最終更新日(Update)'15.10.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 岡 あさ乃 |
「泉」(作品) 白岩敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 弓場 忠義 、吉村 道子 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 中村 國司、阿部 芙美子 ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(出 雲) 岡 あさ乃 |
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秋灯身をしなやかに技芸天 鷹羽 克子 爽やかに父のミットに投ぐる球 計田 芳樹 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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双 葉 坂本タカ女 蜷局巻きたる蛇であるとはつゆ知らず 枕木僅か五本の鉄橋にゆうの花 親鴉鳴くとき翅に力こめ 川はづれ二羽の鴨とぶ薄暑かな 道端のバイク気になる袋掛 木木を風拔けゆく鶯老を鳴く 夏枯や今もその名を姫小路 一週間目の大根の双葉かな 合歓の花 鈴木三都夫 ぼんやりと一人ぼつちの梅雨の月 梅雨雲の蓋を被せて動かざる 夏萩とおぼしき花を風に見せ 滴りの苔に滲みては滴れる 嫋々と風を去なして合歓の花 炎天へ出て緑蔭を返り見る 鳴く河鹿恋の姿は見ずじまひ しばらくは河鹿と別れ惜しみけり 炎 天 山根仙花 降りさうな気配となりぬ栗の花 一筋の道伸び青田貫けり 妻も出て梅雨夕焼の中に立つ 炎天の影落しゐる大樹かな 炎天の砂飛ばし掃く竹箒 何もなきことの涼しき一間かな 風鈴の音見上げつつ薬飲む 片蔭を語りつつゆく乳母車 きりぎりす 安食彰彦 草の戸のサドルに休むきりぎりす 一泊のホテルの美しき夏布団 墓参り系図正しき大檀那 スーパーで買ふ魂棚の盆供かな 花芙蓉昔の呉須の皿五枚 重さうに自慢の西瓜提げてくる 唐津屋の角の真赤な百日紅 新涼や小津の入江は海を抱く 遠 蛙 青木華都子 窓といふ窓全開に梅雨明くる 燕来る駅長室の出入口 待ち合はす無人駅舎に燕の巣 東京は眠らぬ街や濃あぢさゐ 昨日、今日、明日も雷雨予報なる 発つ気配全くなくて通し鴨 ひと声がやがて合唱遠蛙 鳴き出してふつと鳴き止む遠蛙 山 泉 村上尚子 紫陽花やまだ濡れてゐる石の皺 自転車の僧の涼しき袂かな 鵜の首を立て急流に逆らはず 昼寝の子乗せて一両電車行く 花茣蓙の花と向き合ふ子の旨寝 納屋にあるブリキの盥ういてこい 先生のこゑ聞いてをり山泉 夕蟬や背に真榊を揺らしゆく 木洩れ日 小浜史都女 自然薯の花八十が目の前に 軸涼し竹の一字に節ありき まばたきをして藻の花を増やしけり 神職の片手間に草刈つてをり 南部風鈴有田風鈴どれも好き 木洩れ日を浴び木洩れ日を踏む晩夏 かなかなを聞きつこの村好きになる 朝顔や予定なき日も眉描きて |
バラの花 小林梨花 しつとりと濡れたる町や緑濃し 夏燕雨に羽摶き大空へ 梅雨晴れて町の甍のきらきらと 九階の窓辺群れ飛ぶ夏あかね 病室に開きかけたるバラの花 生還の口に冷たき氷水 火の雫落つるが如き夏入日 窓開くるネオンの町の涼しさに 遠 花 火 鶴見一石子 歳月のとどまるはなし遠花火 草笛を吹き戦中の兄を呼ぶ 向日葵や大地の恵み欲しいまゝ 晩節の朝の力や草を引く 黄泉へゆく道筋を問ふ蓮の花 昼寝覚め職場の友をふと見たり 夏草や格子の中の地蔵尊 祭足袋大地をしかと踏みしめり 被 爆 樹 渡邉春枝 一瀑を抱き名峰背を正す 海を来て海の色なる揚羽蝶 被爆樹の茂りの許の乳母車 吊皮に日焼の腕伸ばしけり 愛用のタオル離さぬ昼寝の児 帰省子の大の字に寝る佛の間 蟻道の渋滞つづく日暮どき 水打つて沈む夕日をとどめけり 遠 雷 渥美絹代 職退きし弟の飼ふ目高かな 滝口に日のすぢとどく午後三時 遠雷や肘掛け剥げし革の椅子 ぎす鳴くや三和土の広き祖母の家 雨粒をつけて七夕竹届く 火をつけてより風はたと止む門火 盆の客庭の通草の実に触るる 節多き板の間盆の風通る 夏炉焚く 今井星女 夏炉焚く北海道に住み馴れて 紫陽花や海を見てゐる異人墓地 東京の砂町恋ひし波郷の忌 函館に縁ありたる波郷の忌 庭に出る度雑草を引きにけり 盛つけに紫蘇の葉一枚加へけり 鉄拳をふり下ろすごと雷雨来る 雷雨去り深き睡りに落ちにけり 島 航 路 金田野歩女 終便の機体の光る白夜かな 歯科の器具みんな尖るや半夏雨 青田風大納屋全開してゐたり 家苞に加ふる島の布海苔かな 帰省子も郵便も着く島航路 夏野菜変身さする髭のシェフ 夏見舞黄泉の国へも届けたし 白抜きの幟出てゐる新豆腐 星 合 ひ 寺澤朝子 七月の小諸も佐久も霧の中 夏霧や煙も見せず浅間山 梅雨深し北前船の着きし浜 お城下の名残りの櫓夏つばめ 入江より仰ぐ立山驟雨過ぐ 朝曇港にどつかとロシヤ船 星祭る回船問屋の蔵屋敷 星合ひや老いて姉弟といふは佳き |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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松 の 蕊 森 淳子 マロニエの美しき片陰続きけり 松の蕊城址に残る顕彰碑 万緑の山の迫りて来たりけり 玫瑰や下ろしたてなるスニーカー 対岸は倉庫街なり夏の雲 六月の海へ突き出すレストラン 晩 夏 諸岡 ひとし 何処に居ても暑い暑いと見舞状 台風に備へ天幕撤去せり 初捥ぎの葡萄を父母に供へけり 初咲きの木槿を挿せる茶会席 築山に一叢斑入りの青芒 宣誓の若人夏の甲子園 青ぶだう 大村 泰子 官田に白鷺一羽紛れ込み 経机に引き出しありて韮の花 揚花火ずどんと胸をつらぬけり 青ぶだう澄みたる声のいづくより ざぶざぶと炎暑の水を使ひをり 納涼舟動くともなく動きけり 蛍 荒井 孝子 沿線を逸れて鉄道草と言ふ 子燕に覗かれてゐる朝寝かな 蛍火や闇には闇の襞のあり あをあをと闇濡れてをり蛍の夜 月落ちてゆく中蛍眠りけり 揚花火時折月の覗きけり 緑 蔭 安澤 啓子 緑蔭に稚児かんむりを正しけり 渡御船の鳥居ぐらりと揺れにけり 救命の胴衣積み込む祭船 みなづきの水草絡む水車 祭壇の塩溶けてゐる半夏生 踊の輪炭坑節に膨らみぬ 淩 霄 花 宇賀神 尚雄 迫り出して風の寄り添ふ淩霄花 通り雨青鬼灯の生き生きと 山百合の咲き連なれる杉並木 夏菊に目を細めゐる六天仏 緑蔭に入りて爪先まで憩ふ 涼しさは北へ流るる千曲川 |
汗の喪服 佐藤 升子 くれなゐの紐を十字に蛍籠 水平線明し窓辺に百合挿して 木杓子に片減りありぬ半夏生 緑蔭に人の集まる葬の前 窓開けて汗の喪服を吊りにけり 帯に団扇はさみ手水を使ひけり 夏 衣 出口 廣志 軒簾懸けて世間を遠くせり 百歳も自立してこそ夏衣 銀輪の僧飄々と青田風 病窓に凭りて港の遠花火 白山の雪渓著く聳え立つ みちのくの風鈴吊し旅心 望 遠 鏡 星 揚子 合歓の花片目を瞑る望遠鏡 大木の息するやうに蝉の声 列なさぬうちは勝手に動く蟻 濡れ縁は一尺の幅蚊遣香 古文書に暗号のごと紙魚のあと なめらかに動く筆師の指涼し 魂 送 り 本杉 郁代 忘れたる頃に上がりし花火かな 献立の一品はまづ冷奴 迎火や十年の日々矢のごとし 棚経の僧の風生む衣かな 魂送りいつもの日々にもどりけり 兄弟の二人欠けたる天の川 万 緑 渡部 美知子 白南風や床に広ぐる世界地図 簾越しいつもの声と二三言 黒揚羽胸元に来て反転す 炎昼や街騒を断つ大鳥居 万緑へ谺となれる四拍手 百年の暖簾受け継ぐ笑み涼し |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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弓場 忠義 夏満月妻を迎へにゆきにけり 吉村 道子 葉に揺るる豆粒ほどの青蛙 |
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町なかの分水嶺や花カンナ 走り去る自転車の子ら浮輪して ゆづること覚えし童さくらんぼ 夏羽織総代席に着きにけり 長梅雨の気配天ぷら揚げにけり 曲り角に来てハンカチを振りにけり 新涼や仕上げの飾りミシンして 烏賊の腸すつぽり抜けて夕立来る 開拓の野や羊蹄の花盛り 十薬の毟り出されて山積に 田草取る敵の如く投げつけて 蝉時雨浴びて耳欠く道祖神 雪渓の緩みて天塩川となる 首まはすラジオ体操花南瓜 大夕立七福神を濡らしけり |
樫本 恭子 神田 弘子 山田 春子 植田美佐子 塩野 昌治 村松ヒサ子 陶山 京子 鈴木 敬子 小林さつき 斉藤かつみ 江角トモ子 内田 景子 山羽 法子 三浦 紗和 太田尾千代女 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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鹿 沼 中村 國司
掴まれて青空泳ぐひきがへる 浜 松 阿部 芙美子 川風にかがり火爆ずる鵜飼かな |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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誉め合へることの幸せ韮の花 中村 國司 子どもでも大人でも誉められることは嬉しいことだ。お互いの美点を認め合って「誉め合へる」ことは幸せである。ここまでは道理に適った叙法であるが、配した季語が違った。仁尾先生の『自注句集』に「波郷は、あれもよい、これもよいと一句の中に持ち込んでも駄目だと落選理由を述べた」とある。 山小屋の灯へ吊橋を渡りけり 阿部芙美子 歩きづめ、登りづめだった登山路も今日の行程がようやく終わりに近づいた。山小屋の灯が木の間にちらちら見えている。ふっと安堵の溜息が出そうだが、もう一つの難所の吊橋がある。呼吸を整えて、ゆっくりとしかも確実な足取りで一歩一歩吊橋を渡っていく。光は希望である。目的へ向かっていく行動が力強く感じられる。 戦争を語らぬ父の原爆忌 高内 尚子 今年の八月は太平洋戦争が終わって七十年目にあたる。八月は日本人にとって重たい月である。戦争を知らない世代が増えているが、戦争の悲惨さを伝えることは平和への道のりでもあろう。しかし、戦争を語らぬ人がいる。真のかなしみは言葉にはならないし、言葉にすればその実態が消えてしまう場合がある。言葉は人の思いに届かないことがしばしばある…。巡って来た原爆忌に新しいかなしみが湧く。 短夜のところどころを眠りけり 山口 悦夫 夏は夜は短い。その上、暑くて寝苦しい。それでも眠ろうと思いつつ横になる。まどろみては醒め、醒めてはまたまどろむ。気がつけば窓がすでに明るくなっている。寝たような寝てないような曖昧さが「ところどころ」を眠る。起きた時の何とも奇妙な気分に納得させられる。 山百合の咲くや卒寿をつつがなく 椙山 幸子 日本人の平均寿命は女性が八十六歳で世界一、男性が八十歳で三位だそうだ。卒寿といえばこの平均寿命を越えている。それも「つつがなく」だ。日常の立ち振る舞いも百合の花のように凜として、年齢を感じさせないにちがいない。見事である。この句は「卒寿を」であって「卒寿の」でないことに注意したい。 桃の実やくりくり動く嬰の足 佐々木智枝子 畳に寝かされた赤ん坊の元気な足の動き。丸々とした可愛い足の動きを「くりくり」と言い取ったところが絶妙。これで赤ん坊のすべてが見え、囲む人達の幸せな顔も見えて来る。季語の「桃の実」も童話の「桃太郎」を連想させて微笑ましい。 入道雲がくんと崩れどつと雨 加部あきら 青空に大きく伸び上がっていく入道雲。それが突然がくんと崩れた。と思う間もなくどっと雨が降り出した。瞬く間の出来事であった。異常気象なのか、天変地異の前触れなのか。「がくんと」「どつと」に切迫した緊張感がある。 汗のシャツ梯子に掛けて庭師かな 大菅たか子 通りすがりの景なのか、或いは作者の家の庭でのことなのか。いずれにしても、夏の暑い盛りに庭師が庭木の枝払いを行っている。「剪定」は春の季語であり「木の枝払ふ」は夏の季語である。 |
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