最終更新日(update) 2008.11.30

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仁尾正文 近詠
蔵出しの 水噴き出せり 枇杷の花
化石 五万羽 目通り
訓練機 麦畑 夏炉
国引の山 存分に 十三夜
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平成20年12月号抜粋の目次へ


    十 三 夜 
           
 観月会雨となりたる人いきれ
 
 掻き鳴らす津軽三味線月の雨
 
 草の花破船の艫に土溜り
  
 見残しの栗が最も大きかり
     
 羽子のごと葉の舞ひ落つる松手入れ
     
 一盛り見せ酔芙蓉終はりけり
    
 一憂を汝も抱ふるか秋の蛇
    
 蒸籠の湯気のにほへる十三夜

平成20年11月号抜粋の目次へ


   存分に
           
 存分に森林浴を秋葉山
 
 奥飛騨に住み古り夏炉絶やさざる
 
 全児童十三名に二学期来
 
 稲の丈すらりと揃ふ千枚田
     
 たもとほる畦道葛の終ひ花

 とんばうの沈思の翅を畳みけり
    
 秋声や葵の紋の鬼瓦
   河合萬平氏逝去  
 新涼の気配やうやく見えたるに

平成20年10月号抜粋の目次へ


    国引の山 
           
 風土記の国引の山青きかな
 
 遊船に這ひつくばつて橋潜る
 
 風死せる内濠に又戻り来し
  
 船頭ののんどすずしき唄を出す
     
 石見夏神楽見て吾も火を吐けり
     
 水打つて名代の出雲蕎麦どころ
    
 夏の萩風よく通る八雲の居
    
 酷暑日の山がけぶってゐたりけり

平成20年9月号抜粋の目次へ


   夏 炉
           
 更衣大嫌ひなり更へにけり
 
 正五角形の蕾を夏桔梗
 
 夜をこめて雨降る沖縄慰霊の日
 
 噴水のへたへた崩る楽止めば
     
 恵比寿柱大黒柱夏炉焚く

 家長の座空けしままなる夏炉かな
    
 原稿を上げし泰山木の花
    
 天の川すずし縄文杉の上

平成20年8月号抜粋の目次へ


平成20年7月号抜粋の目次へ


   訓 練 機
           
 自堕落な休日蝌蚪に足が生え
 
 初蝶の二頭三頭皆黄なり
 
 喧嘩凧に勘亭流の一字かな
 
 訓練機次々帰投夕ざくら
     
 なかんづく眩しきものに柿若葉

 耳の辺に鳴ける春蚊を盲打ち
    
 母に銭やらずじまひや昭和の日
    
 大手門跡の八方茶を摘める

平成20年6月号抜粋の目次へ


    目通り 
           
 目通りは優に一尺山桜
 
 逃水を十里程追ふ三方原
 
 訃は何時も唐突に来る養花天
  
 昨日とは打つて変つて桜冷え
     
 朝霧ぽつとり赤き日を上ぐる
     
 はくれんのまだ一片の落花なし
    
 後北条五代墓並め朧かな
    
 折あらば茎立ちせむと聖護院

平成20年5月号抜粋の目次へ


   五 万 羽
           
 春節の獅子舞曲技見せにけり
 
 かくもよく睡れるものぞ春の風邪
 
 ひんがしに明けの太白冴返る
 
 一せいに五万羽立つて鳥曇
     
 大噴水見に来しバレンタインの日

 関ヶ原あたり最もつちぐもり
    
 啓蟄のほぐして干せる鉢の土
    
 芽吹き急大学前の停留所

平成20年4月号抜粋の目次へ


    化 石 
           
 直系の男の子が一人雪国に
 
 午までは温室となる文机
 
 牡蠣割の十指おのづと働ける
  とおだご
 十団子のごとき氷を水車の辺
     
 木偶折つて木箱に納む傀儡師
     やや
 離乳期の稚は王さま日脚伸ぶ
    
 夕凍の雲の裂間に真紅の日
    
 冬籠り化石になつてしまひけり

平成20年3月号抜粋の目次へ


   枇杷の花 
           
 烈風の夜つぴて吹けるこつごもり
 
 雪白の和紙惜しむなく大祓
 
 一憂は誰にでもあり今年去年
 
 門松の垣根結びの縄の端
     
 御由緒を余さず読めり初詣

 半袖の看護師仕事始めかな
    
 開拓の二世三世枇杷の花
    
 命余して逝かれたる七日かな

平成20年2月号抜粋の目次へ


   水噴き出せり
            
 なまこに刃当つれば水の噴き出せり
 
 いにしへの水軍の裔鰈干す
 
 一縄に反り極めるたる干し平目
 
 浄土寺の鳩踏みさうや小六月
     
 鶴のごと痩せて矍鑠冬安居

 列車過ぐる度山門の紅葉散る
    
 綿虫の翅使へるは意志もてる
    
 校庭に百年経たる冬黄葉

平成20年1月号抜粋の目次へ


   蔵出しの
            と
 歯応へのよき新蕎麦を尋め当てし
 
 怖気つく程草虱つけてきし
 
 とめどなき黄落の奥三河かな
 
 朝寒やカイゼル髭は遂に逝く
     福田勇氏受勲
 蔵出しの新酒もて祝ぐ受勲かな

 日の出づる前に餅搗き神送る
    
 竜の玉清貧とふはもう死語か
    
 樹上より神鶏天降り留守詣

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