最終更新日(Update)'12.09.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 奥野 津矢子 |
「苺 煮」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 鈴木喜久栄 、大隈ひろみ ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
句会報 旭川白魚火会 萩原 峯子 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 中山 雅史 、廣川 惠子 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(札 幌) 奥野 津矢子 |
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雨の重たき満開の白木槿 坂本 タカ女 (平成二十三年十一月号 曙集より) 北国の夏は瞬く間に過ぎ去ります。花々も順序良く咲く気は無いらしく、我先にと咲き誇り散っていきます。そして少し寂しくなった庭先、公園で木槿が秋を告げるように咲き始めます。満開の白木槿は華やかさと、侘びしさをそこはかとなく漂わせ、私達に秋の準備、ひいては冬に入る準備をと、ささやいているように感じます。 「雨の重たき」で尚一層… 夜の秋「むかしむかし」と子に語る 生馬 明子 木道を歩く靴音ちんぐるま 根本 敦子 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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緑 蔭 安食彰彦 累代の墓石に青葉のしかかり 梅雨晴や鴨居にかかる秤竿 目礼をされて茅の輪をくぐりけり 緑蔭や日矢のこぼるるそば処 籐椅子や今は煙草をたしなまず 夕端居陶工椅子にまどろみて 夏安居陶師の茶室小暗がり 焼酎を呷り小声で愚痴を云ふ 送り梅雨 青木華都子 照り降りの曖昧にして梅雨に入る 予定には無き外出や梅雨晴れ間 貸し傘はどれもビニール送り梅雨 昨日とはまた別の風梅雨明くる 橡茂る甘味処に客二人 夏椿散る風向きの変りたる くねくねと曲る坂道濃紫陽花 前後ろ無きつば広の夏帽子 ランプの灯 白岩敏秀 六月や水は一途に田へ奔る 一人来てひとりの田植はじめけり 水掬ふかたちに囲ふ夕蛍 よき風によき揺れのあり花菖蒲 煽ぎ消す燭の火匂ふ青葉冷 CDにB面のなし梅雨の晴 青蜥蜴墓の享年隠しけり 夏木立星を近くにランプの灯 青 林 檎 坂本タカ女 一人づつ去りみな去りぬ滝落つる 小刻みの柱状節理つづみ草 草笛や凭るるによき柵ありぬ むかしは熊を親爺と呼べり岩魚釣る 跳んで見せ蝦夷赤蛙雨あがる 退屈な風を廻して風車 紐千切れさうな鰐口虎が雨 消し忘れをりし燈明青林檎 ほととぎす 鈴木三都夫 残雪の富士を遥かに若布干す 揺れ揃ふことなく揺れて藤の房 皮を脱ぎ益荒男ぶりの今年竹 葉畳を座に睡蓮の一淨土 憚りもなく崩れたる牡丹かな 色滲む箱根卯木に雨催ふ 鳴く声の一途が哀し河鹿笛 裂帛の山ほととぎす続けざま |
夏 座 敷 山根仙花 みどりさす机上開きしままの書に 菖蒲湯に目つむりて呼ぶ若き日々 老い二人勝手気儘に更衣 手鏡の中の梅雨雲拭きにけり 大声で話す簾の内外かな 水打つや門灯届くあたりまで 人待つにあらねど打水丁寧に 大の字に寝て風貰ふ夏座敷 半 夏 雨 小浜史都女 靫草かたまつて咲くそれもよし 千年の桧ほとけとなり涼し 小ぶとりの虻もぐり込む花擬宝珠 梅雨深し二重囲ひの窯の跡 合歓の花真下よりみて見えざりし どの竹も七夕竹になりさうな 槙の木も注連も太しよ半夏雨 甘茶の葉ふふめば甘し夏至の雨 夕 影 小林梨花 蓮の葉のまみどり谷の風染めて 届かざる池の真中の蓮の花 覗きみる古代住居の五月闇 雨空を恋ひもこもこと濃紫陽花 沙羅咲くや荒神谷の夕影に 夕影鳥啼く一峡の日暮かな 夕影に溶けゆく谷の花空木 十粒程拾ひて来たる実梅かな 銀 舎 利 鶴見一石子 本陣の雑兵具足蒲筵 荒御輿鞐七つの足袋跣足 百貫の甕に睡蓮花一つ 滝がしら水あをあをと湛へをり 天界の風を賜はり蓮ひらく 採りたての茄子の紫転がれり 水中花眠たきときに沫一つ 銀舎利の言葉なつかし終戦日 さくらんぼ 渡邉春枝 いち抜けて二ぬけ三ぬけゆすらうめ さくらんぼ好きな子の来て種とばす 末の子にうすき口髭雲の峰 拳もて泣く少年の燃ゆる夏 噴水の俄に変はる風の向 夏蝶や野外ステージの昼の顔 正装を解けば涼風おのづから 香水を知らざる母の一世かな |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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牡丹咲く 今井星女 五分咲きといふまだ小さき牡丹かな 牡丹咲き狭庭明るくなりにけり ためらひつ剪る牡丹の一花かな 牡丹の一番咲きを仏壇に 牡丹の一卓一花よかりけり 牡丹の蕾かぞへし夕べかな 白き椅子 織田美智子 藤棚の下に真白き椅子置かれ 茄子トマト二株づつを植ゑてあり コールタール臭へる路地の薄暑かな 百年の柱時計や麦の秋 糠床にそそぐ麦酒の香なりけり 紫陽花に適ふ花瓶を選びをり 合歓の花 笠原沢江 洗ひ場の残る門川蛍飛ぶ 母の忌を修する墓参合歓の花 苗植ゑて逝きたる人のトマト熟る 納骨の読経の僧に蚊遣焚く 紫陽花の中より子等の声溢れ 蛍や故郷の山河目裏に |
星 金田野歩女 青葉潮ひいふうみいよう無人島 五月雨や捨て段畑の続く島 万緑や路面電車の風通し 背伸びせば星取れさうなキャンプの夜 神々も遊びに来るよお花畑 玫瑰や湖より海へ続く道 老 鶯 上村 均 城跡に標あるのみ百合の花 草原のゆるき起伏に夏雲雀 老鶯や高嶺に寄する雲の波 四葩咲く海の香りの強い町 雨ながら一舟滑る青芒 イベントに町の団扇が配らるる 古 代 蓮 上川みゆき 二千年の命を今に古代蓮 荒神谷へおいでましたと今年竹 大賀蓮の葉裏に触るる幼なき手 空のあを山湖の蒼やひつじ草 炎天や出土斜面の銅剣図 荒神谷吟行了へて玉の汗 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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鈴木喜久栄 エプロンをはづし戸口に神輿待つ 大隈ひろみ 形よき尼僧の頭柚子の花 |
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梅雨晴れや島を竹屋の声まはる 出来上る七夕笹にある重み 宿直の仮眠に落ちて明易し 鉛筆を削る音たて梅雨寒し 夏萩や蹲踞に水細く垂る 鳴き止めば遠くの蛙鳴きにけり 加齢とは目に見えぬ間に燕の子 サングラス外してどつと里言葉 火の山に向けて草矢を放ちけり 外海の夏潮荒れて来たりけり 転た寝の肩より覚むる梅雨の冷え 青柿のこらへ性なく落ちにけり くぐりたる茅の輪に月の上りけり あればまたなけねば淋し冷奴 打水や間口の狭き古本屋 |
田口 耕 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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浜 松 中山 雅史
日盛りのことに大河のほとりかな 東広島 廣川 惠子 山深く玲瓏として滝の落つ |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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蔵に父入りきりなる夏の午後 中山 雅史
防火の為蔵の壁は随分と厚いので夏は涼しい。夏のうだるような暑さの中蔵に入り切りの父は何をしているのであろうか。古い文書の調べに没頭しているのだろうか。亡父への情緒的なものは感じられない。壮年時代の亡父を思い出しているのかもしれない。だが、べたべたしたものはなく、非情ともいえる筆致で父を描いた。これが中山雅史流であるが、その中に隠れなく父への思いが出ているのに気付く。同掲の「夕焼けして国境なる十四五戸 雅史」は日本の幕藩時代の国境である。最近三遠南信の待望久しかった高速道路の極く一部が開通した。三河、遠州、信濃の旧国名であるが、人々にもマスコミにも「三遠南信」の語が頻出している。この地区の神事芸能の音曲は殆ど同じ。行政区域とは別の連帯があったのだろう。一句がなつかしさに溢れるのはその為だ。 楊貴妃と名付け売らるる金魚かな 廣川 惠子 楊貴妃と名付けた金魚を売る粋な親爺さんであるが、こう名付けられた金魚も大きな裳裾を翻して名前負けをしていない。 短夜や一巻足らぬ大事典 山口あきを 第一巻から十巻までの『日本国語大辞典』とか十五巻まである百科辞典とかの内一巻が何かの事由で欠落し残念がっているのである。この種の「コト俳句」では作者の思いを伝えるのは季語。季語が一句の成否を決める。掲句の「短夜」は絶妙とまでは言えぬかもしれぬが、成功の部類に入れた。 滴りの痺れ切らして落ちにけり 大石 越代 突き出した岩盤にかすかな水が伝わってきて滴りになって落ちるのを辛棒強く凝視していると何分かかかった。「痺れ切らして」は作者の方であるが滴りの方が痺れを切らしたと表現した技法はみごとだ。 鬱の字をルーペで見入る梅雨の夜 脇山 石菖 象形文字である鬱の字は見るからに憂鬱そうに見える。梅雨の夜のつれづれに作者はルーペで再確認してみた。表意の漢字を表音にした万葉仮名はすばらしい知恵である。表音用に片仮名や平仮名を作り出した日本人は優秀だ。現在の中国の乱暴な略字を見るととても「中華」と自負はできない。 夏燕月々火水木金々 石川 式子
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