最終更新日(Update)'12.08.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 田口 耕 |
「羅」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 出口サツエ 、小川惠子 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
句会報 鳥取白魚火 はまなす句会 田中ゆうき |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 福田 勇 、斉藤かつみ ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(島 根) 田口 耕 |
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漁火を沖に従へ揚花火 古藤 弘枝 (平成二十三年十月号 白光集より) 我が島でも浦に台船を浮かべ、花火大会が催される。すぐ間近で見上げ、花火が頭上に降ってくる光景は、まさに圧巻。しかし、毎年句にならなかった。この句を目にし、これこそ海の花火の句と合点した。私には、遠くの漁火にまで目を向ける心の余裕がなかった。掲句は、大海原を背景に余裕を感じさせてくれる句なのである。 空つぽの虫籠残し帰りけ 角田しづ代 片蔭に入るや頭上の石落し 村上 尚子 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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薔 薇 安食彰彦 まほろばの里の大宮片かげり 緑さす宮司の木沓白緒下駄 軽トラの中の作業夫午睡かな さまよへる湯殿の窓の大百足虫 さりげなく庭師に渡す落し文 黒蟻の小蟻の列を横切れず 一束の深紅の薔薇を抱く新婦 揚羽蝶斎庭の新郎新婦かな チマチョゴリ 青木華都子 揺らしつつ渡る吊橋谷若葉 いろは坂下りは一気若葉風 新樹晴れ甘味処に椅子二つ 緑陰のベンチはどれも二人掛け 触れ合うて弾んでをりし手毬花 行き当りばつたりの旅枇杷熟るる 涼しかり旅の土産のチマチョゴリ じぐざぐに雲切り裂いて稲光 旅 終 る 白岩敏秀 新緑や女人埴輪の首かざり 着陸のベルトのサイン麦の秋 玄関に初夏の灯を点け旅終る ジャンプして少女触れゆく藤の花 コルク栓すぽつと抜いて五月かな 子燕のつばめ返しに空晴るる 草笛の青臭き音鳴らしけり 回診の女医鈴蘭に触れて去る さくらさくら 坂本タカ女 胸高に水はばたけり帰る鴨 バスを待つ雪解け水のとばつちり 昼しづか白鳥雪解田に下りし 日の差して沈黙やぶる桜かな さくらさくらつられて笑ひ出しにけり 一花咲くくぼみの浅き穴居跡 耳元を風音過ぐる松の芯 すかすかな鴉の古巣薄日さす 草 競 馬 鈴木三都夫 草競馬落馬の騎手が後を追ふ スタートは人馬の阿吽草競馬 往年の名馬の気負ひ草競馬 二周目の乱るる人馬草競馬 浜競馬一等席の砂被り 浜競馬若布干場を使ひきり 浜競馬ブルドーザーが浜均す 人の出の二万六千草競馬 |
蛍 の 夜 山根仙花 桜蘂降るを見上げて僧帰山 一匹の虻の漂よふ空眩し 新緑を写し神鏡鎮もれり みどり濃きなか目薬は目に溢れ 村中の蛙鳴き出す夜となりぬ 麦秋や村に馴染みの研屋来る ごくり飲む水のうまさよ蛍の夜 薫風や机上にひらく新刊書 更 衣 小浜史都女 抱卵の鳥に日食近づきぬ 遺品まだ残つてゐたり更衣 一度きり被りし夫の夏帽子 鮎高く跳ねたり雨の近かりし 草引くや近くにとまる消防車 卯の花のはりつめてゐる白さかな 玉葱を抜きゐて飯に呼ばれけり ふるさとの闇や水音や螢とぶ 山 祇 小林梨花 蝮草飾る受付名画展 薫風や筆の穂先のやはらかく アカシアの花はらはらと晶子の忌 山祇の化身の川か河鹿笛 神代から今も植ゑ継ぐ植田かな 限りなく深き水底夏の雲 我が髪の緑に染まるまで座せり 浜昼顔咲くや幽かな波の音 水 中 花 鶴見一石子 蕺菜を干せる秩父の荒筵 馬頭尊牛馬慰霊碑木下闇 六道の辻朧なる戊辰の碑 けふもまた畏みてゐる蝸牛 新緑の真只中の握り飯 干草や本家分家の日の匂ひ 短夜や眠りのうすき迷ひ夢 水中花人は想ひ出尽きぬもの 中国紀行 渡邉春枝 旅五月パンダ飼育の森に入る 紫のつつじ囲める九寨湖 薫風やかぎりなく澄む湖の碧 新緑の山を映して湖の黙 石楠花の森や水音の絶ゆるなし 幾すぢにも落つる瀑布の日を散らし 枇杷熟るる李白生家の村を過ぐ チベットの集落十戸麦の秋 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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げんげ風 関口都亦絵 放ちたる子犬げんげの風となる 子ら帰りバケツの蟇をもてあます 母の日や使ひ込みたる赤絵皿 リラの雨駅に花柄小座蒲団 百態の羅漢埋もるる樟若葉 仰山に十薬干せる庫裡の軒 祭 寺澤朝子 浅草へ人波つづく祭かな 四つ辻に神輿の揃ふ三社祭 スカイツリー指呼に神輿の折り返す 飛び退り通すは娘神輿かな 腰の帯男結びや祭髪 新月や倉に納まる宮神輿 恋 螢 野口一秋 桐の花薄化粧して湯女出仕 幽冥へ縺れ墜ちゆく恋螢 柴折戸に絡み鉄線通せん坊 翩翻とハンカチの花いま満開 雨しぶく螢袋の花が樋に 袋蜘蛛天狗の鼻に棲みつける |
茅花流し 福村ミサ子 待たさるる茅花流しの踏切に 御霊屋に芭蕉は玉を解きはじむ 遺跡谷の暮色にまぎれ桐の花 日食の騒ぎの中や草を刈る 甌穴の水に寄り合ふ黒揚羽 はるか来て夏行始めの噴井汲む 卯 の 花 松田千世子 白い花其處比處初夏の園巡り 花嫁がゆく卯の花の水鏡 あぢさゐの白に始まる初初し 新しき木橋の香り松の花 石段の踏み減著き竹の秋 氷川丸幾年月の青葉汐 退 院 す 三島玉絵 山若葉ぐつと近づけ雨上る 新緑へ動き出したる山の色 横たはる青嶺の先の日本海 軒合はす中の一戸の鯉のぼり 退院を告げられし日の雲の峰 われ生きて青田の家へ退院す |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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出口サツエ 吊皮に両手蛙の目借時 小川 惠子 ひと呼吸置いて剪りたる白牡丹 |
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母の日や振りて缶入りドロップス 紫陽花の中より僧侶顔を出す 棕櫚の花赤子こぶしを突き上ぐる 肥後牛ののつそり動く雲の峰 葉桜や城下の町の常夜燈 白鷺の大きく見ゆる植田かな ひたすらに昭和を生きて昭和の日 初蝶の風の匂ひの方に飛ぶ 早苗田の逢魔が刻の水明り 紫陽花の雨待つ色の見えて来し どくだみのそよぎて雨の匂ひかな 子無き身に羅すべり易きかな 茄子苗を歩巾に計り植ゑにけり 夏草や鉄路草津へ岐れ行く 四万十の河に架けたる鯉幟 |
斎藤 文子 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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浜 松 福田 勇
礼状の届く八十八夜かな 群 馬 斉藤かつみ 農場に生徒賑はふ麦の秋 |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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礼状の届く八十八夜かな 福田 勇 単純化を果し、清朗なしらべが快い。為に、作者が省略した大方は読者が補完して読み取ってくれる。つまり余韻がある。 成り行きに任す老後や更衣 斉藤かつみ 日本人男性の平均寿命が八十を、女性は八十七歳を越えたと報じられていたが、生命維持の為の医療やすべて介護に頼らねばならぬ者も居り、これらを計算に入れると平均寿命は三、四歳低いとの見方もある。 3Bの鉛筆削る春の昼 森 淳子 上代の歌垣で詠み交した歌や元禄の俳諧連句などは主に耳で聞き分けたが、印刷が発達した頃から詩歌も視覚に訴えるようになった。歌人上田三四二は片仮名は異様と見ていたふしがあり「なるべく片仮名は歌に用いない」「一首に片仮名語が二つあるものは先ずダメだ」と言っている。さて掲句の表記。3Bの鉛筆はこのように表記せざるを得まい。 東浄は東司ともいい禅宗の厠である。仏法の守護神が立っていて厳かである。そこに今年も蜘蛛が一本糸を張った。蜘蛛は生きるために糸を渡したのだが作者には、仏心があるかのように見えた。 指先に釣人抓み箱庭へ 森井 杏雨 箱庭に流れを作り巌を置きほぼ完成した。最後は釣竿を持った釣人を抓んでそこに置き画竜点睛とした。「指先に釣人抓み」が何ともユーモラスだ。 碁盤罫刀で彫れる夏座敷 高野 房子 榧の厚さ一尺もある碁盤は一千万円単位の高価なものである。碁盤に作り上げたのも匠の技であるが、仕上げの罫入れも亦業の粋を要する。刃先に漆と墨を混ぜたものを付けて寸法通り力を入れて盤に罫を刻む。作業場は清楚な夏座敷であるが作業中は修羅場の趣を呈する。 万緑や鉄路の跡に遊歩道 高橋 見城 昔の軽便鉄道の跡は拡幅して車の通る道路になっている所が多い。駅舎やレールや古いアクセス道路の形状から今も三方信号の所がある。歩道専用として煉瓦張りのトンネルが残っている所等は涼しくて美しい。 この句からは古俳句の「夕涼みよくぞ男に生れたる」が想起された。風呂上りに団扇を片手に涼を取っているが膝にはタオルが一枚掛けられただけ。この句を更に面白くしているのは下句の「男前だ」。世の男達よ、男に生れてよかったなあ、という意味であろう。何故か共感させる力を持った措辞である。
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