最終更新日(Update)'13.03.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 渥美尚作 |
「冬 至」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
鳥雲逍遥 青木華都子 |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 鈴木喜久栄 、秋葉咲女 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
句会報 花みづき句会 松本 光子 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 小村 絹子、出口 廣志 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(浜松) 渥美尚作 |
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雛飾る母の癖ある覚え書 齋藤 都 (平成二十四年五月白魚火集より) 今年も雛を飾る頃となった。 中学二年の時、担任から「君の母さんは手馴れた上手な字を書くね」と言われ、自分のことのように面映く、また誇らしく思ったものだ。 遊学中、月に一度、送金をしてもらっていた。その現金封筒の中に、必ず母の短い文が添えられていた。いくつになっても母は懐しく、良い思い出しか浮かばない。 雛を飾る手順を事細かに記した母の覚え書き、それを見ながら、丁寧に箱から取り出し、並べていく作者。母の顔、物言い、仕草まで浮かんでこよう。最後の行には、「雛の日が済んだら、遅れないように仕舞いなさい」と書かれていたに違いない。 春の泥付けしまま訪ふ友の家 福田 勇 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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年 賀 安食彰彦 保育所に行く子年賀の一の客 豪快な笑声あぐる賀客かな 年賀状鬼籍の父にまたきたり 国造様より盃を頂く初詣 七日粥退院といふ良き便り 風花を捉へんとする兄妹 児の見詰む硝子に付きし雪六花 寒鴉群れてみさごの雛脅す 初 電 話 青木華都子 一葉も残さず橡の枯並木 青白き雪虫いつの間にか消ゆ 霜柱踏む快感を土踏まず 木の実踏み木の実に足を取られたる 韓国語辞書傍らに賀状書く ハングルの文字は横書き年賀状 名無しでも解かる姉の字年賀状 アンニョンハセヨカムサハムニダ初電話 故 郷 白岩敏秀 鹿鳴けり背山に深き谷なきに 冬蝶や空は昨夜の雨残し 湯ざめして種火のごとき女の目 神在や風が笛吹く築地松 星消えてずしりと寒くなる故郷 雪折の竹の真青き円弧かな 行く年の山のかたちに山暮るる 寒に入る握りの細き母の杖 魔 法 瓶 坂本タカ女 唇に来て冷たかり雪虫は 小振りなる文字をちりばめ大文字草 産み余したる鮞雪を染めをりし 閊へ棒は流木なりし風囲 虎挟み引きずりゆきし鹿の跡 柚子ふたつ浮かせひとりの柚子湯とす 年の夜やまなこのごとき仏の燈 年つまる魔法の失せし魔法瓶 去年今年 鈴木三都夫 染まらんと楓紅葉の下に佇つ 方丈の離れの茶室笹子鳴く 禁漁区知つてか沼の鴨浮寝 沼の鴨驚き易き水走り 当て所なく舞うてはかなき冬の蝶 何もかもみんな忘れて日向ぼこ 一行を埋めて去年の句今年の句 句会もて年のはじまる四日かな |
枯 木 立 山根仙花 仰ぎては登る急磴冬紅葉 鍵一つ置く短日の机上かな 時雨るるや古釘泣かせ泣かせ抜く 橋架けて眠れる山を繋ぎけり 落葉降るかそけき音の積りけり 星屑の寒く散らばり町眠る 夕日今燃えて華やぐ枯野かな 稲荷社へ続く鳥居や枯木立 初 氷 小浜史都女 鴨のこゑをさなき声も加へたる 豬除けの柵ぼろぼろに山眠る 侘助や山が夜へと沈みゆく 観音の裏手へまはり氷割る ぼけ封じ観音さまの初氷 天山をひたに隠して吹雪けり 魚屋の水槽に蛸年詰る 火の粉浴び火の粉を踏んで年惜しむ 神の御膳 小林梨花 数へ日の墓域木洩日燦々と 浦路地の風の刃や年詰まる 塗り物の神の御膳を年用意 風音も雨音もなく去年今年 各々に語る言葉や明けの春 楪の濃き紅よけれ神の膳 初凪の江に差し伸ぶる松の枝 ほかほかと浦に日の差す初句会 草 萌 鶴見一石子 晩年は優柔不断懐手 ためらはず死の話して蒲団干す 桟太き天狗の里の白障子 笹鳴や道鏡塚の竹矢来 寒茜消えゆく闇のけもの道 それなりの顔をつくりし初鏡 地滑りの傷痕深く下萌ゆる 懸崖の茶店の床几さくら餅 初 景 色 渡邉春枝 道岐れわかれて冬の海に尽く 盛り上がる話コートの衿を立て 冬ばらや疎遠となりし人のこと 心足る一書に年を惜しみけり 硯海に墨たつぷりと年つまる てにをはの一字に迷ふ去年今年 海光に鹿立ち上がる初景色 ふり向けば鹿もふりむく恵方道 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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歌かるた 寺澤朝子 星座やや傾ぶく夜番もどるころ 菩提寺のいま懐かしき除夜の鐘 一文字を書いて筆おく初昔 初空へ放つ鳩舎のレース鳩 昆布じめの魚を俎始めかな 取り札の文字美しや歌かるた 巫女秋沙 野口一秋 推敲を重ね蜜柑の皮を積む 寒釣の魔法瓶より温め酒 鴨の名の巫女秋沙とはかはいらし 冬の蠅武蔵のやうに箸掴み 素人の作る白菜球なさず 逝く年の墨痕淋漓金の文字 十 二 月 福村ミサ子 綿虫とぶ小山はなべて古墳なる 冬の浪砂嘴へ砂嘴へと砂運ぶ 畳屋の夜を耿々と十二月 極月の予定の中に母の忌も くろぼこの土寄せてあり囲ひ葱 降る雪やみどりに点る非常口 |
茜 さ す 松田千世子 初富士のまだ明けやらぬ濃紫 茜さす茶山に満つる淑気かな 一枚となり初凪の伊豆の海 初鴉足を揃へて降り立ちぬ 初渚焚火の匂ひ漂へり 初夢の汐騒遠く近くかな 淑 気 三島玉絵 老幹の松の枝張る淑気かな 元朝の厨ことこと動き出す 裏白のちりちり乾く末社かな 勢溜りにて待合はす初詣 一羽来てもう一羽来て初鴉 寒の紅目立たぬ様に引きにけり 日 光 今井星女 眠り猫みる日光の小六月 二十基の殉死とありし露の墓 霧降りの滝見て華厳の滝を見ず 百体の並び地蔵や秋深し 身に入むや首のなかりし化地蔵 菊日和百の部屋ある御用邸 |
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鳥雲逍遥 |
青木華都子 |
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伝説の賴朝の湯や木の実降る 農耕の合間豬垣組んでをり ひと日家事のがれ勤労感謝の日 絵馬作る焼印匂ふ師走かな 宮の杜煙らせてをり落葉焚く 紅葉濃し国境迄来てしまふ 神送り空軽くなる出雲かな 片手間の大工仕事や菊日和 命ある物のごとくに舞ふ落葉 初雪に逢ひし大原女金閣寺 花芒疾風が波の向きを変へ 茨の実赤し木道修理中 たをやかに臥す八溝嶺や秋の雲 神在りの浜に寄す波かへす波 日の温み吸ひ尽したる木守柿 綿虫の飛ぶには非ず漂へり 付いて来し穂絮を風に返しけり 綿虫の消えて夜越しの雨となり 焚く菊の山に火種を落しけり 小春凪隠岐にひとりの姉見舞ふ |
田村 萠尖 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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鈴木喜久栄 髪切つてポインセチアを抱き帰る 秋葉 咲女 ひとり泣きつられて泣く子寒稽古 |
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冬至湯にいのち明るく老いにけり 懐手尖る男の喉仏 初氷踏めば軍靴の音したり 晴れ着の子ふくよかに年はじまれり 降りつづく雪の御堂の仏かな 包装の真紅のリボン聖夜くる てらてらと海の揺れをり初茜 冬の日や青空を鳶使ひきる どやどやと声の近づく除夜詣 室の花いつせいに咲く農学校 乾杯のシャンパングラス星月夜 初春の玄海灘の波がしら 薬喰六人きりの同窓会 早朝の靴音にある淑気かな 凩に星磨かれてこぼれけり |
竹田 環枝 和田伊都美 阿部 晴江 鳥越 千波 中山 雅史 小林布佐子 小村 絹子 若林 眞弓 竹内 芳子 吉田 美鈴 山羽 法子 谷口 泰子 田口三千女 仙田美名代 海老原季誉 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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牧之原 小村 絹子
初渚風紋しかと踏みにけり 江田島 出口 廣志 冬めくや漬樽洗ふ縄束子 |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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短日やポケットの舌出して干す 小村 絹子 ポケットの中には、ハンカチや携帯塵紙、携帯電話や俳句手帳、時には飴玉や貰った蜜柑が入ることもある。尻のポケットには財布を入れるが、これには身分証明書やプリペイドのバス券や病院の診察券等々が入っている。ポケットは至極便利であるが殆んど中を見ることがないのでキレイなのか汚れているのか分からないけれど余り気にしたことはない。 風花の祖谷の川辺のぬる湯かな 出口 廣志 屋島の合戦で敗れた平家の落人が逃れてきたのが、阿波のどん詰りの祖谷。大歩危、小歩危という難所もあり、支流の祖谷川も險阻な〓字渓谷を為している。観光名所の祖谷のかずら橋は、太い葛を何本も縒り合せて両岸の大木に架けこれに葛の橋を吊ったもの。攻め手が来ると太い葛を切り落せば三十メートルもある絶壁状の崖を下り、又攀じ登らねばならず、事実上進攻は不可能だ。かずら橋は生活の橋であるが、元々は戦略上のものだった。 たらちねの白寿の年の立てりけり 佐藤 勲 この作者に「終戦日即ち父の忌なりけり」という遺族にとって諦め切れぬ句がある。終戦になった情報が伝わらず終戦の日に父は戦死したのである。母は、父の剰した命を貰ってか、今年は白寿になる。父に取って伴侶が長生きしてくれるのは何よりの供養になっていると思われる。 霊長類ヒト科集ひて年忘れ 永島 典男 霊長類は十二科六十属百八十種に分かれている。ヒト科はサル目に属し、人類はヒト科の中の動物で智恵が発達し直立歩行ができ、手を巧みに使い道具を作って使用することができる、と解説されている。 狐火を生涯にただ一度だけ 榛葉 君江 闇の夜山野や墓地の宙空で青白い火がゆらめいていることがある。狐が口から吐く火だと各地で言われているが、その正体は光の異常屈折あるいは灯火を狐火と見誤ったものだという。掲句もこれは狐火に違いないと思ったことが生涯に一度だけあった。狐火というものはないと信じていただけに火の玉のように見えて膝ががくがくした。ないと信じたものが現れるのは怖さが増幅されるのである。 寝違へて首の廻らぬ十二月 茂櫛 多衣 寝違えて首が痛いのはユーウツ。右に向くにも体を右に向けねばならぬ。一句は十二月と取合わせて読者に借金を思わせる。作者の狙いを承知の上で面白がるのも一興である。
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