今年の大会は白岩主宰の地元鳥取市での開催であった。仁尾前主宰の三回忌を追悼する大会でもあり、多数の誌友が集って盛大で熱気にあふれた大会であった。島根からは三十六名が参加した。
鳥取へ向かう一日目。貸切りバスは出雲市駅を七時に出発。その後三刀屋・斐川・平田・宍道と回り、松江で全員の顔がそろった。皆の表情が明るい。日常を離れて俳句を楽しめる喜びが見てとれる。かく言う私も、行ってきますと家族に手を振って歩き出した瞬間から、白魚火全国大会モードに切り替わった。鳥取まで百七十キロほどの旅。日本海を左に見ながら、バスは海岸線をひた走る。気が付くともう皆俳句手帳を手にしてペンを走らせている。私もごそごそ電子辞書やら手帳を出して開く。
途中「白兎神社」や「白兎海岸」に寄った。因幡の白兎神話に登場する大国主命は出雲大社の祭神でもある。どこか親しく懐かしいような感覚で、「大きな袋を肩にかけ 大黒さまが来かかると ここに因幡の白うさぎ 皮をむかれて赤裸」と何十年ぶりに歌ってみたりしながらの吟行であった。
再びバスに乗って、今回の一番の吟行地鳥取砂丘へ向かう。昼食を済ませ、これからのことを確認して、後は自由吟行。砂の美術館を見、鳥取砂丘を歩いて句を作る…はずが、歩くだけで一杯一杯であった。宿に着いてひと息。夕食は賑やかに食べて飲んだ。話が弾んでビールもおいしく、ついつい二杯、いや三杯だったかな?夕食後部屋に帰り、心地よい酔いの中でしばし推敲を試みる。
明けて二日目(大会一日目)。午前中は観音院や鳥取東照宮などを吟行して回る。このあたりまで時間の流れは比較的ゆるやかだったが、大会会場へ入ると一変。大会日程に従って飛ぶように時間が過ぎて行く。出句をすませて急ぎ句稿準備を手伝う。三時から総会・式典。親睦会は、これぞ白魚火!と思わせる盛り上がりであった。
三日目(大会二日目)は、十時から句会・披講・選評・来年度の開催地の発表・万歳三唱と一気に進んでいく。一呼吸おいて司会者の終了の挨拶。それを聞きながら、ああ終わった・・・と思う。
充実の時間を共有した仲間たちが、昼食もそこそこに慌ただしく散って行く。大きな波が去った時、同じテーブルにおられた鳥取の福本國愛さんが、一つ大きな息を吐かれた。その時の安堵の表情が今も印象に残っている。
昼食を終えて私たちも帰りのバスに乗る。雨で視界が悪い。途中買い物のため雨の中を走った。土産を選びながら、皆がもう大会に向かう時とは違う顔になっていた。松江・宍道・平田と止まるごとにバスの中は静かになっていく。秋の日は釣瓶落とし…すっかり暗くなった斐川で降り、数人を乗せたバスを見送った後、挨拶を交わし合って別れた。こうして怒涛のような三日間が終わった。
白魚火がまた一歩前進したと感じる大会であった。私自身は、多くの佳句に刺激を受け自分を省みる機会となった。また来年参加できるならば、少しでも成長した自分で参加したい。大会担当の皆様、お世話になりありがとうございました。 |