最終更新日(update) 2019.05.01
平成30年 白岩敏秀 作品
鹿  沼 記念切手 午後の手紙
こふのとり 過 去 形

令和元年5月号抜粋の目次へ
令和元年5月号に掲載

     
     過 去 形

混沌の底の水餅つかみ出す

朝の日を湖上に広げ春立ちぬ

山焼や風が炎となり奔る

白魚の紙漉くごとく掬はるる

首の鈴鳴らして恋の猫となる

過去形の話ばかりの春炬燵

調教の馬のいななき水温む

子どもらの夢のぼりゆくしやぼん玉

平成31年4月号抜粋の目次へ
平成31年4号に掲載

    
      こふのとり

神鏡に映りてしんと鏡餅

朝刊のことんと軽くなる三日

出初式空を濡らして終はりけり

小寒や音たて破る菓子袋

こふのとり死す冬椿ひとつ咲き

参詣の玉砂利寒の音たつる

風花を追うて少女となりにけり

銅鐸を鳴らせば応へ寒の空

平成31年3月号抜粋の目次へ
平成31年1月号に掲載

     
     午後の手紙

返り花少年すでに変声期

電柱の影は日時計冬田打つ

湯豆腐の真昼の音に煮えてをり

短日や午後の手紙の濡れて着く

朝の湯に柚子の香りの残りをり

吊るさるる鮟鱇の目に見えしもの

初雪や鏡くもらす朝の息

寒鴉おのれ励ますごと啼けり

平成31年2月号抜粋の目次へ
平成31年2号に掲載

    
      記念切手

枯蟷螂見えざるものに鎌あぐる

蜜柑むきしあはせの香を広げけり

モナリザの縄文土偶冬ぬくし

芭蕉忌や記念切手を旅に買ふ

産土の森に風鳴る神の留守

切干のちぢみはじめの色となる

冬もみぢ怒涛は崖に音を捨つ

木枯や鳥は斜めに流されて

平成31年1月号抜粋の目次へ
平成31年1月号に掲載

     
     鹿  沼

深秋や祭のまちとなる鹿沼

ジャンプして少女のつかむ草の絮

温め酒鉄橋に鳴る汽車の笛

朝寒の声玄関を出てゆけり

はぐれ鹿耳振つて雨払ひけり

零余子落つ余熱冷めゆく登り窯

木の実独楽双子に違ひ現るる

新走り女杜氏の薄化粧

禁無断転載