。
*料理の句は作者だけが満足しているのはいけない。食べてみたくなるように作る。
*連体形であるべきところを終止形にしてしまう間違いが多い。終止形と連体形では意味が違ってくる。サ行変格活用や下二段活用にも気をつける。
 ・「水溢る川」ではなく「水溢るる川」とする。終止形では「水溢る/川」と切れてしまう。水の溢れる川を言うなら「水溢るる川」としなければいけない。
 ・「神おはす出雲」ではなく「神おはする出雲」とする。「神おはす/出雲」と切れる。
 ・「寄す波」ではなく「寄する波」とする。「寄す/波」と切れる。
  未然形(下に「ず」がつく活用の形)にしたときに、「おはせず(サ変)」「寄せず(下二)」のように「ず」の上が「エ」音になるときは、連体形は「~る」ではなく「~する」となる。
*形容詞にも気をつける。
 ・「敷藁の厚き牡丹」ではなく「敷藁の厚し牡丹」とする。「厚き」と連体形にすると牡丹が厚いという意味になる。
*「て」の上には「ふ」をつけない。
 ・「花の名を問ふて」ではなく「問ひて」あるいは「問うて」となる。
  接続助詞「て」は、活用語の連用形につく。「問ふ」の連用形は「問ひ」なので、「問ひて」が正しい。「問うて」は「問ひて」のウ音便である。
*本が届いたら自分の句を見て、それが直してあったら、なぜ直されたかを考えてみる。直されるには理由がある。文法が違っているので直されたのかもしれない。あるいは景がよく見えるように直されたのかもしれない。そこを学んでほしい。
*俳句の作り方は、基本的には三通りである。
 ・「季語」「何が」「どうした」
 ・「何が」「季語」「どうした」
 ・「何が」「どうした」「季語」
 これをマスターすれば目に見えるものは、みんな俳句になる。日常がすべて俳句になる。

 白岩敏秀主宰詠
銅剣をレプリカにして山粧ふ
頂上や銀河しぐれのなかに坐す
深海のごとく村あり蕎麦の花

 白岩敏秀主宰特選句
胸板の厚き姫君村芝居        野田 弘子
エプロンの大きポケット栗拾ふ    小林 永雄
豊年や神輿の轅さらし巻く      小玉みづえ
肌寒や牛乳瓶をゆすぐ朝       原  和子
机上まで露けき夜となりにけり    山根 仙花
ガム噛んで二人の秋を惜しみけり   武永 江邨
濡れ縁の幽かな湿り月祀る      三島 玉絵
身に入むやもう擦り減らぬ母の下駄  岡 あさ乃
芭蕉忌を明日に控へてしぐれけり   渡部美知子
陸橋の錆色を巻く葛の花       木村 以佐

 白岩敏秀主宰入選句
石鼎の所縁の人と秋惜しむ      石川 寿樹
望の月共に仰ぎし師は遠く      山根 恒子
改札をすぎてまた聞く虫時雨     小林 永雄
秋風や渡りするもの羨まし      森山 暢子
宍道湖へ一閃の日矢神迎ふ      松崎  勝
清秋の碧天汚れなかりけり      渡部 幸子
空と海音を断ちたる良夜かな     渡部 幸子
鮭戻る邑さわがしくなりにけり    荒木 友子
白き毛糸編むや産着を縫ふ心地    陶山 京子
冬立てり揺るるものみな揺らしつつ  原  和子
夜寒さや満中陰の薄き文字      小村 絹代
裏木戸の音なく開く金木犀      荒木 悦子
傘立にありし白杖吾亦紅       寺田 悦子
本屋出て次の本屋へ秋うらら     武永 江邨
秋日和軒下に干す筆二本       三島 玉絵
満月や灯りを消して酌み交はす    足立智恵子
島つなぐ一本の橋野水仙       福間 弘子
ランナーの巻き上げてゆく落葉かな  三原 白鴉
雨音の消えし闇よりすがれ虫     木村 以佐
秋蝶の迷ひ込みたる一号車      原田万里子
潮の香を纏ひ砂丘の秋惜しむ     西村 松子
神名火山の裾の広さや稲架を組む   西村 松子
蜑路地を曲がれば秋の日本海     生馬 明子
色変へぬ松や土蔵の連子窓      藤原 益世
櫓田を出雲駅伝駆けぬける      森脇 和惠

 高得点句
身に入むやもう擦り減らぬ母の下駄  岡 あさ乃
宍道湖へ一閃の日矢神迎ふ      松崎  勝
胸板の厚き姫君村芝居        野田 弘子
濡れ縁の幽かな湿り月祀る      三島 玉絵

 一句抄(氏名の五十音順)
すいつちよに支配されゐる写経の間  赤木 千津
満月や灯りを消して酌み交はす    足立智恵子
ヘッドライトの闇を開きて穴惑    安達美和子
裏木戸の音なく開く金木犀      荒木 悦子
水の秋芥も底に影もちて       荒木千都江
鮭戻る邑さわがしくなりにけり    荒木 友子
蜑路地を曲がれば秋の日本海     生馬 明子
石鼎の所縁の人と秋惜しむ      石川 寿樹
手水舎の水清くして初紅葉      上田惠美子
風遊ぶ軒下に干すちやんちやんこ   江角トモ子
グラス持つ赤いネイルや曼珠沙華   円城寺圓々
身に入むやもう擦り減らぬ母の下駄  岡 あさ乃
夜寒さや満中陰の薄き文字      小村 絹代
神おはする出雲へ招く主宰待つ    小沢 房子
奥宮へ磴五十段竜の玉        角田 和子
菊日和丹精の鉢回し見る       勝部 好美
残る虫晩げの言葉重なりぬ      金織 豊子
秋落暉海を切りゆく戻り船      川本すみ江
陸橋の錆色を巻く葛の花       木村 以佐
尾花摺水かぶりゐる沈下橋      久家 希世
ゆつたりと鳶の影舞ふ花野かな    郷原 和子
豊年や神輿の轅さらし巻く      小玉みづえ
エプロンの大きポケット栗拾ふ    小林 永雄
白き毛糸編むや産着を縫ふ心地    陶山 京子
ただ海を見てをり砂丘に秋惜しむ   妹尾 福子
十五夜は雲の動きに遊びをり     多久田豊子
ガム噛んで二人の秋を惜しみけり   武永 江邨
鐘の音の流るる湖や月を待つ     土江 比露
傘立にありし白杖吾亦紅       寺田 悦子
神棚へおろちの里の新走り      中林 延子
潮の香を纏ひ砂丘の秋惜しむ     西村 松子
胸板の厚き姫君村芝居        野田 弘子
冬立てり揺るるものみな揺らしつつ  原  和子
国引きの神話の浜の秋夕焼      原  みさ
故郷の風の甘さや柿すだれ      原田万里子
遠方へ転居の跡の柿熟るる      樋野 洋子
島つなぐ一本の橋野水仙       福間 弘子
松籟の止みてひときは残る虫     藤江 喨子
色変へぬ松や土蔵の連子窓      藤原 益世
鴨の陣向き変へ夕日くづしけり    船木 淑子
山粧ふ停りしままの水車小屋     細田 益子
夜稽古の鼕の震はす望の月      牧野 邦子
宍道湖へ一閃の日矢神迎ふ      松崎  勝
二十基の鼕宮の列秋惜しむ      松﨑 吉江
濡れ縁の幽かな湿り月祀る      三島 玉絵
ランナーの巻き上げてゆく落葉かな  三原 白鴉
まあ一杯膝を交へて村祭       森山 啓子
新品の法被慣じまず里祭       森山真由美
櫓田を出雲駅伝駆けぬける      森脇 和惠
簸の川の水面をゆらす渡り鳥     山﨑 敬子
机上まで露けき夜となりにけり    山根 仙花
望の月共に仰ぎし師は遠く      山根 恒子
木立透き句帳に届く秋日濃し     山根 弘子
繰り返し師の句を唱ふ夜長かな    山本 絹子
学童の声の飛び交ふ新松子      渡部 清子
清秋の碧天汚れなかりけり      渡部 幸子
芭蕉忌を明日に控へてしぐれけり   渡部美知子
栗拾ふポケットいつぱい手にいつぱい 渡部美智子
安食編集長は欠席でした。

 句会終了後、会場を隣のラピタ本店に移し、にぎやかに懇親会をしました。お互いに自己紹介をし合い理解を深めるとともに、これからも楽しく句作を続けることを誓い合いました。


平成30年2月号掲載 句会報
       群馬白魚火会
遠坂 耕筰

平成30年2月号へ 

 十一月二十七日、渋川市小野上温泉に於いて恒例の祝賀句会及び忘年会が開催された。毎年この時期は概ね天候に恵まれ、小春日和である。
 八下田善水さんと桐生を出たのは九時過ぎで、赤城山南面の県道をのんびりと車を走らす。道すがら大根が干してあったりする。赤城大鳥居を過ぎると遥か正面に雪を被った浅間山が見えてくる。その真新しい白さは無垢の美しさで、一都師が愛したその山容も雄大である。さらにその裾の角度は富士山とも月山とも違った絶妙の黄金率である。途中、道の駅こもちの食事処で早い昼食をとる。上州豚のカツ丼が人気メニューで、大盛りを注文する猛者
もいる。近くには白井宿があり、八重桜の季節は必見。
 会場入りから恙なく投句が揃い、開式となった。式典では今年度みづうみ賞奨励賞の竹内芳子さんへ、また新同人の関定由さんへ群馬白魚火会より記念品の贈呈があり、お二人から謝辞が述べられた。篠原会長の挨拶の後句会となり五句選句披講の後、得点上位七位までに景品、特選句に代表選者の短冊が贈呈された。最後に金井顧問が講評を述べられ句会を終了した。
 心地良い緊張から解かれて温泉に入る。文字通りの短日、暮早し。露天風呂はタやみに包まれていた。湯上りのビールを楽しみにいそいそと宴会場へ向かう。毎年恒例で同じようであるが同じではない。皆それぞれ時の流れを背負い、じわりと齢を重ねて行くのである。
  関口都亦絵 特選
堂守の煤焼けの面冬に入る     鈴木百合子
  金井 秀穂 特選
一点の瑕疵なき白さ雪浅間     遠坂 耕筰
  奥木 温子 特選
瑠璃色の空より柿を捥ぎにけり   鈴木百合子
  篠原 庄治 特選
穭田も枯れて浮世の風渡る     遠坂 耕筰
  荒井 孝子 特選
堂守の煤焼けの面冬に入る     鈴木百合子
  鈴木百合子 特選
冬月の梢に絡みつつ沈む      遠坂 耕筰
  竹内 芳子 特選
高楼に一の間二の間蔦紅葉     荒井 孝子
  関  定由 特選
産土のなつかしき顔里神楽     関 登志子
  一句抄(五十音順)
秋深し齢かくせぬ老農夫      青栁 一誠
冬ざるる切つ先磨し妙義山     天野 幸尖
高楼に一の間二の間蔦紅葉     荒井 孝子
野を渡る風しらしらと初時雨    飯塚比呂子
菊膾米寿の夫を祝い酒       岩﨑 昌子
一点の瑕疵なき白さ雪浅間     遠坂 耕筰
作業着のペンキの匂ふ小春かな   荻原 富江
錦秋や頷き歩む夫婦鳩       奥木 温子
指呼に置く榛名八峰冬うらら    金井 秀穂
りんご売る今日の店番小学生    篠崎吾都美
心地良き鋏のひびき松手入     篠原 庄治
瑠璃色の空より柿を捥ぎにけり   鈴木百合子
秋夜長多読多作に句誌を読む    関  定由
病みてまた知ることもあり冬薔薇  関 仙治郎
初雪に故無く心おどりけり     関 登志子
木の橋の木の香水の香紅葉狩    関口都亦絵
黄落の里に牧水帰去来       関本都留子
万人が一人占めして望の月     仙田美名代
小春日や夫の足音杖の音      竹内 芳子
かたはらで九九の暗唱夜長の灯   福嶋ふさ子
水澄んで低き峰から暮れにけり   宮﨑鳳仙花
継がれゆく足尾銅山初時雨     八下田善水


平成30年2月号掲載 句会報
 金曜句会合同句集「君子蘭」祝賀会  
高山 京子

平成30年2月号へ 

 十一月になり天気予報に雪だるまも見かける頃となりました。
 月に二回の金曜句会が十年目を迎えました。記念して合同句集「君子蘭」を上梓し、その祝賀会を十七日に湯の川温泉KKRホテルで開催いたしました。
 元会員の方々や、最近東京へ転居された小嶋都志子さんも駆けつけて下さいました。
 ただ残念なことに太田裕子さんが先日急逝されましたので皆で黙祷を捧げました。
 参加者は十五名で昼食をはさんで行われました。まず全員からの感謝の花束が今井星女先生に贈呈されました。続く記念撮影も、少しおしゃれした皆さんの笑顔が大きな花束となったように思います。
 星女先生から「君子蘭」についてお寄せ頂いたお便りが紹介されました。
その中で村上尚子先生からの一人一句を選んで下さったページは、コピーされて皆さんに渡されました。
 その後の「我が一句を語る」コーナーでは、各自の一句の背景などを、自由にお話して頂きました。
 つづく余興に、佐藤妙子さんが星女先生の俳句「君子蘭」二句を詩吟として吟じました。私もささやかながらアイヌ楽器ムックリを爪弾きました。國田修司さんによるアコーデオン伴奏の全員合唱では「四季の歌」「もみじ」・・・と次々懐かしい歌が流れました。
 星女先生を中心にして和気藹々と、楽しい祝賀会でした。先生に感謝し益々の金曜句会の発展を願いながら無事終えることが出来ました。


平成30年2月号掲載 句会報
平成二十九年度栃木白魚火 第二回鍛練吟行句会
星  揚子

平成30年2月号へ 

 十一月十日、栃木白魚火第二回鍛練吟行会が参加者十八名のもとに行われた。吟行地は芭蕉が『奥の細道』で十四日間滞在したとされる黒羽。
 貸切バスでまず東山雲巌寺に向かう。雲巌寺は臨済宗妙心寺派で、禅宗日本四大道場の一つ。澄んだ川を眺めつつ朱塗りの反り橋を渡り、石段を登ると山門がある。そして、その先には仏殿、禅堂、勅使門等が静かに佇んでいた。ここには芭蕉の「木啄も庵はやぶらず夏木立」の句碑がある。
 次は黒羽山大雄寺。大雄寺は曹洞宗の禅寺で、黒羽藩主大関家累代の菩提寺になっている。茅葺の総門、禅堂、庫裏、本堂は廻廊で結ばれていて、住職が案内してくれた。また、板絵の十六羅漢図や幽霊図も見せてもらった。幽霊図は住職が美しいと話されたように恐ろしくはなかったが、見る人がどこにいても見ているように見えるのはやはり怖かった。大雄寺は今年七月三十一日に国指定重要文化財になった。
 昼食は具を選んでの二個の御焼定食。朝食が早かっただけに格別においしかった。
 午後は旧浄法寺邸(芭蕉の門人、黒羽藩城代家老浄法寺図書高勝《俳号秋鴉また桃雪》屋敷)跡を見て句会場の黒羽芭蕉の館へ。様々な紅葉、黄葉明かりの下には加藤楸邨揮毫による「山も庭もうごき入るや夏座敷」の句碑が建立されていた。黒羽城址はすぐそばにある。
 句会は第一回が七句出句、十句選(一句特選)。第二回が帰りのバスで三句出句、後日誌上句会。兼題「湯豆腐」をどちらかに出句。 
 快晴で紅葉も見頃の時に実施した鍛練吟行会は多くの句材にも恵まれ、充実したものとなった。大きく真っ赤な入り日を車窓に見ながら帰路に就いた。

 星田一草特選
御焼二個が胃に落ちてゆく小春かな   本倉 裕子
 柴山要作特選
幽霊図に佇てばひしひし堂の冷え    大野 静枝
 松本光子特選
身に入むや幽霊の絵に睨まれて     谷田部シツイ
 秋葉咲女特選
撫でて読む芭蕉の句碑に紅葉散る    星田 一草
 阿部晴江特選
大雄寺萱の大屋根金の紋        鷹羽 克子
 東不二重特選
水音の冬も豊かに雲巌寺        星  揚子
 大野静枝特選
身に入むや幽霊の絵に睨まれて     谷田部シツイ
 中村國司特選
御焼二個が胃に落ちてゆく小春かな   本倉 裕子
 星 揚子特選
本丸を抜け道ひとつ花茶垣       阿部 晴江

 一句抄
うすうすと雲薄々と冬桜        星田 一草
秋天に昼の月置く雲巌寺        秋葉 咲女
日矢受けて羅漢の足の霜光る      阿部 晴江
竜の玉一つ握りて幽霊図        東 不二重
参拝の後ろに木の葉時雨かな      江連 江女
団栗や作務の箒の先転げ        大野 静枝
僧堂にストーブ二基や寝て一畳     熊倉 一彦
雲巌寺肌に初冬の大気かな       佐藤 淑子
色鳥の声高みより芭蕉句碑       柴山 要作
山寺の花の名を問ひ秋闌ける      杉山 和美
大雄寺萱の大屋根金の紋        鷹羽 克子
蝮草実を竹林の落款に         中村 國司
鎮もれる古刹の庭や実南天       中村 早苗
賽銭のことりと落つる小春かな     松本 光子
御焼二個が胃に落ちてゆく小春かな   本倉 裕子
身に入むや幽霊の絵に睨まれて     谷田部シツイ
本堂の天蓋白く秋深し         渡辺 加代
水音の冬も豊かに雲巌寺        星  揚子



平成30年2月号掲載 句会報
    坑道句会須佐神社吟行記  
原  和子

平成30年2月号へ 

 坑道句会は、仁尾正文前主宰が出雲市河下町(旧平田市河下町)の鰐淵鉱山に勤務なされた折に起ち上げられた歴史ある句会です。長年お世話を戴いた小林梨花先生を失って、句会は中断された状態でしたが、安食編集長の肝いりで、梨花先生の代わりのお世話役も出来て一昨年十二月再出発となり、以来隔月で吟行句会が行われています。再興なって嬉しい限りです。
 昨年十二月十一日(月)、須佐神社吟行の日は、予報で日本列島に冬に入って一番の強い寒波が訪れるとされた日の前日でした。これに恐れをなしたというわけではないでしょうが、句会場となる出雲須佐温泉「ゆかり館」の送迎バスで拾い集めてもらった元気の良い出席者は、いつもより十名ほど少ない十六名。須佐川に架かる宮橋を渡って寒風吹き荒ぶ須佐神社の鳥居の前でバスを降りたのは、午前十時二十分でした。
 途中の径々に期待していた山の紅葉は全て終わっていて、冬木立と裸木の山径ばかりで少しがっかりしましたが、バスの中の賑やかな話し声、笑い声に包まれての到着でした。
 須佐神社は、出雲國風土記には「須佐社」とあり、須佐之男命の終焉の地と伝えられています。今迄に幾度も訪れたことのある御社でしたが、それでも来るたびに新しい発見はあるものです。拝殿の前には、二、三日前に降ったと思われる屋根の垂り雪が固まっていました。
 じっとしていられないような冷気、境内を吹き抜ける強い風、カラカラと駈け回る落葉に追い立てられるように境内を一巡りしました。本殿のすぐ裏に聳え立つ千三百年程も経ているという大杉の荘厳さを仰ぎ見ていると、夏には涼しさを満喫させてくれるせせらぎは、今は身を凍らせるような川音、淵の碧さとなって迫ってきます。そんな時、誰かが本殿横の榊の木の一枝に潜む「凍蝶」を見つけました。言葉としては知っている積りでも実物を間近に目にしたのは初めてのことでした。この寒風の中で葉の裏にしっかりとしがみつく凍蝶はとても神聖なもののように愛おしく、皆でぐるりを取り巻いて暫く眺めておりました。
 そして、当日の句会には、凍蝶の句が沢山出されました。この日の吟行で一番心に残ったことは、とても寒かったこと、そこに生き抜く凍蝶に出会えたことでした。

山根 仙花選
特 選

羽固く畳みて潜む冬の蝶    玉 絵
賽沈む塩井冬天うつしをり   比 露
神杉を見上ぐる冬の空青し   淑 子
凍蝶に集ふ女や須佐の宮    洋 子
足元の危ふき道や濡れ落葉   清 子
入 選
礼拝の小脇にはさむ冬帽子   比 露
揃へある木沓の影にある寒さ  彰 彦
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
あめ色の竹の結界冬の宮    玉 絵

安食 彰彦選
特 選

礼拝の小脇にはさむ冬帽子   比 露
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
ただ寒し寒し風音水の音    仙 花
入 選
賽沈む塩井冬天うつしをり   比 露
柿熟す峡の暮らしの余りもの  希 世
凍蝶の神籤とまがふ白さかな  和 子
賽打てば神も寒しと申されし  千都江
千年杉凩抱けば空青し     明 子

三島 玉絵選
特 選

ただ寒し寒し風音水の音    仙 花
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
賽沈む塩井冬天うつしをり   比 露
入 選
凍蝶に集ふ女や須佐の宮    洋 子
揃へある木沓の影にある寒さ  彰 彦
凍蝶の神籤とまがふ白さかな  和 子
賽打てば神も寒しと申されし  千都江
冬天や神馬はぴんと耳を立つ  和 子

荒木千都江選
特 選

賽沈む塩井冬天うつしをり   比 露
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
あめ色の竹の結界冬の宮    玉 絵
入 選
千年杉凩抱けば空青し     明 子
冬日射柏の神紋輝けり     恒 子
神杉の苔の走り根冬の風    絹 子
寒風や杉の実屋根を叩く音   淑 子
神杉のぱりつと乾く空つ風   希 世

久家 希世選
特 選

柏手を打ち咳等を零さずに   彰 彦
塩井の賽銭冬の水揺らし    絹 子
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
入 選
あめ色の竹の結界冬の宮    玉 絵
塵ひとつ許さぬ社枯葉舞ふ   彰 彦
賽打てば神も寒しと申されし  千都江
冬日射柏の神紋輝けり     恒 子
賽沈む塩井冬天うつしをり   比 露

渡部 幸子選
特 選

四つ手網括られてをり冬の川  白 鴉
凍蝶の神籤とまがふ白さかな  和 子
揃へある木沓の影にある寒さ  彰 彦
入 選
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
歓迎板の名前大きく枯木宿   明 子
塵ひとつ許さぬ社枯葉舞ふ   彰 彦
冬天や神馬はぴんと耳を立つ  和 子
凍蝶の結ぶみくじに紛れをり  淑 子

今日の一句 五十音順
千年杉凩抱けば空青し     明 子
柏手を打ち咳等を零さずに   彰 彦
初雪の残るに触れて参拝す   以 佐
凍蝶の神籤とまがふ白さかな  和 子
塩井の賽銭冬の水揺らし    絹 子
柿熟す峡の暮らしの余りもの  希 世
足元の危ふき道や濡れ落葉   清 子
凍蝶のぴくりと動くたなごころ 幸 子
神杉を見上ぐる冬の空青し   淑 子
ただ寒し寒し風音水の音    仙 花
羽固く畳みて潜む冬の蝶    玉 絵
賽打てば神も寒しと申されし  千都江
冬日射柏の神紋輝けり     恒 子
神杉の冬の大地を掴み立つ   白 鴉
賽沈む塩井冬天うつしをり   比 露
凍蝶に集ふ女や須佐の宮    洋 子



平成30年3月号掲載 句会報
     旭川白魚火会忘年句会
淺井ゆうこ

平成30年3月号へ 

 十二月九日、旭川白魚火会忘年句会を市内で催した。会場の旅館は見晴らしの良い高台にあり、例年よりも遅い根雪に覆われた旭川の街並みが青空の下に広がる。雪による交通トラブルもなく、札幌から美木子、津矢子、紗和、琴美の四名が参加し、総勢十六名での賑やかな句会となった。各自五句投句。人工の滝を流れ落ちる水のほか動くもののない中庭の雪景色を眺めつつ、絞りに絞って五句を選句。一年の締めくくりとなる集い、いつもと違う会場と顔ぶれに、何とはなしに雰囲気も華やぐ。来年三月に九十歳を迎えられるタカ女先生は、腰掛けた籐の座椅子の上から佳句や評に惜しみなく拍手を下さり、あっという間に時の過ぎる句座となった。ちなみに、最高点句は「あぶりたる目玉の抜けし潤目かな」のタカ女先生の句でした。
 句会の後は、フロアーを替えての宴会。純一さんと純子さんの持参した地元の新酒とともに、季節の料理と新蕎麦を賞味する。夜の庭に細雪が降り出し、「雪の庭を見て一句」という純一さんの号令で一同作句にかかる。音数を指折り数え、酔いにもつれる舌で句を発表。宴もたけなわとなり、恒例のお楽しみアミダくじ。敏美さんが春から秋にかけて採った各種の山菜、美瑛等で撮影し、額装した写真が景品に並ぶ。贈呈にあたる敏美さんに代わり、景品を手にした各人の喜びの表情を、若手のまことさんが手際よくカメラに納める。大いに語らい、楽しむ忘年句会となった。
 当日の各自詠句は、次のとおりです。
返事する猫のしつぽや冬温し      タカ女
凍つる夜は蹼かかへ眠りけり      純 一
裸木の真正直なる姿かな        美木子
寒いとか寒くないとかチョコレート   津矢子
置き忘れのポシェット戻りクリスマス  紗 和
新館と言へど百年煤払ふ        琴 美
考ふる時の頬杖漱石忌         峯 子
冬麗やセカンドライフのほほんと    紀 子
冬籠ねずみの如くりんご食む      さつき
眠る窓眠らぬ窓や冬の月        布佐子
雪掻きの残りは米を研いでから     純 子
朱を極めたちまち消ゆる冬茜      敏 美
きりたんぽ民宿女将の艶話       公 春
一時は生死を離れ年忘         よし生
俳句もてヒトに戻れる日向ぼこ     まこと
日記買ふ二十四節季書き入れる     ゆうこ



平成30年3月号掲載 句会報
     栃木白魚火忘年句会報  
秋葉 咲女

平成30年3月号へ 

 師走に入り、歳末たすけあいの募金の呼びかけや若者達で賑わう小春日和の十二月三日(日)恒例の忘年句会が、宇都宮中央生涯学習センターに於て、二十二名の参加のもとに開催されました。
 句会は宇都宮支部長の中村國司さんの司会により進められました。冒頭、星田一草会長の挨拶と一年間の労いのお言葉を頂きました。引き続き、柴山要作幹事長から新春句会の通知と合同句集の原稿募集についての説明があり句会に入りました。
 句会は五句投句、十句選で行ない、披講は中村國司さん、松本光子さんが担当され、熊倉一彦さんにより五位までの入賞者が発表され、賞品が授与されました。最後に星田会長の選評を頂き、記念撮影で和やかなうちに句会が終了しました。
 その後、会場を移し忘年会が行われ、日頃の句作の苦労や、喜びなど話しが尽きないなか、一年間の活動を互いに労いながら解散となりました。
 参加者の当日の一句は次のとおり

山茶花はいつも満開咲き継ぎて   星田 一草
筑波嶺の空のはるけき小春かな   宇賀神尚雄
ぼうたんの冬芽しつかと雲巌寺   柴山 要作
逃げやすき日差しを捉へ銀杏舞ふ  阿部 晴江
この森の小春を抱き師の見舞ひ   今井 佳子
乳牛の下りし牧の小春かな     上松 陽子
白障子ぴたりと閉ざし庫裏の昼   江連 江女
改札に駆け込む息の白きまま    大野 静枝
腺癌の娘の振袖や冬隣       菊池 まゆ
待合の窓の筑波嶺暮早し      熊倉 一彦
短日や片翳りたるビル狭間     小林 久子
おでん鍋二膳の箸のさし向かひ   鷹羽 克子
おだやかに円墳の座し冬の草    田原 桂子
罠にゐて瞳の優しさうな猪     中村 國司
今日からは葉牡丹に替ふ花時計   中村 早苗
小春日の笑ひて動く稚の足     星  揚子
風呂敷に包む菓子折り一葉忌    松本 光子
影連れて雑魚の泳ぎし小春かな   本倉 裕子
赤松の幹赤々と冬日没る      谷田部シツイ
菰巻きの松どつしりと冠木門    渡辺 加代
来し方の埋火のごと夢のごと    和田伊都美
荒縄の縒の緩みや干大根      秋葉 咲女



平成30年3月号掲載 句会報
     旭川白魚火会新年句会
淺井ゆうこ

平成30年3月号へ 

 二〇一八年の活動の最初となる一月八日の旭川白魚火会新年句会、所用のあった私は〈欠席〉の便りを出していた。用事の日を一日勘違いしていたことに気づいたのは、年が明けてからだった。松が明けたばかりの市街にはまだ人もまばらで、白い曇り空に正月の雰囲気が残っていた。「皆さんに新年のご挨拶だけでも」とまことさんの後ろに隠れてトーヨーホテルの一室を窺った数分後、私は椅子にかけて、焙じ茶を飲みながら、さつきさんのお姉さんが干したという市田柿をちぎって食べていた。懐紙には米俵を積んだ寶船の絵が描かれていた。
 札幌から佳範さんが参加、総勢十二名での新年句会となった。各自五句投句、五句選句。気分一新の年頭のためか佳句が多く、各々選句に難儀する。ラジオや映画のこぼれ話、選びきれなかった句にも言及したり、わいわいと大いに意見を交わす。鮮やかな紫の着物でいらした早知さんの三句にタカ女先生の特選の星が付き、拍手が送られる。特選句の作者へ、タカ女先生と純一さんより新年句会恒例の短冊の贈呈、一同初写真に納まり、句会は終了。
 フロアを移しての宴会。佳範さんが風邪のためここで退場。奇しくも飛び入り参加の私が司会を引き継ぐ事となった筈だったが、蛸と生野菜のカルパッチョ、馬鈴薯の葛餡かけ、小蕎麦、帆立ご飯と次々並ぶ料理と真摯に向き合ううちに有耶無耶になってしまった。三月に九十歳のお誕生日を迎え会長を退かれるタカ女先生の周りには、かわるがわる小さな人の輪が出来つづけていた。なんとはなしに、ヨーロッパの小さな教会の風景を思った。
 二次会はタカ女先生と有志六名でカラオケボックスへ。純一さんとタカ女先生がマイクを握り「勘太郎月夜唄」を歌う。
 乀影か柳か 勘太郎さんが
  伊那は七谷 糸ひく煙り・・・
 「この歌を聴くとね、十七歳の女学校の頃を思い出すの」と頻りに懐かしそうにおっしゃる頬のあたりが、月明かりを浴びたように淡く光って見えた。
 三月二十一日に「合同句集「鷹の仔」出版記念・タカ女先生卒寿祝賀会」を催す。合同句集は、編集委員のご尽力により近々に校正を控えているとのことです。

 新年句会の各自詠句は、次のとおりです。

年の瀬の時計の遅れ正しけり   タカ女
息を吹きかけ磨く姿見年惜しむ  純 一
音声のタイムラグある初電話   峯 子
誰に見すともなき寒の紅をひく  さつき
真直ぐが好きな性格注連飾    佳 範
賀状来る大文字小文字丸い文字  早 知
自画自賛意気揚々の初句会    敏 美
熱燗や政治経済説くをなご    公 春
天元へ碁石打つ気合天狼星    よし生
人日に言の葉にする俳句かな   まこと
万事是自然法爾や玉箒      ゆうこ
雪の上に大の字北海道が好き   香都子



平成30年3月号掲載 句会報
    栃木白魚火新春俳句大会  
江連 江女

平成30年3月号へ 

 平成三十年一月十四日、宇都宮市中央生涯学習センターに於いて、厳寒の中二十七名の参加者で栃木白魚火新春俳句大会が開催されました。
 星田会長より新年のご挨拶があり、又中村國司さんの活躍を称えるお話がありました。
 中村國司さんは昨年の白魚火賞に引き続きみづうみ賞秀作賞を受賞されましたので、皆さんの温かい拍手の中花束贈呈が行われました。次に柴山幹事長より新会員となられた佐藤淑子さんの紹介がありました。
 句会は五句出句で七句選(うち特選一句)、役員・鳥雲同人は十句選(うち特選二句)で行なわれました。句会終了後は総合成績、特選賞の表彰を行い、記念写真を撮り散会となりました。
 選者特選句及び参加者の今日の一句は、次のとおりです。

 星田一草特選
○初護摩や駆け登り来るサッカー部  柴山 要作
○刻々と氷柱の伸ぶる静寂かな    谷田部シツイ

 宇賀神尚雄特選
○寒紅梅ほつこり蕾ほどきけり    小林 久子
○玲瓏と空の抜けたり大旦      和田伊都美

 加茂都紀女特選
○健康が一番と母年迎ふ       杉山 和美
 冬至ゆず一個浮かべて黒田節    中村 國司

 柴山要作特選
○麦三寸畝間の土の匂ひ立つ     星田 一草
 まだありし冬至南瓜を切る力    加茂都紀女

 齋藤都特選
○冬木立ひときは高く法務局     中村 國司
 奉納の大き絵馬背に初写真     谷田部シツイ

 星揚子特選
○九十六才虫歯の父の節料理     石岡ヒロ子
○笊色となりて切干し終へにけり   本倉 裕子

 松本光子特選
○刻々と氷柱の伸ぶる静寂かな    谷田部シツイ
○麦三寸畝間の土の匂ひ立つ     星田 一草

 阿部晴江特選
 日脚伸ぶ夫の床上げ近くなり    杉山 和美
 少年の飛び出してゆく初稽古    加茂都紀女

 秋葉咲女特選
 飛ぶもののみな輝ける初明り    星田 一草
 野の果ての嶺々の耀ふ初景色    星田 一草

 大野静枝特選
 切り傷の治る暇なし年の暮     石岡ヒロ子
 初明り百穴百の思惟仏       星田 一草

 田原桂子特選
○冬木立ひときは高く法務局     中村 國司
○鷹の舞ふ境界線なき那須の空    秋葉 咲女
 中村國司特選
 きつちりと靴揃へある淑気かな   江連 江女
○眺めゐる老いのふたりも初景色   宇賀神尚雄
(○は今日の一句)

今日の一句
去年今年父の手擦の農事録      阿部 晴江
風花や光の翳にうら表        今井 佳子
馬簾舞ふ空清々し出初かな      上松 陽子
数の子や男勝りのひとりつ子     江連 江女
夜勤明け手足を伸ばす初湯かな    大野 静枝
書初の紙をはみ出す四字熟語     加茂都紀女
堂々と主人の構へ飾海老       菊池 まゆ
コテメンドー踏み込強く寒稽古    熊倉 一彦
昼の月冬青空へかくれけり      齋藤  都
遠景の初富士確と日の暮るる     佐藤 淑子
年賀状切手貼り足す八日かな     髙島 文江
校塔に日射あふれてお元日      田原 桂子
運勢は末吉とあり初みくじ      中村 早苗
足着けば跳ぬるシーソー日脚伸ぶ   星  揚子
湛然と風遣り過す蓮の骨       松本 光子
日矢さして臘梅の色動きけり     渡辺 加代



平成30年5月号掲載 句会報
   坑道句会 荒木古川句碑吟行記
森山 暢子

平成30年5月号へ 

 おだやかな日差しの二月二十六日、坑道句会に参加するため、一畑電車にのり平田へ向かった。この日の宍道湖は春霞で沢山の蜆舟が出ていた。蜆は薬用にもなると言って、饅や佃煮にもされるが多くは蜆汁にして食べる。
 約四十分後、平田駅に到着し駅前のタクシーを拾い古川先生の句碑のある場所へと向かう。愛宕山公園は平田のほぼ中央に位置する丘陵地にあり、戦国時代は尼子氏、毛利氏が攻防を繰り返した古戦場として知られている。又山頂からは東に鳥取県の大山、西に三瓶山、眼下には築地松に囲まれた散村が広がる出雲平野が眺められる。今は小動物園などもあり市民の憩いの場所となっており、古川句碑もこの一角にある。句碑近く車を降りると樹々はまだ冬の装いながら、犬ふぐり、タンポポが鮮やかに咲いていた。
 古川先生は郵政省にお勤めになりながら「白魚火」誌第一号を発行され、白魚火一筋に生きて来られ、句碑の建立は平成八年である。句会は古川先生が朝夕親しまれた湯谷川を見下ろす宿の二階であり、昼食をはさみ出句(七句)締切りは午後一時だった。披講は荒木千都江さん、生馬明子さんで、選者選は並選十句、特選五句で行われた。予定通りの時間が過ぎたところで、この度「白魚火」賞を受賞された三原白鴉さんに、坑道句会から記念品が渡され、白鴉さんからお礼のご挨拶があった。次の坑道句会での再会を約し解散となった。

日 時 平成三十年二月二十六日(月)
場 所 味彩 さかもと
吟行地 古川句碑周辺
参加者 二十一名

 山根 仙花特選
贈られし子の温もりの春コート   樋野 洋子
句碑の空大きく晴れてこぶしの芽  原  和子
船川に残る掛け出し春の鴨     三原 白鴉
そこにある石に腰かけ梅をみる   荒木千都江
碧天に触れて辛夷の芽の揃ふ    三島 玉絵

 安食 彰彦特選  
日だまりの石の温みに座りけり   牧野 邦子
蒼天の空をゆさぶる竹の秋     樋野久美子
春の鴨水脈を広げて遠ざかる    生馬 明子
波の綺羅散らして戻る蜆舟     西村 松子
木蓮の万の芽吹きや句碑の丘    荒木 悦子

 三島 玉絵特選
句碑の空大きく晴れてこぶしの芽  原  和子
浅春の泥亀太き首もたぐ      牧野 邦子
梅ふふむ絵馬掛台の千羽鶴     三原 白鴉
湯谷川といふ親しき名水の春    西村 松子
水温むひらりと移る鷺一羽     渡部 幸子

 森山 暢子特選
十五歩で渡る大橋山笑ふ      三原 白鴉
二ン月の句碑にまみえし無精髭   安食 彰彦
山道に榾木組みをり春の風     山本 絹子
剪定のたびに庭石現はるる     生馬 明子
公園は淋しきところ冬木の芽    山根 仙花

 西村 松子特選
二ン月の句碑にまみえし無精髭   安食 彰彦
梅寒し遠くで電車過ぎし音     山根 仙花
句碑の空大きく晴れてこぶしの芽  原  和子
碧天に触れて辛夷の芽の揃ふ    三島 玉絵
旅伏嶺の夜もあをあをと猫の恋   森山 暢子

 久家 希世特選
句碑の背の竹林さやぐ風二月    今津  保
曲りたる轍春泥深くして      樋野久美子
はらからの遠くに病めり麦青し   森山 暢子
贈られし子の温もりの春コート   樋野 洋子
山襞の動き出したる芽吹きかな   荒木 悦子

 渡部 幸子特選
波の綺羅散らして戻る蜆舟     西村 松子
句碑の背の竹林さやぐ風二月    今津  保
梅東風や肺の奥まで醤の香     生馬 明子
静寂の池に芽吹きの水鏡      樋野久美子
古川師の本名を知る松の花     原  和子

 一句抄 (氏名の五十音順)
二ン月の句碑にまみえし無精髭   安食 彰彦
木蓮の万の芽吹きや句碑の丘    荒木 悦子
春耕の田はゆつくりと息を吐く   荒木千都江
梅東風や肺の奥まで醤の香     生馬 明子
日溜りに瑠璃の耀ふいぬふぐり   今津  保
句碑の背や笹子頻りに鳴き移る   久家 希世
波の綺羅散らして戻る蜆舟     西村 松子
句碑の辺に鳥鳴く朝あたたかし   原  和子
誰彼と先師のはなし水温む     樋野久美子
贈られし子の温もりの春コート   樋野 洋子
茶柱にほつと一息春の立つ     福間 弘子
蒼天へ辛夷の花芽競ひをり     船木 淑子
日だまりの石の温みに座りけり   牧野 邦子
梅咲くや仮名ばかりなる母の文   三島 玉絵
船川に残る掛け出し春の鴨     三原 白鴉
旅伏嶺の夜もあをあをと猫の恋   森山 暢子
春浅し句碑と話して帰りけり    山根 仙花
オアシスの池に馴染の残り鴨    山根 恒子
山道に榾木組みをり春の風     山本 絹子
芽吹き山チェンソーの音高々と   渡部 清子
落ち合ひてリズムゆかしき春の水  渡部 幸子



平成30年6月号掲載 句会報
       名古屋句会  
檜垣 扁理

平成30年6月号へ 

 平成三十年四月一日(日)、五回目の名古屋句会が開かれた。場所は前回同様、秀吉縁の「本陣駅」近くの中村生涯学習センターである。隣には小さな公園があり、桜の樹が十本余り植えられており、例年より開花の早すぎた桜が既に飛花落花の景である。折しも日曜日とあり、十名程の花見客が昼酒の宴を催していた。夜桜でなくとも酒は付物か。前日の奇麗な夜桜とブルームーンを想い起し、そう言えば今日はエイプリルフールなどと思った。名古屋句会の特徴は、先ずは若い人達が少なくないと言う事だろう。今回の参加者も総勢十七名の内、高校生二名、大学生三名、二十代会社員一名で都合若手が六名。全体の三分の一が若者と言う色を添えてくれるのだ。今回も五句持寄りで、五句互選である。今回の披講は、矢張り若手の児嶋君の初披講で若く朗々とした声であった。互選は常にして開けて一驚喫するもので、若い層が渋い句柄を詠んでいたり、その他の中高年(笑)が憧憬の様に若々しい句柄に挑戦していたり、面白いものである。和気藹々とした中、順調に句会は運び、最後に村上尚子先生と渥美絹代先生に、それぞれ丁寧に全員の句の評を戴いた。句会後は、隣の公園で爛漫たる桜の下に勢揃いして、件の宴客の一人にお願いして記念写真を撮った。十本余の桜の内幾本かは、飛花ながら既に蕊降る樹となっていた。

平成三十年四月一日
   第五回名古屋白魚火句会
     於中村生涯学習センター
   一句抄
さへづりや百葉箱にペンキの香    村上 尚子
卒業の一団長き橋渡る        渥美 絹代
永き日や一艘残る船溜り       渥美 尚作
中東の言葉も聞こえ桜かな      安藤  翔
境内の土俵の上に桜散る       伊藤 妙子
ジャズで聞くソーラン節や春の宵   伊藤 達雄
雪形の見ゆる信濃の美術館      井上 科子
風光る紙ひかうきの宙がへり     牛田 大貴
校長の式辞の長し初桜        北川 順子
ポケットにいつかのレシート春深し  児嶋  彬
列島に湖といふ穴鳥帰る       竹中 健人
春光やぱつと散りたるかくれんぼ   野田 美子
飛花二片挟みておきぬ朱印帳     檜垣 扁理
春の旅赤子の握る母の服       山田 翔子
卒業生何度も門を振り返る      山田良太郎
夜桜を少し恐れてをりにけり     弓場 忠義
行きずりに乗りたるリフト春の雲   吉村 道子



平成30年6月号掲載 句会報

 浜松白魚火会
 第二十回(創立三十周年記念)総会・句会

鈴木  誠

平成30年6月号へ 

 四月二十一日(土)、十二時三十分より、浜松楽器博物館六階、六十二会議室に於いて「浜松白魚火会第二十回(創立三十周年記念)総会・句会」が出席者一〇三名と来賓に、白岩敏秀主宰、鈴木三都夫白魚火顧問、黒崎治夫浜松白魚火会顧問、三原白鴉編集長補佐をお迎えして開催されました。
 総会は、渥美副会長の司会で始まり、弓場忠義会長の挨拶、来賓の白岩主宰、鈴木顧問、黒崎顧問の挨拶を頂きました。その後、平成二十九年度活動及び決算報告、平成三十年度活動計画及び予算案が満場の拍手で議決されました。役員改選は弓場会長以下前年度と同じ役員が再選されました。
 続いて、各賞の受賞者の紹介と表彰に移り、白岩主宰の祝辞を頂いた後、功労賞として浜松白魚火に長年貢献された上村均顧問と福田勇顧問に表彰状と記念品が贈呈され、白魚火賞の斎藤文子さん、みづうみ賞秀作賞の安澤啓子さん、鳥雲同人となった阿部芙美子さん、早川俊久さんに花束が贈呈されました。受賞者を代表して斎藤文子さんから謝辞が述べられました。
 その後、句会が行われました。時間の関係で今年は互選は行わず、七名の選者に入選十句、特選五句を選んで頂き、阿部芙美子さんにより披講され、特選句には賞品が授与されました。
 句会の後、浜松白魚火創立三十周年の記念として、常葉大学名誉教授竹腰幸夫先生により、「松尾芭蕉『奥の細道』」と題する講演を頂き、連句の形式を意識して書かれたとする鋭い考察を一同興味深く拝聴しました。
 懇親会は、会場をオークラアクトシティホテル浜松の四十五階に移して七十一名出席のもとに行われました。途中、顧問の福田勇さんが丁度翌日が八十八歳の誕生日と言う事で、花束贈呈のサプライズがあり、福田さんには大変びっくりされ、喜んで頂きました。
 また、今年の全国大会開催地の静岡白魚火会小村絹子会長からの吟行案内等の挨拶を戴きました。名古屋からも会員の方々に参加して頂き、檜垣扁理さんよりご挨拶を頂きました。特に名古屋の方々には名古屋白魚火会を立ち上げることを宣言して頂き、大変盛り上がりました。最後は塩野幹事長の中締めで盛況の内にお開きとなりました。
 当日の選者の特選句は、次のとおりです。

福田 勇 選
  特選一位
携帯に今も師の名や晴朗忌      野沢 建代
  特選二位
防人の積みし石垣風光る       中野 元子
  特選三位
竜天に昇りしか夜の胸騒ぎ      井上 科子
  特  選
春燈や花道熱き飛び六方       鈴木けい子
いちりんの都忘れへ師を重ね     村松ヒサ子

野沢建代 選
  特選一位
連翹や飛行機雲のまだ伸ぶる     森  志保
  特選二位
折紙の恐竜動く万愚節        花輪 宏子
  特選三位
春子つむ声を掛け合ふあにおとと   西沢三千代
  特  選
農日誌の醤油の染みや地虫出づ    牧沢 純江
春の日を句帳へ挟み晴朗忌      村上 尚子

渥美絹代 選
  特選一位
遺影いつもほほゑみてをり鳥曇    織田美智子
  特選二位
折紙の恐竜動く万愚節        花輪 宏子
  特選三位
防人の積みし石垣風光る       中野 元子
  特  選
花冷や乗りてひとりの昇降機     織田美智子
腹這ひの赤子真中に雛まつり     鈴木けい子

村上尚子 選
  特選一位
朝刊のなき日白梅よく匂ふ      渥美 絹代
  特選二位
海苔粗朶へしろがねの波寄せにけり  林  浩世
  特選三位
帰る雁にはかに空の暗くなり     榛葉 君江
  特  選
腹這ひの赤子真中に雛まつり     鈴木けい子
春愁の鏡の顔を拭きにけり      鈴木喜久栄

黒崎治夫 選
  特選一位
春愁の鏡の顔を拭きにけり      鈴木喜久栄
  特選二位
切株に鳥のきてゐる涅槃かな     村上 尚子
  特選三位
歳々の白木蓮や正文忌        安澤 啓子
  特  選
海苔粗朶へしろがねの波寄せにけり  林  浩世
朝刊のなき日白梅よく匂ふ      渥美 絹代

鈴木三都夫 選
  特選一位
湖へ声残しゆく帰雁かな       三原 白鴉
  特選二位
お茶が好きおしやべりが好き桜餅   三原 白鴉
  特選三位
正文忌三方が原の土匂ふ渥美 絹代
  特  選
春浅し茶歌舞伎の茶の匂ひ立つ    磯野 陽子
あたたかき砂を褥の防風摘む     小村 絹子

白岩敏秀 選
  特選一位
飛んでなほ歩幅の足りず春の泥    三井欽四郎
  特選二位
竜天に昇りしか夜の胸騒ぎ      井上 科子
  特選三位
引鳥や日の溢れゐるとほたふみ    山田 眞二
  特  選
もう一つ買ひ足してゐる種袋     高井 弘子
春の日を句帳へ挟み晴朗忌      村上 尚子


無断転載を禁じます