最終更新日(update) 2020.09.01
令和2年 白岩敏秀 作品
夜の音 湯の香り 募金箱
寒柝 炭酸水 塗箸
童子菩薩 木の香 夜の風

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令和2年1月号に掲載

夜 の 音
手折りたる芒に風のついて来る
木犀の香り乱さずをんな去る
落し水棚田に夜の音つなぐ
稲架を組む縄の匂ひを強く締め
好き嫌ひなくて家までゐのこづち
どんぐりの拾はれたくて落つる音
朝の鵙はるけきものを呼ぶごとし
夕紅葉星はまたたきはじめけり

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令和2年2月号に掲載

亡ぶるに手順のありて破蓮
山芋の白さ減りゆくおろし金
柚子熟れて庭の四隅の暮れてをり
立冬の百葉箱に日の当たる
神の留守巫女の縁談話など
しぐるるや白湯に立ちたる湯の香り
酒蔵の煙突二本花柊
水割の氷かちりと鳴つて冬

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令和2年3月号に掲載

刈株の弾力を踏む冬田かな
目論見の外れてゐたり返り花
河原石白く乾いて十二月
枯菊を束ねし紐の蝶結び
うしろより手の出て日記買ひにけり
爪先に力入れたる冬至かな
クリスマス子どもの文字の募金箱
洗濯の泡をゆたかに年の暮

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令和2年4月号に掲載

勝ち独楽の勢ひ押さへて色戻す
寒柝の消えたる闇を犬通る
朝の日を返してゐたる冬木の芽
子と同じ日向に弾む寒雀
すれちがふ雪の匂ひのアノラック
野水仙さざ波のごと日に揺れて
大寒や力尽くして川流る
背の高き新婦なりけり冬薔薇

令和2年5月号抜粋の目次へ 
令和2年5月号に掲載

刈株の弾力を踏む冬田かな
目論見の外れてゐたり返り花
河原石白く乾いて十二月
枯菊を束ねし紐の蝶結び
うしろより手の出て日記買ひにけり
爪先に力入れたる冬至かな
クリスマス子どもの文字の募金箱
洗濯の泡をゆたかに年の暮

令和2年6月号抜粋の目次へ 
令和2年6月号に掲載

塗箸をざらざら洗ふ二月尽
残雪の遠き輝き睡魔くる
堰越ゆるときに光りて水温む
折り畳み傘を鞄に春一番
等身の鏡に映す春帽子
道草の子らに見られて耕せり
若草へぶらんこの影来ては消ゆ
口笛は口を離れてうららけし

令和2年7月号抜粋の目次へ 
令和2年7月号に掲載

それぞれの部屋の春灯更けゆけり
ほつほつと童子菩薩のごと芽吹く
摘草や中洲に小さき風生まる
首振つて鳩の近づく花莚
子ら植ゑしチューリップみな花を持つ
人逝きて残りし人に黄砂降る
億年のひかりに触れて忘れ霜
行く春の割つて音出す生玉子

令和2年8月号抜粋の目次へ 
令和2年8月号に掲載

菜の花や明るき風の通学路
春潮や蝦夷を目指しし開拓碑
花すみれ泪ふくるる女の子
初夏の鉋は木の香削り出す
麦の秋飯に打つ酢の匂ひくる
柿若葉庭に仕掛くる鼬罠
花となり香りとなりぬ壺の百合
夏つばめ夕日の残る天守閣

令和2年9月号抜粋の目次へ 
令和2年9月号に掲載

白鷺の一歩に時の動きけり
兄弟にのつぽが一人麦の秋
十薬を干せば来てゐる夜の風
戻りたる水の静けさ田植終ふ
五月晴遠出に母の塩むすび
めだかの子影よりうすく群れてをり
食べるより笑ってばかりところてん
夏料理ことりと氷崩れけり

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