最終更新日(Update)'12.10.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 吉村 道子 |
「初 心」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 挾間 敏子 、齋藤 都 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
句会報 硯墨句会(中津川) 井上 科子 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 小村 絹子 、後藤 政春 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(中津川) 吉村 道子 |
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消ゆるまで見てゐる秋の二重虹 石川 純子 (平成二十三年十二月号 白光集より) 先日、久しぶりに同級会があり別れを惜しみ解散する時、故郷の恵那山の方に出た二重虹を見た。皆で消えるまで飽かず眺めてから再会を約束して帰路についた。 秋の虹は夏に出る虹より淡く消えやすいという。作者は一人で見ていたのだろうか。 二重の虹に出会った時の高揚感、そしてその後、跡形も無くなってしまう空を見つめる一抹の寂しさ。 共感した一句である。 村人にひとりも会はず曼珠沙華 田久保峰香 稲熟るる風香ばしくなりてゐし 大野 静枝 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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滝 安食彰彦 国造庭の滝に静かに近づきぬ 滝拝し八千矛の神拝しけり 滝落つるほどよき飛沫あびにけり 蜘蛛の囲に息を吹きかけ脅しけり 大輪の向日葵を背に愚痴ひとつ 夏柳青年僧の声澄みて 夏草の丈逞しく伸びにけり ひつそりと黄泉の洞窟釣鐘草 水キムチ 青木華都子 紫陽花の毬打つ雨の容赦なく ハングルで交はす挨拶氷売 夏の虹韓半島を下に見て 窓といふ窓全開に夏座敷 土産にも夏限定の水キムチ 水キムチ辛し辛しと暑気払 千本の並木涼しき杉襖 樹下にゐて蟬しぐれまた蟬しぐれ 遠 き 星 白岩敏秀 堰板に仕切る流れや夏つばめ 冷し酒グラスに遠き星透けて 手に測る田水の温度サングラス 向日葵の道を抜けゆく使ひの子 眉唾の話聞きをり団扇風 コピー機はA四サイズ雲の峰 口笛の近づいて来る夏野かな 流木に潮の香残る原爆忌 浮いてこい 坂本タカ女 老鶯やひと間の笹小屋の窓三つ うしろまで夜の来てをりぬジギタリス 夏の雨土がおしやべりしてをりぬ 素通りの水からくりに足戻す 身体髪膚父母に享くシャワー浴ぶ 鯖をよみたる年齢や浮いてこい いつまでの片目の達磨泥鰌鍋 取り替へてゆく時の日の腕時計 梅 花 藻 鈴木三都夫 蓮の葉の揺れ戻しては花を見せ 揺れ易く咲いて蓮の散り堪へ 一片の舟とし散れる蓮かな 睡蓮の花の淨土はかくならむ 梅花藻の花の躍れる早瀬かな 梅花藻の流れの帯に花の綺羅 作り滝その滴りも適ひたる 作り滝午後へめりはり付けにけり |
秋 の 燕 山根仙花 町一つふくらんでくる祭かな 祭には祭の匂ひなつかしむ 桶一つころがし洗ふ青嵐 風重く渡る青田となりにけり 青田にも沖あり風の果てありぬ 峰雲の真下暮しの煙立つ 星飛ぶや地に働く灯眠たき灯 もう秋の燕となりしか高く飛ぶ 夏 越 祭 小浜史都女 天山に積乱雲の立ちあがる 重箱の飯をいただく夏越祭 滝の音耳を離るるまで歩く おし黙る嘴太からす南風吹く 撫子の白や一穢もなきこころ 肩巾は子の子も広し青山椒 盆菓子の淡きがうれし白はなほ 刃こぼれの包丁を研ぐ厄日かな 嬰 児 小林梨花 すずやかに笑まふ嬰児夏座敷 嬰児の黒き瞳の涼しさよ 朝涼やみどり児手足よく動き 朝顔や嬰児の目鼻うるはしく 湖上より宙へ打ち上ぐる花火かな 半月に届けとばかり揚げ花火 大空も湖も煌めく大花火 大花火果てて虚しき湖の黙 現 世 鶴見一石子 世の隅にそつと息づく古代蓮 蓮咲きし極楽の風いづこより 紅白の蓮を頒ちし渉り板 蓮池の千の蕾の攻めぎ合ふ 濁り水気泡一つに蓮ひらく 天界の風いにしへの王子蓮 現世を暫し忘れん白はちす 安らぎは家族の絆蓮の花 八 月 渡邉春枝 せせらぎの音を集めて水芭蕉 雪渓の風の研ぎゆく岳樺 木道のすでにほほけしちんぐるま 十二湖の中の青池山滴る がま池の蝦蟇鳴くたびに夕ざるる 八月の水うらがへる被爆川 芭蕉布を吹きくる風の浅葱色 浴衣の子綿菓子の手を高く上げ |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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足 尾 加茂都紀女 白骨の立木を曝す旱ダム 合歓咲くや立松和平の鎮魂碑 甦る足尾の鉱山の青しぐれ 原石に水打ちて彫る観世音 日盛の発電所跡遺蹟めく 渡良瀬のトロッコ電車に乗り涼し 半 夏 生 二宮てつ郎 地にひとり詩病みありて梅雨ながし 蔓草の蔓の行方や半夏生 万緑の視界を雨の降り出せり 昼ひとりカレーを食へば梅雨上る 戻り梅雨薬忘るる日の無かり 蛞蝓に見られて朝の顔洗ふ 夏 の 萩 野沢建代 井戸蓋に苔の花咲く壇那寺 神木の謂れを読めり夏の萩 山門を抜くる風あり白桔梗 蜜蜂の蓮から蓮へ忙しき 手筒花火の硝煙に巻かれけり 幔幕も葵の紋や大念仏 |
青 柿 星田一草 僧の下駄きちんと揃ふ梅雨の寺 郭公の鳴く尾を立てて首立てて 青柿や辻に明治の道しるべ 青柿の柿の形となり太る 木道の足裏に弾み涼しかり 近づきて青鷺の目に射られけり 藻 の 花 奥田 積 七月の朝一杯の水を飲み 鐘楼へ階のぼる沙羅の花 夾竹桃階下に運ぶ大太鼓 藻の花に日暮迫りてをりにけり 地上には地上の逢瀬天の川 夕かなかな飛行機雲の染まりゐる 蓮 棚 田 梶川裕子 一枚の空千年の蓮棚田 流るるとなき蓮田より金気水 茫々と峽の空あり女郎蜘蛛 肩ひぢを張ることもなし草の笛 風入るる夫の行李に千人針 梅雨晴や研師は砥石まづ濡らし |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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挾間 敏子 炎天や市電のきしむ被爆橋 齋藤 都 夏休み百葉箱を塗り直す |
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朴の花開山堂に燭一つ 法善寺横丁水の打たれけり 夕立やをんな座りの足の裏 梅雨深し古窯の森の杉木立 この夏を凌げば母の齢越す 女子寮の螺旋階段大西日 昂然と泰山木の一花かな 千切りのキャベツに媚薬ひとつまみ 菩提樹の花青空に香りけり 炎天下キャッシュカードの逆もどり 山越えて隣の村の白雨かな 熱きざす舌に氷菓の甘く溶け 御手洗の漣涼し掬ひけり 蓮池や反り美しき堂庇 海開き仕出し弁当配らるる |
上武 峰雪 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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牧之原 小村 絹子
現世の風に吹かれし古代蓮 高 松 後藤 政春 早苗饗の餅を配りに大家来る |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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門火焚く尉となるまで見届けて 小村 絹子 門火は、盂蘭盆に入る七月十三日の夕刻帰ってくる精霊を迎える迎火である。多くは苧殻を焚くが、掲句は肥松束のようである。脂にすぐ火が付いてよく燃えるが苧殻の何倍もの時間がかかる。帰り遅れた精霊が居ないかじっくり門火を焚き続けるのである。燠に尉が出来る迄見届けている。 翡翠や川底透ける小歩危峡 後藤 政春 五町二村が合併して誕生した徳島県三好市は県の西端にあり高知、香川両県と境を接している。掲句の小歩危峡は大歩危峡と共に合併前の西祖谷山村(平家谷)にある。吉野川が四国山脉を横断した唯一つの所で深く険しいV字谷を形成している。断崖の高い所は百メートルにも及び両岸の山道は地名の如く一大難路であった。 山の湯のごはつく浴衣夕河鹿 寺本 喜徳 高名な作家が宿浴衣を季語にしている例をしばしば目にするが賛成できない。宿浴衣は春夏秋冬常に用いられているので、無季とは言わぬが全く季感がない。掲句には、わが意を得た。「夕河鹿」という季語を配し、糊のよく利いた宿浴衣を清冽な一句にして見せてくれた。 吊橋を大念仏が渡り来る 山下 勝康 遠州大念仏は西遠地区で新暦七月十三日又は十四日に、帰ってきている精霊を弔って行われる。三方原合戦で大敗した家康が、武田、徳川両軍の戦死者を慰霊したことに起源する。 園灯のいつしか点り夏料理 小玉みづえ 高級料亭であろう。整備された日本庭園の向こうにいつの間にか園灯が点っていたのである。この背景を見せられると眼前の夏料理が一層豪華に見えてくる。「園灯のいつしか点り」の写生がみごとだ。 夏花摘む標高千の入会に 宮澤 薫 新盆を迎ふる畳替へにけり 水島 光江 畳替へは年用意の季語であるが、嫁取りとか法要などで随時行われてきた。新盆を迎えるための畳替えとは、大切な人の供養だったのであろう。しらべのよい秀句である。
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