最終更新日(update) 2016.12.01 

  平成28年度 みづうみ賞  
             平成28年12月号より転載


発表
平成二十八年度 第二十四回「みづうみ賞」発表
 第二十四回応募作品について予選・本選の結果、それぞれ入賞者を決定いたしました。御応募の方々に対し厚く御礼申し上げます。


          平成二十八年十一月     主宰  白岩 敏秀

 (名前をクリックするとその作品へジャンプします。)   
  
みづうみ賞 1篇
祭  笛 佐藤 升子  (浜 松)
秀作賞   5篇
立  冬 斎藤 文子
(磐 田)
篠 の 子 大澄 滋世
(浜 松)
水 鉄 砲 鈴木喜久栄 (磐 田)
冬  鷗 田口  耕  (島 根)
星 の 砂 三原 白鴉 (出 雲)
 
   みづうみ賞  1篇
   佐藤 升子 (浜 松)
 
   祭  笛
黄梅や庫裡に明るき女ごゑ
春障子指の巾ほど開いてをり
糸鋸に刃を張る寒の戻りかな
摘草のひとつ日差しに母と子と
卓袱台の脚をおこして日の永し
シーソーの暮春の音をこぼしけり
初夏の光を返す潮だまり
冷麦のひるげ陶土に布かぶせ
僧と礼交はして庭の牡丹かな
ははの爪切れば遠くに祭笛
炎天に踏み出す息を吐いてをり
ともづなの水に漬きたる終戦日
抽斗の隅に星砂鳥渡る
遮断機の下りて刈田の広ごりぬ
とろろ汁座敷の奥に日がとどき
神留守の振子時計のぼんと鳴る
柊を門に咲かせて静もりぬ
あぶりては身を裏返す焚火かな
抜け道の混み合うてをり福詣
凍空に音曳き竹の撓ひたる



  受賞のことば   佐藤 升子
 この度は、「みづうみ賞」を有り難うございました。全国大会を終えた翌々日の未だ大会の余韻の残る中、白魚火社より「みづうみ賞」の通知を戴きました時は、信じられない思いで一杯でした。
 センターの俳句講座に入会しました時は全くの初心者でしたが、仁尾正文先生の厳しくも温かい御指導のお蔭で俳句の面白さを知る事ができました。今は亡き先生に御礼を申し上げたいと思います。現在は、二十五年の十二月より円座講師の黒崎治夫先生より大変に熱心な御指導を戴いております。
 この度の賞は、主宰白岩敏秀先生を始め白魚火諸先生方、黒崎先生、浜松白魚火会の諸先生・諸先輩・句友の皆様方のお蔭と、心より感謝し深く御礼を申し上げます。
 年月を重ねて行けば行く程に、俳句の難しさを痛感するばかりです。と共に、俳句は奥深く素晴らしいものであると思っております。
 この度の賞を励みとしまして、更に精進をして参りますので、今後共よろしくお願い申し上げます。誠に有り難うございました。

住所 静岡県浜松市
生年 昭和二十四年


 秀 作 賞   5篇
   斎藤 文子 (磐 田)
   立  冬
大き波春を運んで来りけり
学校の壁春泥のボール跡
まづ声のして遠足の列来る
自転車を漕ぎ春風となる子かな
灯の入りし祭提灯くぐりけり
鉤裂きを繕つてゐる梅雨最中
朝涼や父の時計の螺子を巻く
しほあぢの強き漬物終戦日
いわし雲水門あけ放たれてをり
秋天へ昇る梯子を掛けにけり
教会の木椅子にかけて秋惜しむ
日の透けてくる立冬の櫟の木
ずんどうの赤きポストも十二月
去年今年戸棚の中に塩の壺
三匹の金魚寒夜の音立つる


   大澄 滋世 (浜 松)
   篠 の 子
菩提寺の輪飾掛くる外厠
顔馴染そろふ四日の始発バス
雄鶏の声の掠るる寒の入り
立春や一駅前でバスを降り
傘たたみ山門潜る初桜
熊の出る山の篠の子届きけり
花棕櫚やゆつくり昏るる西の空
花みかん匂ふ句会の窓の席
傘寿には少し間のあり枇杷啜る
田植足袋斎垣に干してありにけり
父の日の父に一献昼の酒
一斉に散る蜘蛛の子のうすみどり
自分史の稿に朱を入れ夜の秋
盆僧とわが戒名の話など
御詠歌を講ずる僧のちやんちやんこ
   

   鈴木喜久栄 (磐 田)
   水 鉄 砲
立春の鳩瑠璃色の胸そらす
綾取りの紐のもつれて春の雷
もくれんの開きて力抜きにけり
牛がへる隠沼闇を深くせり
だんだんに裾上げてゆく磯遊び
更衣へてきのふが遠くなりにけり
ほんたうは父さんが好き水鉄砲
打ち上げて花火師の影地を走る
ぐいと引く二百十日の小抽出
泣き虫に母の膝あり猫じやらし
編棒のすべりのよくて冬日向
ほかほかの赤子受けとる柚湯かな
神杉の木洩れ日掬ふ初手水
茶柱の立ちてしづかな寒の雨
待春や折鶴に息吹き入るる


   田口 耕 (島 根)
   冬  鷗
出雲大社の国旗百畳初御空
雪もよひ千年杉の肌ぬくき
大漁旗かかげて島の卒業式
亀鳴くや水面に城の影落とし
春の夜の母の得意な童歌
花杏島の民話にもじ言葉
舟渡御の舳先に猿田彦立てり
竹落葉島に局の館跡
ゆるゆると棚田を満たす清水かな
診療の前のひととき海涼し
散髪屋タオルの横に烏賊を干し
島の子の自己紹介や運動会
冬ぬくし壁に増えゆく子の写真
冬鷗群れつつ波に向かひけり
海鳴りを近くに聞きて年暮るる


  三原 白鴉 (出 雲)
   星 の 砂
髙々と上がる白球鰯雲
急磴を上りて秋の空近し
出雲とは雲湧くところ雁渡る
鉛筆を削つて終はる文化の日
吊橋を揺すれば揺るる紅葉山
冬雲が冬雲押してゆきにけり
垂れこめて居座る構へ冬の雲
暗闇を背負ひて囲むとんどの火
杭の裏窪ませてゆく春の水
東京の空は凸凹初燕
飛花落花平田の街のけぶりをり
ぼうたんの日差しに溶くるごと崩る
築地松映しやすけき植田かな
一筋の広き航跡夏来る
海の日や耳元で振る星の砂

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