最終更新日(update) 2026.01.01
句会報(R8)
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令和七年度秋季白魚火鍛錬会報告 令和8年1月号掲載

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令和7年1月号掲載 句会報

令和七年度秋季白魚火鍛錬会報告

幹事 中村國司、川又 夕、若狹昭宏、塚田康樹

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 第八回目となる白魚火俳句鍛錬会。初の試みとして、松山での全国大会に合わせ、大会最終日に単日開催した。北海道からグループでの参加もあり、前回より多く二十名の参加があった。

一 開催概要
・日 程 十月二十七日午後二時〜
     午後五時半解散
・場 所 子規記念博物館
・参加者 檜林弘一主宰、中村國司同人会長を含む二十名(参加者名は一人一句抄を参照)
・内 容 講話、句会一回、対話の会、懇親会

二 目的
 全国大会最終日の熱気そのままに、俳句についての見識を深め、各地の句会の情報交換や、今後の白魚火全国大会や鍛錬会に求めるものを確認、共有することで、白魚火の将来の発展に寄与すること。

三 講話
 檜林弘一主宰
 かつて芭蕉句座というものは、指導者である芭蕉が寝転んだままの状態で行われていた記録が残っている。上下関係のない、指導者よりも句座自体に重きが置かれる、そのようなフラットな句会を望む。
 中村國司同人会長
 俳号というものは、江戸より商家を中心に身分隠しとして流行した。清記用紙も同様であり、筆跡によって誰の句か分からないようにしていた。上下関係にとらわれない、自由平等が制度として確保されるためのものである。我々が大事にしている季語は万全のものではない。時代によって意味、本質が変わることもある前提で、視野を広く持って俳句を続けて欲しい。

四 句会
 二班に別れ、兼題「道後」及び自由題の合計三句を事前投句。特選一句、並選四句の五句選。全句漏れなく合評を行い、句会終了後、二班合同で結果を発表した。

一人一句抄(主宰以下は五十音順)
秋深し子規の句碑より城仰ぐ     檜林 弘一
帰り花星のささやき聞き洩らす    浅野 数方
晩秋の俳都の空へ一直線       市川 節子
畦道の遠くに見ゆる曼珠沙華     井上  彰
椎の実拾ふ八方に子規の句碑     奥野津矢子
花野抜け四肢のくびれの光る馬    川又  夕
菊薫る一輪挿しの備前焼       小杉 好恵
恐竜のやうな鳥影秋日和       坂口 悦子
秋澄むや俳句生まるる道後の夜    佐藤やす美
秋の暮道後の湯屋の灯は柔し     杉山 和美
もちもちの湯気湧き出づる道後かな  塚田 康樹
香り撒きすする童の青蜜柑      中村 國司
ハローウィン小さきお化けの並ぶ部屋 中村 公春
秋風の吹き込む天守石落し      中村 早苗
秋の海島々つなぐ橋白し       西田美木子
城山の賑はふ広場帰り花       服部 若葉
鰯雲葵紋付鬼瓦           平間 純一
天守より瀬戸内の舟秋の潮      吉川 紀子
秋時雨光零して振鷺閣        若狹 昭宏
柿みのることのうれしい子規のまち  若狹  早

五 対話の会
 前回の奈良の鍛錬会の際は、各地の句座の特色や、句会の進め方に関する意見を交換することが主だったが、今回は全国大会についての感想や、来年度以降に期待する内容で話を掘り下げた。
・事前投句について
 投句が済んでいるという安心感はあり、無理のない行事の開催という点でも概ね好評であった。開催地への思いを馳せて、吟行句および当日句が見られたら嬉しいという気持ちはある。詠んで投句する時期と、全国大会までに期間が空くため、季節がずれてしまうと感じた。
 運営側としては、従来の方法では機材と作業の部屋にかかるコスト、操作する人材と時間の確保などの困難がある。「当日の受付から投句の時間、開会までの時間が中途半端なため、当日に吟行や観光する時間が取れなかった」「吟行句が詠めなかったため投句ができなかった」というこれまでの意見には応じることができた。各地の吟行句をつけて事前投句するという案もあったため、次回検討したい。

六 参加者レポート 若狹昭宏
 松山での鍛錬会開催は、全国大会に合わせることで、参加者の移動や宿泊に関する負担が減るのではないかという期待もあったが、何より吟行句や当日句で各地の句友と句座を囲めるという、事前投句の全国大会を補填するものになったのではないかと感じている。「俳句の熱量が上がって、絶対に続けて句会をしたがる人がいる」という同人会長の熱い思いがあったことを皆様にお伝えしたい。
 会場は子規記念博物館を利用した。にぎたつ会館から目と鼻の先で、多くの俳句イベントが開催されている名所だ。吟行して俳句ポストに投句した参加者もいるのではないだろうか。俳句に好意的で格安利用出来るので、このような施設の情報も、収集及び発信のご協力をお願いしたい。
 句会の内容について各班一点ずつ紹介する。先ずはA班、「うっかり無季で出しました」という句を「気付かず採りました」という人が続出。有季定型文語文が基本にあるが、突き抜けていれば良いものは良いという手本となった。一人一句抄から是非探して欲しい。B班は「柿みのることのうれしい子規のまち」について、白魚火的には「うれしき」ではないか、うれしいがどこに掛かるのか、と評があったが、作者が開けると「七歳の句であれば、うれしいが適切」と納得。句の本意、作者の意図が大事である。
 余談ではあるが、懇親会は土鍋で炊き込む松山鯛めしの店を利用し、伊予柑ビールが非常に好評だった。懇親会で人となりが分かることで、その人の句への関心も強まり、理解度も上がる。白魚火誌が届くのも更に楽しみになる。そして、楽しもうとしている人達にこそアイデアを出してもらえば、鍛錬会の幹事は体力とフットワークを活かしてそのアイデアを実現していけるのである。


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