最終更新日(Update)'14.10.01 | ||||||||||||||
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季節の一句 安澤 啓子 |
「白 桃」(近詠) 仁尾正文 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)安食彰彦ほか |
白光集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 佐藤 升子 、星 揚子 ほか |
白光秀句 白岩敏秀 |
鳥雲逍遥 青木華都子 |
句会報 坑道句会 生馬 明子 |
白魚火集(仁尾正文選)(巻頭句のみ掲載) 平間 純一、鈴木 喜久栄 ほか |
白魚火秀句 仁尾正文 |
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季節の一句 |
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(浜 松) 安 澤 啓 子 |
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晩酌が一本増えて敬老日 鈴木 三都夫 (平成二十五年十二月号 曙集より) 敬老日空気のやうな二人かな 桧林 ひろ子 (平成二十五年十二月号 鳥雲集より) 一句目。何時もよりプラス一本の晩酌に、家人の愛情が籠っている。作者のお体のことを思い、銚子は二本では多すぎるのである。酒の肴と副食は、好物が並んでいたことだろう。「一本増えて」だけで、暖かなご家族がみえ、作者の家人への嬉しさがうかがわれる。 二句目。長年連れ添い空気のようなお二人。ツーと言えばカーどころか、目を見ればお互いの気持がわかる。最近は、夫婦間のストレスが問題になっているが、お二人には無関係である。まさしく理想的なご夫婦である。 騎馬戦を勝利で飾る運動会 渡部 美知子 (平成二十五年十二月号 白光集より) 運動会今日はスターになる子かな 関本 都留子 (平成二十五年十二月号 白魚火集より) 一句目。騎馬戦は騎馬武者の合戦を模倣した遊戯である。クラス対抗だったり、学年対抗だったりと運動会の花形競技であり、生徒は勿論見物の父兄も総立ちとなり応援する。帰宅後、合戦中の手柄話を聞きながら、逞しくなったものだと子の成長を感慨深く思った。 二句目。勉強は苦手だが運動は抜群の生徒が一人や二人いるものだ。運動会の練習の時から嬉嬉としている。当日はクラス対抗、学年対抗リレーレースのアンカーマン。先生からも皆からも会う度に凄いねと拍手を貰う。学校は勉強だけではないのである。 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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蝉 安食彰彦 秋声を聞く神杉に風吹けば 玉砂利を踏めば新涼ありにけり 神鏡に写す姿に秋を知る 追腹のつもりか塔に縋る蝉 空蝉のあはれ地輪にしがみつく 鳴きつくしたるかみんみん裏返る 独唱にまたみんみんの加はりぬ 眉毛より汗こぼしつつ説明し 立 夏 青木華都子 昨日雨けふ快晴となる立夏 この橋で変はる町名青葉木菟 草の根を抜くや尻もちつきながら 塀越しにいただく一果枇杷熟るる 雨脚に強弱のあり濃紫陽花 どどどどと、どどと一気に滝落つる 雷の通り道なる雷神社 囮鮎泳ぐ形に串打たる 風の連鎖 白岩敏秀 青田より風の連鎖のはじまりぬ パトカーの停つてゐたる青田道 湾の波総立ちとなる日雷 白百合のまつすぐ咲いて日暮れけり ひるがへる金魚に名前つけてをり 咲く花の眠れるごとく花氷 青葉木菟一番星が森に出て 放牧の牛に晩夏の夕日来る 電話ボックス 坂本タカ女 つるでまり切株がんじがらめかな 文机をとびだしてゐる団扇の柄 電話ボックスさくらんぼの木の懐に 美しく舞ひ連なりて蝶交む 咲き余るほど咲き都忘れかな 卯の花腐しCT室の重きドア 料金不足郵便物や灸花 夏を盛りのなんぢやもんぢやを見霽かす 夏 萩 鈴木三都夫 何か曳く蟻の命は踏むまじく 宝珠ほと色を見せたる蓮かな 夏萩の盛りと言はん花の数 浮草へ森青蛙泡落す 一夜さを一期一会の蛍かな 蛍の合戰ほどは飛ばざりし 葉畳の隙間隙間に浅沙の黄 嫌なもの見たさの目もて毛虫の毛 |
花 合 歓 山根仙花 花合歓の夕べ音なく舟戻る 花合歓に夕月淡く上りけり 夕月の雫に濡れて合歓散れり 合歓夕べ一戸に遠き一戸の灯 もつれては草に溺るる梅雨の蝶 蜘蛛の糸一筋垂るる弥陀の前 蜘蛛の囲に蜘蛛眠りをり雨上る 駆けてくる子よ夕焼に手を上げて 秋 隣 小浜史都女 伸びすこし遅れてきたる余り苗 鮎の瀬に添うてはじまる鮎まつり 山鴉暑し暑しと降りてきし 蟻地獄日の当らざる匂ひかな 藻の花に鮠の子増えてゐたりけり 絹豆腐くづれて甘し秋隣 日の沈む方へ歩きて晩夏かな 麺麭にレタスはさみて夏の終りけり 家 苞 小林梨花 百匹の鈴虫貰ひ受けにけり 家苞の鈴虫の籠嵩張りて 早々と虫籠持ち込む老いの家 虫籠を代はるはるに覗き込む 鈴虫の未だ幼くて髭ばかり 大小の鈴虫音もなく動く 鈴虫の餌にと輪切りの茄子胡瓜 未だ鳴かぬ鈴虫の声待ち遠し 釣 天 井 鶴見一石子 客待てる渡し月見草ひらく 夜店立つ街に育ちて下駄が好き いきいきと生きたき齢水中花 釣天井伝説の辻落し文 黒揚羽息つぐ羽をたたむなり 鬼灯や渡り坑夫の寄せ仏 閉山の鉱山長屋法師蝉 息つめて見る戦場ケ原鹿のこゑ 向 日 葵 渡邉春枝 白靴を穿けば自づと背筋伸び 向日葵の迷路を抜けて少女めく 一斉に旅の向日葵われに向く 宙吊りの毛虫に夕日とどまれり 原爆の日や一合の米を研ぐ 深息をして八月の空仰ぐ マネキンの人待ち顔に夏果つる 番犬の老いを諾ふ残暑かな |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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麦 の 秋 織田美智子 枇杷熟るる久しく訪はぬ兄のこと 麦の秋むかし農繁休暇あり 青柿の大方落ちてしまひけり 蜘蛛の囲をくぐる片手に花鋏 夾竹桃赤子全身もて泣けり 夜の秋机上にひらく歎異抄 泳 ぎ 子 笠原沢江 泳ぎ子のざわめき運ぶ海の風 泳ぎ子を目で追ふ母の立ち通し 送り火の尽きて静寂のもどりけり 盆棚の脇に供ふる菓子袋 杭打つて髙く広ぐる浜日傘 七夕のしるしばかりの笹一枝 蝸 牛 金田野歩女 道草の子細は雨後の蝸牛 夏大根の辛み好みの分かれけり 屋上のビアガーデンのまだ薄暮 小半日歩く日焼けの腕振つて エプロンの窪に蕃茄を収穫す 星飛ぶや綺麗な夜空ありがたう 朝 涼 上村 均 朝涼やシャツの釦が一つ失せ 青芦を薙ぎて川船舫ふなり 出港を見送る日傘廻しけり がうがうと川に押し入る土用波 甲板に夏シャツ干して戻りけり 玉葱を吊るや遠嶺の襞美し 鬼の霍乱 加茂都紀女 水平線の真ン中破り夏日入る 風死すやめらめら路面電車来る 夏風邪や旅のちらしを身ほとりに 御嶽より望む都心の灯の涼し 身の内の鬼も微熱や暑気中り 浮橋を巡りて風の蓮の花 夏 椿 星田一草 ほととぎす牧の起伏の幾重にも 那須駒のひとかたまりや夏の草 夏椿散りたる数を咲き継げり ひまはりのまだ定まらぬ顔の向き 空蝉や五十四基の城主墓 散るもあり明日咲くもあり蓮浄土 |
打 水 奥田 積 梔子や関守石の濡れてゐる さざ波の寄せくる光夏薊 炎天や蛇口をもるる水の音 打水やこの家に越して来るらしき 雷鳴の走る湖面に嫁が島 炎天や油光りの小漁港 大 津 絵 梶川裕子 大津絵の鬼のふりむく夏の風邪 城の松に三伏の鷺居着きけり くもの糸神の鈴にも縋りけり 絵馬に書く未来の願ひ夏帽子 竹皮を脱ぐまぶしさの藩主寺 捨て畑は野にかへりゆく草いきれ 夕 立 金井秀穂 長梅雨に止めを刺せる大雷雨 蟬も鳥も鳴りをひそめて大夕立 夕立遣り過ごして蟬のよよ鳴けり 一筋の青蔦伝ふ岩清水 一人居や首を振らざる扇風機 力瘤失せし腕を汗伝ふ 花 火 坂下昇子 岩煙草滝のしぶきに濡れ通し サーファーの立ち上がりたる雲の峰 潮湿りして来し茣蓙や花火待つ 火の道のしゆるしゆる伸ぶる花火かな 足元に波の寄せ来る踊かな 向日葵の夕日に背中向けしまま 蚰 蜒 二宮てつ郎 梅雨明けの息音立てて吸ひにけり 一本の八月を待つ大樹かな 起き抜けに蚰蜒に合ふ元気さう 台風の雨欲し風は嫌と言ふ 未だ生きてをり喉通りゆく麦茶 射干の花より道の分かれけり 遠州大念仏 野沢建代 夕顔を籬に這はせ大念仏 夏羽織に葵の紋を許されし 打ち水の庭に念仏衆迎ふ 双盤の音色の重き盆の庭 盆踊りの輪にフラッシュの焚かれけり 飛び入りの少年炭坑節踊る |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
白岩敏秀選 | ||
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佐藤 升子 抽斗の隅に掛香入れにけり 星 揚子 虎尾草や猫はしつぽを立て歩む |
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柿に色少しきてゐる盂蘭盆会 群青の海を称へて海開 凌霄花盛りを雨に打たれけり 悩みごと微塵もあらず浮いてこい 蟻地獄ひたすら待つといふ地獄 墓洗ふ筧の水の豊かなり 端居して来ぬ人を待つ心かな ひと揺れの地震やメロンを皿に置く 鉾廻す水きらきらと撒かれけり 日焼して女生徒いよよまろやかに 更衣エプロンの丈詰めにけり 片陰や駅へ通じる裏通り 紫蘇つんで染まりし爪を切りにけり 西瓜採る音が決め手となりにけり 夕刊の肘にはりつく暑さかな |
渥美 尚作 渡部美知子 村松 典子 小林さつき 北原みどり 野田 弘子 上武 峰雪 秋穂 幸恵 野澤 房子 田原 桂子 郷原 和子 剱持 妙子 吉田 智子 加藤 芳江 水出もとめ |
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鳥雲逍遥(9月号より) |
青木華都子 |
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白粉花に遮られゐる戸口かな |
桧林ひろ子 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
仁尾正文選 |
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旭 川 平間 純一
お花畠鎮魂の鐘打ち鳴らす 磐 田 鈴木 喜久栄 佳き夢を猫に踏まれて明易し |
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白魚火秀句 |
仁尾正文 |
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兜重たき大雪山のとりかぶと 平間 純一 『角川俳句大歳記』は「鳥頭」と表記されているので分り易い。かつて ビートルズ聴きつ辣韮漬けてをり 鈴木喜久栄 音楽に疎いわたしにさえ年取ったビートルズの話は聞こえてくる。掲句は華やかな頃の、ビートルズのカセットを今も大切にしている。「聴き」がそれを示す。その上下句が又面白い。「辣韮漬けてをり」に歳月の経過は否めない。 夏潮に進水式の酒注ぐ 佐藤 勲 読み下した瞬間から情景がよく見える一物仕立の作品である。 三日ほどもて囃されし水中花 三井欽四郎 過去にこのような「水中花」の作品を見たことがない。上十二迄の表現は何の力みもなく平凡な言葉でありながら、あっと言わせるのがこの一句の良さである。難しい言葉で飾り立てた作品をよく見かけるが、それをしないで表現するのが俳句である。 老いてなほ応援団長雲の峰 高田 喜代 一読して高校野球の観覧席を連想する。「老いてなほ」ということは、きっと何十年もそうして母校を応援し続けてきたのであろう。球児達もその声に押されて頑張れるのである。典型的な取り合わせの作品であり何と言っても「雲の峰」の力強い季語が一句を支えている。 クッキーに小さき歯形昼寝の子 五十嵐好夫 孫という字はどこにも見当らないが、読者はみなお孫さんのことであろうと想像する。「クッキー」という語感と、「小さき歯形」のカ行の繰り返しもこの作品をリズミカルな佳句にしている。作者の小さな発見は日頃のお孫さんへの思いやりにも通じ、思わず顔をほころばせてしまう。 海の日や抽出しにある日章旗 高橋 見城 「海の日」は現在七月の第三月曜日が国民の祝日として定着した。かつて明治天皇が東北、北海道を巡幸し横浜に帰着した日が七月二十日だったからだと聞いていた。「日章旗」と祝日の取り合わせはよくあるが「海の日」としたところに新しい風を感じさせる。「海の日」の目的には、〝海の恩恵に感謝〟〝海洋日本の繁栄を願う〟ということもあることを忘れてはならない。 この風を孕めばヨットらしくなり 伊藤 寿章 湖上や海上をすべるヨットの情景を敢えて説明するまでもない。掲句はそれ以前の様子を詠んでいるところが意表をつくのである。「この風」はまだ作者しか感じていないが、やがて帆が促えるだろうと思った瞬間、一句が成立した。素材の良さと新しい視点を感じさせる爽やかな作品である。 花火果て闇の重たくなりにけり 加藤 美保 「花火」に「闇」のことが詠まれることはよくあるが、掲句は「闇」にのみ注目しそれを「重たくなりにけり」としたところにこの句の良さがある。「闇」に重さなどあるはずはないが、華やかなあとの空虚さが作者の心にそう感じさせたのである。 夏座布団揃へて母は逝きにけり 永島 典男 生前の母上の生き方が見えるようで胸が痛む。最後迄子供達に少しでも迷惑をかけないようにしようという思いからである。軽い表現の中に秘められた作者の思いは非常に重い。慎んで哀悼の意を表すると共に、このような佳句を残された作者にエールを送りたい。 鍬の柄をつかみて蜻蛉生れけり 貞広 晃平 水中で生れた「蜻蛉」の卵はやごとなり最後の脱皮をする為に畑へ上がってきた。その場所が「鍬の柄」であり、しかもそれを「つかみて」と表現したところに作者の目がある。 |
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