最終更新日(updated) 2023.02.01 |
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-令和5年2月号より転載- |
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発表 |
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令和五年度「白魚火賞」・「同人賞」・「新鋭賞」発表 令和四年度の成績等を総合して下の方々に決定します。 今後一層の活躍を祈ります。 令和五年一月 主宰 白岩 敏秀 白魚火賞 内田 景子 同人賞 野田 弘子 新鋭賞 栗原 桃子 |
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白魚火賞作品 |
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内田 景子 母の写真 菜の花に地球明るくなりにけり 男雛女雛見つめ合はせて飾りけり 寝坊して狂ふ一と日や初蛙 遠回りしても買ひたし桜餅 母の写真胸ポケットに花浴ぶる 聞き役の注ぎ足すお茶や日の永し 葉桜や素足で履きしスニーカー 濡れ髪のままでひとりの蛍狩 七曜を使ひ果たして草を引く 日の匂ひのせて戻りし夏帽子 肩の荷を一つ降ろして髪洗ふ 二十本の向日葵母の供花とせむ 盆用意母との時間引き寄する 秋晴のど真ん中へとボール蹴る 新米でまづは搔き込む玉子飯 編みかけのマフラー二年目に入る ひたひたと足の裏から冬来る 母の物二枚重ねて着ぶくるる ぼた山の今日は名山初日の出 寒禽の空引き裂いて去りにけり |
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白魚火賞受賞の言葉、祝いの言葉 | ||||
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<受賞のことば> 内田 景子 |
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内田景子さんの横顔 新開 幸子
内田景子さん、白魚火賞の受賞おめでとうございます。 景子さんとは、近所ということもありますが、義父が町議会議員を四十年勤めておりました折りの〝うぐいす嬢〟として、長くお世話になった方です。誠実でやさしい人で、地域のお世話を長年続けておられる、がんばり屋さんでもあります。 平成十五年五月、小浜史都女先生の指導の「姫沙羅会」が誕生しました。少し遅れて参加されましたが、よく勉強され、句会ではいつもトップの成績を重ねて来られました。 またたく間に、白魚火新鋭賞を受賞され、この度の白魚火賞です。本当にすばらしいこととお祝い申し上げます。 その後も景子さんはめきめきと頭角を現され、昨年の四月、七月には白魚火集巻頭に選ばれ、常に四句、五句欄組で、佳句を発表されています。 景子さんはお母様の介護を長くされていましたが、介護の苦労や愚痴など微塵も出さず、明るく、爽快でユーモアたっぷりで、佳句を沢山詠まれています。 四月、七月の巻頭の句より ぼた山も今日は名山初日の出 縫初の布巾三枚真白なる 寒中や仏飯すぐに強張りぬ 寒禽の空引き裂いて去りにけり 消防団のひかる革靴寒詣 チューリップ双子のやうな年子の子 一斉に木々の欠伸や山笑ふ 遠回りしても買ひたし桜餅 まだ水輪小さし四月のあめんばう 葉桜や素足で覆きしスニーカー 景子さんの詠まれる句は、身近な句材ばかりですが、平明でわかりやすく、季語の斡旋もよく、表現が明るく詠まれています。 景子さんは非常に観察力がすぐれていて心豊かな表現と語彙が豊富です。 これからも、益々個性豊かな佳句を詠まれ、ご活躍ください。そして、私達に刺激を与えてください。 景子さんおめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。 |
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同人賞 | ||||
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-同人賞受賞の言葉、祝いの言葉- | ||||
<受賞のことば> 野田 弘子 この度は、同人賞をいただきありがとうございます。知らせをいただきました時は、とても信じられませんで、そのままにしておりましたが、二日経ち三日たちますうちにじわじわと嬉しさが込み上げて来ました。と同時に「私でよいのでしょうか」との思いが強くなって来ました。子育てが終わりましたころ二年余り公民館の俳句サークルで学んでおりましたが、主人の転勤でその地を離れ、それから十数年俳句の事を思い続けていました。 経 歴 本 名 野田 弘子 (のだ ひろこ) 生 年 昭和二十二年 住 所 島根県出雲市 俳 歴 平成十八年 白魚火入会 平成二十三年 白魚火同人 俳人協会会員 |
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さりげなく詩を紡ぐ人 渡部 美知子
野田弘子さん、「同人賞」受賞おめでとうございます。 弘子さんとは知らず知らずの内に親しくなっていった感じがあり、いつだったかたくさんの鈴虫を籠(ケース)ごといただいて以来、我家では鈴虫の野田さんと呼ばせてもらっています。 弘子さんは島根県吉賀町(旧六日市町)の出身で、子育てが少し落ち着いた頃、公民館の教室に参加して俳句を始められました。やがてご主人の退職で出雲市へ転居されますが、これが俳句の上でも大きな転機となったようです。 ある日立ち寄った店に「彰彦」の名入りの短冊が飾ってあり、その句に心ひかれた弘子さんは店の人に住所を聞き、その足でご主人と安食彰彦先生宅を訪ねられました。三人で話をしていると偶然山根仙花先生がお見えになり、一層話は弾み、その場で久木句会と白魚火への入会が決まったということです。こうして弘子さんは白魚火を活動の場と定め、まっすぐ俳句に向かって行かれました。 髪切つて梅雨の出雲にこもりけり 総身を映し手袋買ひにけり 髪を切って出かけるのかと思えば、こもる。総身を鏡に映して、買ったのは手袋。意外な展開を詠むのは弘子さんの得意とするところです。読者の想像をユーモアをもってさらりと躱されます。 種袋振りて赤子をあやしけり 花束と葛湯をもらひ誕生日 母の日の一日花壇の中にゐる 赤子をあやす、誕生日を祝われる、母の日だと自覚している、そんな自分自身をしっかり詠みながら、笑顔の赤子、花束と葛湯を用意する人、色とりどりの花々という他者を浮かび上がらせ、情の流れる一句にしておられます。その手法の鮮やかなこと。 現在弘子さんは、酒のまず句会とJAいずも句会に籍を置いておられます。私はJAでご一緒していますが、弘子さんの指摘にハッとすることが度々あります。季語や言葉に対して歳時記や辞書での確認を欠かさず、もっと良い表現はないかと追究していかれます。この姿勢は何年経っても一貫して変わりません。 蒲公英やケーキの自動販売機 種芋の出て来る英字新聞紙 数へ日の三十分を寄席にゐる これら三句も弘子さんらしい句です。句材の面白さと季語の取り合わせの妙。句の世界が明るくて豊かです。 鈴虫を飼うて二人の夕餉かな 弘子さんの俳句の原点は、穏やかな暮しの中にあると思います。これからどんな句を詠んでいかれるのか、とても楽しみです。 改めて、本当におめでとうございました。 |
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新鋭賞 |
栗原 桃子
風と行く 嬉しげに君が告げくる春の雪 新刊書片手に外へ春の昼 花の雨良き日も悪しき日もありて 荒川に釣竿並びうららけし 更衣白の増えたるクロゼット 気に入りの香水今日は月曜日 宵涼し月の形のネックレス 蘭鋳の泳ぎに合はせピアノ弾く 雲の峰風になりたき心地かな 涼新た伏せて仕舞ひぬペアグラス 木犀の香る道順風と行く 生くることただひたすらに秋の蟬 何処かへとふと帰りたし冬初め 冬の日や熱々のピザ頰張りて 塩鮭の届きたる夜の長電話 |
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新鋭賞受賞の言葉、祝いの言葉 |
<受賞のことば> 栗原 桃子
経 歴
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栗原桃子さん 新鋭賞おめでとう 寺田 佳代子
桃子さんは平成三十一年春、白魚火東京句会に入会されました。 |
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