最終更新日(Update)'16.01.01 | |||||||||||||||
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季節の一句 檜林 弘一 |
「田の神」(作品) 白岩敏秀 |
曙集・鳥雲集(一部掲載)坂本タカ女 ほか |
白光集(村上尚子選)(巻頭句のみ掲載) 田口 耕 、中山 雅史 ほか |
白光秀句 村上 尚子 |
白魚火俳句全国大会(東京)参加記 |
白魚火集(白岩敏秀選)(巻頭句のみ掲載) 大隈ひろみ、田口 耕 ほか |
白魚火秀句 白岩 敏秀 |
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季節の一句 |
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(名 張) 檜林 弘一 |
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こざつぱりとして煤逃げの夫帰る 林 浩世 (平成二十七年三月号 白魚火集より) 年末の季題「煤逃げ」は上質なユーモアを含蓄した季題であると思う。掲句は煤逃げをされた?ご主人が帰宅した場面を切取ったものである。そもそも煤逃げはだまって実行するものだが、妻君は急にいなくなったご主人に気付き、多事のなかで怒り心頭であったことであろう。が、煤逃げのご本人はなにやら男前となって(たぶん)床屋から帰宅されたのである。再読すれば、ちょっとした心理のすれ違いや、結果オーライの会話などに想像が膨らむのである。夫婦のコミュニケーションは大切である。 重ね合ふ時計の針や去年今年 牧沢 純江 黒板に文字を大きく初仕事 吉田 美鈴 |
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曙 集 | |
〔無鑑査同人 作品〕 | |
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穴 居 跡 坂本タカ女 鉛筆を啣へし句帳雪来るか 酒となる酒蔵の水人の秋 海沿ひの木枯し山の総揺れに 銹まみれなる鯡釜神の留守 昆布を干すずらり船着場の漁船 鮭遡る河口に群るる浜鴉 海に石投げて遊ぶ児昆布乾く 吹雪めく姥百合の種穴居跡 蓮 根 鈴木三都夫 ためらひの色となんこの櫨紅葉 臆病に街路樹遅々と紅葉づれる 風ばかり掬うては伏せ捕虫網 木の実たち落ちて集まりをる処 残る虫ひたすらなれど縷々として もう鴨のゐさうに見えて見当らず と判る高さに通草二つ三つ 掘り出せし蓮根を扱く泥雫 柿 日 和 山根仙花 村中の柿熟れてゐる柿日和 腰下ろす石のぬくみも雁の頃 天高し高しと吊橋ゆらしゆく 流木の湿りに秋の日の滲む 書架の書の傾きしまま秋更くる 抽出にちびし消ゴム秋深し 老いてなほなすこと多し秋晴るる 灯を消せば寒き一間となりにけり 神 迎 安食彰彦 星月夜出雲の国は地で応ふ 妻の影と我が影を守る星月夜 夕食を膝にこぼしてやや寒し 能面の飾られし部屋そぞろ寒 寒北斗地に未盗掘古墳など 足早に素顔の巫女や神迎 宍道湖の波おだやかに神迎 赤ちやんの泣声うれし神迎 夏 帽 子 青木華都子 囀に返す囀学習中 鳥帰る方へと旅をしたきかな 鳥帰る父の帰りを待つ小鳥 五個六個親指ほどの蕗のたう 旅先で買ふつば広の夏帽子 片蔭でいただく仮眠五分ほど 夏帽子目深に一人旅がいい 二泊目は夫と交流木葉木莬 月を待つ 村上尚子 点眼のあとのまばたき秋の空 丼に顔埋め松茸蕎麦すする ひぐらしの声のしみゆく欅かな 少女らの手話よく弾む夕月夜 精進料理食べて句座より月の座へ 廻廊に月浴びてゐる膝頭 境内の闇に月待つ人のこゑ 月光に濡れきし寺の簀子縁 白 秋 忌 小浜史都女 菱の実を売る魚屋の端の端 橋十二くぐる柳川白秋忌 柳川は水より暮るる白秋忌 水郷に笛や太鼓や白秋忌 堀割に万のあかりや白秋忌 水あんどん水路にゆるる白秋忌 白秋忌夜は退屈な四つ手網 小夜しぐれ手を借りて乗るどんこ舟 |
御 成 道 鶴見一石子 津軽富士手よりはみだす林檎摘む 江ノ電の軋み懐かし柿紅葉 無住寺となりて七年新松子 杖ついて菊の薫りを噛みしめり 八十路坂越え生き直す破芭蕉 救急車の音天に去る冬銀河 機を織る仕種語部炉明り 御成道杉落葉踏む音ばかり 中欧の秋 渡邉春枝 雨となる国境までの草紅葉 金秋のモーツアルトの生家訪ふ 家系図はハクスブルグ家秋気澄む 秋雨となるや宮殿コンサート ドナウ川上り下りの星月夜 プラハ城の衛兵交代さはやかに 紅葉かつ散るや古城の石畳 時差呆けのうつろな一日鵙猛る 十 三 夜 渥美絹代 山の日のにはかに暮るる下り簗 木ささげの実の揺れ土蔵かたぶきぬ 埋め戻す遠の遺構や雁渡る 十三夜刺子の針目そろひけり 結ひ直す竹垣木の実よく落つる ゆく秋の茅葺屋根の匂ひかな 返り咲くつつじ木目の浮きし塀 猫死んで家族集まる冬隣 皇居東御苑 今井星女 東京の真ん中にして蝉時雨 門衛と挨拶かはす苑の秋 江戸城の名残を今に松手入 松手入ゆきとどきたる御苑かな 「遠州」の作てふ池の水澄めり 公開の御苑鈴虫鳴くばかり 十五階より眺めたる今日の月 満月に従ふ星のなかりけり 髪 飾 り 金田野歩女 厚物の菊育てをる一クラス 銀杏黄葉の並木楽土を行く想ひ 末枯れの砂洲へ隈なく風渡り 神留守の鄙の社にお賽銭 七五三鹿の子絞りの髪飾り 津軽路の大根洗ふ嫗かな 鴨百羽湖面を捲るやうに翔ち 庖丁の切れ味嬉し菊花蕪 秋 寂 ぶ 寺澤朝子 鵙猛るキャンパスいまはお昼時 古書店の間口一間あきつとぶ 鈴成りといふはこのこと銀杏の実 ことごとくぎんなん踏まれ学生街 安保闘争ありし校塔秋高し 若き日は束の間秋の逝かんとす 黄落す本郷追分一里塚 秋寂ぶや信濃へつづくこの道も |
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鳥雲集 | |
一部のみ。 順次掲載 | |
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深 秋 竹元 抽彩 秋高し見上げて潜る大鳥居 老いの身に五欲まだ有り天高し 深秋の夕日を抱き湖地蔵 晩年を膝が自覚す紅葉山 名にし負ふいろは紅葉の鰐淵寺 尋ね来て銀杏はすでに散り尽す 砧 石 福田 勇 大会を終へて白菜苗植うる 秋暑し地図を片手の大東京 秋天や寿陵に刻む福一字 新蕎麦や馬籠の宿の縄のれん 築二百余年の土間の砧石 熟れ初むる玄関先の次郎柿 秋 草 荒木 千都江 しみじみとみて秋草の名を知らず 稲架並び日なたの匂野の匂 柿たわわ大空にある夕日かな のび伸びて穭田風に身を任せ 宵闇の深さの風の音を聞く 山間に日暮早めて秋はゆく 神 渡 し 久家 希世 斐伊の野へ陣の膨らむ雁の群 大夕日羽根染め雁の渡りゆく 花八ツ手陰陽石の真正面 赤松の肌艶やかに初時雨 御成門を閉ざす内庭石蕗の花 旅伏山の背を丸めるや神渡し 新 米 篠原 庄治 鵙高音あとは静寂が包む峡 味噌汁に浮く間引菜のみどりかな 一筆を添へ新米を送りけり 秋蝶に寄辺の花を刈り残し 風無くとも何処かが揺るる芒原 追ひ着きし一羽一と声雁の棹 落葉舞ふ 齋藤 都 新しき眼鏡馴染みて冬紅葉 置時計音なく進み笹子鳴く 落葉舞ふ行きつく先に道祖神 秋風やチラシの上に石ひとつ 柿落葉こころあまさず手紙書く ぐい呑みの重さ楽しや落葉舞ふ |
名 月 西田 美木子 モダンなる明治の牛舎草もみぢ 爽籟や文字の薄るる樹の名札 名月のふはりと浮かぶ大宇宙 満月に見守られたる帰郷かな 秋暁や猫のやうなる伸びをして どこまでも直線道路ななかまど 顔 写 真 谷山 瑞枝 山粧ふ窯の煙突煉瓦色 晴れ渡る秋の叙勲に恩師の名 文化の日紙面に師の名顔写真 冷まじや社交辞令を真に受けて 金持に縁なき暮し神の旅 畳掃く箒の音や小六月 湿 布 薬 出口 サツエ 秋高し起重機ゆつくり向きを変へ 鵙高音気休めに貼る湿布薬 柿剥いて干して一日恙なし 磨ぎ汁のさらさら白し今年米 豆を煮るにほひ厨に十三夜 山裾に物焼く煙暮の秋 虫 の 秋 森 淳子 爽やかに杖曵く人と話しけり 露草の露に濡れたるスニーカー 虫の秋城址に残る兵糧庫 天をつく銀杏黄葉を仰ぎけり 木の実降る池に小波たちにけり 秋思ふと生命線に目を止めて 秋 祭 諸岡 ひとし 売るはずの栗を炊きたる栗の飯 林檎狩試食の一個二個食ぶる 稚児歩く速さの御輿村祭 黄葉の妻の背を押し下る坂 感動の紅葉一色九年庵 村中が酒盛り始むる秋祭 糸 瓜 棚 大村 泰子 再会の椅子寄せ合うて良夜かな 糸瓜棚に風の出て来し根岸かな 実柘榴のひと枝路地にはみ出せり そこそこに鯊釣れてゐる橋の上 朝の日が射してをりけり芒原 鵙晴の海や貝焼く匂ひして |
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白光集 | ||
〔同人作品〕 巻頭句 | ||
村上尚子選 | ||
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田口 耕 長き夜や島にのこりし子守唄 中山 雅史 神杉を遠目に月の渡りそむ |
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柿落葉鴉が鳴いて帰りけり 塩羊羹買ふ秋天の諏訪にをり 赤い羽根札所巡りの胸に刺す よく笑ふ夫の背中や文化の日 鵙鳴くや天日にさらす台ふきん 塀の外へそとへと蜜柑なりにけり 地芝居の母の忙しき舞台裏 灯の入りてより本降りの秋祭 背の子の手に持つ靴や秋日和 小鳥来て日時計の影濃くなりぬ 柚子を捥ぐ空に鋏を入れにけり 親方の胸の手帳や松手入 神官の出仕白砂に露の玉 泣相撲おまはりさんの子も泣けり 子の部屋の蛸足配線秋深し |
大庭 南子 塩野 昌治 徳増眞由美 古家美智子 溝西 澄恵 松下 葉子 山田ヨシコ 古川 松枝 宮㟢鳳仙花 渥美 尚作 篠原 凉子 清水 純子 福田はつえ 五十嵐藤重 永島 典男 |
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白魚火集 |
〔同人・会員作品〕 巻頭句 |
白岩敏秀選 |
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呉 大隈 ひろみ
数珠玉や不忍池暮れそめて 島 根 田口 耕 赤とんぼつかめるほどに群れてをり |
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白魚火秀句 |
白岩敏秀 |
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薄紙をはぐごと癒えて秋澄める 大隈ひろみ 医者に秋になればよくなると言われたとおり、一日々々と気分がよくなる。間もなく床上げもできるかもしれない。窓から見える風景が澄んで見えるのも、秋の気候のせいばかりではないだろう。 蚯蚓鳴く隠岐山陵の松籟に 田口 耕 ここは隠岐の後鳥羽上皇御火葬塚。流罪の後鳥羽上皇が荼毘に付されたところである。隠岐に十九年間の長い年月であった。都へ帰ることを望みながら叶わなかった生涯である。 美しき昨日のありて散る紅葉 稲垣よし子 ものには始まりがあり盛りがあり、そして終焉がある。紅葉とて例外ではない。 よろこびを一つ重ねて後の月 山本 美好 よろこび―勿論、慶事であろう。「重ねて」とあるから、他にも喜びがあったにちがいない。よろこびの中で見る後の月はさぞかし美しかったことと思う。 縁側で夫の散髪柿熟るる 若林いわみ 柿を吊る雁木通りの薬草屋 高野 房子 ここにいう雁木は家の軒庇を長く出して、下を通路として利用できるようにしたものをいう。 日短しまだやり足らぬ野良仕事 良知あき子 野良仕事はもう少しあと少しと思いつつ、なかなか終わらないものだ。今日も畑でこつこつと仕事をしていると、もう手許が暗くなってきた。仕事はまだ残っているし、やる気もある。その気持ちが「やり足らぬ」。作者の気力、体力が充実している証である。 秋燕の空おだやかや畑を打つ 原 菊枝 畑に影を落としながら、燕が軽快に飛び回っている。そろそろ南へ帰る準備でもしているのだろう。空はおだやかな秋晴れ。
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