最終更新日(update) 2013.12.01
平成25年 仁尾正文 近詠
鵙 の 贄 例 幣 使 冬   至
春 浅 き 踏   青 五 万 羽
緑 さ す 文   机 忍野富士
遠州大念仏 穴まどひ 踊 下 駄
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平成25年12月号抜粋の目次へ
平成25年10号に掲載

    
    踊下駄

花芒まだ風癖のついてゐず

桐一葉風に攫はれたる行方

拓地はや百年経てり稲の花

硯洗へる先生と二三言

たたなはる山のけぶれる秋旱

花野に日入りてしばらくたもとほる

?歌より連綿此処に盆踊

踊櫓の板厚き段梯子

踊下駄材は地産の沢胡桃

飛び入つてさゆらぎもせぬ踊りの輪

盆唄の音頭取りは盛り人

踊り見に来しはひそかに嫁探し

新涼の盆地の中を川流れ

祝儀値のつきてしやんしやん初秋刀魚

夜をこめて籾殻を焼く豊の秋

選手らは日々鬢剃れり新松子

曼珠沙華咲けば彼岸がやつてくる

裏年にあらねど柚子の極く小粒

朝空にうすうす二十三夜月

八月大名飛行機を乗り継いで

平成25年11月号抜粋の目次へ
平成25年11月号に掲載

    
     穴 ま ど ひ

素つ飛んで視界より消ゆ穴まどひ	

石割といふ新豆腐尋め来しが	

新蕎麦や腹ごしらへを万全に	

踊りの灯横丁深き所まで	

旅人も何時か踊りの輪の中に	

大胆なことを夜更けの踊り唄	

胡桃川P音をたてて草の花	

みまかれり秋の彼岸を待たずして

平成25年10月号抜粋の目次へ
平成25年10号に掲載

    
    遠州大念仏

金柑の花の香土用東風の頃

せせらぎのかすかに聞ゆお花畑

キャンプ村薪の束を無人売り

あめんぼの争ふ宙に跳び出して

笛太鼓大念仏がやつてくる

笛方に大念仏の乙女はも

大般若転読をして虫送る

虫供養碑にも立ち寄り虫送り

平成25年9月号抜粋の目次へ
平成25年9月号に掲載

    
     忍 野 富 士

朴若葉芸術賞に御名御璽

鈴木貞雄の赤富士の句碑すずし

梅雨雲をすぱつと脱げり忍野富士

雪渓の長きは七合目に届き

泉湧く百年富士の溜めし水

親離れしたる軽鴨寄り離れ

人杖を貰ひ深山の滝を見に

田を植うるや否や天より水馬

平成25年8月号抜粋の目次へ
平成25年8号に掲載

    
    文  机

文机はいつもらんごく走り梅雨

大股にサーファー過ぐる浜豌豆	

二心あらう筈なし冷し酒	

草笛に和して皆んなでわらべ歌	

藩校の教授の幅に風入るる	

麦秋の夕薄明の頃よかり	

誌齢重ねたり泰山木の花	

高らかに母の心経ゆすらうめ

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平成25年7月号に掲載

    
     緑 さ す

緑さす数へで祝ふ喜寿米寿
	
麦秋の夕薄明の風すこし

遺句集の刀自との絆聖五月

無事茶山終へし八十八夜かな

敗れ凧の骨を拾ひに走り去る

キャンピングカーの整備を子が差配

短夜のいよよナイター引き分けて

父方は早世ばかり韮の花

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平成25年6号に掲載

    
    五 万 羽

寡黙なる主治医にあれど芥子の花
	
朗々の猊下の絶句花まつり	

疾風きて残る桜に止め刺す	

啓蟄の城址の深井より谺	

竹秋の虎口の塁の喰違	

磯開きいちご煮が出て酣に	

思ふまま小鉤動かせ海胆捌く	

五万羽の北帰の雁の集結湖

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平成25年5月号に掲載

    
     踏   青

踏青や盟神探湯の碑に出くはせる
	
青麦や朴葉に盛れる古代食	

しんがりの薄紅梅は豊後梅	

「母さんの店」の?の芽蕗の薹	

燻りてゐし畦焼火立ち上る	

春一番転がる帽に追ひつけず	

涅槃図の箱を縛れる綬かな	

梅東風の幟はたはた句碑の上

平成25年4月号抜粋の目次へ
平成25年4号に掲載

    
    春 浅 き

政変のありたる寒の梅ひらく
	
手袋を投げスパートを今かけし	

ひこばえの梅いつぱしの花咲かす	

旧正の授業半ドンたりし頃	

髪詰めて薄紅梅のやうなひと	

重連の水車止めあり猫柳	

落椿踏めば音出す虎口跡	

春浅き七軒限りの隠れ里

平成25年3月号抜粋の目次へ
平成25年3月号に掲載

    
     冬   至

閏年のこと忘れゐし冬至かな	

数へ日や数へて二日程足らぬ	

手つかずの賀状の束を打ち眺む	

除夜詣大榾燃えて風起す	

雪白の和紙を花びら餅に敷く	

駅伝のありて半端に二日終ふ	

かいつぶり首をよの字に持上げて	

竹馬や兄見下ろして物を言ふ

平成25年2月号抜粋の目次へ
平成25年2号に掲載

    
    例 幣 使

例幣使下向の絵図や文化の日
	
短日の手信号にて捌きをり

マイク叩く白息北京特派員

見栄張つて三年日記買ひにけり

西郷どんの国よりざぼん届きけり

何せむとこの部屋に来し年の暮

ぼのくぼの辺より湯ざめのしてきたり

百歩ほど相傘もらふクリスマス

平成25年1月号抜粋の目次へ
平成25年1月号に掲載

    
     鵙 の 贄

きびきびと動く菊師の足袋脚絆
	
かすか尾が動きし気配鵙の贄	

のんどまで名前出てゐる夜寒かな	

墓は伝金売吉次狭霧濃し	

瓔珞のやうに干柿掛け連ね	

林檎畑に時ならぬ威し銃	

逸品の手触りのあり蓮根掘	

尼御前のぴたり閉めある白障子

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