最終更新日(Update)'16.06.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 塩野 昌治 |
「口 笛」(作品) 白岩 敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 西村ゆうき 、鈴木喜久栄 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 古川 松枝 、五十嵐藤重 ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(磐 田) 塩野 昌治 |
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馬防柵でで虫角を立ててをり 高田 茂子 麦秋の空へ両手を伸ばしけり 斎藤 文子 板前の閉店話夏の雨 大石 正美 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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万 愚 節 坂本タカ女 思ひおもひ咲いて睦まじ福寿草 膝入るのみの小机水仙花 草臥れてゐる手袋と帽子かな 尾を振つてゐて吠ゆる犬草萌ゆる 早朝の肩を寄せ合ひ蕗の薹 万愚節手作り麺麭を小包に 芽の出づる合掌をして黄水仙 春愁や重きピアノの蓋あくる 涅槃絵図 鈴木三都夫 一山の嫋々として涅槃西風 須弥壇を隠し余せし涅槃絵図 衆生みな哭いて声なき涅槃絵図 鶴林に薬袋掛かる涅槃絵図 涅槃絵に遠く侍りて衆生われ 御詠歌の鈴の音揃ふ涅槃堂 間に合ひし鬼も平伏す涅槃絵図 涅槃絵に猫の居らざることの故 囀 る 山根仙花 椿落ち思ひ思ひに地を飾る 地虫出て大地に影を引きにけり 分校の子等の大声山笑ふ 流るとも見えず流るる春の川 薬屋に貰ひし花の種を蒔く 高き樹の高きに見えて囀れり 囀りの真下見上げて通りけり 口笛をもて囀りに応へけり 香 煙 安食彰彦 香煙の満ち一片の花散らす 落花はげし最後の喝の声太し 陶房の屋根をこしたる山桜 更紗木瓜咲いて小庭の入日どき 昨日けふ木の芽の眩し小庭かな 草青むつはものどもの五輪塔 若き人小さき蜆を売りにきし 囀りのふと終唱となりにけり 牡丹の芽 村上尚子 さへづりのまつ只中に目覚めけり 残雪や点して小さきヒュッテの灯 正文忌過ぎ紅梅の揃ひけり 塔頭の影のきてゐる牡丹の芽 アルプスのはだかる村の苗木市 たんぽぽの野に運びくる譜面台 桃の花遠山雲を被きけり 鳥雲に入る金堂の棟瓦 天地返し 小浜史都女 子どもらに土管切株初桜 天山の水が気をあぐさくらかな 宝前の幟のきしむ養花天 千本のさくらに雨のぽつぽつり 武家屋敷通りに適ふ落椿 早蕨の五、六本とはうれしやな 金瘡小草徐福のゆきし道たどる 山笑ひ天地返しも終りけり 国 来 岬 小林梨花 はるばると封書の届く雪解水 さんさんと背戸に差し込む春日かな 生還の我を励ます初音かな 待望の句集の届く花の頃 雲仙躑躅薄ら日返す狭庭かな 濡れ色の空を自在に初燕 今年又今年の花を愛でにけり 老鴬の声いづこより国来岬 |
棕 櫚 縄 鶴見一石子 沈丁花米粒の紅弾けたる 雨一夜銀の裘辛夷咲く 大欅天に嘯き木の芽張る 雑木山右に左に囀れり 棕櫚縄にふくます水や垣手入れ 良寛の庵仔を呼ぶ草朧 雪柳ゆきの重さに自負ゆらぐ 花冷えの虚ろな心師如何に 花 の 雨 渡邉春枝 地下道を出づ地虫穴出づるごと 湖を抱きて山の芽吹き初む 初蝶に蹤きつ蹤かれつ湖畔径 凭れあふ放置自転車花の雨 ニュートンのりんごの新芽ゆらす風 音もなく水の動ける蝌蚪の紐 キャンバスに石棺のありこぶし咲く 飛ぶ鳥の光となりて春深し 薪 棚 渥美絹代 紅梅の散り込む畑に火を焚ける 初蝶や手押しポンプに呼び水し 墓山の裾にほほけし蕗のたう 蝶生る体の芯に熱ある日 春風や口元ゆがむ大き壺 サーカスの旗春の雲ほどけゆく 永き日の一字うづもる道しるべ すこしづつ傾ぐ薪棚春深し 白 鳥 今井星女 白鳥が来してふ便りふところに 白鳥と目と目の合ひし嬉しさよ 産毛まだ残りしスワン迎へけり 戯れに尾羽根噛み合ふスワンかな はばたける大白鳥の威厳かな 茜さす湖に白鳥輝けり 白鳥に一期一会の思ひあり 白鳥を見し高ぶりの一と夜かな 紙飛行機 金田野歩女 句碑の森春の堅雪真直ぐに 山笑ふ負けず嫌ひの次男坊 引鴨の沼がらんどう小糠雨 段畑を巧みに動く耕耘機 片面を焦がしてしまふ鰊かな 朝霞しはがれてゐるこけこつこう ニアミスの紙飛行機や春の空 陽の差して山葵田の水黄金色 花 寺澤朝子 そこはかと唐墨匂ふ桜の夜 ゆたゆたと猫がよぎりぬ花の墓地 飛花落花次の風待つカメラマン 飛花舞うて墓地のはづれの小公園 恍惚といふこと子にも花吹雪 またの日は猫もお客に花筵 椿寿忌の落花とどまること知らず 散る桜惜しみいのちを惜しむかな |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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春 霞 宇賀神 尚雄 暮れ残る日を惜しむかに黄水仙 三月の雨やはらかく雑木山 啓蟄や終日走る耕運機 頬撫づる風暖かし姿川 筑波山麓畝千条の春霞 花万朶父母の知らざる世に生きて 春 の 雨 佐藤 升子 一対の左にかしぐ女雛かな みづうみに雲置き鴨の帰りけり てのひらに顎の重さや春の雨 春日や付箋の色を使ひきり レコードのくぐもる音や春の月 昼よりは雲切れてきし桜かな 花 筏 出口 廣志 鳥引いて湖面虚ろに広ごれり 啓蟄や一鍬毎の地の匂ひ 角落とす鹿とぼとぼと二月堂 今もなほ春愁秘むる阿修羅像 母の忌や門川を往く花筏 風車時折回り大儀さう おしやべり 星 揚子 おしやべりも日課の一つ黄水仙 三月の雀光の砂浴びて 春の昼ホースの先を舐むる猫 あたたかや発声稽古あえいおう 花びらは光の重さ桜散る ふるふると出で来る稚児のしやぼん玉 春 愁 本杉 郁代 居並べる彼岸の僧の足袋真白 春愁やまだ捨てられぬ夫のもの 喜寿の春校歌で締むるクラス会 絡まれる蔓にも芽吹き始まりぬ 夫の忌の近づいてくる桜かな 久闊の友と出会ひし花の道 春 の 泥 渡部 美知子 優勝旗受くる両手に春の泥 春の夜や明かりの揺るる予約席 春の炉の火種くすぶる朝かな 菜の花や少し甘めのミルクティー 春の日にきらり白寿のイヤリング 春燈や話の尽きぬ三姉妹 水 温 む 荒井 孝子 突然の廃業通知鳥曇 梯子より地下足袋ぬつと剪定夫 途切れなき剪定の音塀越しに 高空へ懸かる大橋水温む 蒼穹の風の自在に川柳 風荒き芽立ちの中の峠茶屋 |
閉 校 式 生馬 明子 はやり風邪小児科に鳴る鳩時計 薔薇の芽のま青な空へほどけゆく 川音に芽吹きを急ぐ峡の木々 菩提寺の墓地の坂道椿落つ 風固き空に佐保姫来てをりぬ 閉校式の校歌流るる花の昼 逃 げ 水 鈴木 百合子 啓蟄の日を浴び母の退院す 法要の香炉のまはる木の芽風 ひとあめに万の芽吹きとなりにけり 逃げ水に追ひ付くことのなかりけり 水底に絵文字のやうな蜷の道 あとがきをまづは繰りたる朧の夜 惜 春 挾間 敏子 子を発たす朝遠山の花辛夷 春水のふくれふくれて岩を越す 花散るや退職教師囲む輪に 万葉碑そびらに鞆のさより干す ひと日花に酔ひて吉野の坊泊り 百年の銀杏の芽吹き廃校舎 桜 東 風 平間 純一 日に向ひて笑うてをりぬクロッカス 人恋ひの瞳のうるむ春の駒 ころころと寄する馬糞や地虫出づ 蕗のたう水音だけが聞えくる 名残雪木槌の遺る樽師小屋 注目の新人来る桜東風 落 し 角 松本 光子 啓蟄や迷うて路地の行き止まり 風光る揺るる真珠のイヤリング 啓蟄や鴉が小枝銜へ飛ぶ 小緩鶏に誘はれ登る古戦場 初蝶の空濠越ゆる躊躇なく 食み跡のしるき杣山落し角 桜 餅 弓場 忠義 包まれて美しきもの桜餅 春筍を貰ふ荒布を買ひにゆく てふてふを風が攫つてゆきにけり 山吹を濡らす峠の狐雨 接骨木の花石臼の伏せてあり 朝ごとの花見る窓の薄埃 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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西村 ゆうき ふと一羽発ちて百羽の鴨帰る 鈴木 喜久栄 草萌ゆるダックスフントの足せはし |
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湯に開くとろろ昆布や花の昼 花吹雪かかとの高き靴が行く 菜の花や赤子の眠る乳母車 径の辺にひらくままごと春休み 芋植うる子等食べ盛り伸び盛り 表札の二枚を壁に木の芽風 永き日を終へ食洗器のスイッチ押す 雪しづり蝦夷栗鼠枝を移りけり 瀬戸の海春の夕日を呑み込めり あたたかやじやんけんぽんで鬼となり 金雀枝のあふるる色をくくりけり 春蘭や飛行機雲の折り返す スイートピー美容室で読む文庫本 駒返る草に降り来る雀かな 咲き満ちて夕べしづかな桜かな |
髙島 文江 金原 恵子 鳥越 千波 陶山 京子 大滝 久江 田原 桂子 寺本 喜徳 吉田 智子 米沢 操 三谷 誠司 松下 葉子 新開 幸子 市川 節子 松本 義久 鎗田さやか |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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牧之原 古川 松枝
草萌ゆる小夜の中山西行忌 宇都宮 五十嵐 藤重 燭の灯に僧の貌出て涅槃かな |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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草萌ゆる小夜の中山西行忌 古川 松枝 〈年たけてまた越ゆべしと思ひきやいのちなりけり小夜の中山〉は六十九歳で小夜の中山を越えた西行法師(一一一八~一一九〇)の歌である。西行の忌日は陰暦二月十五日。 菜の花に双子の帽子一つ消ゆ 五十嵐藤重 一面に咲きみちた菜の花。そのなかを仲の良い双子の姉妹が愉しそうに歩いている。或いは、跳び跳ねて遊んでいるのか。突然、帽子の一つが消えて見えなくなった…。このあとの展開は読者の想像に任せられている。普通なら、「帽子一つの見え隠れ」と終わるところだが、その一歩手前で踏みとどまっている。その余韻が読む人を楽しませる。 花種を蒔きてより日の新たなる 青木いく代 ていねいに土を起こし、肥料もたっぷりと施す。そして、花種を蒔き、名札を立てる。これからはひたすらに待つ日となる。芽が出て大きくなり、蕾が花となる。日常の生活に「待つ」という楽しい日々が新たに加わった。ものを育てる喜びと満足感。 春日傘手桶の水の揺れてをり 森下美紀子 寒さも遠のいて、ようやく春が整ってきた彼岸の中日。墓参りに行く女性なのであろう。墓への道すがら知った人と会うごとに、春日傘を傾けて挨拶をしている。そのたびに持っている手桶の水が揺れる。 転居六度終の住処を賜ふ春 佐藤 勲 〈春昼の津波壁なす六丈余 勲〉が平成二十三年八月号の「白魚火秀句」に載った。平成二十三年三月十一日の東日本大震災による津波のときの句。「白魚火」への消息では罹災当時は生家に、その後は避難所、そしてアパートに移転し、五月には仮設住宅に入居とある。 三月や少年急に大人びて 髙島 文江 三月といえば卒業のシーズンである。この少年は小学校を卒業したばかりなのであろう。まだ子供々々していて、道で会っても恥ずかしそうに挨拶していたものだが、今日はしっかりと挨拶を返してくれた。背丈も少し伸びたようだ。大人へと一歩近づいた少年の成長への驚きと喜びが「大人びて」である。 制服をしつかりたたみ卒業す 市川 泰恵 いつもは親に甘えてばかりで、後片付けも親任せであった。今日、卒業式を終えて帰って来ると、もう着ることのない制服をきっちりと畳んでいる。学校生活で世話になった制服への愛着と感謝。さまざまな思い出の籠もった制服への最後の挨拶である。 芹の根の深きに姿勢少し変ふ 中村 早苗 芹はそんなに抜きにくいものではない。大抵はすーと抜ける。しかし、今日はどうしたことか、深い根の抵抗にあってしまった。いつもはたやすく出来ることが、何かの拍子に狂ってしまうことがある。こんな「おや」と思った経験は誰にでもある。仁尾先生は「「おや」と思ったり「はっ」としたことは句作によい材料になる」と教えられた。これがその句。 草に寝て鳥声を聞く秋の暮 金本 静磨 作者はブラジルで農業と牧畜を営んでいる。ブラジルは乾期と雨期があり、日本とは季節が逆となっている。
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