最終更新日(update) 2024.07.01
令和6年 白岩敏秀 作品
村十戸 ガスの音 砂つぶて
潮の香 弥生土器 牛の声
星座

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令和6年1月号に掲載

村十戸
桐の実の高きに鳴つて義民の碑
星つなぎ星座をつくる夜長かな
村十戸へこだまを返す威銃
橋の名は消えし町の名雁渡し
萩刈つてうすき香りを束ねけり
人柄のほどほど善くて温め酒
水切つて白さを切つて新豆腐
火は音を育てて風の蘆火かな

令和6年2月号抜粋の目次へ 
令和6年2月号に掲載

ガスの音
渡り鳥送電線は山越えて
石筍の今を伸びゐる神の留守
寒星やカチッと点火のガスの音
大根煮る一日を火に仕へゐて
冬の虫影を平らに跳びにけり
貫禄を枝振りにみせ枯木立
裸木となりて軽さを楽しめり
幸せの色を増やして石蕗の花

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令和6年3月号に掲載

砂つぶて
山茶花の百花祭のごと咲けり
少年の最短距離となる冬田
砂つぶて受くる砂丘の冬木立
枯芝の温みに坐せば鳩の寄る
大根を透くるほど煮て一日終ふ
大冬木齢しづかに暮れゆけり
混沌のやがて透明葛湯とく
冬凪や舟小屋の灯の洩れてをり

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令和6年4月号に掲載

潮の香
冬凪や進水式の金の斧
駅伝の冬日の襷繫ぎけり
虎落笛叩いて開くる壜の蓋
かたまつて花のごとくに成人祭
雪女忍び笑ひをして去れり
久女忌やミシンの音に路地暮るる
応援の群集となり悴める
砂丘吹く風に潮の香寒の明

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令和6年5月号に掲載

弥生土器
観梅のその夜に雨となりにけり
下萌の地より掘りだす弥生土器
如月や声をぶつけて竹刀打つ
回覧板日永の話して戻る
友達のやうに近くて春の星
水の音雪間をつなぎゐたりけり
藍染の藍のしたたり木の芽風
あたたかや砂丘の砂の指こぼれ

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令和6年6月号に掲載

牛の声
双塔の影を正しく冴返る
水温む産み月となる牛の声
海峡を跨ぐ大橋朧なる
啓蟄や寄進瓦に書く名前
沈丁に朝の雨あり微震あり
菜の花や始発列車は一輌車
青き踏むつづきに砂丘踏みにけり
少年の眼の澄めり啄木忌

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令和6年7月号に掲載

星座
子の戻り家の春灯揃ひけり
つばくろや塔は日暮の影伸ばす
をんな来て沈丁の香の動きけり
水音の絶えざる漉場桃の花
遠足の山の子どもに波の音
風動き藤の動きて日暮来る
刃を入れて徹頭徹尾桜鯛
大空に星座のそろふ夏隣


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