最終更新日(update) 2024.04.01
令和6年 白岩敏秀 作品
村十戸 ガスの音 砂つぶて
潮の香

令和6年1月号抜粋の目次へ 
令和6年1月号に掲載

村十戸
桐の実の高きに鳴つて義民の碑
星つなぎ星座をつくる夜長かな
村十戸へこだまを返す威銃
橋の名は消えし町の名雁渡し
萩刈つてうすき香りを束ねけり
人柄のほどほど善くて温め酒
水切つて白さを切つて新豆腐
火は音を育てて風の蘆火かな

令和6年2月号抜粋の目次へ 
令和6年2月号に掲載

ガスの音
渡り鳥送電線は山越えて
石筍の今を伸びゐる神の留守
寒星やカチッと点火のガスの音
大根煮る一日を火に仕へゐて
冬の虫影を平らに跳びにけり
貫禄を枝振りにみせ枯木立
裸木となりて軽さを楽しめり
幸せの色を増やして石蕗の花

令和6年3月号抜粋の目次へ 
令和6年3月号に掲載

砂つぶて
山茶花の百花祭のごと咲けり
少年の最短距離となる冬田
砂つぶて受くる砂丘の冬木立
枯芝の温みに坐せば鳩の寄る
大根を透くるほど煮て一日終ふ
大冬木齢しづかに暮れゆけり
混沌のやがて透明葛湯とく
冬凪や舟小屋の灯の洩れてをり

令和6年4月号抜粋の目次へ 
令和6年4月号に掲載

潮の香
冬凪や進水式の金の斧
駅伝の冬日の襷繫ぎけり
虎落笛叩いて開くる壜の蓋
かたまつて花のごとくに成人祭
雪女忍び笑ひをして去れり
久女忌やミシンの音に路地暮るる
応援の群集となり悴める
砂丘吹く風に潮の香寒の明


禁無断転載