最終更新日(update) 2009.07.07 | |||||||||||||||||||
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時節折々、白魚火歳時記から句を抜粋し掲載します。 | |||||||||||||||||||
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新年 | |
仏徒われ仏具を磨き年迎ふ あらたまの日を受け金魚うごき出す 青春は八十過ぎて明けの春 大吉の骨正月のみくじかな 打たせ湯に身を委ねゐて去年今年 浜の子の浜に遊べる三日かな 郵便局何事もなく四日かな ことさらに(*1)モーツアルト聞き三ケ日 エプロンを付けて外して三ケ日 糶牛に人日(じんじつ)の手を汚しけり (*1 2006年は生誕250年) 手相見に年を詐る七日かな ふるさとの瀬音に目覚む松の内 何もせぬことにも疲れ女正月 雲一つなき初空の国旗かな 見慣れたるもの凛として初明り ふるさとの水音にある淑気かな 初凪の礁に海女の潮佛 百隻の錨入れたる初景色 初筑波畑毎違ふ麦の縞 小田急やとどろとどろと初電車 初旅の航跡太く太く曳く 巫女舞の鈴の音透る初詣 ジーパンでのつぽの二人初詣 初護摩の炎千切れて宙にあり 綿菓子の匂ふ風来る恵方かな |
荒木古川 亀本美津子 笛木峨堂 高橋花梗 阿部芙美子 鈴木三都夫 天野和幸 五嶋休光 斉藤くに子 藤川碧魚 市川文子 高橋陽子 錦織美代子 今村 務 片貝芳江 大石ひろ女 江見作風 土江江流 柴山要作 村尾菩薩子 湯浅平人 川瀬悦子 渡部昌石 仁尾正文 竹内芳子 |
山道にバス止め運転手の御慶 初便り恩師の筆のゆるみなし 地図で見る国より届く初電話 裏山のこだま力に年木割る 少しだけよそゆき言葉年酒くむ お汁粉も年酒も泥坊上戸かな 強かに生きて一人の雑煮餅 家苞の切山椒も祝ぎごころ 矮鶏に声かけて小屋にも輪飾りす 注連飾るだけの古釘打ちにけり 春著(ぎ)とは美しきもの二十歳 美くしき音は悲しき羽根をつく 瑞気満つ部屋正座して初硯 窓に陽の廻るを待ちて縫始 縫初の鋏の鈴を鳴らしけり 老いひとり風に向かつて鍬始 初鏡つき合ひ古き泣きほくろ 袖口にむらさき覗く初点前 どぜう屋へ廻る耳打ち初句会 淡あはと雪のかかりし松納 |
田原桂子 寺本喜徳 下平実子 澤田早苗 榛葉君江 野口一秋 勝部アサ子 鈴木三都夫 山口菊女 山根仙花 知久比呂子 家島公魚 諸岡ひとし 山高悦子 三島すさ 本多笑月 能美百合子 桐谷綾子 三瓶乱花 田村萠尖 |
松過ぎや普段着の顔とり戻す 撞き捨ての鐘の乱るる初薬師 発願の幟の白き初不動 遠つ世も闇濃かりけむひよんどり 賓頭盧(びんずる)廻しわが作らずば世に句なし 一羽下り一羽下り添ふ初雀 松江とは城より明くる初烏 供へ餅一ツは(*2)嫁が君のもの つつがなき一人の暮し福寿草 (*2 正月には鼠のことをこう言う) |
相原くにお 栗林こうじ 石井玲子 仁尾正文 西本一都 山根仙花 藤原杏池 折田紅葉子 三岡安子 |
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寒・待春 (一月) | |
天平の伐折羅(ばさら)の怒髪冴えにけり ニ三日見ぬ子の今朝や声冴ゆる 水も木も仏も峡の底に凍つ 米を搗く水車の音の凍りけり 膝ことに艶めき寒の撫仏 福耳をもたぬ家族や寒に入る 漉き舟の大寒の日を揺するなり しばるると言ひて軍手を重ねけり 蛸壺の乾く三寒四温かな 牛乳を猫と分け合ふ四温かな 蜑(あま)百戸軒寄せ合ひて冬深し 晩年といふ余白あり日脚伸ぶ 待春の中二階より女声 寒満月低温注意の電光板 光年といふ遥けさや寒昴 無辺より光の届く寒昴 風凪ぎて寒九の星座ことごとく 一湾のあつけらかんと寒凪げり 寒凪の港の小さき佃煮屋 翡翠の弾丸ライナー春隣 春近し農機具展の旗なびき 寒夕焼那須の噴煙穂みじかに 風花や寝釈迦は右を下にして 寒夕焼湖ひとときの彩かなし 初霰舟かたぶけて蜆掻く 傘を打つ雨が霰となりにけり 諒闇の寒の雨降る石だたみ 吹つ越や今宵奥日光泊り 月あかり星あかり海氷りけり 太陽の歩めば樹氷こぼれけり 滝壺の厚き垂氷の青さかな 寒の水肩いからせて飲みにけり 悴んで箸より細き骨拾ふ 採氷のチェンソー唸る河畔かな 雪掻きて隣づき合ひ深めけり 細腕に覚えありけり雪を掻く 雪沓を提げたる湯女に迎へられ 少年の別れに交はす雪礫 犬橇を駆りて樹氷を抜けにけり 樵にも声かけスキー郵便夫 身の幅の吊橋返す雪女郎 狐火の執拗に飛ぶ雨後の闇 すが洩りの楼上に座す羅漢かな 寒灯にかざしベネチアグラス買ふ 竹馬の見下してものいひにけり ラガー倒れ首根に注ぐ薬缶水 避寒宿湯どのにひびく國ことば 娘は妻に妻は母に似胼(ひび)薬 三の糸帯にしのばせ寒ざらひ 寒紅をさしてこけしの生まれけり 故郷の石置屋根や寒晒 |
野澤房子 塩野昌治 荒木古川 米澤 操 佐藤愛子 佐藤 徹 鶴見一石子 鈴木敬子 野沢建代 山田フサ子 山根仙花 勝部アサ子 青木華都子 梅田嵯峨 桜井水尾女 大久保瑞枝 清水和子 渡部幸子 島田愃平 柴山要作 竹渕きん 西本一都 中山雅史 栗間耿史 藤川碧魚 水島光江 栗間耿史 和田伊都美 三浦香都子 佐藤光汀 大沼重雄 小川恵子 古田キヌエ 内山一樹 藤原杏池 大久保瑞枝 豊川湘風 稲場多美子 松村ミドリ 朝倉一翠 宮野一磴 浅野みつぎ 篠原米女 高岡良子 仁尾正文 宇賀神尚雄 佐藤玲子 田中都柳子 影山香織 大島照子 吉澤一葎 |
十枚の田をひとつらに寒天晒す 凍豆腐綴りし藁の匂ひけり 寒肥や轍つけゆく一輪車 掌にのせてまだあたたかき寒卵 寒餅の荷に太々と父の文字 心経の声飛ばさるる寒参り 綿菓子を買ひ雪像の国に入る 年男われ俳諧の鬼たらむ 年の豆噛む鬼も来よ福も来よ 農の血を享け骨太の年男 直会(なおらい)や追儺の鬼を上の座に 病室の妻の手に置く年の豆 夜咄の手捻り茶碗手に温し 歳晩の子の綾取りのきりもなや 大蟹を提げて因幡の杜氏来たる |
後藤よし子 安澤啓子 中山まきば 笛木峨堂 挟間敏子 口村光房 藤川碧魚 西本一都 鈴木千恵子 江見作風 野上 晳 仁尾正文 増山正子 栗林こうじ 森山比呂志 |
そこにだけ風の集まる牡丹焚 箒編む黍殻を打つ寒砧 寒干の魚の鋭き眼かな 寒泳の殿守りて息荒し 腰抜けの妻の句詠みし蕪村の忌 足袋つぎも戦も知らず久女の忌 繕うてゐる夫の服久女の忌 寒味噌を煮る病妻の指図かな 一羽来て一景動く冬の鷺 凍鶴を撮らむと凍つる睫かな 寒雁の一声高き千曲かな 氷下魚(こまい)釣る天道虫の火屋一つ 氷下魚釣る穴より海の水溢れ 綿虫や傘寿過ぎても死を怖る また一つ空へ空へと雪蛍 大綿の湧く神殿の能舞台 鳥居より潮満ちてくる雪蛍 まろまろと玉の如くに寒雀 寒烏太き嘴もて一瞥す 寒鯉の色あつまりて沈みけり 寒鮒の魚拓に残るぬめりかな 朝刊の折り目より落つ冬の蜘蛛 寒蜆湖北漁師は老いばかり 隠れ畑隠れ沼あり梅探る 青木の実ひとつひとつの主張かな 普段着のお見合いなりし実南天 足るを知る八十路越えたり実千両 万両や身の丈に合ふ暮らし向き 昼よりは地雨となりぬ藪柑子 龍の玉手に転がして女坂 絵付師の眉一文字冬薔薇 見舞はざる心残りや冬苺 蝋梅の香をまとひつつ裏小路 瞽女かなし水仙ほども顔あげず 水仙の背筋まつすぐ活けにけり 被せ藁に雛の如く寒牡丹 冬桜たれにも言はぬこと一つ ふくらみも紅も日毎や寒椿 大津絵の鬼の念仏寒の木瓜 寒海苔の香をひろげ干す岬道 ブロッコリー三日見ぬ間に呆けけり ははそはの母ねむる地の冬すみれ |
青木華都子 西本一都 井上栄子 野津富美子 西本一都 黒田邦枝 萩原峯子 笛木峨堂 渡部昌石 金田野歩女 伊東敬人 藤川碧魚 鈴木三都夫 澤田早苗 佐川春子 浅野数方 小浜史都女 三浦昌代 水鳥川弘宇 山西悦子 青木華都子 杉浦延子 荒木古川 漆原八重子 川端慧巳 勝本恵美子 森木朴思 鍋島蕗子 脇山石菖 鎌倉和子 大石ひろ女 高橋静香 加納美保子 西本一都 鶴田世智子 浜野まや子 竹内芳子 大沼孤山 梶川裕子 福原ミサ子 木村文代 西村松子 |
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春立つ (二月) | |
佐保姫を迎ふ構へや出羽の城 野球部の一団走り抜けて春 アイゼンの手入れ怠りなく二月 さつぱりと枝切りおとす寒の明け ぽとぽとと落す珈琲寒明くる 寒明くる土をうるほす雨静か 立春や夕べの豆を鳩ひろふ 屑入れの中を綺麗に春立つ日 早春の色譬(たと)ふればレモン色 父に似て地図が好きな子春浅し |
坂口青山 小林布佐子 阿部芙美子 良知あき子 青木華都子 鈴木千恵子 望月日出子 山根仙花 横田じゅんこ 森 高尾 |
象(かたど)りし彫塑の右手冴返る 冴返るお点前の湯の滾りをり 春寒の襞をひき緊め浅間聳つ 子の箪笥下着咥(くわ)へて春寒し 舞扇たたみてよりの余寒かな 料峭(りょうしょう)や礎石金堂址とのみ 春めくや戸籍調べの巡査来て 船底にペンキ塗る人春動く 水音のほかは暮れたる雨水かな 薄氷(うすらい)を踏み面接の社に向かふ |
大久保瑞枝 大石登美恵 西本一都 中山雅子 藤井英子 桜井水尾女 福嶋ふさ子 岡田十流 小浜史都女 前田清方 |
雪しろやそろり引越荷を運ぶ 残雪や茂吉左千夫も詠みし嶽 残る雪割つて始まる寺普請 浅間押してふ溶岩(ラバ)原の残り雪 直角に止まる赤啄木鳥(あかげら)木の根明く 流氷を沖に夕日の船戻る 流氷や喉の奥まで木彫熊 凍て解くる森の奥へとけもの道 口紅を差しても見たり春の風邪 雪割つて船を出しをり渡り漁夫 |
加藤数子 西本一都 大滝久江 荒井孝子 勝本恵美子 渡邊唯士 三浦香都子 萩原峯子 沢柳 勝 朝倉一翠 |
面売りの煙草燻(くゆ)らす春祭り 針供養ははに背きし日々もあり 花替へて夫の忌バレンタインの日 麦踏みの折り返すとき天仰ぐ 野を焼くや見張りの勢子(せこ)に雇はれて うしろ手に村人老ゆる畦火かな 津山線また末黒(すぐろ)野にさしかかり 初午や五平餅搗く外竈 梅園の香りの風となりにけり 修二会(しゅにえ)待つ仏のやうな顔をして |
宮下萠人 大野洋子 吉田智子 野上 晳 服部遊子 渡邉春枝 仁尾正文 影山香織 勝部博子 梶川裕子 |
山肌を海に傾け木の実植う 税申告すませ恩師と擦れ違ふ 手がかりを少し開けおく春障子 火渡りの殿りの婆介添はれ 鳴雪忌梅一輪に執しけり 炭鉱のまた一つ消え多喜二の忌 門前に選ぶ横笛実朝忌 白妙の富士窈窕(ようちょう)と風生忌 胎児にも鶯の声聞かせをり 観覧車静かに回る初音かな 一と声のよけれ旅にて聞く初音 |
小林梨花 池田都瑠女 高岡良子 仁尾正文 大沼重雄 今井星女 田口一桜 鈴木三都夫 笛木峨堂 安澤郁雄 寺澤朝子 |
嘴の篭に余れるさよりかな 水なめて恋する猫の目となりぬ 白魚火や波にまだある夕明り 駒ケ岳はれて公魚(わかさぎ)解禁日 盗つ人めくまつ赤な椿手折るとき 満ち足りて陶房を辞す山椿 落椿てふ美しき落しもの 藪椿手を上げて乗る路線バス 紺碧の海に椿の落ちにけり 待ちに待ち仔牛を放つ春の草 春菊の花や見合いの話くる |
三島玉絵 楠 瓢水 荒木古川 高橋由美子 高橋花梗 荒木古川 小川恵子 川端慧巳 大石ひろ女 佐藤都葵 上川みゆき |
若布(わかめ)刈る禰宜の手元の狂ひけり 青海苔を掻く一心になりゐたる 梅咲いて尋ねてみたき人のあり 白梅の蘂の奥なるうすみどり 四方より径の集まる梅の宮 黄梅や遠くで門を開くる音 まんさくに悦び走る峡の水 山茱萸(さんしゅゆ)の花や筧の水の音 山茱萸の一軒のこる藁屋かな 母の声児の声弾む猫柳 せせらぎの律呂(りつりょ)ととのふ猫柳 |
小村青桐 松本光子 浜崎尋子 大石伊佐子 古川志美子 安食彰彦 野津 節 安食彰彦 原あや子 篠原米女 沢田有湖 |
子が走り影の走りて草萌ゆる 下萌や人の一列動きだす かたかごのうなづきあへる斜面かな 大男伏して雪割草を撮る わが俳句足もて作るいぬふぐり 小さき顔みな陽に向けていぬふぐり 蕗の薹摘み還暦の坂越ゆる 畑にも道の駅にもはうれん草 海苔掻女思はぬ波をかぶりけり 節分草太古の白さもて咲ける 春筍に介錯の鍬振り下ろす |
白岩敏秀 島村康子 小林さつき 星田一草 西本一都 塚田紀子 土江意宇児 木村和恵 鈴木三都夫 野口一秋 仁尾正文 |
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芽吹き (三月) | |
暖かや手話もて笑ひころげをり 三月の堂に干しある滝行衣 如月の石の寂光愛すかな 啓蟄や瞽女は宿世の闇まとふ 啓蟄や納屋に錆びつく父の鍬 春分やゆつくり廻る観覧車 童顔のままの戦友彼岸くる 宛書きの滲みて届く春の雪 爆心地真直に降る牡丹雪 春霰(しゅんさん)に傘を打たるる橋の上 風紋は砂丘の晴れ着春しぐれ 春の雷くり返し読む診断書 男湯はいつもひとりや春の雨 春の露山の木洩れ日光り合ふ 常念は遥かや春の虹二重 梅東風(ごち)に吹かれ神籤を結ひにけり 夕東風や足蹴に縛る鰻筒 春塵や網の中なる阿吽像 霾風(つちふる)の真只中に夕日落つ 生まれつき赫い髪の毛黄沙降る 春一番まだ二日目のダイエット 貝寄風や遺灰流せし海光る 忘れ雪山の温泉にある晶子の碑 潦(にわたずみ)さへも波たて彼岸西風(にし) 涅槃西風(ねはんにし)谷中廃村無縁墓碑 閼伽(あか)桶の箍(たが)のゆるびし涅槃西風 |
田原桂子 明慶一暁 鬼村破骨 西本一都 佐野栄子 河合ひろ子 太田新吉 三島玉絵 仁尾正文 佐野無色 能美百合子 藤元基子 水鳥川弘宇 佐藤嘉都子 影山香織 渡辺幸子 仁尾正文 高橋花梗 内山多都夫 坂本タカ女 谷山瑞枝 林 浩世 原山芙久女 塚本三保子 橋田一青 横田茂世 |
澄み切つて仔牛の瞳春の山 大鳥居くぐり春嶺仰ぎけり 春の山いくつも越えて故郷へ 第一釦遊ばせ春の野を歩く 子供靴片方とべる春田かな 後継の当てなき春田起こしけり 重きほど春泥つけて戻りし子 春の水のびあがりては堰を落つ 春江やくぐる隅田の十二橋 靴かばん土手に預けて水温む 春の土付けて売らるる種生姜 土恋し駿馬に志ありぬ 部活終へもたれて眠る春炬燵 春炬燵まだまだ捨てぬ群来(くき)の夢 蒲柳(ほりゅう)の身生涯守る春袷 春ショールときめく胸をつつみけり 句碑なでて春手袋を濡らしけり ほほざしの藁に潮の匂ひかな 潮の香のぷんぷん干鱈(ひだら)焙りゐる 野遊びの先へ先へと蝶もつれ 句の道の寂しさおぼえ草を摘む 山を見て山に見られて耕せり 隣田もその隣田も耕せり 桑解くやしつぺがへしをもろに浴び 子は遠くあり古雛の箱を解く 曲水を控へて鯉の捕はるる 退院の蹠(あしうら)しかと青き踏む 向う三軒見ゆる北窓開きけり 雪囲解くや心の弾むまま 屋根替や仁王の目にも萱埃 こころざしアフリカにあり卒業す 鞭と言ふ一本の紐牧開く 榛名嶺の襞の雪消え芋植うる 接穂する夫の手先を疑はず 剪定の脚立傾く地のゆるみ 献上の麻まく朝の薄化粧 田楽や老いてあうんの兄妹 青饅(あおぬた)に一献添へし忌日かな 稚児衣装京より拝し御開帳 今も尚勅使下向の春日祭 涅槃図や生きとし生けるものに地震(ない) 風鎮を畳へ余す涅槃絵図 息触れむばかりに拝す涅槃絵図 春場所や髷の乱れし勝角力 西行忌女は妬心抜けきれず 蓮如忌や嫁して覚えし正信偈(しょうしんげ) |
安藤公文 小川千秋 山下恭子 三島玉絵 荒木古川 飯塚比呂子 青木みさ子 石倉すみれ 中村本子 野村悦子 中山まきば 三浦香都仔 吉村道子 金田野歩女 折田 茂 菅野貞子 安田青葉 鶴見一石子 池田都貴 中曽根田美子 荒木古川 高橋陽子 仁尾正文 石倉すみれ 安部弘範 佐藤升子 松田千世子 山田フサ子 杉田たかし 浅沼静歩 大島たけし 三浦香都子 田村萠尖 石川詩都女 熊谷孤村 田中藍子 鈴木千恵子 山田ヨシコ 竹渕石菖 伊藤 徹 西本一都 鈴木三都夫 仁尾正文 早川俊久 橋場きよ 横田茂世 |
小綬鶏に呼ばれどほしや丸子宿 雉子啼いて黄泉比良坂(よもつひらさか)雨あがる 点となり光となりて揚雲雀 雲雀田のまつ只中に居てひとり 結び文そへて志賀より初諸子(もろこ) |
稲川柳女 栗間耿史 野上 晳 谷口泰子 森井章恵 |
それぞれに8の字描く蜆舟 人教ふかなしきたつき蜷(にな)歩りく だんまりを通すつもりの田螺(たにし)かな 透き通る白子に目玉ばかりかな 研ぎものは男の仕事鳥雲に 鳥雲に二病息災とも思ふ 鶴帰る童話の里の夕焼ける 雁帰る休耕田の荒れしまま 引き鴨の携へるもの何もなし 残る鴨沼の広さをもてあまし 転勤の大き荷の着く初燕 水口(みなくち)を繕ひ居れば燕来る 初燕無縫の空を切り返す 放されて荒瀬に挑む稚鮎かな 鰆(さわら)船島のチャイムの海わたる 長尿をして鱒漁夫立去りぬ 草刈のやい刃にかかるすみれかな あどけなし蒲公英を摘むぎつちよの子 保育園つながれ行くやげんげ田に エプロンの裾をつまんで蓬摘む 解雇予告届きぬ芹を摘み来し日 春菊の花や見合ひの話くる 摘みこぼす浜防風の抱ける砂 辞す足を待たせ春子を摘みくるる |
安食彰彦 田室澄江 上川みゆき 曽根すずゑ 織田美智子 稲村貞子 手塚美代子 上村 均 松田千世子 野口一秋 福田恭子 川本すみ江 藤浦美芳 瀬下光魚 反田みどり 仁尾正文 高橋幸子 峯野啓子 平塚世都子 青木八重女 前田清方 上川みゆき 澤田早苗 野田早都女 |
木曽五木芽吹き初めたる番所跡 牡丹寺に七千株の芽立ちかな たらの芽の空の蒼さの中にかな 落葉松の音のしさうな芽吹きかな 牡丹の芽ゆつくり登る女坂 芽柳をかき分けて乗るどんこ船 大空に縺れては解け柳の芽 昨日より今日確かなり柳の芽 戸車の滑りのよくて楓の芽 夕べ濃き香や一握の芽山椒 ものの芽に影の生まるる日差かな 芽芍薬少女小さき唇をもつ ひたひたと水の皺寄る蘆の角 白鷺の差し足歩む蘆の角 搦手を出て堀づたひ真菰の芽 爺婆と呼ばれて咲けるほくりかな 灯台がバスの終点黄水仙 黄水仙ひたに人恋ふ日なりけり 大山の胸青き日々花なづな 土手歩くつくしの列の切れるまで 西行の命の山に土筆摘む 嫁菜摘む飢餓の戦後を語り合ひ 子等はみな故郷離れ茎立てり 土割つて紫のぞく芽独活(うど)かな 今晩の酒の肴の野蒜摘む 涙拭く祖母の前掛韮の花 胡葱(あさつき)や上戸の妹に下戸の兄 わらび取り声かけあつて離れけり 相伝の里山に折るわらびかな ぜんまいのはてなはてなと芽出しをり 村人と車座となり五加(うこぎ)飯 空港の風の遊び場茅花(つばな)咲く 虎杖(いたどり)や故郷に似たる線路沿ひ すかんぽに靴投げて聞くあしたかな 滝の径ゆづり交はせり蝦夷母子草 仔に別れ乳張る山羊や母子草 鎌倉に切り通しあり花ミモザ アンジェラス鳴り渡りけり花五倍子(きぶし) 猫の目草銀山長屋人住まず |
高久都季江 鈴木三都夫 内藤朝子 梅田嵯峨 加茂川かつ 諸岡ひとし 久世希世 安澤啓子 大村泰子 山根仙花 辻すみよ 荒木古川 横田じゅんこ 澤 弘深 小林梨花 遠坂耕筰 岡田暮煙 鈴木千恵子 田口一桜 中西晃子 前川美千代 小林春子 山崎朝子 水出董正 島田愃平 富田郁子 大滝久江 田中千枝子 大城信昭 飯塚樹瀬 渥美絹代 三島玉絵 前田清方 佐藤玲子 宮野一磴 岩崎とく 内山実知世 斉藤 萌 栗間耿史 |
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無断転載を禁じます |
春闌けて (四月) | |
麗かや繭の匂へる紬着る 鳴砂に足を取られて麗らけし のどけしや鶏もうさぎもひとつ小屋 永き日の機に織りこむ鶴と亀 春は曙五分進めし時計鳴る |
河合ひろ子 安達みわ子 織田美智子 森山世都子 高岡良子 |
春昼のまだ続きゐる立ち話 はしやぐ子らまだ去り難き春の暮 春の宵若さのこれる爪を染む 春の夜の猫の目玉と逢ひにけり 晩春の大空なにも無かりけり |
久保田久代 原 道忠 桐谷綾子 村田相子 小沢房子 |
水底へ日差のとどく四月かな 金婚に喜寿の加はる弥生かな 清明や得度の袖に風すこし 朝の客長居して去る穀雨かな 家計簿の収支の合はぬ目借時 春ふかく地団太踏んで木偶(でく)泣けり 爪印を押して指拭く暮の春 蝉塚の茶屋に杖借る徂春かな 春惜しむ言問橋を渡りゐて 惜春の胸の釦をひとつ開け 上着手に道を尋ねて春暑し 夏近し化粧直しの花時計 お茶の芽に星降る八十八夜かな 鷹鳩に化して山嶺遠のけり 竜天にのぼりし夜の氷点下 |
青木華都子 町田翠峰 野田早都女 土井ひろ子 澤田早苗 仁尾正文 才田素粒子 富田郁子 高間 葉 金原啓子 内山英一 村松ヒサ子 鈴木三都夫 鷹羽克子 三浦香都子 |
大般若転読春の風起す 春嵐濤弓なりの相模湾 露天湯の底まで透る春日影 犀川の瑞の春月誕生日 花粉舞ひ春満月を曇らする 漣や比良も比叡もおぼろにて 一禽の鳴きつつ翔てる朧かな またたけばまたたき返す春の星 人声に近づいて行く春の闇 春光にふくるる波のとどろけり 風光る句碑開眼の時迫る 春の空言の葉ひらりひらり来い 山々のなべてなだらか春の雲 紫に霞む稜線石狩野 春霞噂はいつか消ゆるもの 陽炎や宿場の屋根に摩利支天 陽炎を追ひ陽炎の中にゐる 陽炎や草を巻き込む馬の舌 春陰の阿形仁王の舌の塵 別れ霜老いの一徹にぶりけり 古書店に神父の長躯忘れ霜 縄文の土器洗ひをり菜種梅雨 |
安食彰彦 安藤公文 伊藤まり子 西本一都 松本文一 渋井玉子 上村 均 飯塚美代 栗野京子 白岩敏秀 島田愃平 安田青葉 三浦香都子 佐久間和子 国谷ミツヱ 西本一都 桧林ひろ子 大山清笑 湯原まこと 浅野みつぎ 中山雅史 高添すみれ |
漁火も蜃気楼も見有磯海 点滴の落つる窓辺や花曇 起重機に人持ち上がる養花天 春の海薄紅色に夕日落つ 達磨船春潮めくりつつ進む 赤潮を郵便船の分け来たる 汐干狩尻に来てゐる戻り潮 雨の輪のぶつかりあへる苗田かな 春灯易者うれしき嘘を言ふ 春眠といふ退職の贈り物 |
久家希世 宮川ハマ子 田口一桜 福間玲子 加茂都紀女 浅沼静歩 金田野歩女 渡邊唯士 海老原季誉 大橋瑞之 |
春の夜の夢にさへ来ぬあなたかな 大ぶりは母ゆづりなり蓬餅 柔肌の鶯餅のゑくぼかな 椿餅へんたいがなの覚書 手に弾く紙風船の風に逃げ 一つ売れ一つ挿しけり風車 石鹸玉割れて遠くに戦あり ふらここに子ら乗らぬ日は風が乗る 春愁のつぶることなき埴輪の瞳 春愁やばらばらに解く袖身頃 お遍路の白衣の朱印濃かりけり 花屑へ立てし遍路の納め杖 入学の草餅とどく杏花村 詰襟の上に顔のせ入学す 神妙に膝に手を置く新社員 昇坑湯(あがりゆ)に並ぶる臀や春闘後 薪能火勢なだむる水箒 東京に春の大雪四月馬鹿 口開けて目薬させり四月馬鹿 糸柳明日より東をどりかな 病窓にどんたく囃子近付ける 天皇の日霧退ける高嶺かな 黄金週間母と二人で食事終へ 憲法記念日吟行の帽ま深にす 小魚を見つけてはしやぐ汐干狩 繋ぐ手をいつか放して磯遊び 奈落よりせり上がりくる観潮船 磯の香の坂のぼり来る春日傘 遠足児体育坐りにも慣れて 大凧の墜つる一度は立ち直り 無口なる大工の三時桜餅 湯にひらくほのかな香りさくら漬 羊刈る四方固めに抑へ込み 減反の闘争に負け蓮根植う 境界の立ち合ひ終えて桧植う 畦塗つて夜は五体のきしみけり ニ三粒噛んで確かむ種選び 種籾の袋の紐の色違ひ 山里にたたらの裔や種おろし 思ひきり野良着を派手に茶の芽摘む 聞き上手話上手の茶摘の手 夜を通し製茶工場の点りをり 柄杓より小さき像や仏生会 衣手を押へ灌仏し給へり イースターの卵にリボン結ばれて 釈奠(せきてん)の出を待つ木沓揃ひけり 花会式奴の腰の替草鞋 積まれたる晒百反御身ぬぐひ 石手寺のおろがみまつる弘法忌 義士祭る一碑一香泉岳寺 アルプスの見ゆるところに花筵 飛び入りのいつしか主役花筵 農具市ぐらりと鯉の動きたる 中空の月に暈ある四旬(しじゅん)節 花換えや恋の落書き帖置ける はるかにす浅間の煙春スキー |
高橋ルミ子 広岡博子 橋場きよ 後藤よし子 白岩敏秀 宮下萠人 瀬谷遅牛 石倉すみれ 野口一秋 坂本タカ女 福田てい女 鈴木三都夫 西本一都 鈴木百合子 中村信吾 仁尾正文 伊藤 徹 荒木古川 小坂季久女 高崎きよ子 水鳥川弘宇 仁尾正文 山高悦子 石川詩都女 浜口和子 中山雅子 竹内東皐 源 伸枝 澤本千代子 仁尾正文 早坂あい女 佐藤アイ子 仁尾正文 恩田鹿火子 青山東明 富岡秋美 青木華都子 辻すみよ 小玉みづえ 中野キヨ子 鈴木ヒサ 飯塚樹瀬 荒木古川 仁尾正文 福間都早 湯川竹繁 小川恵子 澤田早苗 高久都季江 江口一葭 安澤啓子 吉田豊峰 中組美喜枝 福間都早 鎌倉和子 栗林こうじ |
呼びあうていまも幼名菜花漬 おのがじし身を反り乾く干鰈 お囃子の稽古がへりや蕨餅 はるかなる師系を虚子の忌なりけり 我が俳句玩具にあらず啄木忌 高角に春の月あり人丸忌 御忌(ぎょき)に会うご縁戴き旅終ふる 富士仰ぐ浜に干さるる桜蝦 うつとりと眼の潤む孕み鹿 春禽や背なに二つの紋どころ 杏林の夕ながければ百千鳥 囀れりさへづれり馬耳を立つ 縁先のひそひそ話し鳥交る 寄居虫(やどかり)のよぢりては落つ岩の角 紅させる磯巾着は潮の花 磯の香と煮こぼれ醤油焼栄螺 蛤のひらくをじつと見てゐたり あるはあるは手に当るものみな浅蜊 少女にも秘密のありぬ桜貝 てふてふの留まる仕種のもたせ振り 初蝶の舞を眺むる子猫の目 蜂うまれ軽き眩暈(めまい)を覚えけり 払ひても払ひても虻仔牛糶る 亀鳴くやルルドの像に日の斜め 生涯島に住むかも知れず海胆(うに)を突く ふるさとや蚕飼の家の五六軒 落し角ずしり重きを売られけり 飼ふ許し下りず一夜の捨て子猫 潮の香の牧ににぎはふ孕馬 広島や鳩に混じれる雀の子 翼あることが嬉しき巣立鳥 巣作りのかささぎのこの騒ぎやう 朝川に桜うぐひの投網打つ 食初めの皿をはみ出て桜鯛 蛍烏賊闇の重さに波潰れ 鷺の森昼なほくらき蝌蚪の水 美しき雲の奥なる蝌蚪の陣 蛙鳴く隣の田には負けられぬ 春の蚊に思はぬところ刺されけり 蠅生まる主婦の一日忙しく 春蝉の律曼荼羅をながれけり 松蝉や一人となりし歩を運ぶ 飛んでゐる鵜の目の見ゆる抱卵期 頬白や富士の眺めの良きところ 舟屋より舟出す春の海猫(ごめ)分けて ゆふぐれはふるへてをりぬ遊蝶花 一雨を喜び太る春大根 搗布(かじめ)焚き貧しさ同じ掌をかざす 汐を透き鹿尾菜(ひじき)刈る鎌きらめけり 沖縄の潮のしたたる海雲(もずく)かな 富士の水ゆたかにぬくし水菜畑 ひとひらを句帳にはさむ初桜 遠嶺の翳りなき日や花辛夷 杉の花持薬をひとつ増やしけり 榛(はん)咲くや乾びつきたる野兎の糞 橋多き城下松江や柳絮とぶ それぞれが鍵持つたつき沈丁花 蒸し釜に添ふ三椏(みつまた)のこぼれ花 はくれんの風を許さぬ白さかな はくれんの散華尽くせし一樹かな |
坂本タカ女 上武峰雪 阿部老粋 仁尾正文 西本一都 栗間耿史 原みさ子 福田 勇 小沢房子 影山みよ子 西本一都 久家希世 青山東明 山根仙花 田室澄江 諸岡ひとし 奥野津矢子 松田千世子 佐藤嘉都子 藤浦三枝子 足立美津 白岩敏秀 岡崎健風 楠 瓢水 五嶋休光 篠原俊雄 村上尚子 渡辺晴峰 浅野数方 田口一桜 福村ミサ子 水鳥川弘宇 石川詩都女 河合萬平 宗方真青 藤川碧魚 鶴見一石子 弓場忠義 浜野まや子 岡本耶須絵 西本一都 藤原杏池 三浦香都子 山本美好 仁尾正文 織田美智子 良知あき子 澤田早苗 瀬下光魚 森 淳子 武田菁風 荒木千都江 清水和子 前島蕗子 金田野歩女 栗間耿史 亀本美津子 久家希世 中野キヨ子 仁尾正文 |
連翹(れんぎょう)や明るき嘘は聞き流す 一人静われも判官贔屓かな 青麦の晴れたる空へつづきけり 摘み桑の山にかけあるぬれ筵 行き先は出てからのこと花日和 満開の桜に見られ疲れけり 花冷の膝に遊ばす鼓の緒 栄転も左遷も並び花の茣蓙(ござ) ちることを愉しむごとく桜ちる 星一つ出て夜桜となりしかな シベリア気団蹴飛ばして桜咲き 母の忌や字一番のさくら咲き 戦なき国に住まひて花見かな 僧正の艶ばなし好き残る花 祖母の背に眠る子の頬桃の花 梨の花一筆刷きに交配す 北国に結ぶ縁あり李咲く 犀川は藍一文字花杏 ゆるやかに一水流れ杏花村 路地裏の遊郭あとや花海棠 花林檎一郷遥か埋め尽す 山の井を引く御手洗や榠櫨(かりん)咲く 花樒挿せば隠るる去来墓 鈴懸の花そよそよと揺する風 花楓そびらに弓を引く乙女 搾乳の牛の背に猫花胡桃(くるみ) 群礁に朝の潮なす松の花 長藤の風遊ばせて匂ひけり 無住寺に賑ひ戻る藤まつり リラ一枝手折りて友を訪ねけり ピアノ鳴る垣根に咲けるゆすら梅 木苺の花や港に巨船着く からたちの花の白さも旅ごころ 屋敷神ほろほろ黄楊(つげ)の花こぼれ 神域はことば少なく花馬酔木 咲き満ちて満天星(どうだん)に奢りなかりけり 木瓜の花足投げ出して寝る子犬 躑躅山分け入る径も自づから 燃え盛るきりしま木戸を狭めけり こでまりに風たわたわと転げをり 白もまたにぎやかな色雪柳 濃山吹そこより渓の風生まれ どの蔓の花か通草(あけび)の絡みあふ 色少し出てしなやかな糸柳 隧道を抜けて越前竹の秋 ひこばえや印押す雇用契約書 松の芯摘み生涯に名刺なし 菜の花に沈んでまはすビデオかな 菜の花や兄に習ひしハーモニカ はぐれ鶏しかられてゐる花大根 総代を降りて一息豆の花 合格の朝の一報スイートピー 葱坊主じゃんけんで待つランドセル 苺咲く村に嫁ごの来る話 断崖が馬柵のかはりや隠岐薊(あざみ) 店頭の自惚れ鏡桜草 朝日浴び我れ先と咲く翁草 冠を正し熊谷草咲けり 日陰にも風来て遊ぶ華鬘草(けまんそう) 湖へ落つ斜畑の金盞花(きんせんか) シクラメン篝火草と夜は読まな ヒヤシンス素焼きの鉢の底の穴 束ねても勿忘草(わすれなぐさ)の淡きかな サイネリヤ画廊に時間つなぎして アネモネや泣けば気のすむ母の膝 頬杖でぼんやり過ごすフリージア みどり児の小さな欠伸チューリップ チユーリップの赤ばかりなる謝恩会 金鳳花(きんぽうげ)揺れて花弁のかがやける 深山蝶春竜胆に恋したり 寄り添ふも拗ねたるもあり水芭蕉 松林に風吸はれゆく松露掻き がうがうと風の高鳴る山葵沢 立太子御慶碑雨に茗荷竹 朝採りの乳噴き出せるレタスかな 寝ころんで駆け出してみて草若し 古草や父畦道にしかと立つ 暁光の岳のこぞれる草若葉 無為楽し雀隠れに腰下ろし 遮断機のはづみて止まるかもじ草 座禅草天衣無縫の座なりけり 耳打ちをするほど寄れり座禅草 二た身巾ほどの木道座禅草 用水に春の菜洗ふ鍬洗ふ 岬鼻の風の窪みに蝦夷甘菜 鎌倉に切り通しあり花ミモザ 物見跡雀の槍の立ち揃ひ 富貴草崩るるときも俯かず 酒蔵の百年の黴樺(かば)の花 城跡に道の消え入る一花草 一輪は未だ幼なし二輪草 春落葉のせて流れの迅みけり 鄙に咲き十二単の花と言ふ 落柿舎に都忘れの花傾ぐ 雉蓆(きじむしろ)分水嶺の南斜面 垣通し内緒ばなしは漏れやすし えびね蘭ひつそり咲いて暮れなづむ 結界の外れに地獄の釜の蓋 再来をハンカチの花約しをり |
坂本タカ女 川西美雪 森野糸子 掛木爽風 藤元基子 長谷川千代子 橋場きよ 中山 逓 荒木古川 青木華都子 鈴木 誠 仁尾正文 青木いく代 梶川裕子 増田博子 野津 節 本田咲子 西本一都 仁尾正文 奥田 積 木村稲花 三島玉絵 笠原沢江 五嶋休光 加茂都紀女 平間純一 上村 均 榎田まき子 山本康恵 青木いくよ 防村すえこ 川瀬米子 鈴木三都夫 賀島一雄 奥田 積 山口草雨 増田博子 鈴木三都夫 渡部八代 佐野栄子 石田博人 星田一草 鈴木三都夫 田村ぬい子 稲川柳女 前田清方 布施里詩 川崎ゆかり 須谷康子 中山しづ 大石正美 伊藤和代 鳥越千波 川上けいし 渡部昌石 山高悦子 小渕久雄 仁尾正文 脇山石菖 島田愃平 伊藤富久子 福光照子 今村文子 坂本タカ女 鈴木 夢 安田青葉 渡邊喜久江 山田秀子 奥田 積 笛木峨堂 横川恭子 清水一舟 小浜史都女 柳田柳水 松田千世子 小村絹代 中山まきば 上村 均 鈴木三都夫 鈴木千恵子 鶴見一石子 田村萠尖 青木華都子 福村ミサ子 山口草雨 内山実知世 西村輝子 藤原妙子 金田野歩女 丸谷寿美子 清水英子 白岩敏秀 桜井水尾女 源 伸枝 増山正子 横田茂世 足立美津 仁尾正文 高橋うめ代 |
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夏は来ぬ (五月) | |
北欧の夏に発つ妻少女めく 日光や裏も表も奥も夏 スカーフの変り結びに初夏の風 初夏やがうがう燃ゆる登り窯 椀木地をうづたかく積み五月来ぬ 煌ける五月を惜しみつつ病める 首塚に卯月の雨の容赦なし 伝道師にこやかに来る立夏かな 家具移し風新しき立夏かな 舫綱延びて縮んで立夏かな 蛇泳ぎ水郷に夏立ちにけり 波がしら真白夏の来たりけり 草刈つて急に夏めく一山家 香を残し男過ぎたる薄暑かな 大石を梃子で動かす薄暑かな 筆どれも穂先傷みて麦の秋 筑紫野の昔ながらの麦の秋 麦熟るる字の要に火の見台 鱒の背の陽に青みたる清和かな 縄跳びの輪に薫風を入れて跳ぶ ホームページ編めば薫風入りくる 夏霞押し上げ登るいろは坂 見えつ隠れつ立山の夏霞 落款のにじむ卯の花腐しかな 海岸に住みて悔なし卯浪立つ 青葉潮引いて鳥居の脚高し 笠雲のほぐれながるる五月富士 |
太田疾風子 奥野津矢子 吉田智子 上川みゆき 桐谷綾子 大庭万沙子 柿沢好治 奥木温子 渡辺美知子 斉藤くに子 高瀬季美女 鈴木三都夫 山根仙花 佐藤升子 梶川裕子 渡邊春枝 牧野邦子 仁尾正文 金田野歩女 大沼重雄 大城信昭 尾下和子 松原トシ 前田清方 西岡久子 奥田 積 森岡紗都江 |
絶壁にこだま返しの磯なげき ナイターの一球きびし箸止める 博多帯キユツと鳴らして風炉点前 雨意ながら一日を無事に袋掛 草笛を吹き少年の貌となる 面売りの面より覗く祭かな 祭髪きりりと結うて十八歳 病む妻に祭太鼓の風送る さざなみの志賀のやどりの夏行かな 沖はるかなるサハリンややませ吹く 心にも区切りつけ居り更衣 更衣洗ひ晒のシャツが好き つつ立ちてかがられてゐる更衣 メーデー歌書記長の日々かつてあり 自転車の補助輪取れて子供の日 啓上の一筆太き端午かな 戦なき世の菖蒲湯に浸りけり 武具飾る源平縅(おどし)といふ鎧 鯉幟揚がりてゐたり隠れ里 凸凹の三和土(たたき)なつかし粽結ふ 親離れせし子に送る粽かな |
須田峰月 江口すみ子 高尾綾子 森井章恵 滝見美代子 三浦香都子 山下勝康 篠原俊雄 伊藤 徹 田原桂子 能美百合子 横田みよの 仁尾正文 仁尾正文 角谷美智恵 前田清方 大山孤山 関 隆女 早川俊久 黒田邦枝 池田都瑠女 |
子供郵便局表彰式後柏餅 薬の日旅にし掬(きく)す延命水 風入れて鴨川をどり始まりぬ 母の日の喜び上手も身につきし 母の日の定年のなき割烹着 子を抱かぬ胸に母の日なかりけり 夏場所の見ゆる処に遺影置く 胡瓜苗夫に一畝明け渡す 姑の形見着ることもなき絹袷 セルを着て用なき町に出でにけり 新茶どき古茶にも香り戻りけり 菜種刈る沖に暖流通りけり 葵祭馬上の女人の胸ゆたか 三社祭神輿浮いたり沈んだり 粟蒔くや土に馴染めと踏み固め 甘蔗挿して沖眺めをり漁師妻 甘蔗挿して語尾やはらかき阿波ことば 糸取の湯気の向うにいつも母 御柱空に抜けゆく木遣歌 七十五膳神輿に供じ家康忌 北斎忌卯浪に富士に見えぬなり いささかの謡たしなみたかしの忌 晶子忌の唇かわきやすきかな 小袋に赤き緒をつけ多佳子の忌 穀象と五十年目の出合ひかな 鱚釣りに雨のぱらつく日なりけり 鯖火点く遠くに阿波の雲燃えて 飛魚に一塩をして夕支度 客に出すだけ蛸取れば止める漁 烏賊すだれ越しに話の弾みをり 蝦蛄(しゃこ)跳ねて秤の針の定まらず 海酸漿(うみほうずき)盥に売れる祭市 玄海のけふ荒ぶなり鮑採り おあがりや蚕事おほかた「お」を付せる 城山のけふは風なく繭出荷 袋角(ふくろづの)親しき眸向けにけり 初鰹樽の氷に逆さ詰め 天蛾(かいこが)の色を合はせし木幣(いなう)かな |
西本一都 浅野千鶴子 斉藤 萌 澤田早苗 桧林ひろ子 柳井英子 西原綾子 武藤年子 松田千世子 広川楽水 大石益江 森山暢子 菅弥子女 安食彰彦 中山まきば 松田千世子 仁尾正文 古藤弘枝 小林さつき 西本一都 浅沼静歩 大島たけし 三浦香都子 鷹羽克子 川上けいし 上村 均 小林梨花 池田都留女 比留間草吉 水鳥川弘宇 福間弘子 野津 節 鍵山さつき 佐藤光汀 野田早都女 白岩敏秀 長尾喜代 藤川壁魚 |
逝く夫に藜(あかざ)の杖を贈りし日 青きまで洗ひたてたる夏大根 引き抜いて葉つぱで拭う夏大根 偕老の夫とたしなむ菖蒲酒 さはさはと音寄せて来し麦穂波 新緑に染まつてしまふ立話 若葉にも見頃のありて今見頃 若葉せる無住の寺の大銀杏 惜敗の少年野球若葉風 鐘を打つ余韻にひたる若楓 葉桜や男埴輪の首飾り 阿波の國芭蕉玉巻く札所寺 松落葉礎石の影を蟻走る 牛殺し坂てふ坂の余花の雨 土蔵のみ残る生家や桐の花 桐の花尼僧と足並み揃へけり 玄関の表札二つ桐の花 石楠花の一枝を挿して野点傘 呼べば来て身を寄す馬や朴の花 茶畑の向うに朴の花咲けり 月光に傷み泰山木の花 アカシヤの花の並木を逢ひに行く アカシアの木に日除けして砂丘馬車 観覧車ゆるゆるゆると橡の花 みづうみに波立たぬ日や棕櫚の花 道問へば水木の花を右に折れ 山ぼふし風ななめからうしろから 湖の見ゆる峠や山法師 神の島けぶる卯の花曇りかな 紅卯木(うつぎ)小さな恋の絵馬ひとつ 流れここより名を持てり谷空木 金雀枝(えにしだ)のさうざうしきは束ねられ 微かなる香りに寄れば忍冬(すいかずら) 大でまりことごとく突く風は魔か わらんべに戻りし母や手毬花 お茶室に大山蓮華かほるかな 全身で叩く鍵盤白薔薇 糠味噌の糠足す薔薇の風入れて 年切れもせで楽します薔薇アーチ 木道に休んでばかり花うばら |
横田茂世 大久保瑞枝 福田 勇 橋本志げの 諸岡ひとし 宮崎貞子 桧林ひろ子 荒木つるえ 甘蔗郁子 荒木千都江 南 紫香 安藤公文 田口一桜 高橋花梗 佐藤春野 上川みゆき 大村泰子 金井秀穂 安達みわ子 植田美佐子 橋場きよ 安田青葉 大屋得雄 荒川文男 瀬谷遅牛 池田都貴 鶴見一石子 今村 務 出口サツエ 安食彰彦 渥美絹代 井原紀子 郷野和子 西本一都 渡部幸子 鈴木 匠 諸岡ひとし 松本光子 亀本美津子 高橋花梗 |
咲き疲れ牡丹一気に崩れけり しやがみ込み牡丹の香を一人占め 園丁も牡丹供養に加はりぬ 牡丹散る舞台衣装を脱ぐやうに 牡丹の崩れて闇の動きけり 芍薬や庭の箒目乱れなし 芍薬の蕾を解きし今朝の雨 修道院裏は抜け道芥子の花 野蒜咲き墓章は隠れ切支丹 ぎぼし咲く源氏絵巻の紫に 狂ひ咲きして紫の鉄線花 召されけりマーガレットに化身して マーガレット胸に笑顔の車椅子 無縁塚貴賤の苧環(おだまき)咲きにけり をだまきや雲の描きし古代文字 小糠雨幾年振りに海芋(かいう)咲き 羊蹄花(ぎしぎし)や捨湯泉を落す舟溜り ぎしぎしの花や逆境にはめげず 車前草(おおばこ)の花にも蝶の来てとまる 踏まれても花車前草の座なりけり 踊子草日照雨(そばえ)に少しおどりけり たたら跡狐の提灯ゆれもして 時といふやさしき薬姫女苑(ひめじょおん) 橋下は風の通ひ路都草 ねぢれねばならぬ性もち捩り花 もじずりや天辺に来し蟻戻る 大釜に湯の沸き筍掘りにゆく たかんなや短くなりしズボン丈 筍に一番大き鍋を出し 越中の町に篠(すず)の子食ひにけり 靴提げて登る砂山浜豌豆 木の枝に上着あづけて夏蕨 放ち鶏一羽戻らず蕗の雨 子の家と程良き近さ豆ごはん 蚕豆(そらまめ)を姑とむきをり夕厨 濡れいろの空より定家かづらかな 敦盛草熊谷草と競ひ咲く |
三輪晴代 依田照代 青木華都子 手塚美代子 内山多都夫 桜井水尾女 知久比呂子 池田都貴 西本一都 関 隆女 矢野智恵子 浅野数方 佐藤陽子 富田郁子 三関ソノ江 上村 均 鈴木三都夫 宮野一磴 安食彰彦 松本ひろし 筒井都寧女 西村輝子 小林布佐子 野津 節 荒木古川 高野房子 水出菫正 河森利子 鈴木 夢 内山実知世 井原紀子 米澤 操 森山暢子 渡邊喜久江 川島昭子 大石ひろ女 野口一秋 |
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仲秋 (9月) | |
北狐ふり返り去る岳の秋 篠笛に女人高野の素秋かな 秋色の表紙となりてとどく本 音といふ音のかそけき苑の秋 群猿に噴水沖(ちゅう)す爽やかに 爽やかや踵の高き今朝の靴 爽涼の庭に伐るもの括るもの 爽やかや定刻に着く子の一家 母と子が語るゆくすゑ秋の宵 次の間も灯して長き夜をひとり 口開けて目薬を指す夜長かな 仲秋の二条城闇深きかな 詰めすぎて開かぬ抽斗九月尽 葉月空石刻む音甲高に 八朔のたたみて軽き袱紗かな 刈り急ぐ二百十日の農ふたり 冷まじや藍と寝起きの通し土間 秋分の日の鐘撞けり寒山寺 仏具屋に鉦の音を選る秋彼岸 雑魚の瞳の黒く澄みたる白露かな 竜淵に潜む吊橋ゆれどほし 足跡の秋日を溜めし砂州(さしゅう)かな 万灯に灯の入り秋日落ちにけり 円陣は馬術部員や秋日澄む 富士の襞翳りて釣瓶落しかな 鰯雲はなやかに出て嶽日和 礁越す波の薄さよ鰯雲 脱穀機の音高々といわし雲 梵鐘に冶工(やこう)の銘やいわし雲 秋陰や賽の河原の風車 更科や古人のごとく月に遭ふ 衿足の月に濡れゐる白さかな 星ひそみ月と火星の夜なりけり 朝霧や羊の群の動かざる 霧に消え霧より出づるリフトかな 白樺も林も湖も霧の中 見えぬ山見てをり霧の粗きかな 露葎百姓一揆の鍬の痕 三日月や帰りの遅き子を見に出 自転車にゆるく抜かれて小望月 善光寺平を統べて月今宵 薄墨の波の穂となる無月かな 町長室まだ灯りゐる良夜かな 誰も彼も善人となる良夜かな 川の音山の音聴く良夜かな 野良猫に影法師添ふ良夜かな 天心も湖心も凪げる良夜かな 十六夜やかすかに開く赤子の手 立待の月泳がせてゐる盥 居待月木綿のシヤツをたたみをり 二人乗りバイクを飛ばす二十日月 宵闇や最終便のフェリー発つ 野分中跣(すあし)で通学せし昔 路地抜けてどうんどうんと野分波 嶽の威に颱風雪をこぼし過ぐ ネクタイの横に泳げる芋嵐 高原の馬が嘶く黍嵐 結び目のなかなか解けぬ雁渡し 青北風や剥落しるき忿怒佛 背の子と一緒にうたふ秋夕焼 盛り上る石狩河口鮭颪 秋の虹大字小字跨ぎけり 金堂跡僧坊跡と律(りち)の風 秋の鳶上昇気流に乗り巡る 雲影に追ひ越されては花のゆく 山に生れ花野に喜寿を迎へたる 丈なすも低きも風の花野かな 吟行の一団散れり大花野 藻畳に遊ぶ小鮒や水澄めり 高瀬船通ひし川の澄めりけり 廃坑の閂太く水澄める 昼酒は微酔がよろし水の秋 秋潮や彩移りゆく風の出て 宵闇の暗きにふくれ秋出水 初潮の満つる磯馴(そなれ)の松の色 初潮や藻屑一筋沖に引き |
石前暁峰 奥村 綾 齋藤 都 水鳥川弘宇 西本一都 川﨑ゆかり 増田尚エ 上川みゆき 尾形恵美子 鶴田世智子 川上けいし 栗林こうじ 村松ヒサ子 村尾菩薩子 石橋茣蓙留 三島 幸 加茂都紀女 橋本志げの 大島照子 浅野数方 三浦香都子 藤原杏池 福間玲子 奥田 積 塚本三保子 西本一都 栗間耿史 兵頭文枝 上川みゆき 岡田妙子 西本一都 勝部チエ子 伊藤まり子 浜崎尋子 早川俊久 今村文子 野澤建代 氷見日出子 栗野京子 石田博人 栗林こうじ 笠原沢江 鶴田世智子 安達みわ子 大村泰子 河合ひろ子 仁尾正文 平間純一 安倍弘範 久保美津女 福田はつえ 加茂康一 石本浩子 谷口泰子 西本一都 栗野京子 伊藤直介 織田美智子 三島玉絵 宮崎貞子 渡部唯士 篠原米女 藤田佐奈江 森木朴思 山根仙花 福田としを 織田美智子 笛木峨堂 手塚美代子 山崎朝子 鶴見一石子 斎藤田舞 安達美和子 橋田一青 久家希世 渡部信子 |
秋簾灯りのこぼれ声こぼれ 秋扇つかひ謗りに加はらず 秋扇懐剣のごと帯にさす 秋灯に土胼胝(つちだこ)の手をいとほしむ 燈火親し机上をいつも狭くして 夜学とは遠い昔の今日の酒 夜食くうて足の痺れのおまじなひ 神在はす山へ刃を向け竹を伐る 伐り出せる竹がほがほと結(ゆわ)へをり 湖さむといふ美しき秋意かな 持ち寄りの物みな供へ月見句座 開け放ち秋の蚊帳干す山の寺 秋袷豆ひさぎつつ朝餉とる 招かれて淋しさのあり敬老会 土地の妓と巫女立話し生姜市 放生の鰻ゆるゆる沈みけり おのが影送り流しつ風の盆 胡弓ひく体くの字に風の盆 愛しめるひと日ひと日や氷頭膾(ひずなます) 二学期の児らの背にある青い空 挨拶の代りに揚ぐる秋日傘 短冊の下五ちぎれし秋風鈴 秋蒔の種店先にたたら村 宿入りも早目に秋の老遍路 雲辺寺より天降りきし秋遍路 針箱のかくし抽斗西鶴忌 銀杏を拝み割りして木歩の忌 鏡花の忌傘をさしたる窄めたり 太閤忌棒立ちの蕗揺すりみて 濠端に紙燭を灯し八雲の忌 飛天図に色なき風や獺祭(だっさい)忌 |
小林昭八 澤田早苗 金原啓子 麻生清子 仁尾正文 前田清方 石橋茣蓙留 福原ミサ子 豊川湘風 西本一都 加藤芳江 梶川裕子 西本一都 剱持妙子 入江湖舟 仁尾正文 澤田早苗 松下葉子 山岸美恵子 武永江邨 佐野智恵 小川恵子 中澤紀久枝 栗間耿史 仁尾正文 飯田瑞枝 新村喜和子 依田照代 浅野数方 吉岡房代 高橋陽子 |
四番茶の終りて虫を聞く夜かな をんな去りおもむろに鳴き出づる虫 ひとり言聞かれてしまふつづれさせ 厨の灯消してちちろの闇となる 息つぎに少しの間のあり夜のちちろ きりぎりす飢饉無残と啼きにけり 不本意に太り過ぎたるかまど馬 鈴虫の抗ひもせぬ雄を喰む 松虫やオーケストラが始まりさう 草雲雀地図持ちてゐて迷ひけり 邯鄲のひげ現世をまさぐれる 野仏に間合ひの長き鉦叩き 馬追の真夜に鳴く音は翡翠色 寝つかれぬ夜をがちやがちやのふと止みぬ 菜虫とるといふは口実泣きにゆく 雑言に耐へて芋虫肥りけり 蟷螂の怒りに触れて庭手入れ 二人居て二人の孤独蚯蚓鳴く 蓑虫の糸の長さを吹かれをり 鬼の子に遅き朝餉を見られけり 退官の日の間近くて茶立虫 確かと来る老と我が身や放屁虫 チエロの音に薄羽蜉蝣(かげろう)舞ひにけり 湿原の蜻蛉つるみ沼に落つ とんぼうの好きな高さに杭打たる 船縁に波照り返す赤蜻蛉 蜻蛉飛ぶ空は無限の青さかな 秋蝶や潮の香うすきオホーツク 似たやうな身の上ばなし秋の蠅 御霊(みたま)屋の秋の蚊打ちしことの悔 宍道湖の日の傾きに鯊を釣る 鰍串(*6)弁慶に挿し小商ひ 鰡飛んで湖の一日始まりぬ 朝蔭や一匹糶の大鱸(すずき) 丸干しの鰯目ん玉なかりけり 妻と吾わかつ秋刀魚の尾と頭 |
鈴木三都夫 中山雅史 竹内芳子 広岡博子 青木華都子 西本一都 杉山雪彦 澤 弘深 鈴木 夢 西田美木子 佐藤光汀 井上栄子 鷹羽克子 鳥越千波 森山世都子 川上けいし 桧林ひろ子 山根仙花 土江意宇児 大村泰子 上川みゆき 森山比呂志 小村 嫩 小柳芳郎 杉山雪彦 上村 均 鈴木 誠 小林房子 森山比呂志 笠原沢江 藤原杏池 杉田満都代 辻すみよ 西本一都 安食彰彦 廣川楽水 |
(*6 竹筒に数個の穴をあけ、台所道具を挿すもの。麦藁束製もある) | |
落日を真正面に秋刀魚焼く 秋鯖の恋しき季節浦育ち 盛り上がる石狩河口鮭嵐 今もなほ板木(ばんぎ)合図の鮭番屋 鮭群来(くき)の漣だてる海の色 返すべき名刺持たざり秋燕 秋燕や潮の匂ひの倉庫街 高舞ひて帰燕の風をはかるらし 秋蚕(あきご)飼ふ底の抜けたる峡の空 穴まどひをりをり縄になりにけり かりがねや繕ひもたす謡本 雁の列しばらく塩の道に沿ふ 秋鯵の向きを同じに干されをり 命水打たれ秋鯵背を返す |
安田青葉 江口すみ子 渡邊唯士 朝倉一翠 星野靖子 渡邊春枝 鮎澤裕子 伊藤 徹 川上けいし 仁尾正文 橋場きよ 仁尾正文 青木八重女 鶴見一石子 |
梨むくや一口大に夫の分 青空をすかし摘み取る葡萄かな 葛の蔓引けば男体山動く 葛の山境界知らぬ者ばかり 棚田荒れ真葛繁れる父祖の島 病室の母攫ふなよ葛嵐 馬飼ひし頃は遥かや穂草刈る 城山の空へ抜けたり千草径 草の花海から戻るブーメラン 口笛に集まる羊草の花 礎石だになき配所跡草の花 医師親し秋七草の話など 借景に裏榛名置く桔梗かな 納沙布の千島桔梗に霧笛鳴る 桔梗好き夢二の描く女好き きちかうのはちきれさうな蕾かな 撫子の終の一花をいとほしむ あららぎや高原に湧く水旨し 木曽かけて雲の流るるをみなへし 男郎花(おとこえし)をみな触るれば匂ひけり 折りたたむ杖も旅の荷吾亦紅 心みせまいとしてをりすすき道 花芒しろがねの風吹きにけり 鶏頭や掃ねば誰も掃かぬ庭 かまつかの紅を深めて雨上る 門畑に鬼灯鳴るは妻の居る 露草や住めば都の一軒家 ねこじやらし風が止んでも揺れたさう 唐辛子母が吊るせし高さかな 秋茄子の枝詰められてより盛る 湧水で洗ふ秋茄子鳴くごとし 背負籠に雨の匂ひの生姜売り 枝豆の指輪にしたき彩なりし 枝豆の一塩と言ふ茹で加減 荒蓆日へ引摺つて大豆干す 大豆扱(こ)ぐだぶだぶモンペ膨らませ 糸瓜(へちま)水五本の壜に溢れ居り 青瓢つかみて撫でて褒めにけり 門前のダンス教室青瓢 干ずいき雁木に掛けし瞽女の宿 衣被(きぬかつぎ)下戸が一献所望して 大きさの親指姫ほど衣被 ウオーキング良き出会ひあり萩の風 萩に触れ露地の飛石渡りけり 富士薊甲斐と信濃の分水嶺 |
松下葉子 柴田佳江 青木華都子 川本すみ江 出口廣志 小浜史都女 斉藤かつみ 大久保瑞枝 上村 均 三島玉絵 岡田暮煙 大島照子 西本一都 藤川碧魚 遠藤うた子 斉藤くに子 今村墨絵 和田伊都美 仁尾正文 坂本タカ女 梶川裕子 加藤徳伝 三輪晴代 勝部アサ子 藤原杏池 鈴木吾亦紅 挟間敏子 藤田ふみ子 横田じゅんこ 増田尚エ 斉藤くに子 浅野智佐子 金田野歩女 鶴見一石子 鈴木三都夫 小川千秋 平山陽子 三浦香都子 織田美智子 西本一都 三井欽四郎 橋場きよ 井上科子 今村 務 伊藤まり子 |
露乗せて釣舟草の漕ぎ出せり 腰おろす松虫草に囲まれて 剥けば桃天衣無縫を滴らす 木犀の香れる中でバスを待つ 蘭展の香りに酔ひて人に酔ふ にじり口秋海棠のうなづける 雨が割る秋海棠の水鏡 秋海棠花盗人となりゐたり 高々と月刎ねあげし紫苑(しおん)かな コスモスの乱れ咲きゐる転作田 川に沿ひコスモスの花はるかまで 百ほどを咲かせつつまし杜鵑草 とりかぶと兜正しき盛りかな 落武者の裔の十戸や鳥兜 竜胆のごとき娘なりしその墓に 刈り残す竜胆三株採草地 延焼のここで尽きたる曼珠沙華 蕊撥ねて後れ毛もなし曼珠沙華 急坂を登りて一戸蕎麦の花 走り蕎麦六文銭の藍のれん 帰去来の峠にかかる蕎麦の花 早稲の香や古りし天和の検地帳 胸の辺の稲かき分けて稗を抜く 玉蜀黍(とうもろこし)刈つて広げし峡の空 ビル風の香る玉蜀黍を焼く 黍の葉に風の縺るる音ばかり 粟干してたつきにたけし僧の顔 小菜間引く人と話して故郷あり 一畝のとぎれとぎれの貝割菜 紫蘇の実を捥ぎつつ夫に逆らはず 黒胡麻の蒴果(さっか)からから爆ぜにけり 秋蕨豪農屋敷古りにけり 夕闇に馴染みつつ咲く夜会草 毛繕へば牛の目優し秋あざみ おんばこをしごく先行き不安かな 俯きて朱を点じをり煙管草 句碑晴れて鵯花のあはあはと 丁地蔵に風船かづら枯るるまま 除きたるはづの巻耳(おなもみ)袖口に 夜咄の帯刈安の色とせり 晴天となる静けさに藍の花 |
古川松枝 鍵山さつき 前田清方 渡部喜美子 新屋絹代 西本一都 横田茂世 和田伊都美 坂本タカ女 平田茂子 橋場きよ 小川千秋 藤川碧魚 吉岡房代 西本一都 大城信昭 川本すみ江 仁尾正文 大坂勝美 関口都亦絵 浅沼静歩 西本一都 今牧美鳥 小玉みづえ 東条三都夫 栗間耿史 飯田瑞枝 荒木古川 松下葉子 小林梨花 大村泰子 稲村貞子 藤田ふみ子 今泉早知 斉藤田舞 安食彰彦 久家希世 安食彰彦 中山須美子 影山香織 豊川湘風 |
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秋澄む (十月) | |
秋澄めり百猿の序のおのづから 秋澄むや桶の箍締む槌の音 秋澄むや切口にほふ杉丸太 二の宮の鈴の緒長し秋の暮 フルートを吹く十月の夜の海 長月の大山に咲く二度桜 身に入むや脚括られて鶏売らる うそ寒や夜汽車の音の地を這ひ来 朝寒や音してガスの青炎 朝寒や子宝の湯を噛んで飲む 朝寒の猫なでてより出勤す 秋深む言葉のいらぬ二人かな 一椀のぬくみ両手に秋惜しむ 働くも徒食も一日秋惜しむ フィレンツェに響く晩鐘暮の秋 帽振つて振られて秋を惜しみけり 豆売女日がな跼める冬隣 露寒や子牛を送る大朱盃 馴染客老いて雀は蛤に 秋日和異国となりし島望む 釣竿を海が引つ張る秋日和 秋天へ大道芸の火を吐けり わあつと声出したくなるよ秋の空 秋高し整然と来る鼓笛隊 北岳の山頂にゐて天高し 天高く人健やかに暮しけり 嶽が生む雲の信濃の雲の秋 秋雲につと足かくる電気工 千枚田積んで涯(はたて)に秋の雲 秋風や箒をあてしごとき雲 石窟に羅漢の月日秋の風 門固く色なき風に冷泉家 色のなき風音たてて来たりけり 奇岩巨岩峡は色なき風の道 爆心地に佇つ秋風のおのづから 裏山に塩の道あり秋の声 秋の声即身仏の辺に聞けり ばらに降りばらに霽れたる秋の雨 秋霖の相合傘に肩濡らす 万葉の千曲に還る十三夜 念入りに命毛(いのちげ)洗ふ十三夜 知らぬ者同志で見上ぐ後の月 くれなゐの琴の譜開く十三夜 秋しぐれ水車の音を遠くして 秋霜や人影のなきキャンプ場 錦着て曲線豊か竜田姫 黒岳に秋雪到る草木染 海猫(ごめ)帰る磯波リズムあやまたず 虚無僧の笛吹きて入る秋の山 秋の山曲りくねつて鉄路あり 秋の野のひびきとなりて川流る 薬師より秋野に続く善の綱 眦(まなじり)に筑波を捉ふ嶽錦 山粧ふあやとり橋を雲に懸け パレットの一彩を溶く秋の湖 田から田へ音継ぎたして落し水 昼秋耕夜は編集のペン握る 鹿除けの二本足なる案山子かな 痩せ案山子雀肩にも頭にも 声掛けてみたき案山子のありにけり ジーンズの案山子今にも歩きさう 山寺の庫裡より伸びし鳴子縄 鳥威し獣威しと山住ひ 鹿垣(ししがき)を組みて齢を重ねけり 西浄に鹿垣を結ふ厳島 次の音膝折りて待つ添水(そうず)かな 牛蒡掘る仏頂面の女かな かけ合ひとなりて弾めり藁砧(きぬた) 潜る水躍り込む水下り簗 |
西本一都 橋場きよ 仁尾正文 鍵山さつき 中山雅史 福村ミサ子 岡田暮煙 上村 均 白岩敏秀 荒木友子 渥美志保 安食充子 原 和子 諸岡ひとし 大城信昭 仁尾正文 栗林こうじ 藤原八千代 藤井英子 森野糸子 池谷貴彦 林やすし 川上征夫 小泉梅野 阿部芙美子 杉田たかし 西本一都 寺本喜徳 仁尾正文 西本一都 荒木古川 栗林こうじ 鍵山さつき 石倉てつを 仁尾正文 吉澤みわ 仁尾正文 荒木古川 杉野志都江 西本一都 福田恭子 柳井英子 渥美絹代 三島巳於 竹渕志宇 勝本恵美子 藤川碧魚 能美百合子 鈴木かをる 安部弘範 山根仙花 大塚澄江 西本一都 奥村 綾 高橋花梗 伊東敬人 荒木古川 田村萠尖 稲野辺洋 栗野京子 清水和子 鈴木吾亦紅 中野キヨ子 松浦村風 飯塚比呂子 岩成眞佐子 笛木峨堂 栗間耿史 横田みよの |
運動会別の顔して子の走る 秋思ふと追伸の行多くなり 灰色の湖を見てゐる秋思かな 障子貼るはや三歳の口達者 張り替へて障子明りの仏間かな 校長が相撲の行司里祭 在祭(ざいまつり)奉納獅子の後脚 新渋や経師屋濡れ紙茣蓙に干す 角を切る鹿にあてがふ白まくら 片足を宙に取られて松手入 少しづつ空広げゆく松手入 松手入れ一服の間も松を見て 天辺に親方のこゑ松手入 千振を吊し寺町外れかな 手の甲に齢の見えし野老(ところ)掘り 少年の声裏返る村芝居 背山昏れ火の見も暮れて村芝居 教へ子にさして貰ひぬ赤い羽根 赤い羽根つけて夫は戻りけり 新しき鍬打ち振ふ体育の日 べつたら市夕日眩しき中歩く 案内に誤字一つあり文化の日 ネクタイをして聴きに行く文化の日 花びらをグラスに残し菊の酒 一燭を加へまつるも菊供養 嫁に出し嫁を貰ひて菊枕 菊膾夫婦の言葉似て来たり 黄を重ね菊人形の胸ゆたか 姫君の菊脱がせゐる菊師かな 手つかずの原稿一つ火の恋し 毛見衆に加はつてきし水仇 倒伏の稲に顔入れ刈りいそぐ 訪ね来し刈田の奥の柿右衛門 稲刈機自在の嫁を貰ひけり 棒稲架(はざ)の立ちそめしかば蔵王澄む 石見路は海の際まで稲架組む 稲掛けの夕日の中のふたりかな 藁塚の作りかけなる一つあり 身籠れる牛には厚く今年藁 良く乾く籾鳴る日和続きけり 背中より返事の返る籾筵 水漬く田も畦の杞柳も豊の秋 雲の中飛ぶ一番機豊の秋 籾殻の煙ゆつくり秋収め 新米をこぼさぬやうに研ぎにけり 初炊きの新米ほこと匂ひけり 膝少し崩し眉ひく温め酒 温め酒ランプシェードの食堂車 子の婚の日取り整ふ温め酒 新酒樽樽師泣かせの泣き輪かな 女座りのをんならに今年酒 新走り帳場に宿場里程表 どぶろくや祖父も昭和も遠くなり 猿酒や雲に触れたる鈴鹿越え 綿干して百済寺まで一里かな 来年も咲かせる思ひ種を採る もう作らざる畑なれど紫雲英蒔く 萩を刈る鎌を片手に長電話 初猟の猪を山よりずり落す 熊創を包む鳥屋師の頬かむり 新蕎麦や椅子の狭さも峠茶屋 新蕎麦や暖簾を守る七代目 柚子味噌や娘の癖と夫の癖 榾木積む山頂駅の冬用意 日展を出て浅草の一の酉 みくじ売る巫女一人なる牛祭 程のよき力会式(えしき)の太鼓打つ 恵比寿講終りて風の町となる 街道へ火(ほ)屑ほたりと鞍馬祭 惜しみなく地擦る束帯時代祭 きりたんぽ鍋の吊手の熱きかな 牧閉ざし大空に星残しけり やがて来る白鳥を彫る秋炉かな 一と杓の湯返しの湯気風炉名残 石かまどして大寺の芋煮会 蘆火あとはだらに残り漁休み 一村の烏集る鎌祝ひ 胡麻を炒る音にぎやかに震災忌 紅葉忌大秋晴れとなりにけり 大方は散りし落葉松白秋忌 竜巻の如く翔ちけり稲雀 わつと翔ちばらばら沈む稲雀 立つも沈むも雷同の稲雀 下り鮎簗にもんどり打ちにけり 鮎落ちて瀬舟溜りとなりにけり 馬肥ゆる丘の上からミサの鐘 馬肥ゆる秋や鶏放ち飼ひ 鹿の目に暮れゆく海の色ありて 鹿の歩の窪みに潮のすぐにじむ 鵙高音人に合ふ眉細く引く 天麩羅のからつと揚がる鵙日和 村に沿ひ川くねるなり鵙の声 ぴんと尾を立て初鵙の黙りゐる 熊肉の想ひ出話懸巣(かけす)来る ひよどりは古墳の里の主なるか 神鈴を振るにこつあり小鳥来る 声もなく海峡に立つ鷹柱 島渡るふるさと二つあるごとく 二羽見えて忽ち十羽鷹渡る 錦繍(きんしゅう)を色鳥が縫ふ蝶が縫ふ 色鳥や藍の香廻る糸車 神木の這根に遊ぶ四十雀(しじゅうから) 午後の日を嫌ひ山雀(やまがら)芸嫌ふ 山雀や去年の杭に今年また 花の香に戯れてゐる目白かな 鶸(ひわ)百羽宙の萌黄のうねりかな 朝霧を被(かず)く飛鳥や虎鶫(つぐみ) 暁紅の雲の帯引く磯つぐみ 鴫渡る砂嘴に橋置く九里番屋 啄木鳥のこつこつはげむ校舎裏 椋鳥の渦の落ちゆく刈田かな 嫁ぎ鳥水占ひの吉と出る はたはたのおろかな貌がとんで来る 夕野路の光となりてばつたとぶ 跳び込んで蝗(いなご)そのまま草の色 猪垣(ししがき)を隔て作柄話しをり 初鴨の何処からとも寄り合へる 落鰻迷ひ込んだる簗生簀 江田島の空の真青や新松子 林檎赤し恋女房よ死す勿れ 真二つに切りし林檎の密の色 青空を摑み林檎を捥ぎにけり 我もまたイブの末裔林檎もぐ 蔵王見ゆ林檎にすこし色の出て 無花果の裂けて信濃の山日和 無花果にあした取る実の二つ三つ 初成りの無花果の手につめたかり 無花果を供へ悲しきことを告ぐ 転げても笑ひ止らぬ石榴(ざくろ)かな 神話にも妬心ありけりざくろの実 引張れば山ごと揺るる蔦かづら 白樺中の一樹の蔦紅葉 蝮草実をつけいよよ蝮めく 陶土練る顔のあたりを草の絮 蒲の穂絮皆西を向くわれもまた 涸れ沼となり蒲の穂の絮尽す |
錦織美代子 渡部信子 大石ひろ女 部谷悦子 村松典子 五嶋休光 梅田嵯峨 武永江邨 伊藤 徹 青木華都子 星 揚子 古川松枝 織田美智子 笠原沢江 森山比呂志 奥田 積 仁尾正文 大橋瑞之 榛葉君江 鷲津幸男 伊藤いつ子 桧林ひろ子 鈴木 誠 鈴木百合子 湯浅平人 浅野数方 福原ミサ子 藤川壁魚 桑原露月 仁尾正文 田村萠尖 西本一都 水鳥川弘宇 森井章恵 西本一都 服部遊子 高橋花梗 中山雅史 今井星女 中野キヨ子 鈴木 夢 西本一都 原 和子 橋本快枝 紅林ひさ乃 岡部章子 上川みゆき 高梨秀子 清水和子 吉田容子 白岩敏秀 奥田 積 原 育子 仁尾正文 阿部芙美子 平田茂子 栗本一石 久家希世 塚本美知子 澤田早苗 須谷康子 福田 勇 市川文子 柴山要作 比留間草吉 藤原杏池 武永江邨 天野和幸 林やすし 西本一都 安食彰彦 浅沼静歩 藤川碧魚 青砥静代 池田都瑠女 野津 節 奥田 積 田久保峰香 木村竹雨 渡部昌石 浜本昭二 佐藤升子 仁尾正文 鈴木三都夫 瀨下光魚 村上尚子 青木華都子 大石ひろ女 挟間敏子 橋場きよ 野口一秋 上村 均 仁尾正文 金田野歩女 高橋宜建 稲場多美子 萩原寿女 川上安三 仁尾正文 西本一都 梶川裕子 小沢房子 鶴見一石子 影山みよ子 久世希世 金井秀穂 河合 操 渡部幸子 藤川碧魚 三関ソノ江 星田一草 林やすし 西本一都 山根仙花 星田一草 岡田暮煙 山田ヨシ子 青木華都子 田口一桜 西本一都 今村文子 荒川政子 萩原峰子 仁尾正文 西本一都 小川千秋 江角眞佐子 山田ヨシコ 桜井邦次 梶川裕子 勝部菖蒲 金井秀穂 平間純一 栗間耿史 原 和子 久家希世 |
萱刈りのけものの如く見え隠れ 結婚の事はなりゆき萱刈女 ささ波を片寄す蘆の入江かな 蘆の花田神さまに燃えつくし 蘆の穂のなびけば見ゆる砂鉄舟 蘆刈女夕日束ねてゐたりけり 夕潮に洲の沈みゆく芦の花 葭の花水尾の曲がれば船曲る 荻の声だあれもゐない磯の小屋 草虱つけ表彰を受けに出る 草虱にとびつかれたる迂闊かな ゐのこづちつけて兄の名呼びにけり 行先をひみつに出来ぬゐのこづち まだ誰か山に居るらしひよんの笛 負ふ稲に天龍の霧来てまとふ 稲熟るる神名火に雲湧きつぎて 車力村棒一本に稲を干し 蒸し藷ぽかりと折りて凡の日々 手馴れたる男料理のとろろ汁 刑場に零余子(むかご)静かにこぼれけり 人情といる篤きものむかご飯 指触るる気配に零余子こぼれたる じやが薯がほつくり茹だり一人きり 指に香をもらふ榛名の実山椒 外泊の無為こそよけれ山椒の実 柳散る運河にのこる常夜燈 棉を摘む横を少年羊追ふ たまきはる余生は愉し菊手入れ 菊の丈揃ひ咲かせて菊花展 上棟の空に餅飛ぶ菊日和 白菊を小脇の僧や先斗町 小夜更けて洩るる独吟菊の宿 石仏の美貌かなしき野菊晴 城山の石垣乾く野菊晴 風葬やしぶきをかぶる残り菊 穭(ひつじ)田に白鷺羽を広げ来つ 穭伸び湖風北に変りけり 太るだけ太らせて置く種なすび 種瓢(たねふくべ)たねを吐きをり池にごる 種瓢もう限界といふ形 釜飯の程よき焦げや紅葉茶屋 展望台男点前のもみぢ茶屋 大聖堂黄葉の下のカフェテラス 紅葉狩夫とは他人顔をして 紅葉尋(と)め箱根八里を三里ほど 日を紡ぎ黄落つづく湖畔道 黄落のあとはすぐ雪平家谷 結界に石臼を吊り草紅葉 草紅葉バッグにしまふ時刻表 ちんまりと父の句碑あり草紅葉 色変へぬ松を見越しの南禅寺 二子塚負ひ末枯れの百姓家 農道の一本道や末枯るる 窯の薪乾き色づく五倍子(ふし)を採る また別の風が来てゐるからすうり どの蔓を引いても踊る烏瓜 きざはしの一歩に拾ふ椿の実 湖よりの日ざしにはじけ海桐(とべら)の実 森に手を伸ばし頂くこくはかな 木の実拾ふ子供が一人もう一人 木の実独楽幼き頃の影廻す 伊那谷は峰より明くる一位の実 団栗の独楽へなへなと回りけり はぜの実の色づく山の日を溜めて 無患子(むくろじ)に風あつまりてをりにけり 式部の実路地の裏にも市の立つ 胡桃割る完璧なまま実をはづす 嫁ぎ来て知りたる一つ胡桃干す 銀杏の落ちて出雲の空まさを 桐は実に親となりたる子の背中 かくれ里炉端で栗のいぶし吊り 肩肘を張らずの余生栗の飯 柿一つ描くに大きな画布を張り 鳥止り熟柿が一つ落ちにけり 吊したる借家住まひの柿二列 柿干して夕日一気に沈みけり SLがいまに来さうな熟柿かな 柚子ひとつ楽しんでゐる朝湯かな どうしても届かぬ一処柚子の竿 金柑の艶よく煮えて人恋し さいかちの花敷く万葉径かな 庭の茱萸(ぐみ)熟れて会話の弾みけり 夫留守のいよよいびつに青かりん あやふやな検査入院榲桴(まるめいろ) 饒舌の漢天辺の通草(あけび)引く 腹割つて一物もなし通草の実 郁子(むべ)の実を利かせて活くる花展かな やまんばに山の気貰ふさねかづら 薬餌とて貰ふ苦瓜余しけり 掴みどころなき冬瓜(とうがん)を抱へけり 冬瓜のごろ寝してをり太りけり 七絡み絡んで蔓梅擬(うめもどき)かな 溶岩に炎観世音ななかまど 紺碧の尾瀬の深空やななかまど 浦畑へ胸突き登る茨の実 茨の実噛めば少女の日に還る 数珠玉や隠岐見ゆる日の風の中 風径と云ふ径のあり破(や)れ芭蕉 やれはちすいつまでつづく火宅かな 蓮の実の飛んで離農に迷ひをり 大念珠からから鳴れる万年青(おもと)の実 母になること吾になし藤は実に 島遍路藤の実莢に手触れ行く 落花生鴉に先を越されけり 茸採りの撞きすて鐘の一つ鳴る 舎利木(ぼく)と猿の腰掛赤城山 茸山の奥の方より人の声 坂を来て坂に荷を置く茸売 匂ひだけ嗅がせてくれし茸売り 買ふつもりなき松茸に触れて見る 青蜜柑乙女の頃の香りして 蛍火のごと錦木の実の残る 見ず言はず聞かざる羅漢寝覚草 えびかづら引きても空は近付かず 灯の暗き厨に香る青酢橘(すだち) 母のなき後もくにから青酢橘 |
荒木古川 笛木峨堂 安部弘範 渡部信子 土江意宇児 森山比呂志 上村 均 仁尾正文 藤田佐奈江 鈴木吾亦紅 水鳥川栄子 安食彰彦 岩成眞佐子 飯塚光江 西本一都 三島玉絵 森山暢子 山口あきを 林 浩世 安食彰彦 小川恵女 仁尾正文 鈴木 夢 尾下和子 仁尾正文 内山多都夫 岡田暮煙 吉澤一葎 才田素粒子 川瀬米子 出口廣志 梅田嵯峨 西本一都 能美百合子 篠原俊雄 澤 弘深 白岩敏秀 桧林ひろ子 赤塚美沙女 桧林ひろ子 坪井幸子 篠原米女 島田愃平 青木華都子 仁尾正文 陸川直則 仁尾正文 西本一都 加藤数子 奥木温子 上武峰雪 荒木古川 友貞クニ子 金田野歩女 齋藤 都 宋 住江 荒木古川 栗間耿史 金田野歩女 前田清方 錦織美代子 仁尾正文 大屋得雄 永見日出子 鈴木三都夫 田久保峰香 坂本タカ女 大澤のり子 西村松子 宮川芳子 橋場きよ 勝部アサ子 大澄滋世 大石ちよ 小林さつき 古野美那子 前田清方 西田美木子 石川詩都女 広川初子 原 真澄 吉田智子 小浜史都女 山崎紀子 安食彰彦 井原紀子 高木文枝 坂本タカ女 笠原沢江 桧林ひろ子 横田じゅんこ 赤城節子 増田一灯 野口一秋 三島玉絵 古藤弘枝 中澤紀久枝 平山勢津子 安達みわ子 岡崎健風 大石越代 湯沢八重子 仁尾正文 飯塚美代 西本一都 笛木峨堂 阿部芙美子 安田青葉 島田愃平 長谷川千代子 高橋ルミ子 田村萠尖 大山孤山 西田美木子 小嶋ツル女 仁尾正文 |
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神有月 (11月) | *白魚火の本拠地出雲では大社に神が参集する十一月を神有月という。 |
白波の続く街道冬遍路 冬の寺一穢(え)の塵を許さざる 冬やつて来いよとポプラ仁王立ち 再会を誓ふ握手や冬ぬくし 浜名湖に民話もありて冬温し 歯を二本抜かれ暖冬異変かな 沖を見て唇乾く冬はじめ 初冬の東寺風鐸鳴りづめに 鉄棒の児は十一月の土を蹴る 下りたり十一月の最上川 宍道湖に神有月の雨渡る 大声で笑ふ幸せ神無月 琅玕(ろうかん)の竹玲瓏(れいろう)と冬に入る 裸婦像の殊に乳房の冬に入る 立冬や二十世紀の日々愛し 厚底の靴かつかつと冬に入る 浦小春肩がけに行く獅子頭 小春蝶象がやさしき目もて追ふ 小春日の石投げて聞く湖の声 撫仏なでて小春の句会かな 整骨師結構猫背小六月 冬めくや煉瓦造りの喫茶店 冬めくや宇陀の里曲(さとわ)の千枚田 冬晴や小窓にはまるほどの富士 冬晴や時計廻りに木々の影 冬服やマストの上の訓練生 仲見世は何時もお祭り冬うらら 手擦れしてゐる経文や雪時雨 雪しぐれ匂へにまみれ酒杜氏 木枯や通天閣にまとひつく 凩や火伏せの神は正一位 凩の夜つぴて父の忌なりけり てのひらで湯呑をつつむ初しぐれ 初時雨糶に出す牛撫でてをり 雨情碑や利休ねずみの時雨雲 パン種を寝かせ子を待つ夜のしぐれ 初霜や靴とんとん突いて履き 宍道湖に毳(けば)立つ波や神渡し 神渡し荒星一つ研ぎ出せり 陶匠の大き掌水烟る 柴漬(ふしづけ)や昔外濠なりし川 冬田打つ昨日も今日も老一人 空海のくに冬耕の行き届き 藺(い)を植うる己が夕影をどらせて 縄を綯ふ湖北女は左利き 冬安居(あんご)粥ふつふつと銀色に 雪安居三百畳に火の気なし 茎の石女の暦見るごとく 終日の野良着なりけり冬構へ 病む犬の小舎に目貼りをしてやりぬ 冬囲ひ縄締むるとき口ゆがみ 炉を開く明治の火吹竹用ゐ 口切りの茶会静かに華やかに 口切や路地行灯に導かれ 蕎麦刈れば五位鷺渡る山畑 麦の芽にしづかなる雨きてをりぬ 涛の音麦芽は筋を正しけり 蒟蒻を掘る牛が鳴き仔豚なき 小流れに蒟蒻玉を晒しあり 泥の香に総身まみれ蓮根掘る 蓮掘にぬきさしならぬ深き泥 発動機全開にして蓮根掘る 木の葉髪合せ鏡に嘘笑ひ 木の葉髪わが坑帽に疵いくつ 亥の子餅届けに来し子顔真つ赤 丸餅を苞(つと)に納めて神送り 神留守の日暮し門を潜りけり 松籟の昂りて神還りけり 神等去出(からさで)の神立橋に灯のともり エプロンを干して勤労感謝の日 総身にシャボン勤労感謝の日 |
嘉本靜苑 鈴木三都夫 鈴木 誠 樋野洋子 中村信吾 安食彰彦 山根仙花 橋場きよ 石倉すみれ 出口サツエ 藤原杏池 橋本快枝 西本一都 前田清方 竹元抽彩 松本ひろし 山口草雨 三瓶乱花 松田千世子 勝部チエ子 栗林こうじ 斉藤くに子 福永喜代美 伊藤巴江 早川俊久 岩佐和子 前田通恵 坂本タカ女 河村 翠 原 忠道 稲川柳女 仁尾正文 松本光子 賀島一雄 杉山雪彦 上川みゆき 川本すみ江 栗間耿史 仁尾正文 森山世都子 浅原ちちろ 大屋得雄 仁尾正文 安形波外 富田郁子 浅野数方 仁尾正文 飯田瑞枝 勝本恵美子 安食彰彦 斎藤田舞 影山香織 横田じゅんこ 影山香織 上武峰雪 渥美絹代 福原ミサ子 福嶋ふさ子 安澤啓子 栗間耿史 鈴木三都夫 安澤郁雄 奥村 綾 仁尾正文 長谷川百々代 河合ひろ子 大石ひろ女 佐藤玲子 藤原杏池 小川恵子 仁尾正文 |
柏手のそろはぬ親子七五三 七五三ついでに親も褒めにけり 御火焚(おほたき)の破魔矢突つ立ち燃えにけり 麹屋の手前を右に酉の市 とをかん夜新藁苞で叩きけり 家建てて恃(たの)む老い先木守柿 ゆくところ雪のふるくに親鸞忌 称名(しょうみょう)の常より高き親鸞忌 高殿に遺る鞴(ふいご)を祭りけり 新海苔は紙の重さでありにけり |
関口都亦絵 阿部芙美子 仁尾正文 金原啓子 吉澤一葎 鬼村破骨 西本一都 高村 弘 森山比呂志 松浦村風 |
乱菊のたぶさゆるみし宋鑑忌 達磨忌の長き法話に正座かな 達磨忌や勘定流の太き文字 むざんやな兜とまみゆ桃青忌 芭蕉忌や句には成就といふ日なし 波郷忌や理髪の椅子にわが眠り 波郷忌の花柊をこぼしけり 波郷忌や歩いて渡る葛西橋 鶏小屋の隅に仕掛ける鼬(いたち)罠 大鷹やネクタイ赤き航海士 人間が構へて尾白鷲を見る 流氷に血を滴らす尾白鷲 鷹舞ふや男一人が山に入る 幾千の刺羽ぞ渡る渦の上 鷹渡る鳴門の渦を見下して 畑打ちに付かず離れず尉鶲 夜よりも昼の淋しく木の葉散る 枯葉降るかくれんばうの中に降る 日光山大落葉籠漆塗り 落葉掻く時折風を叱りつつ 北岳を垣間見むとて落葉坂 雨脚のふとくなりたる朴落葉 落葉掃くエンドレスとは思はねど 朴落葉十六文は優にあり 橙(だいだい)をきりきり絞る夕厨 九年母(くねんぼ)や久闊(きゅうかつ)叙する開山忌 田子の浦朱欒(ざぼん)どすんと落ちにけり |
大沼一鵠 後藤よし子 橋場きよ 西本一都 中村水研 荒木古川 村上尚子 今井星女 内山一樹 河村 翠 坂本タカ女 岡崎健風 上村 均 楠 瓢水 大村泰子 田中あい子 勝部アサ子 兵頭文枝 西本一都 木村牧雨 伊藤まり子 小浜史都女 平塚世都子 仁尾正文 土江比露 大石越代 中山雅史 |
仏手柑を飾る床の間生家かな 多忙とは健康であり大根干す みづみづしき大根の葉を切り落す 潮騒や夕日の色の掛大根 薄日差す山に尻向け大根引く 七段の大根はざに隙間なし 鳥居前もつとも銀杏散りしきる 反り屋根に匠の息吹銀杏散る 人を待つロダンの像に銀杏散る 銀杏の散る寺の耳門(じもん)に郵便車 雪紅葉文楽を観る列に入る 冬紅葉ひたすら作務の新発意 山茶花や自転車とばし巫女出仕 山茶花にしばらくありし夕日かな 茶の花やお練りの衆の中休み 茶の花を一輪さしてしづ心 花八つ手猫の眼は金色に 見舞はざることも見舞や花八ツ手 柊の花宝前(ほうぜん)に散りしきる ふつと息かけひいらぎの花散らす やいかがし用の柊大木に 柊は父の忌の花かをりけり 手話交す顔の明るし帰り花 いつからを余生といはむ返り花 牧の扉を八の字に開け返り花 足早に闇の近づく石蕗の花 再会も別れも握手石蕗の花 |
小林梨花 知久比呂子 渡辺千穂 上村 均 高橋陽子 仁尾正文 梶川裕子 栗林こうじ 大沼重雄 岡田暮煙 三浦香都子 仁尾正文 野田早都女 関口吾亦紅 鈴木 夢 石原登美乃 山口あきを 鶴田世智子 渡部信子 青木華都子 長谷川和江 仁尾正文 早川俊久 澤田早苗 仁尾正文 桧林ひろ子 安田青葉 |
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年の暮 (十二月) | |
冬の朝日差しあびつつパンを焼く 短日や手鏡ほどの忘れ潮 短日や隣の家のモモが逃げ 短日の日溜り追つて針仕事 人声のかたまつて来る寒暮かな 遠眼鏡向けある島の冬ざるる 冬ざれや尾を流し跳ぶ園の豹 鉄橋を渡る二輌の冬ざるる 熊かなし檻の冷たき鉄を噛む 千一体三十三間堂の冷え 海鳴りのほかに音なき寒夜かな 真二つに皿を割りたる寒さかな 味噌売りの路地に入り来る十二月 浮玉の繋がる波止場十二月 霜月や能面睫毛持たざりし 雀来て冬至の声をこぼしけり まな板に南瓜ごろんと冬至来る 柚子湯に身沈めてけふを遠くせり 一切れの南瓜に冬至ごころかな 柚子風呂に提灯脱ぎの子のズボン 寝てゐても歩いてゐても師走かな 極月の火へたまりくる人の顔 空瑕瑾(かきん)なかり師走に入りても ぽつかりと一と日空きたる年の暮 歳晩のビルの窓拭き下りて来る 受信トレイ溜まるにまかせ年の暮 二世帯の包丁研いで年の暮 数へ日を画室籠りの幸にゐる アンケート中流と書き年送る 鐘撞くや落ちて来さうな除夜の星 百八の鐘のいくつは夢に聞く 大年の灯を消して又一つ老ゆ 大年のやり残したる鍋磨く 渓流の返す冬日のまばゆかり 稜線の薄墨色に冬日入る 冬天に放り上げたる月の鎌 片足が冬空を蹴る梯子乗り 波襖はだかる河口冬の雲 動くとも見えぬタンカー冬霞 冬満月ふと父のこと母のこと 冬の月汀の貝のどれも空 帰る子の握手しつかり冬銀河 谷川の魚眠らせて冬銀河 母の座のいつも末席空つ風 寒風に縮みし背中押されけり 隙間風斬り結びあふ背中かな とむらひの列吹きちぎり虎落笛 太刀風の鳴らして虎落笛に和す 虎落笛盗むほかなき芸の道 虎落笛火の見櫓の辺に奏づ 鎌鼬利かん氣の子の泣き黒子 寒気団居据る夜のブランデー 鐘楼は鎮魂の寂冬の雨 窯の穴総て炎を噴く霜夜かな 標高八百奥宮の霜の花 霜柱踏んで足裏に音を聞く 雪のふるさみしさよけれ善光寺 雪炎を負ふ日輪や地吹雪ける 降りつづく雪に合わする暮しかな 混沌の母暁闇の雪深し 雪の朝捻子のゆるみし時計鳴る 酒造る米噛んでみる根雪かな 丹後岬生糸のやうな雪の降る 付け慣れぬイヤリングして細雪 雪起し来るか陶土を叩き揉む 灯ともしの鐘の霙るる善光寺 峠一つ越せば故郷みぞれ降る 初雪や干柿を編む瞽女三(み)たり 初雪や光と影の蔵の町 寒雷や曲りて乾く干しかれひ 冬の虹ネクタイ結ぶときに消ゆ 背山より前山に懸け冬の虹 冬の虹長き参道歩きけり 風呂敷のほどけ易くて御講凪 雲一朶名残の空となりにけり 師の浅間と師の読まれたる嶽ねむる 冬山に祷りの声を置いて去る 山眠るころの短き谺かな 汽車少しずれて停まりぬ山眠る 塩の道鯖の道山ねむりけり 枯れ尽す野に午後の日の豊かなる 少年の枯野に放つ伝書鳩 冬田打つ時折遠き山を見て 振り下す鍬撥ね返す冬の畑 いのちまだ剰れりと知れ冬清水 川涸れて橋高だかと架りけり 長竿の鋤簾(じょれん)を下す冬の湖 凍滝を仰ぐ心音聞ゆのみ 冬怒涛頬をちぎつてしまひけり 冬怒涛御碕の宮のうしろより 持ち上がりやがて砕くる冬の波 幸せが逃げて行きさう息白し 改札口どつと降り来る白い息 休憩の二言三言池普請 消炭を干し清貧を抜け切れず 炭ついでさて言ひにくきこと言はな わかさぎ釣る人に炭火を売りに来る 農を継ぐ話うやむや炭を足す 炭斗(すみとり)に添へし手艶の火吹竹 埋み火を掻き鉄瓶を歌はせる 炭俵紙の袋に変りけり 駅員が来て石炭を焼べにけり 膝送りして座りたる囲炉裏かな 炉話や面白ければ嘘もよし ストーブに青年の香の残りけり 捨つる句を生かす喜び置炬燵 幼き日炬燵の中で足相撲 炬燵の上の空つぽの土鍋かな 三世代足のふれあふ炬燵かな 手火鉢の灰に字をかきまた消しぬ 禰宜浅黄巫女緋の袴火桶抱く お点前の始まる迄の助炭(じょたん)かな 紙懐炉熱かり犬に吠えらるる 風呂焚かぬ夜は湯婆(たんぽ)を抱へ寝る 碁石一つこぼれてをりぬ冬座敷 あやとりの祖母と子の声冬障子 縁に日の存分にあり白障子 白襖僧に仏のこと糺す 屏風絵の鷹の威に先づ低頭す 瞽女のやど雁木づたひの小暗がり 仏壇の町の雁木を廻り道 温突(オンドル)や螺鈿の大き箪笥据ゑ 傍に画集と句集冬籠 飯粒の糊の凹凸冬籠 飲食の味うすくして冬籠り 焚火消え続く話のありにけり さりげなく聞き流しをり焚火の輪 陵(みささぎ)の裾に小昼の焚火かな 榾の主といふには若き女将かな 寒柝(かんたく)や西陣の路地数しれず 寒柝のかへらざる音打ちにけり どの道も波止に集る夜番かな なじみ客送る女の懐手 日向ぼこ命の箍の緩びけり たましひを置き忘れきし日向ぼこ 冬服の袖を通さぬままに古る マント着て浅草六区闊歩せる いづこにもセーターで行く定年後 裏返し値札戻しぬ毛皮市 縫ひ皺の藍の濃淡古紙衣(かみこ) 両の手にふんはり乗せて今年綿 風止んで灯台守の蒲団干す ちやんちやんこ脱いで甲斐甲斐しくなりぬ ねんねこの子と温もりを分ち合ふ 若者の粋に着こなす厚司かな 着ぶくれていやしからざるおとな瞽女 着ぶくれて年毎母に似てきたり 託児所に着ぶくれの子を置きて出る 年番の総代の冬羽織かな 雪帽子末摘花をのぞかせて 崖に散る濤へ冬帽目深にす 土に生き土に老いたる頬被り 頬被りほまち野菜を売りに来る マフラーや言はずにすますことのあり 補聴器ののぞきをりたる耳袋 耳袋岬より望むオホーツク 手袋を選るにぐうちょきぱあの真似 |
吉原ノブ 梶川裕子 古田キヌエ 大石登美恵 森山比呂志 藤原杏池 横関スエ女 間 操子 栗間耿史 青木華都子 西岡久子 川本すみ江 柳川シゲ子 安食彰彦 坂本タカ女 二宮てつ郎 吉村道子 織田美智子 橋場きよ 江見作風 宮下萠人 川﨑ゆかり 荒木 茂 水鳥川弘宇 上村 均 石橋茣蓙留 大城信昭 伊藤直介 大島照子 青木華都子 伊東敬人 山根仙花 久保美津女 福田てい女 石前暁峰 大久保瑞枝 河森利子 柳川シゲ子 出口サツエ 依田照代 横田じゅんこ 小村絹代 檜垣扁理 荒井孝子 長尾喜代 藤川碧魚 鈴木吾亦紅 竹元抽彩 橋場きよ 仁尾正文 新村喜和子 東条三都夫 鮎瀨 汀 加茂都紀女 松下葉子 奥田美恵子 西本一都 佐藤光汀 安田青葉 平間純一 山田フサ子 坂本タカ女 出口廣志 原 英子 鶴見一石子 西本一都 石倉てつを 西本一都 浅沼静歩 福田恭子 白岩敏秀 高見沢都々子 安食彰彦 林やすし 池田都貴 西本一都 野津富美子 三浦香都子 石田博人 仁尾正文 田原桂子 加茂都紀女 栗本一石 飯塚ひさ子 鬼村破骨 三島玉絵 高尾綾子 福嶋ふさ子 武永江邨 梶川裕子 塩野昌治 西田美木子 桑名 邦 部谷悦子 荒木古川 岡本耶須絵 田中藍子 源 伸枝 三島玉絵 福間都早 笛木峨堂 森 淳子 大村泰子 笛木峨堂 古川志美子 上 秀子 渡辺千穂 弓場忠義 竹田環枝 田口啓子 清水一舟 横田じゅんこ 坂本タカ女 小渕久雄 渡邊唯士 飯塚葉子 清水和子 森山比呂志 水鳥川栄子 西本一都 栗林こうじ 仁尾正文 武田美紗子 平間純一 仁尾正文 中野キヨ子 荒木友子 渥美絹代 富田郁子 奥田 積 白岩敏秀 仁尾正文 安達美和子 瀬谷遅牛 仁尾正文 安納久子 大久保喜風 島田愃平 江見作風 岡本耶須絵 河合ひろ子 辻すみよ 佐藤愛子 村田初代 長谷川千代子 西本一都 大橋瑞之 川﨑ゆかり 仁尾正文 川西美雪 山根仙花 金井秀穂 黒田邦枝 小林さつき 坂本タカ女 大村泰子 山口あきを |
羞ひは女のいのち足袋真白 お点前に少し固めの足袋を穿く 股引のはち切れさうな車引 落胆をさとられまじとマスクせり 障壁画拝すマスクを外しけり 看護婦に別の顔あり毛糸編む 母となる指生き生きと毛糸編む 泥鰌掘日当る方へ移りけり 混沌をゆすりて紙の漉かれけり 文盲の母の味噌搗き唄かなし 鴨鍋に明治の顔の揃ひけり 糟汁の敗者チームを待ちゐたる 連れ添ひて四十五年納豆汁 闇汁や猪か狸かはた兎 わが料は羊羹なりき闇夜汁 夜鳴きそば職にあぶれし者同志 おでん屋の掛け取りに来し髪美人 鍋傾ぐままに煮凝(にこごり)片寄れる 風呂吹や紅さしそめし青木の実 凡の日の暮るる風呂吹き大根かな 湯豆腐の宇宙遊泳せるごとし 真中に塩鮭の座やお弁当 塩鮭の仏頂面を買ひもどる 熱燗や文字の大きな古時計 熱燗や遁れ来し事故誰もいはず 風音の今宵は強し玉子酒 過ぎしことこれよりのこと葛湯とく 蕎麦掻や貧しき過去のなつかしく 足利学校門前に来る焼芋屋 鯛焼を尻尾より食ぶ消極派 雑炊の一人に余る湯気を吹く やき鳥の煙の奥の高笑ひ 咳ひとつ機内に残し旅終る 咳一つしてより長き祝辞かな 咳一つ拳に包み神司 嚏して夕べ淋しき一人かな 水洟や富山の薬売りが来る パズルまだ解けず終ひの湯ざめかな 唐揚げの虎魚(おこぜ)ぽりぽり風邪癒ゆる 風邪の子の童話に中に眠りけり 看護婦は風邪ひかぬかと問はれけり たはやすく風邪貰ひけり母もまた 風邪寝して遠流の島にゐる思ひ 雪安吾粥ふつふつと銀色に 雪安吾三百畳に火の気なし 風に耳立てて猟犬老いにけり 猪撃の銃を背中に切手買ふ 猟犬の叱られてゐるいさみあし 猪撃の真白な歯を見せにけり 薬喰一枚足りぬ小座布団 すき焼の主客は疾うに帰りけり 梅花藻(ばいかも)を具に蒜山の牡丹鍋 猪鍋や父祖の代より自在鈎 玄室に冬眠の蛇柩守る 熊送りすみし白樺(かんば)の杭二本 鷹匠の素袍(すおう)着匂ふ雨霧かな 潮待ちの港の路地や干菜吊る 庚申の集ひにすする干菜汁 灯籠の影淡々と敷松葉 霜囲ひして切支丹資料館 棕櫚剥ぐや一つ違ひの義兄弟 雪吊の鋭角心ひきしまる 雪吊りの縄投げて網打つ如く 雪囲さくらは自由にして置かう 雪囲して出稼ぎの日を決めし 里神楽大蛇に手あり足のあり 神楽に夜徹して髭の濃くなりぬ 女人とて強き警策臘八会 臘八の接心銀杏一葉なし 諸田船(もろたぶね)舵取り直す神の前 和布刈(めかり)神事始まる巌の焚火かな 三河花祭の火の香つけ帰る 花神楽けむりこちらへばかりかな 顔見世や犇きあへる木戸の口 羽子板市名代の屋号めじろ押し ボーナスの話離れて聞いてをり ジャンボくじ少し離れて社会鍋 雑踏の中の讃美歌社会鍋 聖樹飾り手伝ふ子らは天使の目 飛行機で一人帰る子冬休み 卆寿まであと三年の日記買ふ 日記買ふ青きバナナの房を提げ 来し方の括れぬ長さ年忘れ 女にも五分の言ひ分年忘れ 屑籠の尻を叩きて掃納 掃納めしてより薄く爪を染む 値切りつつ箕を一つ買ふ年の市 ぼろ市の人込み分けて鼓笛隊 賀状書くこの世は好きな人ばかり 琅玕の竹を筧に年用意 年用意丹波黒豆噴きあがり 虹梁(こうりょう)の埃も拭いて年用意 煤逃げの空魚籠提げて戻りけり 母の部屋真似ごとだけの煤払 御先祖を縁に移してすす払ひ 掛乞のまたされてゐる木椅子かな 結び目のほぐれて届く歳暮鮭 メモ欄の溢れてゐたる古暦 綯初の藁ねんごろに打ちにけり 注連作り家族総出の納屋あかり 松飾る母に教はることあまた 宝前の夜を焦し焚く納め札 雑巾をきりりと絞り用納 海鳴りの聞こえくる山年木樵る 神酒あげて年木を積みし休め窯 餅搗くや最後の一打杵高く 餅搗くに目まで力の入りけり 一葉忌いつから溜まる使ひ筆 寝入るまで肩の寂しき一葉忌 一葉忌旅に求めし黄楊の櫛 一茶忌や落葉の中の磴の角 地芝居の幟はためく近松忌 漱石忌手あか汚れの文庫本 山日和熊除けの鈴背に鳴らし 熊肉を呉れるといふ要らぬといふ 痩せ狐よぎりここより登山口 今日も又狸舎に在る束子かな 狸死す人に追はるること終る 旧き家の狼除けの格子かな 冬日向屋根かけ足して兎飼ふ 底冷えの山傾けて兎狩り かまど猫客の帰りを目で送る 枝川に赤き浮標や冬ひばり 一羽来て一景動く冬の鷺 梟の佛相雨が雪となる 微動だにせぬ梟に見据ゑらる 民宿に手繰り網干す鷦鷯(みそさざい) 笹子鳴く寺の掃除のゆきとどき 縁側にヘルメット置き笹子聞く 窯出しの壺に日の色笹子鳴く 笹鳴や絶えず音して峡の川 白鳥を置けば風土記の意宇(おう)の湖 風出でて白鳥の首みな揃ふ 白鳥を見てきし夜の髪柔き 背合せに向ひ合せに浮寝鴨 次ぎ次ぎに鴨来て沼の膨らみぬ このあとの雪疑はず鴨日和 百千の鴨翔つ湖を傾けて 十文字に水尾を重ね朝の鴨 啼く鴨にはるかの一羽応へけり 鴨を見る話かけたき近さにて 鴨百羽水面引つ張り立ちにけり 鴛鴦の流れに遊び流されず 番鴛鴦見て来し夜の一人かな 人間の孤独鳰の孤独 湖の鳰の浮巣を見ず仕舞ひ 波が消す千鳥の跡を又千鳥 冬鴎タンカー喫水線高し 白波のかけらが飛んで冬鴎 海豚漁終へし船旗のちぎれをり 魚市の糶素通りの鮫の山 鮪切る出刃包丁の握り痩せ 鰤敷や海荒れぬ日は山荒るる 鰤網を手繰り繕ふ二百尋 腹裂けて鱈子出てゐる網を引く 鮟鱇の剥がれ削がれて鉤残る 鮟鱇のしどろもどろの切身かな 鰭酒や逢うてはならぬひとに逢ふ 鰭酒や肩書のなき名刺持ち 海見たき眼玉の抜けし潤目(うるめ)かな 亡夫恋ふる潤目鰯の眼の悲し 海鼠突き帰りきびしき渦となる 言葉待つ箸より逃げし海鼠かな 海鼠船能登の七浦七入江 水槽のおちよぼ口せる海鼠かな 牡蠣啜り真白き殻の掌に残る 真中に船路を空けて牡蠣畑 凍蝶に息かけてみし触れてみし 凍蝶の掌はなれたる虚空かな 凍蝶の凍つる外なき翅たたむ 冬蜂をこぼしてゆきぬ行商婦 地球儀をまはりて冬の蠅止る 唸りては微かに動く冬の虻 むささびの飛ぶ神杉の闇を衝き 没する日火種のごとし鶴の村 柴垣の高さを鶴の進みけり 丹頂の棹なして来る目出度さよ 蟷螂の祷れるさまに枯れにけり |
能美百合子 桧林ひろ子 河森利子 橋場きよ 江見作風 市川希世 渡邊喜久江 菅原野火男 白岩敏秀 栗間耿史 尾添静由 奥田 積 宮川芳子 小村青桐 依田照代 木下ひろし 安食彰彦 橋場キヨ 西本一都 渡邊春枝 青木華都子 橋場きよ 賀島一雄 金田野歩女 仁尾正文 上村 均 坂本タカ女 笛木峨堂 河瀬都季女 松田千世子 高橋静香 瀬川都起女 杉浦千恵 星 揚子 橋本志げの 早坂あい女 野原小夜 塚本美知子 澤田早苗 桧林ひろ子 安達みわ子 小浜史都女 仁尾正文 浅野数方 仁尾正文 白岩敏秀 大屋得雄 笛木峨堂 仁尾正文 瀬川都起 阿部芙美子 渡辺晴峰 栗間耿史 木村牧雨 西本一都 小林梨花 西田 稔 鈴木珊子 笠原沢江 水鳥川弘宇 氷見日出子 藤川碧魚 上武峰雪 奥野津矢子 川上けいし 原みさ子 仁尾正文 高村 弘 仁尾正文 小村絹代 田口一桜 安澤啓子 仁尾正文 坂本タカ女 塚本美知子 宮川芳子 瀬谷遅牛 大沼重雄 杉田えり子 佐野久野 松本文一 沢柳 勝 大久保瑞枝 田食保子 野田早都女 大石ひろ女 清水春代 鍋島蕗子 藤川碧魚 鈴木百合子 吉岡房代 渡辺晴峰 野口一秋 青木華都子 影山みよ子 飯田瑞枝 知久比呂子 安食彰彦 藤井爽青 高橋陽子 鈴木 匠 吉岡房代 鈴木百合子 古川保堂 澤田早苗 後藤よし子 浜本昭二 宮野一磴 橋場きよ 梶川裕子 西本一都 荒川孝子 今井星女 村上尚子 藤川碧魚 宮野一磴 奥野津矢子 安食彰彦 植田美沙子 渡辺恵都子 仁尾正文 坪井幸子 野津 節 渡部昌石 藤川碧魚 安達美和子 武藤年子 渥美絹代 浅沼靜歩 石橋茣蓙留 白岩敏秀 西本一都 栗間耿史 石倉すみれ 青木華都子 横田みよの 宮野一磴 三島玉絵 石橋茣蓙留 富岡秋美 鈴木三都夫 仁尾正文 渡邊唯士 小村絹代 坂本タカ女 影山みよ子 鈴木三都夫 小林昭八 佐藤升子 上村 均 金田野歩女 内山多都夫 西本一都 川上けいし 今泉早知 高岡良子 橋場きよ 上川みゆき 坂本タカ女 坂本タカ女 新井 緑 西本一都 森山比呂志 山下靜居 大村泰子 金田野歩女 仁尾正文 青木華都子 鬼村破骨 山根仙花 藤川碧魚 三浦香都子 澤 弘深 栗間耿史 鈴木吾亦紅 田口一桜 藤川碧魚 佐藤愛子 |
山稜のたてがみめける冬木立 寒林に踏み入る一人きりがよし 牡丹の冬芽に跼み命惜し 木蓮の冬の芽の出し五濁(じょく)の世 目礼で述ぶる悔みや冬木の芽 てのひらに枯木の鼓動たしかむる 裸木のポプラに含羞ありにけり 労ひて抱き上ぐ心桑括る 枯るるものみな枯れ尽きしあとの富士 枯芦に波たたきつけ湖荒るる 枯蔦の絡み絡みて離農跡 枯蔦を引くやままこのしりぬぐい 蔦枯るる石の蔵には石の窓 枯芝を踏めば足裏に芝の声 枯芝に猫うら返る日ざしかな 追焚の枯菊の火のやはらかし 金婚に少うし間あり菊を焚く 枯芭蕉己が姿を歎きたる 由良川の土手の一景枯れ芒 蓮枯れて落とす影さへなかりけり 水軍の裔の島島蜜柑畑 不機嫌な夫を覗いてみかん剥ぐ 冬菜屑けちらし手繰り渡舟かな 武蔵野の土芳しき冬菜畑 白菜を抱いて主婦の顔となる 廃坑の隅に住み古り葱青し 小店守る外に智恵なし根深汁 花束のごと葱抱へ母来たり 人参引く煙草の匂ふ女きて 赤蕪を洗ふ勾玉みがくごと 花枇杷や梯子一段づつ暮るる また一戸減りたる島や枇杷の花 大文字山を弓手に枇杷の花 ポインセチア明日あることを信じをり ポインセチア抱へて帰る星の夜 光陰や命愛しめと冬ざくら 枝折戸へ誘ふ飛び石冬桜 ささやきの聞ゆるやうな冬桜 振り向かぬ背中見送る冬桜 |
黒田邦枝 水鳥川弘宇 荒木古川 渡部幸子 木村竹雨 渡邊春枝 滝見美代子 松井春篁 大石越代 藤原杏池 山岸哲子 竹渕石菖 清水和子 柴山要作 青柳ひさ子 河合ひろ子 仁尾正文 松田千世子 吉田豊峰 森山比呂志 高橋静女 黒崎すみれ 西本一都 早川三知子 桑原露月 荒木古川 深沢文月 大村泰子 河村 翠 前田清方 白岩敏秀 岡田暮煙 大石正美 織田美智子 佐藤升子 湯浅平人 秋葉咲女 西村松子 安田青葉 |
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