最終更新日(Update)'16.07.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 田口 耕 |
「西 施」(作品) 白岩 敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 阿部芙美子 、根本 敦子 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 中村 國司 、西村ゆうき ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(島 根) 田口 耕 |
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父の日や軍事郵便出して読む 大庭 南子 (平成二十七年九月号 白光集より) 出征された父上からのお手紙。そこには懐かしい父上の字がある。そして、たくましく誠実に生きよと優しく諭す面影が浮かんでくる。電子メールで事済ます時代だが、自筆の手紙の力は時を経るにつれ、その重みを増す。この句の場合は、軍事郵便なので尚更である。 私も久しぶりに父の手紙を読んだ。学生時代、連絡もろくにせず帰省もしない息子を穏やかに諭す文面だった。今は私が同様に、わが息子をたしなめている。ようやく父の有り難さ、思いが分かるようになった。 父偲ぶ父の日の佳句だと思う。 黒南風の真つ只中の礼文島 河島 美苑 古池の句碑へ風来る若楓 萩原 一志 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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独 り 言 坂本タカ女 襟巻に聞かれてしまふ独り言 羽繕ひする白鳥の羽搏きて 近づいてみし岸鴨に背かれし 水蹴つて発つ白鳥の北帰かな 餌をくるる人を知りをり残り鴨 きさらぎや猫の睦める羊小屋 鼻寄せて甘ゆる羊春浅し 昇りくる折りからの月猫の恋 蓮 浮 葉 鈴木三都夫 梅が散る去る者疎くなりにけり 囀りの始まつてゐる法の山 あたたかや仏足石に足重ね 山門も白木蓮も寺格かな 宝前に散る白木蓮は手で拾ふ 臆病に花芽を挙げしほくりかな 小走りに消えたる雉子の羽根の色 蓮浮葉はなればなれの真つ平ら 葉 桜 山根仙花 葉桜の影の騒げる石畳 葉桜の濃き影を踏み磴のぼる 葉桜の影に向き合ふ椅子二つ 葉桜の土手お喋りの少女ゆく ここからは坂となる道金鳳花 大空は広しと競ふ松の芯 葱坊主惚けてをりし海士の畑 水張つて重き代田となりにけり 冷 奴 安食彰彦 大庄屋跡はそのままさみだるる 風薫る出雲の王の墓に佇つ 好漢の泡盛を提げ来りけり 何時しかに酒の肴は冷奴 老僧は辞退したまふ冷し酒 夏座敷良寛様のいろは歌 副知事にすすめられたる肥後焼酎 編集を終へてくつろぐ籐寝椅子 夕 霞 村上尚子 春の夢骨やはらかく目覚めけり 岬への道はまつすぐ花菜風 窓開けて琴運ばるる花の昼 おにぎりの中身見せ合ふ花筵 夜桜やへぎに張り付くごはん粒 桜蘂ふる軒下に祢宜の沓 花海棠十字架に日の定まりぬ 夕霞てまりほどなる山を置き 余 震 小浜史都女 散るときの大きくなりぬ桜の木 熊本に長男二男春の地震 野苺の花のまぶしき地震のあと 余震なほ八重の桜も終りけり やはらかきけふの海風種下し 踏まれたる後を踏みゆくさくらしべ 蕨狩穴場誰もが知つてをり 落ちてきて雲雀の空でなくなりし 朧 夜 小林梨花 あかときの背山迫りて匂ひ鳥 華鬘草古墳の裾の日溜りに 蜆蝶草におぼれて了ひけり 熊蜂や花粉まみれになつてゐし 卒業生旅の土産を送りくれ はじめてのネクタイ姿進学生 春深しちちははの忌を修し終ふ 朧夜や先師の句集読み返す |
護 符 鶴見一石子 白鷺の舞ふ御社の護符もとめ 板室街道右に左に小判草 水音の聞ゆる里のほととぎす 狩人の里を守りし蟇 人見えぬ猟人の里遠郭公 晩節は神を頼りや青葉木菟 那須岳の高き空より夏きざす 合はす手の一日尊し菖蒲の湯 緑 立 つ 渡邉春枝 春風を袂に若き月忌僧 空海の悟りの岩屋緑立つ 遠足の女先生声高に 子供らのジャンケンポンに蝶の舞ふ 燕来し日をまづ記す農日記 農継がぬ子も帰りくるみどりの日 樹の洞を風の抜けゆく立夏かな 葉桜や閉店近き百貨店 蜜 蜂 渥美絹代 錆の出し塩の看板燕来る 筒切りの丸太くりぬき蜂を飼ふ 墓山の裾に蜂飼ふ箱を置く 別荘の庭に蕨の長けてをり かげろふやサーカス小屋を解きしあと 桜蘂降る風呂桶のよく乾き 笑ふやうに鳴く鳥春の更けにけり ゆく春の雨の浸みゆく土橋かな 啄 木 忌 今井星女 達筆な啄木日記春隣 守らるる啄木位牌彼岸寺 啄木忌立待岬に人集ふ 鳥雲に啄木像は海に向く 今日ここに啄木百年忌を修す 啄木の歌口ずさみ忌を修す 啄木の墓に止まりし春鷗 啄木忌蝦夷の桜はまだ咲かず 双 子 金田野歩女 落雲雀廃線跡に見失ふ 春耕の芥焼くこと手始めに あさがほの苗札の文字覚えたて 耕人と目礼交はす棚田かな 花の香や予後の夫の深呼吸 小鉢より生命溢るる桜草 花吹雪駆けつこ僅差の双子なり 夕郭公畝真つ直ぐに麓まで 応 援 歌 寺澤朝子 逍遙す三四郎池のかきつばた 東大の応援特訓五月来る 宙に舞ふバトンに汗のチアガール 青嵐スクラム組んで応援歌 銀杏若葉明日は東大立教戦 青春といふ唯中や新樹燃ゆ 夏落葉散るちる本郷通りかな 学びの燈遥かとなりぬ水中花 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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夏 椿 桧林 ひろ子 囀に散歩の足をゆるめけり 花人となる日の髪を染めにけり せせらぎを来て組み直す花筏 風薫る母の匂ひの紺絣 人声はテレビでありし明け易き 終日が一世の命夏椿 蝿 生 る 武永 江邨 天窓の温みをつかみ蝿生る ぐつすりと眠り五月の朝迎ふ 存分に葉桜雨を吸ひ込めり 葉桜にひねもす止まぬ嵐かな 若葉風入れて始まる法話かな 雲の峰かくも小さき吾が拳 花 辛 夷 福村 ミサ子 真直ぐに走る畦火は叩かれず 飾るより手間を掛けをり雛納 一斉に村動き出す花辛夷 穴を出し蛇や迂回の道しるべ おぼろ夜の桶に呟く二枚貝 海に出て山を見てをり春惜しむ 躑 躅 山 松田 千世子 東に富士を仰げる躑躅山 躑躅山眼細むる偉人像 躑躅祭雨となりたりにべもなく 豆腐屋の笛の過ぎゆく茶摘時 幸せを乘せて大きな鯉幟 薫風や老いても唄ふ応援歌 春 の 渚 三島 玉絵 新緑の海風届く海士の寺 砂払ひ春の渚の貝拾ふ 瓔珞の翳春愁を深くせり 拾ひ若布一笊干され庫裡は留守 釣人の狙ひの鰆まだ釣れず 湖をひつくり返す春疾風 春 の 山 織田 美智子 ちかぢかと送電線や春の山 若き日の父母の写真や春灯下 持ち寄りしもののいろいろ花筵 借りてさす傘の小振りや花の雨 花吹雪野点の席へ及びけり 春昼のどこかで電話鳴つてをり 蝶 上村 均 青空へもつれてのぼる蝶黄なり 若芝をついばむ鳩に雨兆す 汐風に川草なびく初燕 春光の売地を鉄鎖囲むなり もくもくと遠嶺に雲が葱坊主 自転車を漕ぐや連山春深し 甘茶受く 加茂 都紀女 虚子門の僧が甘茶を足しに来る 刀匠の菜切庖丁風光る 土牢の幣の湿りも菜種梅雨 錨草吉田松陰留置の碑 孫弟子と告げ寿福寺の甘茶受く 土牢の磴に竿指す浦島草 |
八 重 桜 関口 都亦絵 ロープウエーぐらりと発てり山笑ふ 引鴨のたちてさみしき渡舟跡 八重桜麻痺の諸手に余る房 尼寺の伽羅の香かすか夕桜 うす墨の先師の茶掛風薫る 煤けたる大黒柱武具飾る 白たんぽぽ 梶川 裕子 冴返る遺品となりし広辞苑 来し方を子に語りゐる雛納め 白たんぽぽ少女の前歯ひとつ欠け 前略と書き子雀を見てをりぬ 花菜漬今宵の酒は酔ひやすし 畑尻は湖に展けて葱の花 葱 坊 主 金井 秀穂 他愛なく終に耄くるチューリップ 見納めの覗き窓閉づ花の昼 しつとりと春満月の夜の更くる 小綬鶏の呼び声に合ふ歩調かな 葱箱の中のやんちやな葱坊主 藤棚に翅音のこもる団子蜂 落 花 坂下 昇子 しばらくは落花の行方追ひにけり 雪洞の中に落花の二三片 少し間を置きて落花のひとしきり 囀や明るくなりし雑木山 釣れぬまま日暮となりぬ浦島草 筍を斜めに包む新聞紙 大根の花 二宮 てつ郎 風の中大根の花風の中 春愁の岬の山に雲一つ 紫荊終りぬ葬の一つあり 水槽に日の弾けをり葱坊主 ひとり居れば山吹の散り尽しけり 行く春の指に提げたるレジ袋 鳴 き 竜 野沢 建代 回廊に午後の日のあり百千鳥 釘隠しに菊の御紋や昭和の日 蹲踞の杓の濡れをり藤の花 鳴き竜を鳴かせて春を惜しみけり 御簾越しの燭の揺らぎも夏近し 著莪の花咲き継ぐ寺の結界地 花の冷え 星田 一草 小さきもの引つ張り合つて春の蟻 初蝶の草に躓きつつ飛べり 掌に受くる一片花の冷え すかんぽや少年棒を振りたがる 東京は鈍行の距離目借り時 土塊の傾ぎしままになづな咲く 若葉照り 奥田 積 代金を地べたに研師つばめ来る 四月から始まる手帳風光る 新しき表札かかる花かへで 図書館の庭をうめたる桜しべ 体感の余震いくたび花蘇枋 手の甲にサインの跡や若葉照り |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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阿部 芙美子 甘すぎるのど飴一つ四月馬鹿 根本 敦子 四方より雪解の水の集まり来 |
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北国の五月音たて動き出す 前掛を外し誕生仏拝す 青嵐鏝絵の鶴を発たせけり 後ろ手に宮司の歩む花の下 七階の軒に親子の鯉のぼり 貝殻を拾ひて春の砂こぼす 花筏風に吹かれて戻りくる 棟上げのフォークリフトや風光る 茹で白子笊を叩いて仕上がりぬ 老犬に任す行く先花水木 鯉高く跳ね春の闇ほぐれけり 小楢の芽夕月白く懸かりけり 花祭はち切れさうな稚児の頬谷 絵日記の鉛筆五色うららけし 風薫る雲太の白き大鳥居 |
吉野すみれ 植田美佐子 岡 あさ乃 谷口 泰子 柿沢 好治 江⻆トモ子 和田 洋子 大澄 滋世 清水 純子 中嶋 清子 村上千柄子 鎗田さやか 田部シツイ 石田 千穂 須藤 靖子 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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鹿 沼 中村 國司
柳絮飛ぶ川原に馴染む禍の芥 鳥 取 西村 ゆうき 春蝉へ潮騒やはらかく届く |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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初蝶の紆余のその先津波の碑 中村 國司 東日本大震災による津波から五年が経った。掲句の蝶は生まれてもおらず、知りもしなかったであろう。それでも風に逆らいつつ、不安定な飛び方で津波の碑へ向かっている。 乗車券持てば旅人春コート 西村ゆうき 「ふらんすへ行きたしと思えども/ふらんすはあまりに遠し/せめては新しき背広をきて/きままなる旅にいでてみん…」(「旅上」 萩原朔太郎)。詩はこの後、汽車が山道をゆくときと続く。 日暮きて水口に置く余り苗 上松 陽子 「日暮来て」とあるから、一日で田植えが終わらなかったのだろうか。普通は田植えが終わって、その余り苗を水口に置くことが多い。浮き苗などの補植に使うためである。 田植機の進む方へと子の駆くる 川本すみ江 一家総出の田植えなのであろう。よく手入れされた田植機の機嫌も上々。調子のよい音に苗を植えていく。農道を田植機と並行して子がはしゃぎながら走っている。かつては子どもは苗運びを手伝わされたが、今はピクニックのようなものかも知れない。田にのびていく緑の線と子の声。健康な家族の明るい田植えである。 吊り橋を渡る少年ホトトギス 計田 芳樹 足下には清流が岩を嚙んで流れ、目がくらみそうな高い吊り橋。そんな吊り橋を少年が物怖じもせず渡っていく。 咲き満ちて花天井となりにけり 古川 松枝 余程の大樹なのであろう。青空を隠すほどに枝を広げて咲き満ちている桜。豪快な咲きぶりである。 入園児母の顔見て並びたる 天倉 明代 入園式での情景。喜び勇んで園まで来た子どもだが、いざ、入園式に臨むとそわそわして、母親を探している。 長靴の村の漢の花の宴 三谷 誠司 桜見の場所は村の近くなのであろう。だから、農作業を終えた長靴のままで、一席を設けたところ。漢たちの話題は花より団子か農作物の出来具合のことか。 一月は去ぬ、二月は逃げる、三月は去ると時の移ろいはまことに速い。桜だ、花見だと騒いで居る間に残花となっている。特に楽しい春は過ぎ去りやすいもの。「夕陽ぐんぐん沈みけり」が春が去ってゆく速さを暗示している。 |
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