最終更新日(Update)'16.04.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 牧野 邦子 |
「灯台の影」(作品) 白岩敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 塩野 昌治 、田口 耕 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 早川 俊久、田口 耕 ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(出 雲) 牧野 邦子 |
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つばくろに一碧の空明け渡す 西村ゆうき 春泥を持ち帰りたる十三文 田口三千女 八十はお洒落でゆかう春ショール 寺澤 朝子 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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風 花 坂本タカ女 外の空気吸ひたし雪を掻きに出づ 石塊めく日暮の岸の鴨の群 鴨動かざり退屈な双眼鏡 海老籠漁の太き纜雪の上 寒釣に声かけてみし後ろから 風花や乗馬を復習ひゐる少女 雪降つてくる酒蔵の暗くなる 声のして見えざる鴉雪の宮 十 二 月 鈴木三都夫 参磴に降りし木の実は踏むまじく 無器量なことも愛嬌榠樝の実 黐の実の一房ごとのつぶらかな 茶の花を弾き飛ばして化粧刈り 鴨寄り来話しかけたき近さまで 生きてゐることを挙りて冬木の芽 一つ消し一つ足すメモ十二月 お賓頭盧撫して今年の厄落す 大 寒 山根仙花 屠蘇注いで注がれて二人暮しかな 火と水を豊かに俎始めかな 灯の下に金粉浮かぶ雑煮椀 鳶の輪の真下広ごる初山河 寒禽の四、五羽の声の飛び去りぬ 大寒の水真つ直ぐに喉を越す 大寒の廊一塵もなく長し 雲飛んで大斐川野の麦青む 立 春 安食彰彦 立春の鳶久し振り輪を画いて 兄弟の大刀の素振りや春立つ日 風の音風の途絶えて牡丹雪 牡丹雪いつしか音もなく止みぬ 春めきて佇つ雲水の影法師 便り来ぬ冴えかへりたる二三日 庭石も程良く濡るる梅屋敷 先輩の句集を閉ぢて草の餅 ど か 雪 青木華都子 鳥渡る一気に五、六、七十羽 あの森の森の奥へと鳥渡る 新蕎麦を打つや三十五人分 通り抜け出来ない雪のいろは坂 どか雪となりたる日光輪王寺 湖のひだまりが好き浮寝鴨 昨日今日明日あさつても止まぬ雪 あそこへもあのお宅へも大根抜く 若 菜 摘 村上尚子 さつと日が差して峠の冬もみぢ 若菜摘あやしきものが混りをり 冬川へ向く麹屋の勝手口 冬鴎みな風上に胸を向け 潔斎の口すすぎけり冬の梅 寒泳の一気に水を破りけり 日の当たる広野に枯の音ひろふ やはらかき椅子の背もたれ日脚伸ぶ 雪見障子 小浜史都女 大粒の星のまたたき雪来るか 午後からは吹雪となりし七七忌 天山に四度目の雪稿をつぐ 雪の葱雪の大根引いてきし 雪達磨子がつくらねばつくりけり 雪国にゐるかとおもふ目覚めかな 雪掻きをして雪国の日々おもふ わが畑に雪ある雪見障子かな |
春めきて 小林梨花 朝まだき背山にちちと笹鳴けり ことごとく風雨に折るる野水仙 大空へ飛沫を上げて寒怒涛 大寒の厨いつぱい煮〆の香 北窓を開き吸ひ込む山の風 縁側に差し込む日差し春めきて 花片のごと舞ひ落つる春の雪 盆栽の松葉の上の忘れ雪 心 の 箍 鶴見一石子 生き甲斐を大地にもとめ冬帽子 木株に百の年輪日脚伸ぶ 気ぶくれて心の箍のゆるみたる 足腰の甚さわすれし寒夕焼 福島と背中あはせの山に雪 干し蒲団叩くは明日を生くるため 地表から一筆の金福寿草 白梅や雨情旧居の硯塚 日脚伸ぶ 渡邉春枝 笹鳴や真下にのぞむ海の青 寒潮や三分ほどの渡し舟 息とめて掌に受く雪螢 深呼吸して寒林に歩をのばす 日脚伸ぶ本屋にめくる旅の本 一鳥の一声高き寒の明 神域に千本の松春立てり 黄水仙母の着物の截ちがたく 初 糶 渥美絹代 先生の墓訪ふ冬のいわし雲 門杉を立てて日和の続きけり 大榾のくすぶつてゐる夕日かな 榾の火をつつく神事を終へし禰宜 初糶の丸太の木口紅にじむ 一年の担任がまづ流行風邪 寒波来る川のま中に杭打てば 春を待つ畝十本を高くたて 書 初 会 今井星女 書初会幼稚園児も加はりて 書初会大中小と筆並ぶ 書初会大きな筆が手に余る 書初会元気がよいとほめらるる 書初や文字はみだして誉めらるる 同じ字を楷書行書と筆始 威勢よく撥ねて抑へて筆始 書初会終りて汁粉ふるまへり 鷲 掴 み 金田野歩女 鷲の爪湖より真鯉鷲掴み カメラマン雪に膝付く秘境駅 波の花戸板の軋む空き番屋 初詣絵馬を食み出す願ひ事 縫初や色糸変へて布巾刺す ひもす鳥北見十日もからしばれ 校庭に鶴も来てゐる三学期 回覧板足止めさるる猛吹雪 ポニーに春 寺澤朝子 浅草へ詣づる寒紅淡くひき 尋ね石撫ぜて浅草四温晴れ 原節子悼む一輪寒椿 春待てりポニーの「きらら」もわたくしも 受験合格子にねぎらひのチョコレート 鞍置かれポニーに春のやつて来し 日向より花ほころびぬ梅の園 恋ひ渡る山河遥かや夜の梅 |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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一 月 二宮 てつ郎 時雨るるや氏名年齢記入欄 昼前に上りたる雨寒の入 昼を臥し七種の日の風を聞く 開け閉てに過ぎたる一月の日数 冬草や日向はいつも昔色 待合室寒九の雨となりし窓 鴛鴦を見に 野沢 建代 すれ違ひできぬ道幅鴛鴦を見に 先客に目礼をして鴛鴦を見る 強霜の畑に薬味をとりに出る 国道に犬飛び出せり猟期中 耕しのすむ田すまぬ田千枚田 春遅々として水音のかすかなる 落 暉 星田 一草 竹林の微動だにせぬ淑気かな 一月の子規球場に打球音 枯蓮の水漬きて水に還りゆく 流木の重なる河原水涸るる 影に影重ね明るき冬木立 落暉いまどつと湧きくる寒さかな 酒都西条 奥田 積 七十路の半ばを越えぬ冬いちご もう汲まぬ井戸に小さき注連飾 仕込水音たて溢る寒の入り 竹爆ぜて三戸の村の飾焚き 薬壺持つ仏の額雪の舞ふ 大寒の火の見櫓に時報塔 平和の火 源 伸枝 凍空へ揺らぎてやまぬ平和の火 稜線を流るる雲や日脚伸ぶ 切傷に鮮血にじむ寒さかな 振つて見る猿の土鈴や春近し 星屑のまたたき合うて春立てり 早春の日差しに吊す旅衣 薄 氷 横田 じゅんこ トランプの絵札の兵士建国日 書き出しに手間どる稿や春寒し 藁一本銜へてをりぬ薄氷 くれなゐを尽して椿落ちにけり 木瓜紅しポストに小さき南京錠 小さき牙見せて子猫の欠伸かな 俎 始 浅野 数方 ほどほどの暮し俎始かな ふはふはの命の欠伸大旦 物忘れ笑ひ飛ばしてお元日 左義長の火の粉集まる座禅石 背伸びして結ぶ大吉寒晴るる 息弾む朝の体操寒玉子 読 初 池田 都瑠女 読初は机辺に置きたる師の句集 スーパーの七草買うて分ちあふ 野水仙眼下に原発三号機 口中に飴あそばせて雪野行く 春浅し失せ物さがす小半時 沈丁の丸く刈られて花ふゆる |
雪 籠 大石 ひろ女 一の宮二の宮日脚伸びにけり 確かなる心音を聞く雪の夜 何もなき机上明るき雪籠 たましひのよりどころなく雪しまく 左義長の火のまつすぐに神の杜 万屋の昭和の匂ひ梅ふふむ 夢は模糊 奥木 温子 初御空懸巣の落す羽の色 宝舟枕を外れ夢は模糊 寒いほど清清しい香花柊 爪先ほどの繭玉を吊り町役場 一人居の家を覗いて雪女 縫初は手術用意の褌かな 浜 防 風 辻 すみよ 磯をせせりて小走りの千鳥かな 蕗の薹見付けてよりの寒さかな 梅一輪解れて雨のあたたかし 防風の一茎覗く砂の上 まだ摘むに惜しき防風ばかりかな 藪椿落ちて華やぐ屋敷神 冬ざるる 西村 松子 蘆原の底ゆく水音冬ざるる 昏れてゆく手もと足もと年詰まる 池普請蓮の根に日の差してをり 風花やもの言ひたげな埴輪の目 清め塩撒きてはじまるとんど焚 雪しんしん心音調子よく鳴れり 凍 狂 ひ 森山 暢子 鴛鴦を見し夜の読経ねむごろに 年用意燐寸一箱買ふことも 宵ひそと飾焚きをる宮司かな 冬ごもり魚籠の破れを繕ひぬ 寒禽の尾が波除けを叩きけり 溶接の青き火影や凍狂ひ 春 隣 柴山 要作 一山を響動もす護摩の初太鼓 初春の日のほつこりと一都句碑 一月のどこか華やぐ疎林かな けらつつく音寒林を走りけり 寒凪の畦這ふ天道虫だまし 蝮谷にも届く午下の日春隣 寒 の 水 竹元 抽彩 冬ざれや石塊となる田神様 指浸けて鳥肌の立つ寒の水 電線を奏づる夜半の虎落笛 寒卵飲めばつるりと胃に走る 雪女玻璃戸を覗く厚化粧 室咲きの春を先取る風信子 |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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塩野 昌治 初詣末社の鈴を鳴らしけり 田口 耕 朝飯に母のぬくむる煮大根 |
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マーカーの朱色を選ぶ寒の明け 星満ちてより臘梅のかをり増す 梅一輪二輪子宝祈願絵馬 四時を打つぜんまい時計春隣 やはらかく炊きたる煮物雪催 門前の売り子の声に春動く 冬枯の物の中より水の音 耳かきの小さなくぼみ春浅し 筑波嶺に雲を集めて風二月 午前五時四十六分阪神忌 雪しまく峡の一戸の見え隠れ 直角に曲る急流ねこやなぎ 大寒に生れ谺の若々し 外灯の光の中の吹雪かな 公園の静けさに梅咲きにけり |
吉田 美鈴 西村ゆうき 小松みち女 鈴木けい子 髙島 文江 中野 元子 佐野 栄子 石田 博人 若林 光一 高田 喜代 福間 弘子 陶山 京子 花木 研二 山羽 法子 江角眞佐子 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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浜 松 早川 俊久
卒寿には卒寿の未来年明くる 島 根 田口 耕 落葉かく四十八代守部かな |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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初不動燭継ぎに立つ修行僧 早川 俊久 一月二十八日は初不動の日。堂内には厳かに読経が響く。とその時、つと立ち上がって蝋燭を継ぎ足し、静かに着座した一人の修行僧がいた…。 落葉かく四十八代守部かな 田口 耕 四十八代守部とは隠岐の村上家のことである。承久の変(一二二一)に敗れた後鳥羽上皇に隠岐で公文として奉仕された家柄。当主は代々「助九郎」と名乗り、現当主は四十八代目に当たる。村上家の守ってきた山陵は明治以降は「御火葬塚」と呼ばれる。ここに降り積もった落葉は、都への帰還を望みながら叶わなかった上皇の涙のように思える。 つと入りて旧知のやうな焚火の輪 小村 絹代 「旧知のやうな」とあるから、ゆきずりの焚火の輪だったのだろう。焚火に手をかざしながらの何気ない話が、気の置けない友達のように二人を近づけている。焚火の暖かさのせいだろうか。誰にでも経験がある故に説得力がある。 海女小屋に桶干されゐる女正月 水島 光江 海女といえども年中海に潜っているわけではない。漁の季節以外は海苔や若布を採って生活をしている。今日は、折しも女正月。日頃の忙しさを忘れて、仲間同士でお喋りを楽しんでいる。小屋の外に干されている桶には、今日のための海の幸が入っていたのだろう。海も休み桶も休み。海女さん達のひとときの女正月である。 飛鳥路の畝傍の山の寒椿 池田 都貴 寒い時の旅行はそれなりに辛さもあるが、美しいものに出合ったときの喜びは、またひとしおである。大和三山の一つ、畝傍山に見つけて寒椿の美しさに感動した作者。「の」を重ねながら大きな景を絞っていって、最後に眼前へぬっと寒椿を出現させた。感動の深さがよく現れている。〈梅若葉鞠子の宿のとろろ汁 芭蕉〉や〈みちのくの淋代の浜若布寄す 山口青邨〉などがそれである。 年の賀の僧に齢を励まさる 関 うたの 年賀に来た僧と新年の挨拶が終わると、打ち解けた話となった。普段から親しくしているので遠慮なく年齢のことを聞いてきた。歳のことは言いたくないのだが、正直に答えると、これからもっと長生きをして活躍してくれと激励されてしまった。「励まさる…」の「…」の部分に作者の本音が隠れていそうな句。 履歴書に貼る顔写真春を待つ 栂野 絹子 就職活動に使うのだろうか、就職が内定したのだろうか。「春を待つ」とあるからきっと就職が決まったのだろう。履歴書に貼られた顔写真は若々しく希望に満ちた顔。若者の明るい未来を象徴しているようである。 日脚伸ぶることカーテンを引くたびに 佐藤 洋子 朝夕に開けたり引いたりしているカーテン。朝はいつもの時刻にカーテンをあけるのだが、日はすでに昇っている。閉めるときの空はまだ明るい。その度ごとに日脚が伸びていることに驚かされる。「~伸ぶること~引くたびに」の屈折した表現に日脚が伸びることと春へ近づいていくことへの二重の喜びがある。春はもうすぐそこである。
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