最終更新日(update) 2014.12.01
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いまたか俳句会 ―十一月の句会より― 平成26年2月号掲載
飯田白魚火かざこし俳句会 平成26年3月号掲載
さざんか句会 平成26年4月号掲載
磐田支部「槙の会」 平成26年5月号掲載
浜松初生句会報 平成26年6月号掲載
ひらめき句会 平成26年6月号掲載
榛句会 平成26年7月号掲載
鳥取白魚火 はまなす句会 平成26年8月号掲載
飯田かざこし俳句会 平成26年8月号掲載
坑道句会 ~須佐大社吟行~ 平成26年10月号掲載
中津川白魚火早苗会 平成26年12月号掲載

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平成26年2月号掲載 句会報
いまたか俳句会 ―十一月の句会より―
髙島 文江

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 いまたか俳句会は星田一草先生指導の下に毎月第二土曜日に開いております。
 企画、まとめ、会計などそれぞれの役割があって運営されています。そして最高得点の人が兼題を出しています。十一月の兼題は、本倉裕子さん出題の「芭蕉忌」と「末枯」でした。
 芭蕉忌と言えば四年前にバス会社の企画で句友の谷田部シツイさん、阿部晴江さんと一緒に「奥の細道」を歩いた折、尾花沢の芭蕉清風歴史館で八粒の紅花の種を頂きました。翌年畑の角に蒔きましたところ八本咲きました。翌翌年には三十二本に三年目には五十八本と増えて行ったのに今年は一本も咲きませんでした。集中豪雨で畑が湖のようになった所為と思われます。また尾花沢を訪れ種を頂けたらと思っています。
 奥の細道の旅では月山など行っていない所もあり山形から先はもう一度行きたいと思っています。
 句会にはいろいろな経歴の方がいらして、和気あいあいと毎月楽しく勉強させて頂き、とても充実した時間を過ごさせて頂いております。十二月の出題者は中村國司さんです。題詠は「霜」と「白菜」です。どのような名句に会えるのか楽しみです。

 東京の駅に降り立つ芭蕉の忌   星田 一草
 芭蕉忌や木洩れ日淡き杉並木   宇賀神尚雄
 尖り初む那須野の風や芭蕉の忌  柴山 要作
 芭蕉忌や黙して歩む鴉二羽    齋藤  都
 時雨忌や閑かに点つる自服の茶  鷹羽 克子
 末枯や音高く行く山の水     田原 桂子
 時雨忌や宿の傘借る湯殿まで   大野 静枝
 照る墓も昃る墓も末枯るる    中村 國司
 芭蕉忌や空翔くる馬夢に見て   星  揚子
 芭蕉忌や丁寧に読む主宰の句   髙内 尚子
 芭蕉忌や十七音は割り切れぬ   本倉 裕子
 小鳥来て樟の大樹を膨らます   西山 弓子
 末枯れや夕日に映ゆる歴史館   高橋 裕子
 芭蕉忌や厩残りし兄の里     島  澄江
 今もなほ五十一なる翁の日    渡辺 加代
 児ら作る砂のケーキに小鳥来る  石岡ヒロ子
 芭蕉忌や硫黄のにほふ那須野道  髙島 文江



平成26年3月号掲載 句会報
    飯田白魚火かざこし俳句会  
北原みどり

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 長野県飯田市は、南アルプスと中央アルプスに挟まれた伊那谷の南部にあり、西に風越山、東には天竜川という豊かな自然に囲まれた町です。
 私達のかざこし俳句会は、昭和六十三年にNTTの退職者サークルとして誕生し、今年二十七年目を迎えます。会の発足から十五年間ご指導下さった伊東敬人先生亡きあと、諏訪市の宮澤薫先生のご指導を得て、今日まで続いております。
 現在の会員は十名、句会は毎月一回、市の公民館をお借りし、五句投句、互選五句で行っています。披講の後、予め送付した句稿の添削と当月の兼題について、先生がまとめて下さったプリントを読み合わせながら勉強をしています。
 「最初は俳句よりその後の一杯の方が楽しみだった」と、発足当時の事を話される長老の菅沼さんは、今も矍鑠として私達を励まして下さいます。また引越された後も遠く藤沢市から、毎月欠かさず出席される後藤さん、車で一時間かけて阿南市から来られる佐川さん、皆がそれぞれに会を盛り立て、和気藹々と俳句を学んでおります。
 昨年十二月十八日、宮澤先生をお招きし、駒ヶ根市光前寺への吟行と忘年句会を行いました。光前寺は霊犬早太郎伝説の寺として知られ、広い境内は四季折々の変化に富み、訪れる人の多い寺です。当日は折からの雪と寒さに、杉の巨木に囲まれた境内は静まり返り、まるで別世界に迷い込んでしまったかの様でした。けれどもそこには、厳しい寒さ、降り頻る雪の中でしか出会えない発見や感動がありました。
 暖かいホテルでの句会は、先生から直接ご指導いただける嬉しさに皆が興奮気味、その後の忘年会も大いに盛り上がり、楽しく充実した一日となりました。そして、良き師に恵まれ、良き句友に囲まれて俳句を学べることに感謝しながら帰途につきました。
    十二月兼題「数へ日」
奥飛騨の数へ日に買ふ絵らうそく   宮澤  薫
冬至男とは先師の雅号山眠る     菅沼 公造
数へ日やおのれ為すこと確むる    後藤 泉彦
数へ日の注連綯うてをり左縄     大澤のり子
数へ日や灯油の目盛確かむる     本田 咲子
冬至芽を豊かに残し菊枯るる     佐川 春子
災禍なきことを祈るや年の暮     大野 洋子
アルプスに真向かふ暮らし年つまる  北原みどり
    光前寺吟行句
石楠花の冬芽くれなゐ千社札     宮澤  薫
賽銭の用意万端年の暮        後藤 泉彦
底冷えの寺領鎮もる石畳       大澤のり子
花姿残りて枯るる額の花       本田 咲子
菊紋に粉雪しげし火燈窓       佐川 春子
雪暗む参道の奥火灯窓        北原みどり



平成26年4月号掲載 句会報
       さざんか句会
横田 茂世

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 静岡白魚火会は七組のグループに分かれていて、「あじさゐ」「つつじ」「草の実」等々、楽しい呼び名の会で、毎月一回の例会で鈴木三都夫先生のご指導を受けております。又四季折々には合同の「一日バス吟行会」も行われ、春は花の下で、夏は湖畔や海辺で、秋は紅葉、冬は寒詣と、自然と作句を満喫します。今年の第一回は、一月十九日駿遠の一の宮小国神社の左義長神事でした。
 「さざんか句会」はそんな中の一句会です。山茶花は牧之原市の花で、寒さにもめげず健気に咲き続ける花、そんな意味も込めての句会名です。
 今月の例会は二月二日でした、半信半疑で投句した句が先生の選に入れば喜び、自信作が没になれば力を落しもして句会はいつも新鮮です。又句会の後の雑談も楽しく、作句の楽しさ苦しさにはじまり、最近の消息にまで話題も尽きません。
 楽しい句会ですが悩みもあります。一昨年まで十名だった会員が昨年になって六名までに減ったことです。そのすべてはご老齢による止むを得ない理由によるものですが、社会の高齢化と趣味の多様化の現状を考えますと、会員の維持は決して容易ではありませんが、地域の俳句文化の火を消さないよう、心掛けたいとは、会員皆の願いです。

 当日の句鈴木三都夫先生選
選者三吟
 泰然と達磨火となるどんどかな
 一宮直使参道青木の実
 鴨ゐるはゐるは浮寝を分ち合ひ
特選
 鴨の陣帰心の見ゆる乱れかな   山田ヨシコ
準特選
 どんど火を視つつ直会仕度かな  笠原 沢江
 潮満ちて波の均せるどんど跡   笠原 沢江
 切干の色に仕上る日和かな    山田ヨシコ
 腰籠に海苔の溢れる日和かな   山田ヨシコ
 神杉の天辺煽るどんどの火    知久比呂子
 四温晴れ地下足袋軽く畑に出る  知久比呂子
 斧始め研ぎ納めあるさらし解く  加藤 みほ
 薄氷へ流れひそかにありにけり  横田 茂世



平成26年5月号掲載 句会報
      磐田支部「槙の会」  
斎藤 文子

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  静岡県磐田市は、浜松市の東に位置し、東京と大阪のほぼ中央、東を見れば富士を望み、西は天竜川、南には遠州灘が広がる。北は遠く南アルプスの山々、近くには磐田原台地の茶畑が続き、茶摘みの頃ともなれば、台地一面鮮やかな黄緑色に染まる。かつては、東海道が、現在は東名、新東名高速道路が市を貫く。
 そんな磐田で四十年続いている「槙の会」は、黒崎治夫先生のもと結社を越えての集いである。句会が三つあり、会員によっては、複数に席をおく者もある。また句会当日、都合が悪い時は、他の句会への出席は自由である。一句会平均二十名前後である。句会は選に止まらず、俳句の歴史、苦手な文法、歴史的仮名使い、あるいは名所旧跡、旅の話など多方面に渡り、三時間半はあっというまに過ぎてゆく。選に入るとほっとするが、入ることができず、しゅんとなってしまうことの方が断然多い。それなのに楽しいのである。皆が俳句に対し真摯で、一字一句に熱い会話が交わされる。その中に居られることが幸せであると思う。
 そして句会が終わった時は、反省しきりであり、もう少し勉強しよう、頑張ろうといつも思うのである。

白梅の咲き疲れせる夕べかな    大坂  弘
春潮に押され引かるる紡ひ船    埋田 あい
浅春や鳥鳴き交はす雑木山     影山  園
プリンターの音軽やかや春うらら  金子きよ子
飛行機雲伸ぶるバレンタインの日  斎藤 文子
問ひ掛くるやうに海棠咲き初むる  新村喜和子
うぐひすの一声山の動き出す    鈴木喜久栄
龍天に鉄棒の錆手のひらに     鈴木 敬子
豆撒きて声を嗄らしてしまひけり  高田 茂子
源流を抱きたる山や残り雪     武田 貞夫
春寒し一口すする燗冷まし     溝口 正泰
蕗の薹摘みて厨の賑はへり     村上千柄子
夕東風や表札の文字うすれゐて   村上  修
向き変へしとき引鴨と思ひけり   村上 尚子
人と逢ふ薄紅梅の夜となりぬ    黒崎 治夫



平成26年6月号掲載 句会報

浜松初生句会報 仁尾主宰句集「晴朗」

上梓祝・全快祝を兼ね年度末句会の開催


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 仁尾主宰には、昨年八月第三句集である「晴朗」を上梓され、俳人協会賞の予選にも通過し、本選の十二誌の中に残り誠に喜ばしい限りでした。また、この度俳人協会の名誉会員に推薦され二重のお喜びと合いなりました。
 当初生句会では、忘年会を兼ねて先生の句集上梓祝を計画していたところ、十一月中旬急遽入院される事となり、残念ながらお祝いを延期せざるをえないことになってしまい、先生の一日も早い回復と退院を願っておりました。
 仁尾先生は、入院治療中にも拘わらず白魚火誌の選句や、各句会の選句・全国大会の構想等、休む暇もなくこなし、奥様に病院まで資料等を持ってこさせる等病人とは思えない程、精力的に仕事をこなしておられました。
 その後は、先生の前向きな精神力と治療効果で、めきめき回復に向かい、年の暮には退院することが出来て本当に嬉しい思いでした。
 入院中の先生の句の中に
 俺より先に死んではいけない小六月
が詠まれており、一時期死をも覚悟していたのではないかと窺えました。退院後も通院治療を受けながら選句等の諸仕事こなし、二月には全快するに至り、一安心することが出来ました。
 仁尾先生の句集上梓祝と忘年会句会が伸びのびになっていましたので、年度末である三月の初生句会において、先生の上梓祝・全快祝を兼ねての年度末の句会となりました。
 句会での先生の詠と会員の一句抄は次の通りです。

 仁尾主宰詠
百寿祝ぐ僧の裂帛宵の春        正 文
  会員一句抄
春吹雪束の間なれど横なぐり      やすゑ
遙か来て初音に出会ひときめけり    智恵子
春昼の背丈に余る振時計        啓 子
春雨や熊の里のなんでも屋        勇  
山桜かかる果てまで人の住み      俊 久
末黒野にまだ残りゐる煙かな      育 子
いくたびも鳥のこゑして春障子     雅 史
鶯の鳴いて梅園御膳でる        征 夫
消えかけし文字の表札燕来る      光 江
研ぎ減りの鎌も携へ春田まで      う め
山路来て初うぐひすの高音かな     幸 子
盆栽の棚の裏から春蚊出づ       吉 康
春蚊出づ空耳ならぬ母の声       陸前子
境内の露店賑はふ豆の花        真由美
一握り土筆を摘みて歩の弾む      義 久
わらび餅名代の店と書かれをり     元 子
沈丁花戸を開けるたび香り立つ     紘 子
夢に見し故郷の山は朧なる       善 郎
尺八の音色にひかれ夕桜         寛 
ゆるゆるといづる春蚊を打ち損ず    真 二
磯巾着地球傾ぎて回りをり       貴 彦
辞令うけ見慣れし桜懐しむ       慎 介
梅一輪付き添ふ母の枕元        秀 征
沈丁の姿見えざる夜の辻        千惠子
じやがいもの芽を数へつつ植ゑにけり  とみ子
春の蚊を追へる暇のあり楽し      正 利
 句会終了後は、主宰を囲み写真撮影・昼食会に移り、お祝いの乾杯と会談、更にカラオケと盛り上がり、先生の歌あり会員の自慢の喉ありで、たつぷりと楽しい一刻を過ごす事が出来ました。
 初生句会員も二十六人と大所帯となり、先生の直接指導の幸を感じつつ、白魚火の発展に努めていきたいと思っております。
                          浜松初生句会代表  福田 勇




平成26年6月号掲載 句会報
       ひらめき句会  
鈴木 利久

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 浜松市は静岡県の西部に位置する市です。平成五年に旧浜松市と周辺の十二市町村の合併により出来た政令都市で合併により人口は八十一万二千人強となりました。市を七区に分け、私の住む旧天竜市は天竜区となり、人口は三万二千人強となっています。私達の、ひらめき句会は、平成十三年に旧天竜市の社会福祉事業の一環事業として、発会をいたしました。会の発足より仁尾主宰、渥美絹代講師、山下勝康講師、御三方のご指導を得て、今日まで続いております。ひらめき句会は、平成二十六年四月で百五十二回となります。句会の会場は、市の福祉施設、「やまゆり荘」の一室を借用し、月一回、第一水曜日午後一時三十分より、約二時間かけて行っております。会員数は九名です。一人七句投句、それを、渥美先生が、プリントして一覧の句稿にして下さり、プリントを見て、七句の互選、披講は会員交替で行っています。
 披講終了後、両講師に選と講評をして頂き、その後、仁尾主宰の選と講評。予選句、入選句、特選句と発表しながら一句毎の評価をしていただきます。その講評の中で文法、季語の使用方法等、いろいろ勉強させて貰っております。句会発足時の、会員は四人で、あとの会員は五、六年の人達です。古い会員の一人は、一時間一本しかないバスで、一時間あまりかけて来ます。また、タクシーで来る人もいます。本当に頭が下ります。男三人、女六人の皆がそれぞれに会を盛り立て、和気藹々と俳句を学んでおります。
句読点なき児の手紙春霞      大橋 時恵
物種をあれやこれやと畑に立つ   平田くみよ
勉強は一日十分春休        鈴木 敦子
若僧の春の作務着を繕へり     甘庶 郁子
春浅しつぶれ蛇籠のある岸辺    鈴木 利久
草取りの脇に巣藁を運ぶ鳥     伊東 正明
初音聴く去年と同じ木の下で    升本 正枝
夕おぼろくっきり浮かぶ黒い富士  鈴木 和枝



平成26年7月号掲載 句会報
        榛句会
檜林 弘一

平成26年7月号へ 

 平成十七年の夏、筆者が東京単身赴任中に、とある居酒屋で始めた当句会は、今年正月に一〇〇回を迎えることとなりました。当初は在京している同級生五名でスタートしましたので、句会名は母校榛原高校(牧の原市)の頭文字を拝借しております。平成二十一年、仕事の都合で三重の自宅に帰還することとなりましたが、その後も、毎月上京し東日本大震災の月以外は句会は継続しています。現会員数は約三十名となり、投句者は不在投句も含め、毎月二十名前後という状況です。月例句会のスタイルは、ひざを突き合わせた句会と通信句会(投句・選句)とを混在したものです。超結社の句会ではありますが、徐々に白魚火入会者が増加したのは白魚火俳句の魅力によるものと思っています。この句会からの白魚火入会者としては、東京の萩原一志氏、増田尚三氏、牧の原の田部井いつ子氏など、昨年よりは、栃木の中村國司氏、島根の田口耕氏、浜松の林浩世氏など、東京から遠隔地の白魚火同人の方も、インターネットにより参加していただいております。また、年三回ほど吟行会を企画し、関東近辺はもちろん、京都、奈良、静岡等へも出かけており、普段顔を合わせていない方との交流も、充実させているところであります。句会へのインターネット利活用については、賛否は分かれるところではありますが、今後の検証課題としてあげておきたいと考えます。
 昨年、金田野歩女先生の七〇〇号記念随筆「実桜句会の歩み」を拝読いたしました。通信句会による皆様の活動に比べ、我々の活動はまだまだ努力不足であることを痛感いたしました。「根気と学ぶ心の継続」を今後の活動のキーワードとし、改善活動をつづけていきたいと思います。ともあれ、俳句上達が第一目的ではありますが、今後の方向性を上げれば、①白魚火会員の地域を超えた結びつきを深めること、②超結社の場を活用して外から刺激をもらうこと、さらに「五年後、十年後の白魚火の活性化を皆で考える」という点もつけ加えたいと思います。当活動について、先生方、先輩方からのご指導、アドバイスをいただければ幸いです。

●最近の句会から(白魚火会員のみ)
変はる町変はらぬ町や冴返る  萩原 一志
花菜摘む妻の指輪の光りをり  増田 尚三
樟若葉騎手に従ふ三歳馬    中村 國司
春星や入江にのぶる家明かり  田口  耕
暁の空を見る癖春の星     松浦美栄子
町の空すつと切り裂き燕来る  山崎たつ枝
灯台へ花菜明りの続きをり   田部井いつ子
川沿ひの自転車道路風光る   水野ちや子
つばくらや無人駅舎の竹箒   寺田佳代子
貝塚に混じる獣骨春の雨    林  浩世
一抹の雲空に置きつばくらめ  石川 寿樹
湖に波ひとつなし朝桜     檜林 弘一




平成26年8月号掲載 句会報
   鳥取白魚火 はまなす句会  
西村ゆうき

平成26年8月号へ 

 今年のはまなす句会は、三月末に白岩敏秀先生が足を怪我され、急に入院してしまわれた為、四・五月の二カ月間を会員だけで例会を行いました。とは言っても、きちんとした添削が出来ないため、やはり入院中の先生にお願いすることにしました。
 それは例会後に、各自が自分の句を葉書に書いて先生にお送りし、添削後に送り返して頂くという無茶なやり方です。先生は、まだお加減が悪いのにもかかわらず、私たちの願いを聞いて下さり、きちんと添削された葉書はいつもすぐに手元に戻って来ました。
 また白魚火の選者の役割も休まずにこなされ、本当に先生の俳句に対する真摯なお姿には、頭の下がる思いがいたしました。
 そして六月の例会には、いつもの笑顔でおいでになり、会員一同安堵したところです。
 実は同時期に、会員の内の一人も入院し、これからみんなが年齢を重ねるごとに、このような事態が増えていくのだと思い、やはり元気で俳句を作れるのは幸せなことだと実感いたしました。
 みんなが顔を揃え、いつまでも句会を継続していきたいと思います。平成二十二年の発会から四年経ち、その間に全員が白魚火同人となりました。これからも白岩敏秀先生のご指導のもと、お互いに励まし合い、研鑽を積みながら俳句を作り続けたいと思っています。

辣韮の匂ふ野良着を砂に置く     敏 秀
身を躱すとき鹿の子のけもの臭
太竿に空飛ぶ土佐の初鰹       國 愛
夏椿真白きままに散りにけり
梅雨晴や児の待つパン屋来てをりぬ  哲 夫
菩提寺の散り敷く沙羅の暮れにけり
酒蔵の自動ドア開く梅雨晴間     眞 弓
夏椿土蔵に細き影落とす
水神の小さき祠夏椿         ゆうき
玉葱を吊して昼の村静か




平成26年8月号掲載 句会報
飯田かざこし俳句会(平成二十六年五月)

平成26年8月号へ 

  後記のように添削指導しております。いかがでしょうか。
 【兼題・短夜・明易し・他】
  (添削例)
    原句

宮澤  薫
悲しき夢見直すに夜の短くて
短夜を照らしつづけし月すでに
遺影ただ夫のもののみ明易し

菅沼 公造
(明け易し新聞屋の急ぐ町)
 明け易し新聞店の急ぐ町
(夜のつまる不眠の床に焦りあり)
 短夜の不眠の床に焦りあり
(春の蚊の飛びきて吸へる四畳半)
 不覚にも春の蚊なぞに刺されたる

後藤 泉彦
(ねむけまなここする間もなし明早し)
 まだ眠きまなこに湖光明早し
(短夜やうたた寝醒めず窓辺見る)
 うたた寝のままに短夜明けにけり
(急斜面新茶摘む里下栗や)
 下栗や急なる畑の一番茶
(新茶もむ香り一ぱい遠山郷)
 茶もみの香遠山郷に溢れをり
(甲州路桃花一ぱい富士の嶺)
 甲斐路より眺める富士や桃の花

佐川 春子
(寝付かれず富士の旅寝の明易し)
 窓に富士見えて旅寝の明易し
(添削なし)
 明易や時計の音のリズミカル
(添削なし)
 明易し自然は嘘をつかぬもの
(添削なし)
 短夜やひしひし胸に兄のこと

大原千賀子
(明早し果樹消毒の準備なり)
 果樹消毒の準備ばんたん明早し
(短夜は晩酌せかす妻ありき)
 短夜の妻に晩酌急かさるる
(添削なし)
 急ぎ挿す家庭訪問チューリップ
(添削なし)
 膝頭つきつつ探る茗荷竹
(添削なし)
 子供の日雨に泣いてるすべり台

大澤のり子
(旧道てふ家並石垣藤の花)
 旧道は石垣つづき藤の家
(講堂の大きな箱荷花万朶)
 講堂へ出されし荷箱櫻どき
(春筍の皮ごと焼かれ宴膳)
 春筍の姿焼きある宴膳
(短夜や静かに海の明けゆけり)
 短夜やはや白み行く沖津海
(船音の響き小刻み明易し)
 小刻みに響く船音明易し

牧内 茂博
(添削なし)
 短夜の朝の牛乳配らるる
(添削なし)
 大川へ向かふ烏や明け急ぐ
(園原と天竜峡行き夜のつまる)
 園原と天竜峡へ首夏のバス
(病む脚をさすりて立てり明け早し)
 病む脚をいたはりて立つ夏初め
(伝説の姫宮脇の明け易し)
 伝説の姫の宮居の明易し

北原みどり
(添削なし)
 短夜や峡の底行く貨車の音
(明早し一番電車もう行けり)
 明早し始発電車に人あまた
(添削なし)
 解けさうで解けぬパズルや明易し
(安達太良に本当の空桐咲けり)
・悪くは有りません
 智恵子の空見たり花桐その色に
(添削なし)
 花桐や会津にて買ふ桐の下駄

本田 咲子
(山活に生味噌付けて地酒かな)
 山独活は生味噌が良し地酒酌む
(余花ありて菅原伝授の村歌舞伎)
 余花涼し菅原伝授の村歌舞伎
(添削なし)
 短夜やうたたね夫に諭されて
(短夜や子等いつまでも燥ぎ居り)
 いつまでも燥ぐ子等をり夜は短か

木下ひろし
大野 洋子
欠詠

【兼題】【短夜】・短夜(たんや)・明易し・明やす・明早し・明急ぐ
 短い夏の夜をいう。春分の日から夜は昼より短くなり、夏至は最も夜が短く、四時ころから夜が明けかかる。俳句ではそうした物理的な短さというより、短さを惜しむ心持に重きが置かれている。短夜の語は、『万葉集』にも見られ、開け易い夜を惜しむ思いは、ことに後朝(きぬぎぬ)の歌として古来詠まれてきた。
(藺草慶子記・角川俳句大歳時記より)

短夜や枕に近き銀屏風    蕪   村
短夜のあけゆく水の匂かな  久保田万太郎
短夜の看とり給ふも縁かな  石橋 秀野
明易し妻問ひ婚のむかしより 仁尾 正文
アイガーの北壁窓に明易し  志賀 道子
余命いくばくかある夜短し  正岡 子規
明易や雲が渦巻く駒ケ岳   前田 普羅
明易く姫が人魚に戻る刻   鷹羽 狩行
短夜の明けゆく波が四国より 飯田 龍太
明易し島に銀座と浜通り   青木 洋子



平成26年10月号掲載 句会報
    坑道句会 ~須佐大社吟行~  
生馬 明子

平成26年10月号へ 

 「わが俳句足もて作る犬ふぐり」
 西本一都先生のこの句は「白魚火」のモットーですが、坑道句会はこの精神にそった吟行句会です。平素は旧平田市内での吟行ですが、今回は出雲市の南西部の山間地、出雲市佐田町須佐の須佐大社まで足をのばしました。
 須佐大社は「出雲国風土記」にも記されている古い神社で、素戔嗚尊が祀られています。「須佐」という地名は、素戔嗚尊が諸国を開拓し最後に国土経営したのがこの地で、「小さいがよいところだ」と気に入り、自分の名をつけたといわれています。そして、終焉の地に選んでいます。宮司は足名椎・手名椎の末裔で現在は七十八代目。宮司宅には「八岐大蛇の骨」と伝わるものが大切に保管されています。
 境内にある「塩井」は素戔嗚尊が土地を清めた水で、遠く離れた稲佐の浜とつながっていて、潮の干満で湧き水の量が違うそうです。また、本殿の裏には周囲が七メートル、樹齢千三百年の神杉がそびえています。神社の西には素鵝川という小川もあり、静かで素朴な神域です。
 私たちは須佐大社到着後約二時間で七句作り、昼食をはさんで、西村松子さん渡部美知子さんの披講で句会を開きました。そして、山根仙花先生の特選十句には、辻まさ野「柿と母」・岩田暁子「花文字」等十冊の句集が賞として授与されました。
 その後、平成二十六年度みづうみ賞秀作賞の荒木千都江さん・七百号記念随筆賞秀作賞の竹元抽彩さんに賞品が授与され、散会となりました。

 会員一句抄(25名)
秋声を聞く神杉に風吹かば     安食 彰彦
爽やかや挨拶交はすことさへも   荒木千都江
何処より来て何処へと秋の蝶    今津  保
爽やかや漫画家めざす絵馬ありて  生馬 明子
稲穂風ゆたかに浴びる須佐の旅   小沢 房子
神鏡に腰を伸ばすや秋の蝶     久家 希世
神名火嶺脱ぎゆく雲の秋めきて   小林 梨花
清流の音が色研ぐ真葛       竹元 抽彩
小鳥来て須佐の空気をふくらます  西村 松子
身ほとりの風に寛ぐ秋初め     錦織美代子
山の湯の自動扉や昼の虫      野田 弘子
穂孕みの稲に重たき雨となり    原  和子
神域の思はぬ深さつくつくし    樋野久美子
大蛇川幾度も渡り稲の花      樋野 洋子
天を突く美林の下や毒茸      福村ミサ子
水引きの紅ふくらます雨後の庭   船木 淑子
秋出水大蔓垂れて大蛇川      福間 弘子
揃へある白緒の草履爽やかに    三島 玉絵
塩の井を井桁囲ひや昼の虫     森山 暢子
峡走る水音も秋となりにけり    山根 仙花
神鏡に我が現身や法師蝉      山根 恒子
神域を色なき風と巡りけり     渡部美知子
青竹の手水の柄杓今朝の秋     渡部 信子
閂のお旅所色なき風わたる     渡部 幸子
峡の田の水たつぷりと稲は穂に   渡部 清子


平成26年12月号掲載 句会報
     中津川白魚火早苗会

田口 啓子

平成26年12月号へ 

 私ども中津川白魚火早苗会は、会員七名です。毎月第二火曜日、亡き澤田早苗先生所縁の和食処『駒』が句会場です。
 二年程前橋場きよ先生が骨折なさった折には皆様の句を病院に届け、後日先生が添削して郵送してくださった事もありましたけれど、ほとんど休まず毎月句会を開いて居ます。
 出句は前の月に出されている兼題も含めて十五句です。清記、選句の後、会食になります。
 『駒』でのお料理に加えて、手づくりの御八つや漬物も並びます。
 食事後気持ちあらたに披講に入ります。終わって、橋場先生に特選を選んでいただきます。その後がこの句会の特長です。当番の方が清記用紙を読み上げ、先生は短冊を手元に見ながら、出句、百五句全句にわたって一句ずつとりあげての丁寧な感想批判会をおこないます。作り手が自ら作意を話したり、選句した方の意向も聞きます。自分では出来上った作品だと思っていますのに、助詞を一つ直す事や、上下順序を変えてみることなどで、句が変わってきます。この様に皆様に批判していただいて、ここで大いに力がつきます。
 先生は直すのでなく自分で気付く様に、仕向けて下さるのです。
 早苗会は、この様に毎月厳しく、楽しく、励んで居ります。

  初ものといふは不揃ひさつまいも      清 笑
  秋の蝶過ぎりて鍬の宙に浮く        よし子
  儚しと見えてしたたか小草の実       紀 子
  大恵那山の稜線光る秋の声         保 子
  一本が先へ誘へり茸採り          啓 子
  おなもみや“つらはらし”てふ里ことば   英 子



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