最終更新日(update) 2014.12.01 

  平成26年度 みづうみ賞  
             平成26年12月号より転載

 みづうみ賞は、毎年実施の“白魚火"会員による1篇が25句の俳句コンテストです。先ず予選選者によって応募数の半数ほどに厳選され、更に主宰以下の本選選者によって審査・評価されて、その合計得点で賞が決定します。

発表
平成二十六年度 第二十二回「みづうみ賞」発表
 第二十二回応募作品について予選・本選の結果、それぞれ入賞者を決定いたしました。御応募の方々に対し厚く御礼申し上げます。


          平成二十六年十一月     主宰  仁尾正文

 (名前をクリックするとその作品へジャンプします。)   
  
みづうみ賞 1篇
百 葉 箱 大村泰子  (浜 松)
秀作賞   5篇
七 五 三 鈴木喜久栄
(磐 田)
雨  月 渡部美知子
(出 雲)
御 田 祭 檜林弘一 (名 張)
草 の 花 田口 耕  (島 根)
葉ざくら 陶山京子 (雲 南)
 
   みづうみ賞  1篇
   大村泰子 (浜 松)
 
   百 葉 箱
寒明けや薄くれなゐの魚の鰭
早春の賃取り橋を渡りけり
校庭の巣箱が少し傾きぬ
退屈な尻尾の動く春の鹿
味噌樽の箍のささくれ辛夷咲く
万緑に吸ひ込まれゆく水の音
梅雨茸の傘ひとところ破れをり
刺網に海鵜は近くまたちかく
干草の匂ひの中の母遠し
桑の実や衿に飛び込む山の雨
印鑑に息吹きかけて震災忌
竹を伐る漢の顔のよかりけり
鬼の子に留守をたのんで来りけり
山芋の端藁苞をはみ出せり
猟犬の耳敧つる山の音
植木屋の師走の梯子伸ばしけり
才蔵の帰り仕度のはやばやと
寒の水ゆたかに使ひ匙磨く
小正月箪笥の隅に日が当たり
冬すみれ百葉箱に鍵二つ
  受賞のことば   大村泰子      
 
 この度、思いがけない「みづうみ賞」決定の通知を戴き、喜びで胸がいっぱいになりました。「みづうみ賞」に向って、これまで何度も挑戦してきました。最初は、予選通過することもなく、その内、選外佳作、佳作、秀作と、回を重ねるごとに賞をいただける様になり、応募する力となりました。目標に向って、継続をしてきて本当に良かったと思っています。
 これまで、未熟な私を育ててくださいました仁尾主宰をはじめ諸先生方、句友の皆様に心より感謝とお礼を申し上げます。これからも奥の深い俳句の壁にぶつかりながら、平明で明るく誰にでも理解出来る作品を心掛け、精進致したく思っております。

住所 静岡県浜松市
生年 昭和二十五年


 秀 作 賞   5篇
   鈴木喜久栄 (磐 田)
   七 五 三
空き缶を咬んでをりたる薄氷
初花に近きベンチをゆづり合ふ
行春や手より零るる海の砂
叱られても母さんが好き芥子坊主
梅雨明けて山の大きく見えにけり
夜濯を終へて仰ぎぬ一つ星
病める子に朝顔の数告げにけり
ひとつ撮みて枝豆の塩加減
とんばうの斜めにとんで千枚田
どんぐりの転がつてくる滑り台
案山子かと思へば歩きはじめたり
家につくまで励まして七五三
抱き上げし赤子に初日さしにけり
校庭においてけぼりの雪だるま
珈琲の湯のぽこぽこと春隣


   渡部美知子 (出 雲)
   雨  月
クレヨンの七十二色夏に入る
経本のほつれを直す鑑真忌
黒南風や順延告ぐるアナウンス
羅を着てより言葉やはらかに
引き時を思案してをり秋簾
今生の終の声やもつくつくし
殉職てふ一報走る雨月かな
玄帝来あまたの雲を従へて
神在の神を交へて写真撮る
冬日向ひと息つける神議り
縺れたる糸はそのまま虎落笛
番内に出会うて泣くも三日かな
念入りに玉結びする縫始
雪洞の片方つかぬ雛の夜
ほほゑんで譲らぬ高値若布売
   

   檜林弘一 (名 張)
   御 田 祭
予定早詰つてゐたる初暦
酒蔵に匂ひ立ちゐる雪解かな
諳んずる感銘一句いぬふぐり
連翹の転婆の枝を増やしをり
春惜しむはづれ馬券を栞とし
水といふきらめき御田祭かな
杭打つて厩舎としたり草競馬
糠床の天地を返す夕薄暑
おづおづと瀬踏してゐる鴨の雛
わだつみの風吹き渡る海開き
荷崩れのごとく崩れて土用波
講釈に眼鏡曇らせ鍋奉行
下座より乱れ始めし年忘
一級河川二級河川も涸れゐたり
合掌の屋根にせり出す雪庇かな


   田口 耕 (島 根)
   草 の 花
海苔掻女しぶく波頭に隠れけり
勝ち牛の御神酒がぶ飲み牛角力
滑り来る新造船や風光る
蕗を剥く香りの中に母のあり
子供等の釣果聞きをる端居かな
裏山も島の牧場よ草の花
隠岐院の筆なる和歌ぞ雁の声
つややかな巫女のお下げや稲稔る
丸刈りの海人の頭に秋日濃し
身に入むや出船の汽笛尾を曳いて
冬の月牛の長鳴き続きをり
この大蛇なかなか酔はぬ里神楽
山陵の前一面の冬田かな
晨朝の声冴え渡る籠堂
立志式の正門香る水仙花


  陶山京子 (雲 南)
   葉ざくら
手鏡にうすく眉ひく鳥曇
路地抜けし燕のつばめ返しかな
春子生ふ森にあふるる鳥の声
山のものたつぷり摘みし穀雨かな
樟落葉掻く老僧の独りごと
葉ざくらや町に小さき裁判所
玉葱を抜くひさびさに日を賜ひ
筧よりこぼるる清水筆洗ふ
ゴンドラの置き去りにされ夏の山
仏間また客の間となる盆用意
職退きし夫のてすさび大根蒔く
柿熟れていまも二階に機織機
走り根の窪み落葉の吹き溜り
杣人の手塩にかけし寒牡丹
炭ついでめくる編物独習書

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