最終更新日(update) 2012.06.01 | ||
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平成24年6月号より転載 |
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みづうみ賞は、毎年実施の“白魚火"会員による1篇が25句の俳句コンテストです。先ず予選選者によって応募数の半数ほどに厳選され、更に主宰以下の本選選者によって審査・評価されて、その合計得点で賞が決定します。 | ||
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発表 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成二十四年度 第十九回「みづうみ賞」発表 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第十九回応募作品について予選・本選の結果、それぞれ入賞者を決定いたしました。御応募の方々に対し厚く御礼申し上げます。 平成二十四年五月 主宰 仁尾正文 |
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(名前をクリックするとその作品へジャンプします。)
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みづうみ賞 2篇 |
三上美知子 (雲南) 冬木の芽 一山へ響く法螺貝寒明くる 乗り合はす漢の春のベレー帽 蕗の薹からりと揚がるうすみどり 屋根替の大きく撓む足場板 朝市の生簀をあふれ春の水 腰までの水に父子の蜆掻 月おぼろ阿国の塔も岬山も 国引きの沖に雲湧く花とべら 海難碑めぐりて拾ふ落し文 海猫の出払つてゐる島の昼 夏草や芯まで錆びし捨て錨 灯台の階しかと踏む素足かな 夏かぐら楽屋賑はす出雲弁 法師蟬灯台跡に井戸一つ 海猫帰る島の鳥居をあとにして 好日の夫婦で組める稲架一枚 秋興や天領川に棹さして 穴まどひ城址に今も烽火台 自転車を磨く白息吹きかけて 学帽の遺影に障子明りかな 夜をこめて神楽囃子の八拍子 狛犬に願ひの小石冬木の芽 橅林の夕日に木の葉しぐれかな 月冴えて地に置かれある鬼瓦 取つときの根榾燃やして酌み交す |
受賞のことば 三上美知子 この度は思いもかけず「みづうみ賞」受賞という夢のようなお知らせを頂き、ただただ喜びでいっぱいでございます。 毎月、皆様の作品を拝見しますと、私はまだまだ見逃している題材が多いと痛感すること頻りでした。目にした景をぜひ句にと思って推敲を重ねてもどうにもならない事が多く悩みました。そんな私がみづうみ賞に応募を決心して、日々句と向き合って参りました。句を通じて全国の方々とお話も出来、また句作りによって漢字や事柄も沢山知る事が出来ました。躓き乍らでも俳句は今では無くてはならないものになりました。 これも仁尾先生をはじめ諸先生方、地元の俳句会で熱心に御指導頂きました寺澤朝子先生、そして句友の皆様、いつもお世話になっている編集部の皆様のお陰と深く感謝しております。これからもどうぞよろしく御指導下さいますようお願い申し上げます。 住所 島根県雲南市 生年 昭和十六年 |
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鈴木百合子 (群馬) 松迎ふ 城垣の反り美しき淑気かな 幾重にも参賀の列の二重橋 師を前にはづす座布団寒椿 雛段の裏まで箒あてにけり 早春の佳き日に渡す引継書 つばくらや六斎市に研ぎ物師 草庵へとほまはりして青き踏む 指先にしづく宿せる甘茶仏 山風に芭蕉の巻葉ほぐれけり ゆすらうめゑくぼのおなじあねいもと 合歓の花友禅絵師の寡黙なる 風死せる戦場ケ原静まれる 神駒のにほひを馬塞に夏深し 迎火に適ふる風の生れけり 虫の夜にひもとく真田太平記 巻紙を筆の走れる良夜かな 家苞はぐい飲みひとつ蕎麦の花 釣舟の水尾ふたすぢに鰯雲 さざなみの影の生るる秋気かな 川風呂のわらべのふぐり初紅葉 蔵座敷に良寛の軸実南天 あかつきの加賀の城下の鰤起し 一尺に満たぬ植木の雪囲ひ 菩提寺の裏の山より松迎ふ 注連を綯ふ茣蓙新しく敷きにけり |
受賞のことば 鈴木百合子 みづうみ賞をいただき誠にありがとうございました。 自己の感性そして精神を磨くため、みづうみ賞に挑戦させて頂いておりましたが、今年本賞をいただけるとは夢にも思っておりませんでした。 改めて、賞の重さをかみしめております。 白魚火入会間もなく、関口都亦絵さんに「四万」の句会で勉強するよう勧められ、ご一緒させて頂いたのが句会参加のはじまりでした。 積善館の香をたきしめた大きな部屋での月一回の句会。 五句携えて句会に臨むのですが、その五句を通して心の奥を隈無く透かされるような緊張感を抱いて、毎月四万に通ったことを鮮明に覚えております。 苦しい時辛い時には自ずと句帳を開き、また路傍の草の葉先に宿している一滴の露に心の安らぎを求める日々を送っております。 今後は、賞の名に恥じることなきよう研鑚を重ね句の道を極めていくと同時に、日本人の感性を最も引き出してくれる俳句という文学を、地域に広めていけたらと思っております。 そして、座の文学としての俳句を愛する人の「和」を、大きく育んでいく所存でおります。 この度の受賞に際し、ご指導いただいた仁尾正文主宰並びに諸先生方、そして田村萠尖先生を始めとする地元の群馬白魚火の皆さん、大変お世話になりました。 住所 群馬県吾妻郡 生年 昭和二十五年 |
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