最終更新日(Update)'15.11.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 林 浩世 |
「八雲立つ」(作品) 白岩敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 鈴木 百合子 、飯塚 比呂子 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 岡 あさ乃、中村 國司 ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(浜 松) 林 浩 世 |
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口笛の少年が来る花野かな 横田 じゅんこ 菊日和煉羊羹の持ち重り 佐藤 升子 峡に星満ち山小屋の茸汁 西村 ゆうき |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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烏 柄 杓 坂本タカ女 鳴くでなき喉鳴らして通し鴨 春蝉のぴたり鳴きやむ鳥が来て 葉隠れの睡蓮賽銭箱に鍵 蕗絮にうすくなりゆくアイヌの血 もしかして人違ひかもサングラス なにくはぬ顔して烏柄杓かな 蜂が来て吊舟草に乗るところ おとうとはすこし耳癈大花火 蝉 時 雨 鈴木三都夫 靴脱いで渚を歩く涼みかな ひとときの陰を貸し出す砂日傘 浜灼けて金輪際の暑さかな 舟虫のぞろぞろ這ふはおぞましき 突堤に不意打くらふ土用浪 絶壁に波の飛びつく蝉時雨 池の蓮吹き揉まれては花を見せ 池の面に被さつてきし蝉時雨 今朝の秋 山根仙花 今朝秋の鷺の白さの吹かれをり 新しき歯刷子使ふ今朝の秋 薄目して秋に入る顔剃られをり 爽やかや一筆箋で足りる文 稲は穂に村が重たくなりにけり 小鳥来る赤き表紙の童話集 みどり子の大きな欠伸小鳥来る 鶏頭の影にも重さありにけり 焼 き 鰯 安食彰彦 かなかなのかなで隣りの木に移る 厠の戸開くればちちろはたと止む 旧道を行けばめづらし蝗とぶ 虫の闇まだ起きてゐる受験生 無心にはなれず邯鄲聞きにけり 高稲架の一枚ありて影長し 焼き鰯なら大吟醸と冷水と 大斐伊の水澄み悠々波立てず 落 し 文 青木華都子 青々と茂る橡の木並木かな 落し文読んだと返す落し文 またもとの位置に戻して落し文 曇りのち雨のち晴れの濃あぢさゐ 紫のあぢさゐ坂は女坂 降るでなく晴るるでもなく梅雨明くる 病室に親指ほどの雨蛙 ぎくしやくと渡す木道草茂る 大 文 字 村上尚子 大雨に山洗はれし大文字 肩車されし子左大文字 秋扇開きしばらくもの言はず 花野より花野へ雲の流れけり 鶏頭のあたまでつかち種飛ばす 月捕りにゆくらし庭の高梯子 秋茄子のどれもふつつかものばかり 神木の亭亭と秋深めけり 絆 小浜史都女 父の忌に母のはなしや真桑瓜 夜の秋小さき硯に小さき筆 つぶ餡の「鶴の子」提げて盆帰省 盆提灯廻るものからたたみけり 白桃の重み姉妹の絆かな 鬼灯やふとき眉もつ三兄弟 父の忌に揃うて露の夜をともす ブレスレットに小さき鍵や鳥渡る |
旅 伏 山 小林梨花 旅伏嶺の裾より湧ける濃霧かな 帯状の霧昇りゆく旅伏山 水色の空に雲湧き涼新た 秋日差し断つカーテンを引きにけり 大壷に活けて枝垂るる萩の花 台風一過暮れゆく雲のくれなゐに さまざまな形の雲浮く秋の夕 秋しぐれ町のネオンの点り初め 修羅句碑 鶴見一石子 落磐の跡地素直に今年竹 祭足袋一吹きかけし浄め酒 とんぼ乗せ夕日を乗せし吾亦紅 真白なる鷺翔びたてり翁草 吾亦紅挿して野の風飾り棚 蛇穴に入る戦場ヶ原蛇の逸話 平家琵琶爪引く法師月今宵 修羅句碑に師のこゑ露の浄土から 新 涼 渡邉春枝 ページ繰る音のかすかに涼新た 新涼や立つたび正す椅子の向 かなかなやみんな帰つて行きし部屋 休暇果つ子のポッケより波の音 旅好きの家居なほ好き草の花 きしむ針髪にくぐらす秋暑かな 父の座に兄の坐りて今日の月 母の忌の厨に生くる秋の薔薇 盆 の 村 渥美絹代 をんどりがをんどりつつく晩夏かな 鶏小屋を這ふ苦瓜の蔓黄ばむ 分校の裏山雲の峰聳ゆ 畦道を人の行き交ふ盆の村 踊り待つ暮れゆく山の端を眺め 声の良き漢踊りの振り大き 新秋の風内陣に吹き込みぬ 早稲の香や始発六時の村のバス 原 爆 忌 今井星女 書斎兼居間に一つの扇風機 卓上の花がふるへる扇風機 扇風機一人占めして夕ごころ 一文を草し涼しき書斎かな 海恋うて貝風鈴を吊しけり 原爆忌日本中が黙祷す わが町も「平和宣言」広島忌 原爆忌被爆手帖も古りにけり 秋 出 水 金田野歩女 中腹の鬱金空木に小休止 雨上がる蓮の浮葉を滑る玉 再会を約し初秋の別れ路 泡立草小波の立つ山上湖 橋頭堡叩いてゆけり秋出水 撫子を節より手折り供華とせむ マスカット旧師気魄の米寿かな 湿原と遊ぶ色鳥弾みをり 皇居東御苑 寺澤朝子 爽涼や衛士の開く大手門 小鳥来る海は見えねど汐見坂 音立てて木の実の落つる石畳 松の廊下跡地とありぬ竹の春 茸生ふる二の丸跡の池の端 弧を描くさまにしだれて萩の花 秋興や外つ国人に撮されて 吹きわたる素風に遺構の天守台 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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秋 高 し 富田 郁子 矢田の渡しに学生一人八月尽 千鳥城見上ぐれば降る木の実かな 物忘れ多き卒寿や秋立ちぬ 健診に腸さぐらるる厄日かな 招かれて「城」誌千号祝す秋 秋高し天守国宝「城」千号 風 知 草 桧林 ひろ子 風知草風知りすぎて乱れけり 遠き日の思ひ出に着る浴衣かな 休耕田ごつた返しに秋立てり 見の限り海展けをり青みかん 朝顔の紺より一日はじまりぬ 名を知らぬ千草の花の親しさよ 木 槿 武永 江邨 病やや癒えて木槿の花盛り 底紅の紅美しき朝餉かな 小鳥来る陶榻に坐し空仰ぐ 巫女に問ふ末社の謂れ小鳥来る 真榊の艶増す秋に入りにけり 朝の紅残し木槿の花萎む 千 鳥 城 福村 ミサ子 戦時中の話に及ぶ盆の月 山鴉供花の鬼灯食ひ散らし 海坂に白き雲湧く原爆忌 書込みの多き暦や八月尽 七七忌終れば稲を刈ることに 色変へぬ松に威のあり千鳥城 草刈り女 松田 千世子 野佛を片手拜みに草刈り女 笑ひ佛の膝の賽銭灼けてをり 朝戸繰る颯と入りくる早稲の風 鰯雲近くて遠き生家かな 薄暗き納屋に居据る大南瓜 稲穂波押し分け押して稗を剪る 貝 割 菜 三島 玉絵 神苑の箒目確と涼新た 新涼の古井戸一人づつ覗く 骨董の大甕に飼ふ目高かな いつしかに減りし仕来り送り盆 月仰ぐ夫の知らざる日を生きて 朝の日に爪立ち揃ふ貝割菜 敗 戦 忌 織田 美智子 二階より夫に呼ばるる夏の月 火の玉のやうな松明虫送り 椅子三つ寄せて花火を待ちてをり 星飛んで父母遠くなりにけり 稚児抱くやうに西瓜を抱へ来し 炊き上りたる白粥や敗戦忌 秋 耕 上村 均 にぎやかに残暑の浜のバーベキュー 椋鳥や芝はたつぷり雨含み 山並を越え来し風に秋耕す 秋燕やきらめく波が江に溢れ 振り向けば山は暮色に法師蟬 虫鳴くや湖にきらめく夜釣の灯 |
霧 湧 く 加茂 都紀女 紅を敷きなほ散りつづく百日紅 新涼の杉の葉を搗く水車かな 朝露をこぼさじと蓮開きけり 山百合を咲かせ生涯水車守る 霧湧くや霊地深山巴の宿 蓼科山は女神朝霧まとひけり 大 西 日 関口 都亦絵 大西日膝てらてらと撫仏 尼寺の花魁草の白き艶 小鳥来る門開け放つ尼ヶ寺 死化粧の口紅淡く夜の秋 ほの暗き厨子にみあかし秋祭 天水のしづけさに落つ桐一葉 川 風 奥田 積 父母もはらからもゐてをどるなり 模試受くる子どもの列や終戦日 隠沼にはつちやうとんぼ糸とんぼ 露草に歩をとめてする息ひとつ 掘割を抜けて川風葛の花 町並の切れて旧道稲の花 学徒動員 梶川 裕子 生身魂さらりと死後の話など 佛壇の水替へてゐる帰省の子 血のやうな夕日の落ちて終戦日 虫干しや学徒動員日記帳 神話にも妬心ありけり石榴裂く 兵たりし兄の墓域や法師蝉 米 余 り 金井 秀穂 御巣鷹を降り来て蝉のシャワー浴ぶ 御巣鷹忌尾根吹く風はすでに秋 三日目にして大根の生え揃ふ たまさかの日差し貧る残り蝉 蟷螂の翔べぬ巨腹を引きずりぬ 米余りの稲穂の重く垂れてをり 鳳 仙 花 坂下 昇子 指触るる気配に弾け鳳仙花 立秋の空に鱗の兆しけり 蜻蛉の草揺らさずに止まりけり 地蔵会の幟畦道までつづく 流灯の離れてはまた相寄れる 流灯会済みたる闇の深さかな かなかな 二宮 てつ郎 夕暮れの風やはらかし韮の花 かなかなや今日の明るさある限り 送り火の燃え尽きにけり膝頭 法師蟬終日老眼鏡だのみ 秋風の底辺に臥しゐたりけり 鳴き鳴きて八月尽の鴉かな |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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鈴木 百合子 白布もて山水さはに墓洗ふ 飯塚 比呂子 秋風や一円玉の貯金箱 |
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冷房の利く図書館に誰もゐず 行く先に猫の付きくる赤のまま 夕風を吸うて木槿の花たたむ 台所の戸が噛んでゐるあぶらむし 緋目高を飼ふ九人のクラスかな 虫送り炎の列の動き初む オカリナの円き音色や天高し 土用干母の箪笥に母子手帳 天高し真つ赤な屋根のポチの家 一日の仕上げとしたる天瓜粉 秋を待つ机上に本を積み重ね ゴンドラの大きく揺れて霧晴るる 掛時計少し進んで秋に入る 一本のラムネ分け合ふ部活の子 掛軸を七つ下げたり風祭 |
内田 景子 友貞クニ子 船木 淑子 梶山 憲子 広瀬むつき 相澤よし子 溝西 澄恵 山田ヨシコ 池森二三子 山羽 法子 村松ヒサ子 徳増眞由美 吉原絵美子 福間 弘子 金原 恵子 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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出 雲 岡 あさ乃
新涼やうすき膜張る山羊の乳 鹿 沼 中村 國司 苦瓜の蔓宙空をつかみきる |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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しのぎよき夕べとなりぬ葛の花 岡 あさ乃 葛の花は街中でも咲いていようが、やはり野原や土手が似つかわしい花である。秋風が時折、葛の葉を裏返して紫紅色の花を見せてくれる。暑い長い夏が過ぎて人も草も一息ついた頃である。「しのぎよき」というたおやかな表現に初秋の柔らかさがある。五感を解放して感じている秋である。 石修羅の跡形もなし草紅葉 中村 國司 百丈の石修羅を懸けほととぎす 一都 師を仰ぐごとく仰ぎぬ大夏木 後藤 政春 この師とは仁尾先生のことである。先生は作者の同郷の先輩でもあり、職場の先輩でもある。先生への年賀状に「俳句でもやってみようかと思います」と書いたことが白魚火の入会のきっかけということである。先生はまた俳句の先輩になったのである。 賑やかに迎へ独りの送り盆 小村 絹代 送り盆は盂蘭盆の最後の日。この世に帰って来た先祖の霊を彼岸に送る日である。送り火を焚いたり、灯籠を流したりする。 どの子にも一役のあり地蔵盆 髙添すみれ 地蔵盆は大抵八月二十三日前後に行われる。地蔵さんは子どもの守り神だからどうしても子どもが中心になる。少子化と言われながらもやはり子どもが主役。上級生の指図に従って、右往左往しながら地蔵盆を一生懸命に手伝っている姿が微笑ましく見えて来る。 秋晴れやこつこつこなす野良仕事 良知あき子 遠雷を聞きつつ鎌を研ぎ上ぐる 関本都留子 草刈鎌を研いでいたら、遠くの雷が聞こえてきたのだろう。それで急いで鎌を研ぎあげたという句意。父親の権威は随分と後退したが、雷は依然と二位を保っているので怖い。雷が聞こえて来る距離はおよそ二十キロぐらいで六十秒もすれば間近までくるという。 蒸しパンのふつくら出来て原爆忌 鈴木 滋子 原爆が戦争の終結を早めたことは間違いないだろう。終戦後の日本は食糧難だった。〈野蒜つむ擬宝珠つむたゞ生きむため 加藤楸邨〉は昭和二十一年の作。この頃日本人は生きるために必死だった。今では家庭で美味しいパンを作ることが出来る。原爆―終戦―餓えと続いて戦後七十年。今では欲しいものは手に入る。平和な暮らしのありがたさを思う。 |
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