最終更新日(Update)'15.04.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 森 淳子 |
「歳 月」(作品) 白岩敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 西村ゆうき 、花木 研二 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 伊藤 寿章、牧野 邦子 ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(函 館) 森 淳子 |
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馬鈴薯は男爵と決め植ゑにけり 福田 勇 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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魔法の鞄 坂本タカ女 初旅や魔法の鞄といふがあり 動物園に寄り道をする三日かな 石の重さに駝鳥の卵園四温 犬歯欠けをる狛犬や虎落笛 立ちあがる剥製の熊ペチカ燃ゆ 鳴き交す鴉や屋根の雪落つる 浮世絵摺師色どり多彩松過ぎて 暁斎百図目指す摺師や雪しまく 百 合 鴎 鈴木三都夫 誰彼とどんどの餅を分ちあふ 一山に冬日あまねき伽藍かな 裸木の空へ張り出す枝微塵 寒蘚に目鼻つぶれし羅漢さま 落したる影に牡丹の冬芽かな 百合鴎乱舞の翼触るるなし 一羽翔ち百羽つれ翔つ百合鴎 引く波を追うて飛び立つ千鳥かな 七 日 粥 山根仙花 落葉踏む一人の音を連れ歩く 寒禽の声にふくらむ雑木山 遠山に暮れの始まる懸大根 空瓶に透き横たはる大枯野 一握の葱摘み帰る夕茜 茎石の傾き勝ちに山ねむる 老いてなほ生かされ生きて屠蘇祝ふ 日々早し早しと七日粥すする 春 安食彰彦 目刺買ふ大吟醸を賜りて 校正を了ヘて余寒の膝がしら 春立てり一畑電車の絵の小皿 朝刊のドアの下より春の朝 塾に行く子の帰り待つ春の夕 春浅し背広の胸の赤きペン 口笛を吹き早春の下校の子 学生に大盛のあり山笑ふ 雪 虫 青木華都子 明日もまた雪とふ予報輪王寺 雪道を駿馬引かれて戻りたる 雪虫が雪降るやうに舞うてをり 朝の日に雪虫とけてしまひさう 手際良く使ふ包丁水温む 旋回をしていづこへか春の鳶 漬け頃の親指ほどの青梅捥ぐ きらきらと眩し日本海の春 水 鳥 村上尚子 初鶏の長鳴き闇をゆるめけり さるぼぼの跳ね正月の幟旗 弓始しばらく風を読みてをり 早梅や町内にまだ知らぬ道 寒厨布巾四角に乾きけり 水鳥の棲み分けてゐる入江かな 富士山の影を水面に浮寝鳥 鴨のこゑ岸より夕べ来てゐたり 神 鈴 小浜史都女 奥の院までの神々日脚伸ぶ 待春の神鈴横に縦に振る スキー焼して戻りたる二男坊 春隣雨は斜めに真つ直ぐに 青首大根日に日に背伸びしてをりぬ なやらひの空に大きな月ありぬ 豆撒きの終つてをりしひとり撒く 立春の外で大きな魚捌く |
十 六 島 小林梨花 雪摺りの音より他に音はなく 雪暗れに灯して刻む青葉かな 雪の日の静けさの中人を待つ 初凪や水平線の一文字 寒紅梅咲き次ぐ空の真青なる 海見ゆる高さの社豆を撒く 浅春の海面羽搏き鵜の翔てり 十六島海苔を茶受に美容院 杉 並 木 鶴見一石子 白涛の砕け切り岸野水仙 熱燗や女将差し出すつまみ塩 地球儀を廻して初日待つてをり 淑気満つ芭蕉歩きし杉並木 初明り歩いてみたき九十九里 寝つかれぬ秒針の音冴返る 口ついて死の話でる朧かな 火の彩となりたる気魄牡丹の芽 浮 寝 鳥 渡邉春枝 びつしりと桜冬芽の空を指す 災害の爪あと抱き山眠る 熱気球あぐる冬田を起点とし 浮寝鳥沖ゆく船の波に乘り 画鋲のみ残る寒九の掲示板 寒月光留めたゆたふ船溜り 置床の艶光りして実南天 笹鳴や林を抜けて森に入る 寒明くる 渥美絹代 朝月のまだ明るくてなづな粥 三坪の丸太作りの夜警小屋 にはたづみ跨ぎ寒紅梅仰ぐ 二人掛ベンチに四人春まぢか 咲く前の梅の香夫の誕生日 ふたたびの寒波痩せたる木の滑車 トラックの荷台に小舟寒明くる 園丁の梅伐る鋸を研いでをり 白 鳥 湖 今井星女 田も畑も雪野となりて白鳥来 太陽は燃え白鳥湖凍らざる 白鳥湖見下してゐる駒ケ岳 白鳥に逢ふ父母に逢ふごとく 濁声で一斉に啼くスワンかな 白鳥の頑丈さうな黒き脚 白鳥が羽根をひろげて見せにけり 白鳥に逢ひたる夜の日記書く 冬 柏 金田野歩女 白鳥湖蹼見ゆるほど清みぬ 湖底より浮きざま翔びぬ巫女秋沙 向ふ三軒遍く雪の堆し 繕ふや鵠の声と思ふ夜更け 吹き溜る雪の太刀めく尖りかな 初写真目線揃はぬ大家族 猛吹雪籠り堂めく三日間 単線へ傾れてをりぬ冬柏 牡 丹 雪 寺澤朝子 寒厳し触るれば弾けさうな空 枯木星そつと口笛吹いてみる 空耳に五郎助ほうと啼く夜かな 座右の書に「祈り」の一書寒椿 寒紅梅十三七つのころ恋へば 薬草茶注いで寒夜を籠るなり 日脚伸ぶ露店にえらぶ詩文集 牡丹雪うつすら紅梅隠すほど |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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待 春 源 伸枝 降る雨の雪となりたる葬かな 夫に炊く粥ことことと日脚伸ぶ 待春の日差し手許に鍬使ふ 小流れの藻のゆらめきや寒明くる 春立つや白きエプロン身にまとひ 早春の風や仔犬は目を細め 巣 箱 横田じゅんこ 紅梅のこずゑの届く茶室かな 如月の水を硯にあふれさす 種袋開けて未来を近くする 芹なづな独りの厨ともしけり 囀りや口にころがすミルク飴 巣箱にも出来そこなひのありにけり 氷 点 下 浅野数方 人日の眉細く引くうすく引く 暮しぶり太々と書き初便 風に身を切られどんどに手をかざす 神木の袖より春のきざしをり おとがひの滅法冷ゆる厄落 群青の空に音無き氷点下 初 風 呂 池田都瑠女 日の筋に鉢もの並べ年の暮 座り胼胝ペン胼胝撫でて初風呂に 訪へばなほ矍鑠として木の葉髪 人日の街に眼鏡を買ひに行く 裏隠岐の日暮は早し寒の雁 終の家に蕾の固き沈丁花 霜 の 花 大石ひろ女 駅長の長き敬礼霜の花 観音の眉のごとくに寒の月 木の家の木のこゑ春の遠からじ 神水の一杓春の立ちにけり 落人の里の夕ぐれ花なづな 春寒し流刑の島の渡し船 雪 月 夜 奥木温子 反りながら丸まりながら散る朴葉 笹鳴の止んで暮色の行き渡る 白樺の下に猿鳴く雪月夜 花弁の先が寒さう冬薔薇 臘梅の色を奪つて雪雫 蹲踞の水に生気や春隣 |
風 信 子 柴山要作 寒晴の一山啄木鳥の音高し 園児らに人気の鬼や節分会 まだ風に尖りありけり節分草 節分草山田に未だ人のなく 玻璃窓や髭根かがやく風信子 友に長き手紙書き終ふ風信子 母 の 忌 西村松子 去年今年愚直に生きて皺ふやす 海鳴りのおだやかな日を海苔簀干す 潤目干し蜑のつましく生きてをり 母の忌の近づく夜の雪匂ふ 犬ふぐり畦に咲かする日射しかな 寒雁の飛び翔つ田の面剝ぐやうに 光 り 物 森山暢子 一本の遠き冬木をよりどころ 夜咄や男の前歯欠けてゐし 本籍は今も殿町冬かもめ 棟札は屋根裏にあり雪しんしん 狐火や女は光り物が好き 寒雀群れとはならず兵舎跡 犬ふぐり 篠原庄治 どんど火や何時も誰かが突つ突きて 風邪気味の舌に遊ばす白湯甘し 閉校の近き学舎冬灯 崖氷柱何処かで水の滑る音 窪の日に花のさきがけ犬ふぐり 年の豆撒くも拾ふも二人きり 炬燵守る 竹元抽彩 松過ぎや客の賑はふラーメン屋 雄弁と思ふマスクの息遣ひ 寒鴉腹を空かせて鳴いてをり 目交に妻ゐて一日炬燵守る 雪礫投げて十個を返されし 寒燈に湯気立ち込むる湯宿かな 悴 む 福田 勇 時雨忌や生くる証の句集編む 玄関の花褒め交す年賀かな 初春や小堀遠州流の庭 悴む手握り返して送りけり 寒桜咲き初め久能東照宮 探梅や里に朽ちたる丸太橋 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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西村 ゆうき 石の色して寒鮒の鰭を振る 花木 研二 蝦夷富士の全容見する寒日和 |
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教へ子の成人の日の髪飾り 川鴉寒九の雨を呼びにけり 支へ合ひ凭れ合ひ蘆枯れ尽す 寒明の厨に匂ふカレーかな 読初の三行目よりまどろみぬ 初凪や湖に影おく浮御堂 グローブを入るる鞄や春隣 一部屋に二つの時計日脚伸ぶ 闘病の母の短髪冬薔薇 繭玉の下で診療待ちてをり 住職が打ちて振舞ふ晦日蕎麦 一つ見て二つ見てみな遠き鳰 冬の星座子に見え我に見えざりき 寒鯉に大将もゐて神の池 探梅や母校の跡地見て帰る |
福本 國愛 三谷 誠司 横田 茂世 大澄 滋世 石川 寿樹 野澤 房子 森 志保 早川 俊久 根本 敦子 山羽 法子 中村 義一 梶山 憲子 小松みち女 吉原絵美子 油井やすゑ |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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浜 松 伊藤 寿章
絵馬あまた願ひも数多初詣 出 雲 牧野 邦子 白鳥の声落しつつ低く飛ぶ |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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朝刊に折り込まれたる寒さかな 伊藤 寿章 寒い時分は仲々起きにくいものである。それでも、その時が来れば起きねばならぬ。身支度を整えて、届いたばかりの朝刊を開く。 麦の芽の出揃ふ空の広さかな 牧野 邦子 麦は前年の十一月か十二月ころに種を播き、一月頃に芽吹く。麦の芽が出揃うとやがて麦踏みが始まるが、この句はその一歩手前の景。 農業を語る青年おでん食ふ 中西 晃子 近頃はTPP(環太平洋経済連携協定)や農協改革など農業を取り巻く環境が何かと取り沙汰されている。そんな中でおでんを食べながら、農業について熱く語る青年がいる。おそらく、作者も熱心に耳を傾けていたのだろう。青年の語る農業への夢や抱負。農業の明るい将来が見えてきた。 何となく買ひ過ぎてゐる年用意 錦織美代子 必要なものは全部買ったし、足らぬものはない筈。買ったものを取り出してみてもみな必要なものばかり。しかし、何となく買い過ぎている感じ。年用意ともなれば足りないものがないように、ついつい用心し過ぎて如上の結果となる。買い物上手の主婦の溜息が聞こえて来そうな句である。 天山の初冠雪となりにけり 鍵山 皐月 天山(一、○四六メートル)は佐賀県中部にある花崗岩からなる山で、肥前富士と呼ばれる霊峰である。この山を中心とした四九、三○平方キロが天山県立自然公園として指定されている。 初神籤あまたのなかに結びけり 高山 京子 高野素十に〈ひざまづき蓬の中に摘みにけり〉という省略の効いた句がある。この句も初詣で引いた神籤を、枝に結んだということだけなのだが、引き絞ったような省略がある。結ぶ枝を色々と探したのだろうが、そのことを全部省略して皆と同じ枝に結んだ。中七の「あまたのなかに」で作者の枝探しも神社の賑わいも伝わってくる。 鉛筆を静かに置きて試験終ふ 高橋 裕子 試験監督官の「よし、これまで」の声に静かに鉛筆を置く。試験中の緊張した静寂がほぐれて、教室に一瞬のざわめきが起こる。結果はともかく、この日のために努力した一年であった。鉛筆を終い、消しゴムの滓を集め、机をきれいにする。そして、静かに教室を去る。受験生には厳しい春である。 神主がひよいと出て来し初詣 橋本喜久子 神主の登場の仕方におかしみがある。初詣といえども、ご祈祷のとき以外は滅多に顔を見せない神主である。それが何の都合か、戸口からひょいと出て来たのである。出会い頭で作者も驚いただろうが、神主も驚いたに違いない。初詣という厳粛な舞台装置が「ひよい」の効果を大きくしている。 |
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