最終更新日(update) 2025.04.01
令和7年 白岩敏秀 作品
大山の風 山の日 潮けむり
夕日の屋根

令和7年1月号抜粋の目次へ 
令和7年1月号に掲載

大山の風
稲架掛けて帰る一番星の道
夕月の淡きひかりに野紺菊
秋の暮橋でつながる隣町
コスモスのぱつちり一重瞼かな
大山の風の来てゐる走り蕎麦
枝切つて朝寒の空広げけり
切株に鋸目の残り秋時雨
晩秋や湾の奥まで波頭

令和7年2月号抜粋の目次へ 
令和7年2月号に掲載

山の日
青空へ音を返して木の実落つ
しぐれ癖つきし因幡の雲低し
山茶花のはげしく散つて月夜かな
振袖の蝶となりたる七五三
山の日の短し木の葉散り急ぐ
押さふれば膨らみ返す落葉籠
日の温み残る落葉を焚きにけり
ひとり居てもの煮る匂ひ花八手

令和7年3月号抜粋の目次へ 
令和7年3月号に掲載

潮けむり
枯菊の軽さ括れば紐余る
麦の芽にみなぎる青さあり二寸
羊羹を厚切りにして十二月
北風や怒濤の散らす潮けむり
紙漉の紙のうすさに水を漉く
広々と湖のありけり初氷
飾売藁の香りを広げ坐す
ふるさとの星は大粒除夜の鐘

令和7年4月号抜粋の目次へ 
令和7年4月号に掲載

夕日の屋根
柝の角を曲がりて打ちはじむ
正月の風の来てゐる砂丘かな
初景色砂丘に常の海展け
おでん煮る男の味に仕立てけり
灯の点り夜の氷柱となりにけり
人違ひに返事を返す日向ぼこ
寒雀夕日の屋根に帰りけり
命とはあたたかきもの寒卵

禁無断転載