最終更新日(Update)'12.11.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 山根 仙花 |
「夕化粧」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 渡部美知子 、三上美知子 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
句会報 実桜総会・吟行句会記 奥野津矢子 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 谷山 瑞枝 、佐藤 升子 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(出 雲) 山根 仙花 |
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舟音を遠ちに渚の秋惜しむ 久家 希世 (平成二十四年一月号白魚火集より) ゆく秋を惜しむ宍道湖畔での作品。 斐伊川が宍道湖へ注ぐ河口一帯は、中州や葦原が広がり出雲平野の広大な水田がそれをとり囲んでいる。四季を通じてそれぞれ趣があるが、秋から冬にかけては日本でも最大級の野鳥の宝庫となる。代表する渡り鳥はやはりマガン(雁)とコハクチョウであろう。中でもマガンは西日本では斐伊川水系が唯一の渡来地である。宍道湖の湖心部や中州をねぐらとして夜明けと共に河口周辺の水田に集団で飛来して落穂などを採食する。 築地松に囲まれた家々の空を竿になりかぎになりして渡るマガンの姿は冬の風物詩である。 一方コハクチョウも日本列島における渡来南限地で宍道湖一帯は太古からの渡来地であり「出雲風土記」にも「くぐひ」として、その存在が記されている。 千の磴あと百段の秋暑かな 竹元 抽彩 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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秋 暑 し 安食彰彦 一葉落ついはく因縁ある墓石 秋暑し先師の墓石見当らず 髭剃器忘れ秋暑の日なりけり アイスコーヒー頼み文庫を読む女 四脚門の乳鋲撫づる巫女二人 和蝋燭ともし黄菊につつまれて 秋暑し抗生物質歯の中に 秋暑し奥歯を二本抜かれたる 稲 光 り 青木華都子 辻褄の合はぬ会話や秋暑し 秋風に押されつ登る男坂 ここからはみちのく稲は穂となれり 水打つや甘味処に男客 稲光りぶ厚き雲を切り裂いて 怪獣のやうな雲湧く山の秋 草茂る飯門店の無人ビル 紫陽花を切つてくれたる坊の妻 街 の 灯 白岩敏秀 潮の香の子とすれ違ふ夕焼雲 夕立にはづれて花に水を遣る 街の灯の煌々として終戦日 ひぐらしの声に雨降る日曜日 稲の花堰を落ちゆく水の音 新豆腐沈みて水のあふれけり 桐一葉風をひきずり裏返る 図書館の返却ポスト小鳥くる 葛ざくら 坂本タカ女 そよりともせぬ鬼百合の真昼かな 翅余すなき鷺草や忌日来る 下ろしたてなる男衆の祭足袋 祭獅子見る切株にあがりけり タクシーに声ほめらるる大暑かな 邯鄲やひとの気配につく明かり 邯鄲や看板なりし店を出づ 久濶の彼のひとを訪ふ葛ざくら 流 灯 鈴木三都夫 海の日の書架に連絡船史かな 命愛し命惜しめと蝉時雨 割り込んできてみんみんのひとくだり 静かにも人影混める流灯会 流灯の灯の瞬くは淋しめる 流灯の瞬き消ゆる河口かな 流灯の一人ぼつちの灯の消えし たまゆらの流灯の灯を止め惜しむ |
星 流 る 山根仙花 炎天の重さ支へてゆく日傘 水打つて大地の素顔とり戻す 海かけて一雨ありし茄子の紺 風鈴に風のやさしき夕べかな 百日紅空青ければ空に咲く 星飛ぶや孤島に生きし過去ありぬ 夜も乾く洗ひしものに星飛べり 寄する波引く波の間を星流る 花 野 小浜史都女 午後からは雨てふへくそかづらかな からすうりすずめうり未だ青かりし 杉の木は杉葉を落とし野分去る 秋の蝉十割蕎麦屋がらんどう 湿原は沼の底より末枯るる 山萩にけふ風もなく雲もなく 霊峰に仲秋の雲流れけり むらさきにももいろがちに花野かな 盆 の 頃 小林梨花 盆棚のにぎはふ如来幡掲げ 迎へ火や老いの後に皆屈み 少年少女仏間はみ出す盆供養 秋風に吹かれからから音転ぶ 秋蝉の声のふくるる浮浪山 山裾に腰を下ろして秋を聴く 山深き古刹の道や秋の声 青蜜柑先師の姿眼裏に 月 夜 茸 鶴見一石子 風紋は風のいたづら天高し 九十九里涛にただよふ盆の月 隠れ里おしろい花の咲き乱れ 六道に戊辰の役碑虫の声 前田領百万石の銀河の尾 長き夜や夢の端々つながらず 平家塚すでに暮れたり月夜茸 少しづつ忘るる齢夕化粧 鵙 の 声 渡邉春枝 今朝秋と思ふ厨の予定表 きのふより今日の明るき星月夜 百幹の竹真青なる鵙の声 坪庭に色鳥の来て羽たたむ 一世紀前の文読む夜半の秋 ここだけの話のつづき小鳥来る 七十路の遊び足らざる秋日傘 対話なき一日暮れたり木歩の忌 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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旱 金井秀穂 大旱喘ぎに喘ぐ芋畑 己が葉を落し酷暑に耐ふる木々 穂揃ひの稲田展けり終戦日 予後の妻傷ぶる残暑つづきをり 大根蒔きためらふ日照りつづきかな 一雨が一気に秋をもたらせり 流 灯 坂下昇子 迎火の風が小草を揺らしけり だんだんに膨れてきたる踊の輪 流灯や川の向かうはまだ暮れず 西の空真つ赤に焼くる流灯会 肩車して流灯を見送りぬ 手花火の匂ひ残れる庭の隅 新 涼 池田都瑠女 石鼎の句碑に夏蝶紋たたむ 天空の色深まりぬ百日紅 少し書き少し休みて暑に耐ふる 裏山の木々の騒めき夕立くる 贔屓目の児らに声援宮相撲 新涼や出土埴輪にある乳房 大 花 火 大石ひろ女 塩鯖の塩のほど良き晩夏かな その後の闇を深むる大花火 二百十日きれいな月の上がりけり 折鶴の角合はせゐる良夜かな つくつくし鳴きに来てゐる遺髪塚 語りたき人みな遠し鳳仙花 |
空中遊泳 奥木温子 紫陽花の雨に烟らふマリア像 合歓散りぬ空中遊泳する間なく もう誰も振り向きもせぬねぢり花 釣糸の瞬時光れり鮎の川 鳴けるだけ鳴ける木のあり蝉時雨 残照が雲を縁取る夕ひぐらし 夏 の 雨 清水和子 トンネルに通し番号青胡桃 緑蔭の遺跡発掘説明会 アスファルトの埃の匂ふ夏の雨 月涼し地球の時差を知りし日も 夜の秋発車のベルの響きくる 色鳥の来てをり図鑑持ち出せり 百 日 紅 辻すみよ 饒舌は元気の証百日紅 水を蹴りホップステップあめんばう 夏帽子今日はふりるの付きし黒 風蘭の還らぬ人を待ち匂ふ 真黒な雲連れて来る夕立かな 潮の香の風に乗り来る花火の夜 良 夜 源 伸枝 廻廊へさざ波幾重今朝の秋 ふる里の山なつかしく稲の花 つまべにや三味の音洩るる奈良格子 黒山羊の瞳つぶらに稲穂波 かなかなや指にからまる刺繍糸 藁の香に眠る仔山羊や月のぼる |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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渡部美知子 曲がるたび変はる色なき風の音 三上美知子 雷鳴の一直線に攻め来る |
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秋暑し旅の荷にある奇応丸 咲く前の形に閉ぢて槿散る 草は穂を月にかかげて試歩の道 おしやれ着を吊れば秋蝶来て止る 巻き上ぐる火照りの残る夕簾 萩咲かせ野々花医院休診日 片陰や左ばかりの行き帰り 句の中に母を迎へて盆灯 秋涼し旅の途中の吉みくじ 蜩の声降りそそぐ光堂 秋の滝荒き音して落ちにけり 一徹に伸びたる山の青芒 秋来ると大きくなりしにぎりめし 落つる時一気に滝のふくらめる 海の香をたつぷり浴びし髪洗ふ |
花木 研二 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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唐 津 谷山 瑞枝
牛の鼻涙で濡るる半夏生 浜 松 佐藤 升 濡れてきしグラスの表氷水 |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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ドクターに様で呼ばるる花木槿 谷山 瑞枝 NHKの朝のテレビ小説を見ているが、色々な性格の医師が居るものだ。名誉教授にこだわる医師が居る反面そんなものに興味のない者。研究はすばらしいが恋愛や結婚にはウブというより無智な「医者馬鹿」といわれる者もいる。プロ野球の名選手の多くは五歳から十歳も年上の女性と結婚している者が多い。中学、高校、大学や社会人野球あるいはプロ野球に入って来た者は、明けても暮れても野球漬けで世間のことにうとい。世情に通じた年上の女性と結婚するのは賢明だと思う。 滝壺を少し離れて水休む 佐藤 升子 雲海の夜明けに青き点の富士 五十嵐藤重 眼下の山河は深い雲海に沈んでいるが、遠くに富士山が青き点として望めた。「青き点の富士」が幻想的な描写。夜が明けて朝日が差すと赤富士になったりするが、掲句はそこに至る迄の景。夜明けの光線が微妙に動き富士山が青一点に捉えられたのは天与のというべきものだ。 風鈴の時に励ます如く鳴る 石川 寿樹 風鈴は、同じ音色であっても聞く者の心象によりどのようにも響く。弔いの家では歔欷のように聞え、祝宴の時は賑やかに。掲句は作者の心身が充実したときの音色であろう。叱咤激励されているよう感じ取られたのである。 虫干や大役終へしモーニング 萩原 峯子 この大役を終えたモーニングは媒酌を務め上げたものであろう。収納の前に風を入れているのであろうが、夫と一緒した裾模様も隣に干されている。大役を終えた夫婦のくつろぎを省略に省略を重ねて単純化した。が、省略したものは読者が十分に読み取ってくれる。 白桃をすする眼鏡は外し置き 高橋 圭子 どの脚もきれいに畳み蝉死せり 小村 絹代 落蝉は色々な角度から随分と詠まれているが仰向けの落蝉の脚がきれいに畳まれていると詠んだのは見掛けなかった。地上へ出て何日しか生きていない、はかない命を惜しむ目が捉えた景である。 鈴花のみな出揃ひし畦に立つ 豊田 孝介 日本国語大辞典によると鈴花は遠州、東三河に使われる方言だという。稲の花のことであるが、この美しい呼び方は三遠地方だけでなく広く各地で使って欲しい。 四男はシェフの見習ひ稲の花 中村 國司 二十年余り前、鹿沼市生子神社の「泣角力」を見に行ったとき作者の嬰児が出た。掲句の四男だろうと思う。立派に成人しシェフの見習いになったということに感慨を覚えている。 縦の物横にもせずに夫昼寝 良知由喜子 「縦の物を横にもしない」のは不精者を言うが、「さだまさし」の「俺より先に死んではいけない」という「関白宣言」の関白亭主かもしれない。働き者であるが、一風呂浴びて一杯やると、「縦の物も横にしない」のだ。だが、妻である作者がよく気配りをしていて甘えているのである。善哉、善哉、ほほえましい。 |
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