最終更新日(update) 2014.12.01
平成26年 仁尾正文 近詠
金   屏 猟   犬 花茶の香
言   霊 朝   寝 草   餅
夏至の雨 酸 素 管 一 木 に
白   桃 新   酒 秋 の 虹
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平成26年8号に掲載

    
    秋 の 虹

銀漢に咲きたる南十字星

かばかりの蔓や冬瓜の大を吊り

大鰡の跳んで腹より落ちにけり

松手入れ猿臂伸ばせるだけ伸ばし

法師蝉墨を薄めて追悼句

割挟み捩ぢりて柿の首取りし

老々介護妥協許さず白木槿

黄落の休まずに降る顔痛し

真夏日の残暑が二日続きたり

喉元に言葉来てをり鳥頭

逆立てる十一月の女郎蜘蛛

職辞せし風信秋の虹懸り

平成26年11月号抜粋の目次へ
平成26年1月号に掲載

     
     金  屏

もみづるや洛中洛外画する土居

大凶のみくじ引き当て火の恋し

冬雁やロビーにもある女坂

筆塚にひとかたまりの石蕗の花

七五三囲む環視のあたたかき

金屏や舞妓徹する無表情

おでん屋の秘伝の味を今も継ぎ

冬麗の富士見ゆビルの十二階

平成26年10月号抜粋の目次へ
平成26年8号に掲載

    
    白   桃

婚の荷に足すふるさとの桜笛

竜巻があるぞと梅雨を明けしめず

普段着に覗くすずしき遺影かな

老々の介護に妥協なき西日

立秋を明日にしたる雲の色

目薬の一つ減りたる夏の果

白桃をすする流寓ながかりし

酸素持ち運び出来ぬ母郷も盆の頃

腰折れの台風なれど余波強し

夕化粧王者のごとく美しき

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平成26年9月号に掲載

     
      一 木 に

郷党の一詩人来し名古屋場所

七月の盆義理といふ供養かな

梅雨ふかし癌を克服されたるに

台風の昼寝覚むれば消えてなし

血中の酸素の足りてゆすらの実

走り藷術後の視力一・二

敗者にも妻あり子あり敦の忌

一木に花万両と実万両

凌霄花祖はマレーシア辺りなむ

荒神輿に乗りたき沙汰を待つてをり

大き鉢に茄子出来すぎて手に余す

?鳴いて梅雨はとつくに明けてをり

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平成26年8号に掲載

    
    酸 素 管

明易し息吐くことを慣とし

嫡孫の就職決まる青嵐

竹煮草塗料の匂ふ左馬

父の日の外れてばかり酸素管

福耳にも酸素管掛け梅雨に入る

最期まですべてを愛し逝かれけり

冷房の遺影かすむを誰も見し

ハンカチや涙の壺のあるといふ

死なせたくなき人死なせ夜の秋

語り部も八十越えし沖縄忌

顔輝き時計も読めて青田風

遺句集となつてしまひしいなびかり

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平成26年7月号に掲載

     
     夏至の雨

寒戻りの予報出てゐる万愚節

百歳の姉の安寝や夕おぼろ

人待てる五分がながし諸葛菜

追ひ焚きをして昭和の日更けにけり

ゴールデンウィーク義歯の毀れたる

軒菖蒲蓬一本捻ぢ込める

母の日の電話の後は誰も来ず

蛇苺戦後の腹の足しにせし

欧州のしらすうなぎを空輸せる

遅霜や茶山の被害無慮五億

ホスピスに島歌奏で梅雨に入る

濡れ縁をぶつ叩きゐる夏至の雨

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平成26年6号に掲載

    
    言   霊

見舞妻に一言礼を去年今年

旅を戻りて一家に遅き屠蘇祝

小豆粥用の太箸作り呉れ

鳥追の蜜柑を投ぐる佐渡に向け

朔日の闇や春節始まりぬ

ずつしりとせる掌上の寒卵

侘助の一樹に凭りて君送る

寒明けの弓太くなる四日月

春隣悪い奴ほどよく眠る

早出の子遅出の子にも春炬燵

梅園の水車がばりと水落す

言霊の幸ふ国の野梅かな

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平成26年5月号に掲載

     
     朝   寝

百寿祝ぐ僧の裂帛宵の春
	
髪刈られ顔剃られゐて春ねむし	

統合の湖北高校夕がすみ	

春蚊出づ贔屓チームのまた負けて	

音立てて鷹匠町を春疾風	

牛角力隠岐は今しもべた凪げる	

葉の塩加減こそいのち桜餅	

後世思ふ朧の月を仰ぎては	

家に居て啓蟄忘じゐたりけり	

遅霜や茶山の被害無慮五億	

葉牡丹の茎立つ構へ見せ初む	

存分に朝寝し命いとほしむ

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平成26年4号に掲載

    
    言   霊

見舞妻に一言礼を去年今年

旅を戻りて一家に遅き屠蘇祝

小豆粥用の太箸作り呉れ

鳥追の蜜柑を投ぐる佐渡に向け

朔日の闇や春節始まりぬ

ずつしりとせる掌上の寒卵

侘助の一樹に凭りて君送る

寒明けの弓太くなる四日月

春隣悪い奴ほどよく眠る

早出の子遅出の子にも春炬燵

梅園の水車がばりと水落す

言霊の幸ふ国の野梅かな

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平成26年3月号に掲載

     
     花 茶 の 香

死支度せざるは過信冬芽出づ

片時も酸素離せず夜の冴ゆる

老も死も何でも詠まむ霜畳

露程も功し見せず花茶の香

マスクの目笑まひてゐるよ主治医さん

木の葉髪一筋選句稿の上

雪の富士見ゆる廊下の端に椅子

拾ひたる命なりけり波郷の忌

身体髪膚たんぽぽの返り咲く

病院の朝湯許さる冬至かな

天皇の日や見舞妻休まする

医師もスタッフも言葉うつくし冬菫

干蒲団やはらか夢も見ず眠る

体重にばんざい年湯上りきて

縁起よきもの大切に晦日蕎麦

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平成26年2号に掲載

    
    猟  犬

ガンベルト嵌めて猟男となりにけり
	
猟犬の追ひ啼きはたと止りけり	

声大きくて早口の十夜婆	

空風はドクターヘリの着ける音	

日本地図は真赤なりけり寒波来	

一瞥をするのみ年賀状の束	

餅搗きの結は毎年娘婿	

俺より先に死んではいけない小春凪

平成26年1月号抜粋の目次へ
平成26年1月号に掲載

     
     金  屏

もみづるや洛中洛外画する土居

大凶のみくじ引き当て火の恋し

冬雁やロビーにもある女坂

筆塚にひとかたまりの石蕗の花

七五三囲む環視のあたたかき

金屏や舞妓徹する無表情

おでん屋の秘伝の味を今も継ぎ

冬麗の富士見ゆビルの十二階

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