最終更新日(update) 2015.12.01
平成27年 白岩敏秀 作品
歌   垣 通 ひ 帳 行方知れず
歳   月 梨   畑 酢 の 香
鼓 笛 隊 参 観 日 学 校 田
八雲立つ 途   中

平成27年12月号抜粋の目次へ
平成27年10号に掲載

    
       泉  

師の亡きに泉は声を発しをり

空蝉を加へて増ゆる子の宝

滴りの次を誘ひて珠となる

日暮れゐる青田の中の精神科

昼の熱残る庭石百日紅

素つ気なく言葉返され冷奴

声飛ばし汗の香とばしボール蹴る

一泊の旅の夜に聞く青葉木菟

平成27年11月号抜粋の目次へ
平成27年9月号に掲載

     
     八雲立つ

噴煙の北へ流るる青嵐

手囲ひに花火へ移すマッチの火

半円は未完のかたち天道虫

風を来て大緑蔭の蝶となる

地下足袋の逆さに乾く土用明

朝顔の花数へゐる登校日

桔梗や青年画家はまだ無名

八雲立つ出雲の国のいわし雲

平成27年10月号抜粋の目次へ
平成27年10号に掲載

    
       泉  

師の亡きに泉は声を発しをり

空蝉を加へて増ゆる子の宝

滴りの次を誘ひて珠となる

日暮れゐる青田の中の精神科

昼の熱残る庭石百日紅

素つ気なく言葉返され冷奴

声飛ばし汗の香とばしボール蹴る

一泊の旅の夜に聞く青葉木菟

平成27年9月号抜粋の目次へ
平成27年9月号に掲載

     
     学 校 田

短夜の大堰音を落しをり

田水張る朝の雀のよく鳴いて

手植せし学校田の余り苗

梅雨に入る苗は分蘖くり返し

黒南風や島の五十戸みな漁師

相性よくて夏蝶もつれくる

弥生土器掘り出す手許蟻走る

颯々と山を過ぎゆく青嵐

平成27年8月号抜粋の目次へ
平成27年6号に掲載

    
    参 観 日

畳屋の肘の働く立夏かな

菖蒲湯や青の切つ先では死ねぬ

灯台はバスの終点卯波立つ

卯月波神になりたる素兎

柿若葉狐色して朝のパン

夏草や鉄条網のなかは基地

校庭をよぎる参観日の日傘

夏薊野に寝転べば目の高さ

平成27年7月号抜粋の目次へ
平成26年7月号に掲載

     
     鼓 笛 隊

春潮や戦艦大和生き続け

春の潮紺張りつめてうねりけり

頬杖をついて春愁かも知れぬ

花大根少女ばかりの鼓笛隊

鳥百羽春の音符を銜へ飛ぶ

井戸水に金気の匂ひ蝌蚪に足

春惜しむ遠つ遠江に地酒酌み

宿題のもうすぐ終る柏餅

平成27年6月号抜粋の目次へ
平成27年6号に掲載

    
    酢 の 香

渓を来て水の匂ひの木の芽風

飯に打つ酢の香の籠る雛の家

啓蟄を避難袋に入れ直す

ふらここの子に母の顔よく動く

卒業や校舎をつなぐ長廊下

灯台のひかり遠のく寒戻り

春の水堰を小躍りして落つる

たんぽぽやあやせばすぐに嬰眠る

平成27年5月号抜粋の目次へ
平成26年5月号に掲載

     
     梨  畑

早春の声に応ふる山谺

剪定の切り口濡るる梨畑

春星となりまたたきを増やしけり

まんさくや言葉ほぐるるごと咲ける

堰越ゆる水はつきりと春の音

麦踏みの足三寸を運びけり

女来て白魚の目を少し買ふ

茎立や夕月色を得つつあり

平成27年4月号抜粋の目次へ
平成27年4号に掲載

    
    歳   月

年賀状逢はぬ歳月埋めけり

寒鯉の重なり合うて深くをり

白鳥の羽搏き白き夕べかな

日差しなきままに暮れゆく野水仙

狐火のひとつが飛翔したりけり

発砲音ターンと鴨の錐揉みに

新しき波重ねつつ紙を漉く

節分の鬼打つ声の消えて闇

平成27年3月号抜粋の目次へ
平成26年3月号に掲載

     
     行方知れず

朗らかな音に冬田を起しゆく

見張鴨風音に向き変へにけり

盛り塩の白さに尖る十二月

思春期の少年の割る初氷

連れ立ちて新海苔採りに行くところ

街を出て行方知れずの虎落笛

ついて来る月と師走の角曲がる

理髪屋に寄つて帰りぬ年の市

平成27年2月号抜粋の目次へ
平成26年8号に掲載

    
    通 ひ 帳

幸せの頭でつかち吾亦紅

文化の日叩いて潰す破砕ごみ

冬ぬくし陶の狸の通ひ帳

雀来て山茶花散らす日なりけり

椿の実爆ぜ灯台へ波奔る

ちちははの墓へしきりに木の葉降る

林檎噛む少女や夜の咀嚼音

末枯や舌にころがす薄荷飴

平成27年1月号抜粋の目次へ
平成26年1月号に掲載

     
     歌   垣

映るものすべてきれいに水の秋

木犀の金ほろほろと日暮れ来る

歌垣に神も居給ふ真葛原

草の実や畦に雀の来て遊ぶ

ゆるやかに曲がる長汀雁渡る

松茸やていねいに米磨ぎあげて

栗落つる音に振り向く日暮れかな

晩秋の火の見櫓の直梯子

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