最終更新日(Update)'14.01.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 辻 すみよ |
「金 屏」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 荒井 孝子 、安澤 啓子 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
鳥雲逍遥 青木華都子 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 髙島 文江、小玉 みづえ ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(牧之原) 辻 す み よ |
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富士見ゆる我ふるさとの今朝の春 本杉 郁代 読み初めは恩師の句集『いのちなが』 古川 松枝 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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京 安食彰彦 鐘ひとつ静かな秋のひと日かな 紅葉小路ひしめく甍花の街 小流に添ひ華やげる雁来紅 とれさうでとれぬ熟柿の透きとほる 木の実落つ古都の小路の犬矢来 「ハイチーズ」背に秋色の嵐山 行く秋の嵯峨野にひとり修行僧 小春日や京の町屋の時計鳴る 秋 桜 青木華都子 廃屋となりたる庭の秋桜 休耕田一万本のコスモス田 お寺へと続く坂道秋ざくら 秋暑なほ一気に下る二年坂 秋あかね群れゐて空を狹めをり 秋ざくら揺れゐて風を呼び戻す 句帳手に一人吟行菊日和 乗り越して戻るひと駅菊日和 十 三 夜 白岩敏秀 稲架ひとつ影ひとつ山昏れかかる 跨線橋天辺にゐて秋夕焼 ゆすられて紙になる水いわし雲 草の実や腰を豊かに土偶立つ 山の子の太郎次郎に木の実降る 黒を着て女華やぐ十三夜 木洩れ日の唐招堤寺薄もみぢ 秋深し二重瞼の少女来る 鯡 釜 坂本タカ女 遠雷の置いてゆきたる虫の声 落葉取り除く水車の廻りだす 棘の鋭き玫瑰は実に陣屋跡 赤銹の鯡釜より放屁虫 雪虫や踏板渡る猫車 筆硯の女流句会や式部の実 思ひ出さざりし花の名返り花 猫戻りゆく塀の上雪囲 十 月 桜 鈴木三都夫 錦鯉色を競ふは水澄める 秋の蝶命かそけく挵りけり 華やぐとなくて十月桜かな 咲くとしも散るとしもなき冬桜 枯れざまの諦めきれぬ蓮かな 山の日の棚田へとどく蕎麦の花 組む稲架の一列で足る棚田かな 空稲架の骨組曝す片時雨 |
小鳥来る 山根仙花 窓辺とは親しきところ小鳥来る 広縁は午后の憩ひ場小鳥来る 軒に注連一筋町の秋祭 秋祭らしき小さな町通る 小さき雲連れ大き雲ゆく花野かな 水音に添ひつつ歩く草紅葉 菜虫とることひたすらになつてをり この庭のこの靜かさの返り花 さざれ石 小浜史都女 埴輪みな穴あいてをり秋のこゑ 紙浮かせ占ふ池や暮早し 甲冑の行儀よき四肢秋深む 小賀玉の実のももいろに神集ふ 野分去り松美しき弓が浜 逝く秋の松をゆるがす日本海 神在月富士のかたちのさざれ石 神々を迎へて注連の太かりし 京 都 小林梨花 あだしのの奥へ奥へと紅葉尋め 山荘の赤き毛氈木の実降る 漆黒の厨子に描かれし花芒 秋深む廊白書院黒書院 時雨亭しぐれ木の階五六段 八角蓮枯れて地に伏す天竜寺 流し帯揺らして舞へる冬灯 しなやかな舞妓の影を金屏風 崩 落 鶴見一石子 渓流の日向日陰の照紅葉 粧へる山向きあひて湖を抱く 山間の落葉松斯くも黄葉して 崩落の岩間岩間の虫のこゑ 哲学の小道の床几冷やかに 清秋や百の走り根ゆづりあひ 戦中を駆け抜けてきしちやんちやんこ あるだけの鉛筆削り一葉忌 夜の長し 渡邉春枝 もみいづる源流までを辿りけり ひと雨の後の青空色鳥来 人通るのみの踏切ゐのこづち 台風の眼をのがれたる朱の鳥居 一葉落つ昨日と違ふ風のでて 勾玉は胎児のかたち小鳥来る 気休めの薬を飲みて夜の長し 入場の列動きだす今朝の冬 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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野菊咲く 福村ミサ子 脱藩の志士の墓とや野菊咲く かりがねの声傾けて田に下りる べからずの柵の内なる毒茸 活殺のありし城山木の実降る 顎鬚の漢が打てる走り蕎麦 地下道にひびく靴音冬近し 柿たわわ 松田千世子 天髙し葵御紋の甍かな 台風もことなくてこの柿たわわ 送り出す子に声をかけ鵙の朝 捨て作り甘藷なれどもほつこりと 草の穂や背のむずがゆき石佛 茶の花の蕊を顕に盛りかな 神 の 旅 三島玉絵 刈跡の藁の匂へる通り雨 掛紐のやせたる箒神の旅 号数で呼ばるる古墳草紅葉 里祭代の替りし鯛焼屋 新米で搗く一升の祭餅 草は穂に川の起点の農魂碑 啄 木 像 今井星女 けふの月啄木像をてらしけり 頬杖の啄木像にある秋思 下駄ばきの啄木像に葉月潮 はまなすに啄木像に海の風 まなかひに津軽海峡昆布干す 童顔の啄木像に法師蝉 雁 渡 し 織田美智子 彼岸花犇き合うて咲き出せる 竹籠に挿す四五本の彼岸花 電柱に通し番号雁渡し いわし雲産みたて卵即売所 ふるまひの甘酒に人秋祭 塗り替ふるジャングルジムや小鳥来る 里 祭 笠原沢江 艶やかな色に戻りし秋茄子 落ち怺へもう限界の熟柿かな 同じ陽を受けて濃淡銀杏黄葉 其處此處に落葉嵩なす寺領かな 年毎に人出淋しき里祭 黄落の一と葉思はぬ方に舞ふ |
萍 紅 葉 金田野歩女 秋の夜の古都の昏さを佳しと思ふ 豊年の黄金すれすれ着陸す 植物に疎き神官鵯高音 京小路黄菊の鉢を一列に 朝寒や郵便ポストまで百歩 天水の小波萍紅葉かな 探 鳥 上村 均 尉鶲入江は朝の波刻む 鵙鳴くや城趾の狭き駐車場 探鳥を終へて稲刈り見てをりぬ 遠き洲に鳥のひしめく草紅葉 頬白や人声山を登り来る 山寺の夕べの読経霧深し 和 田 峠 加茂都紀女 晴浅間正面に据ゑ稲木組む 白珠の牧水歌碑に秋あかね 草の花宿場に入る橋ひとつ 底紅や公家似の双体道祖神 山栗を歳の数ほど拾ひけり 穴まどひ後に退けざる和田峠 新 嘗 祭 桐谷綾子 芋きんとん山梔子の実を入れて炊く ほくほくの南瓜の従妹煮冬に入る 箕の上に盛る吹き寄せは京のもの みやじまで盛る赤飯の新嘗祭 新米やみやじまといふ木の道具 湿原を歩く鼻緒に草虱 秋 の 川 星田一草 御手洗に秋明菊の影揺るる すすき原渡り坑夫の墓傾ぐ 山間の何でも畑の小豆稲架 石一つ一つが透ける秋の川 無骨なることを愛でけり榠樝の実 地を這つてくる台風の余波の雲 美 男 葛 奥田 積 釣瓶井を覗く子どもや金木犀 美男葛少女に見せてをりにけり 秋日澄む天保蔵に火伏札 刈田道子ども御輿の鉦打つて 牛舎より牛鳴く声や唐辛子 いわし雲牛梳いてゐる女子高生 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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荒井 孝子 東山まばたき程の秋の虹 安澤 啓子 詩仙堂間合確かに添水鳴る |
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青藍の海を知りたる秋刀魚の目 ひよんの実のからから乾きたる音色 小鳥来る茶飲み話の縁側に 石庭に砂の渦巻く初紅葉 夕しぐれ古書店影を積み上ぐる 遺跡野に豇豆弾けてゐたりけり 環壕の集落蕎麦の花ざかり 秋晴や消し忘れたる雲一つ 蘆火焚き夕闇払ふ男かな 赤のまま弥生住居の竈跡 行く秋や妻籠に残るはねつるべ 義太夫の声裏返る村芝居 筒抜けの子の耳打ちや秋うらら かくれんぼする子ら去りて秋の暮 山門に屋根職人や天高し |
鈴木けい子 大塚 澄江 生馬 明子 富田 育子 西村ゆうき 小松みち女 鳥越 千波 根本 敦子 寺本 喜德 北原みどり 石田 博人 金原 惠子 溝西 澄恵 田口 啓子 高橋 見城 |
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鳥雲逍遥(12月号より) |
青木華都子 |
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境内は昔の遊び場木の実落つ |
武永 江邨 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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鹿 沼 髙島 文江
大文字山から秋の時雨かな 松 江 小玉 みづえ 大道芸遠巻きにして赤とんぼ |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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白魚火創刊七〇一号を平成二十六年新年号としてお届けする。記念号では「招待席」に俳壇の高名な諸先生が作品をお寄せ下さり、誌の「花」になったことに深く感謝申し上げる。七百号以降の白魚火の方向については、記念号の冒頭に私が述べた。会員の方々も評論・随筆や「みづうみ賞」に多数応募して呉れてありがたかった。 大文字山から秋の時雨かな 髙島 文江 十月二十七、八日京都で開催された白魚火全国大会において主宰選特選一位の作品である。俳句大会で発表されたものは誌上に再投句しないという結社もあるが、白魚火は違う。富安風生先生は、全国大会発表句も平常の吟行句会と同じで未発表句、「若葉」へ再投句を推奨された。一都先生も風生先生と同じ考えであったので白魚火は再投句は当り前だとして推移してきた。全国大会の選評は、時に短評になることがあり、出席者も全会員の二十パーセント程であるからこの欄の批評鑑賞は全会員に行き渡る。 ピンポン玉程の大きさのある芳潤な香りのすだちは徳島県一県にのみ産する。その徳島でも気象条件がぴったりと合った所が良質のすだち産地。箇所はそんなに多くない。 散紅葉誰のためともなく拾ふ 鈴木瑣都子 櫨、漆、桜、柿紅葉と銀杏黄葉が代表的な「もみぢ」である。これらが完全にもみじしたものは芸術品である。ある寺では銀杏の黄葉に声を上げ、且つ散る紅葉に感嘆の声を上げて拾った。拾ってみてこの美しいもみじを誰にやろうかと見渡したが同僚は皆同じように何枚かを手にしている。捨てることは出来ぬので句帳に栞った。元々無欲な句であるが誰に呉れてやるかを考えないで散紅葉を拾ったので貰い手もなかった、という無欲な一句である。 秋深し礼拝堂の長き椅子 星 揚子 骨格のしっかりした一物仕立ての秀句。礼拝堂の長椅子は信者の熱い信仰の象徴、一句全体も清廉に満ちている。秀句の中には鑑賞を拒否するものもある。 いちじくの日毎笑みしを捥ぎにけり 原 育子 投句稿の中には「笑顔」が目につく。大抵は「笑」が不要、ブレーキになっている。登場人物が、笑顔なのか怒っているのかは「笑」を使わないで表現すべき。だが、掲句のいちじくの「日毎の笑み」の「笑」は省略出来ない。「笑」が写生になっているからだ。 木犀の香る西陣機の音 川上 征夫 作者は白魚火入会直後旭川全国大会に初参加以来十年余り皆勤している。毎年懇親会時当日主宰選の特選一位の作者を傍に立たせて特選句をみごとな吟詠で披露している。作者の名を知らぬ者はない程の名物男である。今回彼等が西陣の織屋を吟行すると聞いたので芸術作品である西陣織は詠み得ないから西陣における作者自身を詠め、とアドバイスした。大会の披講で主宰特選二位に作者の名が出て本人は驚いたことであろう。選者も少し驚いたが。句は木犀の香を褒めることで西陣に敬意を表していて秀句であった。 敬老日七十五歳は年少組 山本 良嗣 初めて敬老会へ出たところ長老達がでんとしていて七十五歳は洟垂れ小僧であった。 |
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