最終更新日(update) 2019.12.01 

  平成29年度 みづうみ賞  
             令和元年12月号より転載


発表
令和元年度 第二十七回「みづうみ賞」発表
 第二十七回みづうみ賞応募作品について予選・本選の結果、それぞれ入賞者を決定いたしました。御応募の方々に対し厚く御礼申し上げます。


          令和元年十二月     主宰  白岩 敏秀

 (名前をクリックするとその作品へジャンプします。)   
  
みづうみ賞 1篇
茄子の花 田口 耕  (隠岐)
秀作賞   5篇
袖の釦 斎藤 文子
(磐田)
親がらす 野田 美子
(愛知)
露時雨 挾間 敏子 (東広島)
街の声 三原 白鴉  (出雲)
始まり 渡部 美知子 (出雲)
 
   みづうみ賞  1篇
    田口 耕 (隠岐)

    茄子の花
二杯目の珈琲バレンタインの日
校庭をきぎす一気に駆け抜くる
一枚の棚田を埋めれんげ草
まな板をはみだしてゐる桜鯛
ふらここや水平線へ足を投げ
使ひの子飛魚下げて戻りくる
茄子の花写真うつりのよき親子
峰雲へ水脈まつすぐに伸びてゆく
燕の子土間の柱の刀疵
横綱の牛引かれゆく青田風
みささぎをめぐる畦道赤のまま
烏賊を干す校舎の渡り廊下かな
解読の古文書に誤字蚯蚓鳴く
稲架掛けの周りへ子らの集まり来
栗山へ全校生徒ちりぢりに
神楽終へ漁火いよよ燃えてをり
せいこ蟹どんぶり鉢に足のばす
店員の靴の片減りクリスマス
つぎつぎと船の灯もどる年の暮
左義長の火柱海へ崩れけり



  受賞のことば   田口 耕
  新鋭賞を受賞した折、松江の福村さんから背中を押されました。「次は、みづうみ賞に挑戦してみては」と。以来、挑戦し続けて今年で十年目になります。受賞の知らせを受けて「あぁ、合格したんだ」とぽかんとして居りました。もちろん嬉しいのです。ですが、まだまだ実力が伴っていないことも自覚しています。新たなる目標を定めて気分一新、精進して参りたいと思います。
 ここに至るまで白岩主宰、村上先生はじめ多くの方々に御指導並びに励ましを頂きました。心より御礼を申し上げます。これからも島の風土と身の回りの暮らしぶりを詠んでいきたく思います。どうぞよろしくお願いいたします。この度は、誠に有難うございました。


住所 島根県隠岐郡
生年 昭和三十三年


 秀 作 賞   5篇
    斎藤 文子 (磐田)
    袖の釦
雑巾を縫ふ母とゐる蝶の昼
ぶら下がる鉄棒朧月夜かな
陽炎の中よりハイカー現るる
街灯のつくる人影新樹の香
くらげ浮く月の光を返しては
昼過ぎのプールサイドに本開く
夜濯を終へ浜風に吹かれをり
師の句碑へこつんと木の実落ちにけり
火起しの種火がぽつと秋深し
白鳥の着水新幹線過る
母と子の手を振り合うて息白し
湯たんぽといふ大海を抱いてをり
枯野道袖の釦を失ひぬ
初山河一羽の鷺を飛び立た
す 木の匙ですくふ蜂蜜寒の入



    野田 美子 (愛知)
    親がらす
帯少し高く結びて琴始
どんど火に達磨のつぺらぼうとなる
雛の間に乳の匂ひのかすかなり
夕つばめ観音の肩掠めゆく
滝開き僧三本の矢を放つ
親がらす拳ほどの餌地に降ろし
短夜や講座のファイル二つ増え
瓜漬くる上半身を桶に入れ
校庭にオルガンひびく原爆忌
故山へと流れゆく雲草の花
秋の灯や母似の薄き眉となり
ゆるゆると回るバルーン枇杷の花
花八ツ手日時計正午指してをり
教卓の筆立てにある胼薬
数へ日や砂場に大き靴の跡

   

   挾間 敏子 (東広島)
   露時雨
下萌や町ごと消えし爆心地
真ん中に一揆碑のある植田かな
恋歌にまがふひとふし田植唄
その人の肩に触れたき蛍の夜
井戸水の流す少女の素足かな
戦地よりのルビ付きの文土用干
峰雲やドーム前てふ市電駅
荒滝や人の世の音みな消して
夕涼し介護の手順にも慣れて
八月や赤のあふるる被爆絵図
丁寧に封切る一書涼新た
河岸に被爆碑いくつ露時雨
旅人のごとく良夜の家路かな
人住める証のポスト柿の秋
貼り替へし障子に子らの読む灯り



   三原 白鴉 (出雲)
   街の声
ゆつくりと降るる遮断機春の雨
一回転して離れゆく流し雛
花筏大編成となり下る
小さき風大きくかへし藤の花
鯉幟日なた臭きを降ろしけり
ここだけの話金魚としてをりぬ
滝飛沫墜ちて白さを失へり
瘡蓋の剥がるる如く梅雨明くる
大夕立去つて戻りし街の声
人はいつも何かに縋り牽牛花
窯跡に転がる破片螢草
にぎやかな色となりけり柿紅葉
仏塔の十一月の風纏ふ
湯豆腐の踊り話の動き出す
墨磨機寒九の水を得てまはる



   渡部 美知子 (出雲)
   始まり
野火走る世界遺産の森を背に
外流しに束子が二つ水温む
夜桜のうすむらさきを浴びに行く
うららかや少しのびたる生命線
ソーダ水次のひと言待つてをり
一木が始まりとなる蝉時雨
谷川の肋見えたり大旱
ここよりは黄泉平坂風死せり
枝折戸を押してとんぼの国に入る
一生を揺れて終はるや花すすき
玄関の小さき釘音年暮るる
百歳の箸にのび行く雑煮餅
凍つる夜や消しゴムの粉また散らす
スランプの真只中を着ぶくれて
自転車に空気を足して春を待つ

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