最終更新日(Update)'13.06.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 辻 すみよ |
「五万羽」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 渡部美知子 、竹田環枝 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
鳥雲逍遥 青木華都子 |
平成二十五年度 第二十回 「みづうみ賞」 発表 |
句会報 あんず句会 多久市 大石ひろ女 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 村上尚子、田久保峰香 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(牧之原) 辻 すみよ |
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青梅や大人びてきし十五歳 峯野 啓子 路地裏に「ゆう子」と染めし夏暖簾 福田 勇 夫の留守夫の分までビール飲む 舛岡 美恵子 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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惜 春 安食彰彦 桜蕊静まり返る露兵墓 雁帰る朱鷺色の空はるかなり 白なれど燃ゆる色なり雪柳 春火鉢蛇紋の煙管ポンと打つ やはらかく波止打つ波は春の潮 透く波の波止に育ちし若布かな 黒牡丹飾る浦路地風の路地 肩並べすぎゆく春を惜みけり 杉 花 粉 青木華都子 舞ふといふより飛んでをり杉花粉 菜花摘む指先菜花色に染め 立ち上りまたかがんでは菜花摘む 席取りは男の役目花蓆 うつとりと眠りを誘ふ花の下 花冷えの最終バスに客一人 散り際の桜もつともさくら色 葉桜となりてだあれもゐぬベンチ 子らの声 白岩敏秀 春暁やパン工房に灯の点る 義民碑に強き影して木の芽張る 正調の白さに辛夷咲きにけり 祭神は女神におはす鳥の恋 春一番大根に薹立ちにけり 沈丁の風に手紙の封を切る 恋猫や外国船が錨巻く 桜咲くいつもどこかに子らの声 雛 遊 び 坂本タカ女 納屋出でてくる猫車雨水かな 大鷲の嘴ばかりなる貌なりし 拇指の皸うす目開けをりぬ 鶯餅の粉ついてゐる桜餅 貴重と言ひぼろぼろの雛の軸 雛遊びしてゐるうしろ納骨堂 ぐらついてゐる椅子の脚雛納 片減りの墨の磨り癖鳥雲に 涅 槃 図 鈴木三都夫 奔放に楉を伸ばす野梅かな 犬ふぐりここよここよと固まれる 春めくと背山妹山ほほゑめる 流れ若布の昔を今に蜑の浜 食べ料の岩海苔乾く蜑の路地 涅槃図の供花の一枝も枯れてをり 涅槃図を遠く離れて寺の猫 思惟羅漢経読む羅漢あたたかし |
初 蝶 山根仙花 笹鳴に誘はれ杣道曲りけり 新しき初株匂ふ二月かな 初蝶に山河大きく横たはる 蜆舟浮かべ宍道湖真平ら 峡走る水音に濡るる芽木の天 木々の芽のつぶやきながら太りけり 芽木に雨注ぐ公園とはさびし 辛夷咲く雨の洗ひし石畳 花 の 頃 小浜史都女 記念樹はさくらと決めてさくら買ふ 竹垣の結び目美しき花の寺 花の寺茶菓の羊羹さくらいろ 坊守も僧もさくらの吹雪浴ぶ 横たはる松原と海夕ざくら 山桜伏流水のかろく鳴る 飛花のあと落花そのあと水の上 花筏遠くはなれてまたひとつ 伊勢神楽 小林梨花 春風となりて参磴吹き下ろす 荒神を拝してよりの春茸採り 黄砂降る峡の百戸の沈みをり 歳月を重ねし句碑や木の芽雨 花の雲総廟までの坂上る 春光に大刀のきらりと伊勢神楽 ものの芽や戸毎に舞へる伊勢神楽 春昼や長々と舞ふ伊勢神楽 花 菜 漬 鶴見一石子 何よりも弥生の大地踏める倖 紫雲英田の少なくなりし此の世紀 幼児の笑顔ふらここ抜けて来し 晩年の鞦韆地表離れざる 日溜りの葦を砦の蝌蚪の国 京言葉似合ふ嵯峨野の花菜漬 体重計気になる数字雲雀笛 逃水や人を拒みて遠ざかる 残 り 鴨 渡邉春枝 山々の芽吹きうながす鳥の声 門柱に医院のなごり緑立つ のこり鴨池の広さをもてあまし 新しき陣たて直すのこり鴨 大学が好きで残りし番鴨 蝌蚪の紐つつき幼に戻りけり 春耕の土の匂ひを佛間まで 重文の柱に梁に春惜しむ |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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春 の 雲 二宮てつ郎 春暁の遊ばせてゐる耳二つ 春の雲鴉の後を流れけり 山畑の煙一条彼岸過ぐ 三月の水三月の蛇口より 提げてゐる豆腐の重み花曇 ポケットの両手亀鳴く日なりけり 花 吹 雪 大石ひろ女 その先に潮路のありて流し雛 しあはせの自問自答や山笑ふ 国境の海の青さを黄砂来る 飛花落花すこし傾く百度石 日輪のゆつくり廻る花の山 花吹雪びくりともせぬ力石 朧 奥木温子 杉花粉烽火を揚ぐる山の襞 歩き神誘ひに来たる長閑かな 体操をしながら歩くうららけし 消防車おぼろの中に入り行きぬ 蛙に目貸して昨夜の句忘れけり 湯の町の影も朧でありにけり 朝 桜 清水和子 歩幅よき階登りけり梅の寺 満開の梅の下にて撮られけり 梅園に音の彈める作り滝 鯛焼を半分けにして梅見かな 朝桜二の丸御殿清掃中 携帯電話よく鳴る日なり暖かし 卒寿の賀 辻すみよ 花の宴師の矍鑠と卒寿の賀 桜見に行く約束の電話口 二つ摘みふたつ残して蕗の薹 板店のたこ焼匂ふ花堤 松籟に囀聞ゆ砂丘茶屋 春愁ひ遺影の埃払ひけり 涅槃西風 源 伸枝 ほほゑみの阿弥陀如来や木の芽晴 鐘楼の白壁くづれ花馬酔木 万年の地層あらはに涅槃西風 童心となりて突つくや蝌蚪の紐 春鴨の漂ふ波の荒さかな 父と子の表札並び初燕 |
落 椿 横田じゅんこ 長靴の左右に倒れ春の雷 湖に水尾のしろがね春の鴨 明日蒔かむ花種のあり輝やきぬ 落椿水の窮屈さうに行く 花冷えの足袋の小鉤の固きかな どの部屋も灯し春愁深めたる 長 閑 浅野数方 のどけしや戸を開けに来る寺男 現世の惚るる惚くるや四月馬鹿 吾の余生神にあづけて稚魚放つ 初蝶に覗かれてゐる庭仕事 囀や日をころころとまろばせて 春愁や色で仕分くる備忘録 春 炉 渥美絹代 藪椿今日来る客に剪つてきし 前山のゆつくり暮るる菊根分 春雨や研屋と酒屋向かひ合ひ 潜り戸を抜くれば椿一つ落ち 脱ぐ靴の汚れてゐたる春炉かな 浜名湖の水切つて売る浅蜊かな 春 惜 む 池田都瑠女 経机に名刺の置かれ彼岸寺 一斗枡の刻印薄れ春時雨 鍬杖に見上ぐる彼方鳥帰る 橋脚にかかりたゆたふ花筏 通りやんせ天神様の落花浴ぶ ホットミルク両手に囲み春惜む 水 温 む 西村松子 水温む赤子はこぶしひらきけり 別れ霜いきなり鴉高啼ける ふり返るとき春潮のやはらかし 啓蟄や影もたぬ虫飛び立てり 海光や芽木ことごとく照りかへす てらてらと春泥の照る峽田かな 彼岸の雨 森山暢子 鳥引くやきのふと違ふ波のいろ 牛切とふ古き地名や春田打つ 本懐を遂げたるやうに落椿 古川句碑彼岸の雨に濡れにけり 辛夷咲く雨に明るさありにけり 猟じまひ佛足石の濡れてをり |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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渡部 美知子 栄螺焼くするりと見合話受く 竹田 環枝 うたた寝の膝に本落つ四温晴 |
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消しゴムの角の減りゆく目借時 春寒の顔寄せ映す玻璃戸かな 春雨の音聞きたくて傘ひらく 春疾風画鋲の残る掲示板 潮の香の出雲七浦若布干す なぞりたる琴の木肌の朧かな 団子屋の醤油の香り花菜風 教卓の一輪挿しの黄水仙 鶯の声の幼き伊那の谷 春禽の声溌剌と雑木山 雛祭り雛と並びて座してをり リラ咲きぬ蝦夷地に刻む居士大姉 林立の真白きカラー入社式 濃山吹雨は小止みとなりにけり |
奥野津矢子 大村 泰子 田久保柊泉 阿部 晴江 岡 あさ乃 小林布佐子 竹内 芳子 計田 芳樹 伊東美代子 宇賀神尚雄 大橋 瑞之 町田 宏 高野 房子 村松 典子 |
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鳥雲逍遥(5月号より) |
青木華都子 |
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口開けの若布に活気づく浜辺 |
桧林ひろ子 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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磐 田 村上 尚子
寒戻る一刀彫の鑿の音 唐 津 田久保 峰香 啓蟄のまひまひつぶり角を出す |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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水取りや湯屋に滾れる十斗釜 村上 尚子 お水取りは、奈良東大寺二月堂の修二会の法会の一つ。華やかな篭松明の行を終えた後三月十三日午前二時頃から行われる。笙、ひちりきが奏せられる中昔ながらの諸法会が行われた後良牟杉のもとにある閼伽井の御香水を汲んで本堂に運ばれる。この香水は遠く若狭から送られてきた聖水で、一年間の仏事に供するため内陣の五個の壺におさめられる。 啓蟄のまひまひつぶり角を出す 田久保峰香 啓蟄や握り跡ある夫の鍬 橋本志げの 真新な寒行僧の草鞋かな 飯塚富士子 掲二句は、三月十三日静岡白魚火会報通巻四百号記念の祝賀俳句大会に出された句である。前句。この句も啓蟄と鍬との取り合せ。前掲諸句と同様季語と取り合せの距離はかなりある。啓蟄の日、ふと夫の鍬を見ると幽かに握り跡が見えた。これを見た作者は生前よく働いた夫をいとおしく思い心が揺れたのである。こういう大会ではそのように断定するのは難しいのだが一句は完全に亡夫を詠んだものとして採った。一句の主人公は「われ」であるので強く胸に響いたのである。 剪定や夫部屋にゐて口を出す 金原 敬子 この作者は、浜松の講座で数年句会を共にしたが、福岡の実母の介護のため移住することになった。その折夫君も福岡へ移り作者を励まし介護を二人で行うことにした。私共のグループでは夫君を褒める声が多かった。 剪定のあと摘蕾もおこたらず 渡辺 晴峰 作者の農俳句は何時も骨太だ。徒長枝を剪定し沢山の花をつけねばならぬが、咲かせすぎぬよう摘蕾している。その後実が付くと更に摘果して優良な一果を養てるのである。施肥、消毒と果樹園の作業は休む間がない。 陽炎や大型ダンプへなへなと 樋野久美子 気温が上昇すると空気がかき乱され、周辺の景が浮動するのが陽炎。陽炎の中から大型ダンプが出てきたが、あの頑丈な車体がへなへなになってしまっている。「へなへなと」の描写がダンプの権威を台無しにしてしまい面白い。 沖の船見ゆる図書室卒業期 大隈ひろみ 海が見える中腹の学校。暇さえあれば何人かのグループが図書室に集まり、閲覧や自習をするが、本当のところはお喋りが楽しみなのである。卒業を目の前にして、グループは進学や就職が決っているので卒業式がすむと別れ別れになる。だが「沖に船見ゆる」の景から希望に溢れた前向きの面が強い。 海女小屋に大きな鏡置いてあり 斉藤くに子 三島由紀夫の小説『潮騒』の歌島では、腕のよい海女は持てはやされた。未婚の腕のよい海女ならなおさら、花形として嫁にせんと若い漁夫が競った。現在NHKの朝のテレビ小説『あまちゃん』でも若い海女が一人加わって賑やか。海女の休憩や身仕度のための小屋には大きな手鏡が置いてある。何歳になっても海女は女であるのだ |
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