最終更新日(Update)'13.02.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 竹元抽彩 |
「例幣使」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 中山雅史 、鈴木百合子 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
句会報 広島白魚火会温泉津温泉・石見銀山吟行 中山 仰 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 森 淳子 、岡 あさ乃 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(松江) 竹元抽彩 |
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寒明くる景はきのふと変らねど 仁尾 正文 (平成二十四年四月号主宰作品より) 過ぎ去った春を懐古すると、四季の移り変りのはっきりしている我が国では大寒、節分、立春、寒明け、早春と春の移ろいは慌ただしい。歳時記に見る様に春の訪れは昔から日本人の心に、待春から迎春の希望を意味する言葉と共に春望を自由に先取りすることが出来るが、現実の景、ながめに変化は見られず昨日のままである。掲句「きのふと変らねど」は言い得て妙。名のみの春は未だ未だ続くが、俳人の心は確実に春を感知しているのだ。 受験子のけふは口笛吹いてをり 星 揚子 さ緑の蕾脹らむ沈丁花 河野 幸子 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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白山茶花 安食彰彦 庭山の冬の紅葉の終の色 白山茶花真盛りなり裏鬼門 水尾を曳き白鳥三羽日暮どき 鴨鳴くや湖の日暮のはじまりぬ 飛び去りし寒鴉二羽別れゆく 石亀の頭に五円玉初時雨 冬雲の覆ふ常立神馬かな 冬の蜘蛛上の厠に囲を張りぬ 十 二 月 青木華都子 本棚の本の位置変ふ十二月 極月の予定を箇条書きにして 浮遊して雪虫いつの間にか消ゆ 本降りとなりたる雪の輪王寺 通されし温突部屋に窓一つ 切り貼りの花柄模様冬障子 開いたかも知れぬ裏木戸雪女郎 酔うた振りして大げさに年忘れ 色 合 せ 白岩敏秀 穭田や星映すほど雨溜めて こほろぎや眠りにつきし牧の牛 軽やかな服装で来て茸狩 絹雲は羽衣に似て小春かな 筋肉のごとき冬雲流れけり 神無月川曲るたび暮れてゆく いま光ることを大事に冬の星 冬の虹神の遊びの色合せ 屋 形 船 坂本タカ女 木洩日の日光杉やけらつつき 七五三顔より大き髪飾 屋形船釣瓶落しの赤提灯 屋形船食べ放題の栗ごはん 伊豆七島へのフェリーや秋灯 虹消えし国道つるべ落しかな 落栗のあたりに鹿の虎挟み 鳴りつ放しの威銃落林檎 秋 色 鈴木三都夫 紅葉にも己の色のありにけり 一色に非ず紅葉のかく燃えて 蔦紅葉色を置きつつ昇りつむ 老松の亀甲隠す蔦紅葉 豆稲架に峡の日差しの逃げ易く 行く秋の川面ささくれ立ちにけり 落葉松の落葉もつとも踏み心地 鉄幹の怠りもなき冬芽かな |
山枯れて 山根仙花 今朝冬の家族の数の卵割る 裏戸より訪ふ気安さや枇杷の花 黄落や朱を鮮やかに蔵書印 一花とは淋しからむや帰り花 大銀杏散るや歓喜の声あげて 落葉踏む母郷のぬくみ日のぬくみ 鍵束の鍵の触れあふ音寒し 山枯れて返す谺もなかりけり 冬 至 小浜史都女 初鴨の一悶着のあと静か 夜は力ぬいてゐるなり鴨の池 浮寝鳥夢見しこゑと思はるる 隠しもつ嘘二つ三つ返り花 裸木に風のことばのありにけり 手帳みな持つてゐるなり枯野道 姫沙羅の幹まつすぐに冬至かな 横顔の鯉ばかりなり寒に入る 神 在 月 小林梨花 煙立つ神の郷なり冬桜 神在の社へ斐伊の土手伝ひ めまとひを払うて仰ぐ御神木 神在す社を囲む露店かな 神苑に黄金のやうな散紅葉 神木の這ひ根地を抱き冬茸 短日や若き神官廊渡る 神等去出や泥濘に幣張り付きて 能 面 鶴見一石子 冬木影重なる暮色けもの道 追ひかけて来る冬ざれの風の音 裸木の從の空間津軽富士 地蔵橋渉り首塚冬の蝶 戸板にて商ふ葉つき大根かな 語部の語りの火箸榾明り ちやんちやんこ似合ふ齢となりにけり 能面の睫毛の笑ふ白障子 石見銀山 渡邉春枝 湯の町の狸伝説石蕗咲けり 冬天へ鏝絵の龍の登りゆく 短日や灯して暗き間歩に入る 坑道の縦横ななめ音冴ゆる 濃淡を重ね宮居の冬紅葉 蔀戸の残る町並冬の鵙 無縁佛の声なき声や冬すみれ 小春日や石州瓦の似合ふ町 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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神 在 月 富田郁子 出雲二の宮笛太鼓なき神集 銀杏散る里に民芸窯祭 手仕事のぬくもりの陶冴ゆるかな 芦枯るる斐伊の河原に人ひとり 風の夜や神立橋より神送る あてもなく門に人待つ十二月 庭 紅 葉 田村萠尖 湯の里へ岐るる岨や笹子鳴く 拾ひたる句よりも多き草虱 庭紅葉一晩にして丸坊主 伝説の賴朝の湯や木の実降る 隧道の中から落葉吹かれ来し 湯の町の片側暗き冬日和 石蕗の花 桧林ひろ子 木の実落ち水面次々壊れけり 照り蔭り色の移ろふ冬桜 老木のもみぢを纏ひ華やげり 吹き吹かれ秋の深まる広野かな 淋しさに固まり咲くや石蕗の花 日溜りに肩寄せ合うて石蕗の花 |
花八つ手 橋場きよ 華やぎは見栄かもしれずポインセチア 手足にも機嫌善し悪し花八つ手 姉のみとなりしはらから枇杷の花 山中に聞く人声も小春かな 佗助や人には言へぬこと胸に 冬菊を手向く父・母・夫の墓 勾 玉 武永江邨 冬 支 度 桐谷綾子 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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中山 雅史 枯蓮の折れても水に支へられ 鈴木百合子 畳目のきはやかなれる小春かな |
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白光秀句 |
白岩敏秀 |
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枯蓮の折れても水に支へられ どこからも真正面なる冬の月 還暦の舌にきりりと今年酒 紋付の肩揚ぴんと七五三 ひと色に暮れて月光浄土かな 遠ざかる程にまぶしき芒原 山の日のふはりと翳る冬菜畑 小春日や樹海に交差点のあり 煤払遺影の夫の男振り 知らぬ間に千両ありて花は実に 湿原の枯草己が翳を引き 冬満月偽るもののなかりけり 火柱の立ちて始まる神迎へ 真つ直ぐにもの問ふわらべ深雪晴 大根の真白き光積み走る 自然薯のありどは言はず友逝きし いきなりの雪いきなりの猛吹雪 釣竿の先に現はる鳰 大花野貫く国道一直線 菊人形昼の疲れを癒やす闇 立ち上り子等に踏まるる霜柱 神等去出の風吹き渡る築地松 大甕をあまた伏せある枯野かな 寒風を切り裂き走る新幹線 |
中山 雅史 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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函 館 森 淳子
何の実と問はれ通草と答へけり 出 雲 岡 あさ乃 冬めくや漬樽洗ふ縄束子 |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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一房の葡萄の重み手に受けし 森 淳子 単純化がはかられ平明である。余分な言葉を排してしらべがよくこなれている。この句の核は「重み」であるが、巨峰の如く大きな葡萄の重みだけでなく、一句に重量、厚さを与え思念的な面も出している。本来、秀句というものは鑑賞では言い尽せない。朗誦性に富んだ掲句を声を挙げて味読して欲しい。 神の留守火伏護符貼る登り窯 岡 あさ乃 神集う出雲の作者だが、神の留守を詠んでも何の支障もない。一般に「神の留守」に取り合すものが神の類縁語だとぴりっとしない。掲句の如く季語とは離れている方がおもしろい。 翁忌の着替を少し旅鞄 坂田 吉康 翁忌は芭蕉の忌、陰暦十月十二日である。芭蕉には『野ざらし紀行』『笈の小文』『更科紀行』『奥の細道』等々の紀行文があり多くの旅をした。掲句は昨年の日光における全国俳句大会の折のもの。この頃列島には寒波が来ていて、暖地から行く者は、セーターや紙懐炉を旅鞄の中に加えた者が多かった。高冷地へ向かう参加者の緊張感がよく出ている。翁忌の季語が絶妙だった。 風呂吹きを好み分別盛りかな 井上 科子 男の人物像だけをクローズアップさせた骨太な句だ。分別盛りとは、豊かな人生経験をもち、人生の進路の取捨選択が的確な年頃、今の言葉では熟年の頃であろう。風呂吹を好むというのは、肉食派から草食派に移りかけた年頃。玄人好みのある句柄である。 前書からして伊賀上野の森井杏雨氏の悼句であることが分かる。杏雨氏は三重県警の警察官であった。平成八年白魚火五百号を先師古川主宰が姪の宮崎さんに贈った。宮崎さんの夫君も同じ警察官であったので俳句で有名な杏雨氏に見せた。杏雨氏はホトトギス系の「雨月」で永年作句を続けていたが、白魚火の作風に同調して章恵夫人とともに即入会した。その実力は初めから上位にランクされ現在に至っていた。 開戦日震への止まぬ返り花 荻原 富江 ある歳時記に「十二月八日」が収録された。戦後六十数年が経ちこの日を知らぬ者が多くなったのでこれを季語にするのは賛成。だが、その副季題に「開戦日」があるが、これはいただけない。人類はこれ迄数え切れぬ程戦をしてきたが開戦日がはっきりしているのは独仏戦争とか第一次世界大戦の端緒となったオーストリアのセルビアへの宣戦等でその数は少ない。第一次世界大戦は一九一四年の七月であるから開戦日が十二月八日に限ってはいない。開戦日は季語となり得ないのではないか、と思う。 茶の花や青空すでに夕空に 保木本さなえ 茶の花の咲く頃の気象を少し手法を変えて清々しく明るく詠んで佳。短日、日短か、暮早し等がよく詠まれるが、何処となく忙しくせかせかしているが掲句は、同じ気象だがすっきりしている。 「小出しに小言」が面白い。怒鳴りつけると小言は一度ですむが折角の小春日のその後が持たぬ。夫はやさしいのだ。又この句「こ」の韻を踏んでいる所にも注目した。 わが母校名のみ残して秋深し 伊東美代子 小中学校の統廃合により廃校になってしまった母校。校舎や校門は昔のままあるが、「名のみ残った母校」は作者の瞼にある。
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